ジュニア版 神社仏閣ミニ辞典             P 3
        ー入門篇・仏教の部ー  
 ・・・釈尊の教え・・・
                                 参考文献:仏教入門(藤井正治)・仏教(渡辺照宏) 
                                        
仏教のこころ(金子大栄) ほか

 

                                       
 仏教は

  現世は如何にあるかということを正しく知り人生は如

何に生きるべきか」
を学ぶ宗教ですが(P1参照)

 釈尊は 

  現世は如何にあるかということを”縁起説”・”四法印”・

  ”四聖諦(苦諦、集諦)
で教え

  人生は如何に生きるべきかを知るために”中道の教え”

  ・四聖諦(滅諦,道諦)・”三学”・”四摂事”・”四無量”
を説

  かれました。
 
              

釈尊が説法した霊鷲山
(仏陀の風景・田村仁)
 

 現世は如何にあるか      

  ・縁起説            





 

 
縁起説とはものごとにはすべて原因があって結果があるのであって、原因のないところには結果はありえないということから導かれる教えで、この世は数限りない多くの他者に依って生かされている(相互性)と同時に、限りない因縁の関係によって成り立っている(因果性)ということです。    
 
 このことは私どもが社会に対する感謝と報恩、さらには因果応報・自業自得の気づき、利他行(*1)と止悪行善(*2)に励むように教示されたものと考えられています。
 
 更に十二支縁起
(*2−2)ではこの世の老死などの苦しみの原因が無明(真理を知らず仏教の教えに暗いこと)にあり、これを滅すれば苦悩から脱することができることを説かれました。


                         

修行者(仏陀の世界・田村仁)


(*1)利他行
 他者の救済をめざす活動のことで具体的には後記の四摂事、四無量の教えを指します。

(*2)止悪行善
 自らすすんで悪事を抑え善事に励めば自ずと心の汚れが清められるという教え。

 

 ・四法印

 法印とは教えの本質のことで通常次の四つがあげられておりこれを四法印といい釈尊の教えの基本となっています。

 ・諸行無常・・・・この世のものはすべて移ろい変化する。

 ・諸法無我
・・・・この世には永久不変のものは存在しない。(こ
           れが後に空や無としてと説かれます)

 ・一切行苦
・・・・移ろい行くこの世はすべて苦である(悟りの境
           地から見れば)。
 ・涅槃静寂
・・・・煩悩(*3)を脱した無苦安穏の境地(はすばら
           しい)。

 日本に伝わる「いろは歌」(*3−2)はこの四法印の思想の要点が示されているといわれます。

      色は匂へど(と)散りぬるを
      我が(か)世誰(たれ)ぞ(そ)常ならむ
      有為(うい)の奥山今日(けふ)越えて
      浅き夢みじ(し)酔(え)いもせず(す)

     (匂うがごとく美しく咲いている花も、いつしか散っ
      てしまう。生滅無常の実相をあるがままに認め
      真の自己に目覚めれば、夢をみたり酒に酔った
      ような迷いの世界から脱することができる)


(*3)除夜の鐘を百八つ打つのはすべての煩悩を打ち払うことに由来しています。
 百八つの煩悩とは貪(むさぼり)・瞋(怒り)・痴(愚かさ)・慢(あなどり)・疑(疑い)・見(偏見)という六つの煩悩が六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)につきまとって三十六となり、それが過去・現在・未来・の三世にわたるとされています。

(*3−2)いろは歌
 かな四十七文字をすべて読み込んであり、「大般涅槃経」の偈(げ、仏やその教えをたたえた四行詩)の和訳で弘法大師の作とも言われともています。



・四聖諦(苦諦、集諦)
 

 諦(たい)とは真理・真実と言う意味で迷いから悟りの道筋を四つの項目で示したもので、苦諦・集諦は「現世はいかにあるか」のための教えで道諦・滅諦は「人生は如何に生きるべきか」の教えです。

 苦諦・・・苦悩とは何かを説いたもので生(*4)・老・病・
  死のほかに
 ・怨憎会苦=怨み憎んでいる人と出会い共に暮らす苦し
  み
 ・愛別離苦=愛する人と生別あるいは死別する苦しみ
 ・求不得苦=求めて得ざる苦。思い通りにならないことか
  ら生ずる苦しみ
 ・五取蘊苦=五蘊
(*5)即ちすべてのものに執着すること
  によって受ける苦しみ

 これらをあわせ八苦と言い、日常使う四苦八苦とはここからきています。
 
 集諦
・・・苦悩はなぜ起こるかを説いたもので、それは渇
  愛(限度を知らぬ激しい欲望、貪欲)によるもので、慾
  愛・有愛・無友愛の三つに分けて説かれています。
  慾愛とは感覚的快楽をもとめて止まない欲望のことで
  有愛とは生存への欲求、無友愛とは生きることを望ま
  ない欲求です。
                         


 (*4)この世の苦は輪廻によって生まれることによってはじまることを言っています。

 (*5)五蘊とは人間を成り立たせている五つの構成要素の集まりをいい、同時に一切の存在を意味します。
 5つの構成要素とは
・色(形のあるもの)
・受(外から受ける感じ)
・想(外にたいして持つ意識)
・行(意思)
・識(認識)。   

 

 人生は如何に生きるべきか

 ・中道の教え
  


 釈尊は太子の頃のぜいたく三昧な快楽の生活と、出家後の6年間にも及んだ生死の間をさまよう苦行生活という、自らの体験にもとづいて
最初の説法の時、快楽と苦行との二つの極端を捨てて中道の道を説いています。
 そしてその実践として八正道(はっしょうどう)を示しました。
 八正道については次の道諦のところで説明します。
 

      

    説法する釈尊と弟子達
      (仏陀の世界・田村仁)
       

 
 

 ・四聖諦(滅諦、道諦)

  

 ー八正道ー

 

 滅諦・・・苦悩の克服とは何かを説いたものでそれは渇愛をあますことなく滅し捨て去り執着がなくなること、そうすればやすらぎの境地に入ることが出来ることを教えています。

 道諦とは理想の境地に達するために進むべき道筋を示したもので具体的には八正道(八つの正しい生き方)という八つの実践法が説かれます。
 釈尊は快楽と苦行の両極端の否定(中道)から進むべき道として八正道を説きましたが、迷いから悟りへの道筋(道諦)としてもおなじ結論(八正道)を導いています。

 八正道とは次の八つの生き方です。
 
 ・正見(しょうけん)
・・・正しく見ること、正しい見解をもつこと。
 ・正思(しょうし)
・・・正しく考えること。
 ・正語(しょうご)
・・・正しく言うこと、真実を語り有益な事を言う。
 ・正業(しょうぎょう)
・・・正しく行動すること、善行をすること。
 ・正命(しょうみょう)
・・・正しく生活すること。規則正しい生活。
 ・正精進(しょうしょうじん)
・・・正しく理想に向かって努力するこ
                   と。
 ・正念(しょうねん)
・・・正しく修業の目的を心に留めているこ
              と。 
 ・正定(しょじょう)
・・・正しく瞑想し精紳統一をはかること。

 これをまとめると、正しいものの見方・考え方(正見・正思)を身につけ、正しい行為(正語・正業)を行い正しい生活(正命)をすること。そして正しい修業の目的を忘れることなく(正念)精紳統一をはかり(正定)、正しい方法で理想の向かって努力(正精進)することにより迷いの世界から悟りの世界へ行くことができると教えています。

 
瞑想する僧
 (仏教の人々・リブリヲ出版)

 

 ・
三学の教え
  
 
この世の生き方(修行道)を教えた八正道を心の面から説いたのが三学の教えで意思的な面を戒、感情的な面を定、知能的な面を慧としたものです。
 
 戒とは修行者としての正しい生活態度の基準で基本的な戒として通常五戒と言われているものは

 @不殺生戒
・・・殺生をしないこと
 A不偸盗戒
・・・盗みをしないこと
 B不邪婬戒
・・・婬らなことをしないこと(在家信者の場合は正当な配偶者以外)
 C不妄語戒
・・・嘘をつかないこと
 D不飲酒戒
・・・酒などを飲まないこと

 ですがこのほか修行者の段階(*6)に応じて数多の戒が課せられています。

 はこころを定め静めることで、正しい精神統一のことで禅定
とか三味とも言われています。この精神統一を得るためには調身・調息・調心が必要とされています。

 調身とは健康体で身体がよく調整されていることです。
 調息とは平常の正しい呼吸をすることで心身の健全なことです。
 調心とは心配ごとのない良く精紳の調整された状態のことです。
 
 慧
とはすべてのことを正しくとらえ真理を見極め、善悪をわきまえる心のはたらきで、真実の智慧が悟りに導くことを説いています。

 戒と律

 戒
は修行者に対して戒めとして定められたものでこれを犯しても処罰されるようなことはなかったようです。
 は教団の規律で出家者が当然守るべき生活基準でこれを犯すと罰せられます。

 (*6)修行者は次のように分類されます。

 比丘(尼)・・・受戒した出家の成年男子(女子)。
 沙弥(尼)・・・出家はしているが未成年者のため受戒していない。
 正学女・・・成年ではあるが既婚の女性で、妊娠のおそれがあるので2年間の猶予期間を設け、その後に比丘尼となる。
 優婆塞(夷)とは男性(女性)の在家信者で信士(信女)とも言います。


 ・四摂事
 

 四摂事(ししょうじ)は世の中の人々を救うとともに悟りに導く四つの方法で四無量とともに利他行とよばれています。

 布施・・・困っている人に物心両面から施しをすること

 愛語・・・親切な、相手のためになるような言葉をかけること

 利行・・・相手のためになる行為をすること

 同事
・・・自己他人の区別なく悩み苦しんでいる人を救うこと


    僧への施し 
  (仏教の世界・帝国書院)

 ・四無量
 
 四無量(しむりょう)は四無量心ともいはれ、世の中の人々を幸せと悟りに導くために四つの心を無量に(限りなく)おこすことです

 慈・・・他人の幸福を願う心

 悲
・・・他人を不幸から救い出す心
 
 喜
・・・他人の幸福を見て喜び満足する心 
 
 捨
・・・人々を等しく幸せにしたいと願う心


巡礼者たち
 (仏陀の世界・田村仁)

  

(教えの)ま と め

 

 釈尊の教えは「八万四千の法門」といわれるほど数多く伝えられており、ここではそのすべてを説明することはできませんが基本的な教えについてみてきました。

 ここでまとめてみますと釈尊は現世の老死などの

 苦の原因が

 ・真理を知らない無知(無明)
 ・この世のものはすべて移ろい変化し永久不変のものは存
  在しないこと(無常・無我)
 ・限度を知らない激しい欲望(渇愛)   にあることを説き、

  この世はすべて縁起の法則によって成りたっているので
 まず相互性に目覚めて社会に対する感謝の心を起こし四
 摂事、四無量の利他行に努め他者の救済を目指し
      

  また因果性にも目覚めて因果応報・自業自得に思いをい
 たし、八正道・三学の実践に励み善事に努め

  更に一切の執着から離れ渇愛をおさえ煩悩を脱した無苦
 安穏の境地(涅槃静寂)の境地に達するよう悟されました。

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涅槃仏に祈る人
  (仏陀の風景・田村仁)

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