私の学習レポート2008年8月13日

   
地球温暖化防止と
     新庁舎の駐車場設置をどう考えるか
T。Oさんから、甲府市議会議員全員に出された「新庁舎になる市役所には、地球温暖化防止対策から駐車場をつくらない」という提起を、私は私なりに真剣にこの間考えてきました。T.Oさんへお送りした私の主な見解をここでも明らかにします。T。Oさんには遅れたことをお詫びします。なお、文面には若干の手直しをして掲載しています。

T.Oさんのご提起を要約しますと以下のようになるかと思います。

・地球温暖化は最早先送りはできない。クルマ依存率の高い甲府市民もCO2の削減へ一人一人が真剣に考える時期である。

・市役所の駐車場スペースを自然公園風にして二酸化炭素を吸収する樹木との共生を選択する。

・ガソリンという危険物持つ車を満車にしてしまう駐車場を防災拠点の新庁舎の側に置かない。

・多くの市民は本庁者まで行かなくとも市内10カ所ある窓口のセンターでほとんどの用が果たせる。

・パークアンドライド(シャトルバス・バス代の市の負担)などさまざまな整備を行い、バス路線廃止になってしまわないうちにバス会社と共存共栄で交通手段の確保をはかる。

―こうして『地球は未来からの借り物です。もう、これ以上汚すことは止めようではありませんか、車一辺倒の生活スタイルを考え直そう』と言う、メッセージをこの甲府から全国に発信しましょう。それにはまず、駐車場(身障者用は確保)を持たない甲府市役所から。

という要旨でした。

●これは貴重な提起だと思いす。私自身もしっかりお答えしなければと思い、また、自分自身の見解も整理すべきだと考え、本日になってしまいました。

●私は、この提起に対しては、「地球温暖化防止をいかに甲府市として進めるか」を目標にして、新庁舎と駐車場については「当面、施設としての現実的な市民への便宜」と「今後市民生活のお手本である施設としての方向・方針」が必要と考えています。

地球温暖化防止対策は、まず政府がしっかり目標を掲げ

特に、温室効果ガスの大口排出企業への取組みが最優先です

●地球温暖化は、だれでも日々の生活環境の中で気がつき始めています。二酸化炭素の削減は差し迫った問題です。世界の科学者をあつめた国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)による「報告書」では、産業革命による工業化以前に比べて世界の平均気温が二度以上上昇すると、取り返しのつかない重大な変化が起きると予測し、「突然のあるいは非可逆的現象が引き起こされる危険がある」とまで指摘しています。

●新聞報道でも、ヨーロッパの熱波、大型ハリケーンやサイクロン、干ばつによる大きな被害、氷河が解け初めていることなど世界中がおかしくなっていることがわかります。私たちの身の回りでも、真夏日の増加や妙に寒い日があり、記録的な集中豪雨、季節と関係なくなった雷や台風、それに熱中症の多発など日常の生活を脅かしています。

●国際的に危機的な事態が予測され、誰もが生活環境の変化の中で、地球温暖化の抑制に真剣に取り組むことを必要としますが、ここでも
「総論賛成・各論反対」があります。この「総論賛成各論反対」の典型が、日本政府と日本の企業だと思います。

日本政府は、地球温暖化問題を主要な議題とする洞爺湖サミットで、議長国を務めるなど日本の役割がきわめて重要となっています。しかしその取り組みはかなり遅れています。京都議定書では、温室効果ガスについて1990年比で6%削減する目標があっても、今の時点では逆に6・2%も増やしています。こうなるとこれから12.2%の削減をしなければ目標を達成することはできません。

日本の企業も「総量削減目標は経済統制だ」として真剣に、温室効果ガスの削減に取組んでいません。しかし大口の廃出源は大企業への規制を抜きには全く語れません。 環境NGOの「気候ネットワーク」の調査によると、火力発電、製鉄所、セメントなど、約200程度の大きな事業所が、日本全体の50%以上の二酸化炭素を排出しています。その他の工場も合わせ、全体の3 分の2 以上CO2 が産業・エネルギー転換部門から排出されているとのことです。

家庭部門からの排出は5%程度にすぎないとされています。環境省でも13%程度としていますが、やはり真剣に削減を目指すなら、家庭よりまず企業活動に注視すべきことは言うまでもありません。つまり議業活動の大口排出源への規制を除外して排出削減は実現できません。

●しかし、日本政府は、大企業の「自主的取組み」に任せるだけですから、しっかりした取組みがほとんどできていません。しかも大口排出源の大企業の多くがエネルギー消費(熱と電気)に関する定期報告の情報を一般に開示もしていないとのことです。これでは大企業の取り組み姿勢を問題にするしかありません。

下の円グラフは、気候ネットワークのものです。




自然エネルギーへ転換するエネルギー対策も問われています。エネルギー対策は温暖化対策のポイントです。太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの普及が世界で本格的な流れになっています。日本は、太陽光発電などの優れた技術があるにもかかわらず、日本政府の方針は導入促進のための家庭への補助金を廃止してしまうなど、相変わらず化石燃料偏重で、自然エネルギー重視に転換する明確な政策プランがありません。

※ 自治体でも独自の自然エネルギー重視の政策はほとんどありません。政府に言われてはじめた太陽光発電促進の補助金も政府が廃止すると廃止する自治体もあり、甲府市でも外部評価委員会は廃止を求めるなどでした。                         ※ 私は委員会などで「太陽光発電促進の事業は、いまだに定着していない。今後とも奨励的な意味の補助金は維持すべき」と繰り返し主張しました。結果的には補助金制度は一世帯3万円に減額されたものの、それでも維持されたことによって甲府市は「未来社会に向かって恥をかかなくてすんだ」と思っています。

 今年からの私の主張は、太陽光発電の補助金制度を改め、低金利で長期の融資制度に切り替えることを要請しています。この方が250万もする太陽光発電費用であっても無理なく設置できる市民が多くなると考えたからです。甲府市は、日照条件が良く太陽光発電に適している全国有数の都市だそうです。環境都市としてアピールするためにも太陽光発電を積極的に推進すべきだと考えています。

二酸化炭素の排出量では世界第4位である日本の政府は国際的義務をはたさねばなりません。「2050年までに80%削減」の長期目標を出すにとどまらず、それにむけてまず京都議定書で約束した「2012年までに90年比6%削減」という、京都議定書での約束を実質的に達成するとともに、「2020年までに30%削減」を明確にした中期目標を実行することです。                                  ●それには、最大の排出源である大企業への実質的・義務的な削減が急務です。普通の市民と異なり減税ばかりされている大企業には、大口の二酸化炭素排出に対して税金を取ることなども考えるべきです。

市民の地球温暖化防止の取り組みは大企業の排出削減を促すためにも必要

●日本の政府やマスコミが主張している、地球温暖化防止対策は、根本の大企業の取り組む姿勢の問題をあいまいにして、まったく大口排出ではない家庭部門や学校での節電の取り組みが中心です。

●企業内では直接の大量にCO2を発生させる生産活動ではなく、オフィスのエレバーター使用の規制や廊下の照明の削減です。良くてエコドライブかクールビズの取り組みです。どれも安上がりで場合によっては経費のコストダウンにもなります。結局のところ、その温暖化防止の負担と努力は市民と末端の社員だけに限られているようです。

※ 安全衛生法令では、労働者の安全衛生上の健康と安全を守るために、室内の照度基準が規定されていますが、現在の取り組みは、やみ雲に照明を暗くするだけですから法令違反がほとんどです。またオフィスでは照明器具の2本ある蛍光灯を一本抜き取ることも流行ですが、これも決められた建築照明設計を無理に変えるものであるだけでなく、照明器具自体をいため、電力も余分にかかると照明学会では指摘しています。したがってこれは正しくない対策といえます。

●しかし、どのように小さなり取組みであっても間違っていなければ実行し積み重ねることが大切です。そして市民の努力を、怠けている大口排出の大企業にたいする取り組みを促進させる社会的な圧力運動とすべきです

●人工衛星から地球を見ると夜間であっても日本列島は夜間照明ではっきりわかるそうです。それだけ世界でも飛びぬけて電力を消費しているのでしょう。街を見ても光公害まで発生するほどの過剰なライトアップ、自動販売機の増加、一般家庭の11倍の二酸化炭素を排出するといわれている24時間営業のコンビニエンスストア、オフィスでは稼動したままのパソコンなどの大量な事務機器、その働き方は、残業・深夜業や休日出勤が当然とされる24時間の仕事など、身近に考えるべきことはいっぱいです。

●これらの取り組みも、さきほどのべました大企業の大口排出の削減を社会的に促すためにも行うべきことであって、市民がさまざまに取組んでも大企業の大口排出の削減はそのままでは、市民の努力を踏みにじるだけでなく、総排出量もほとんど変化なしとなってしまいます。

 自動車からの排出削減対策をいかにすすめるべきか

●ところで、自動車からの二酸化炭素排出削減対策が、T.Oさんが提起された「駐車場のない新市役所」の要となると思います。政府関係の資料(「CO2削減アクションプログラム」より)によるとCO2排出量のうち運輸部門は21%、その運輸部門の約9割が自動車です、さらにその自動車のうち乗用車が約6割とされています。この乗用車のうちにも業務用と自家用にわかれます。
 乗用車の排出量は、全体の総排出量から見ると乗用車は10%程度と思われますが、身近なことだけにこの対策は重要です。ちなみに乗用車では2002年までの5年間で排出量が9%も増加したとされています。

 自動車からの排出削減対策にはさまざまな対策と条件作りが必要

 自動車からの排出削減対策と削減への社会的環境作りとして考えるべきことを、個人的な見解ですが以下あげてみました。

@  必要以上の自動車の利用を自粛する

 車に依存する慣習を是正すべきです。私などもそうですが5分も歩けばいいのに、すぐ車を使ってしまいます・・・
 駐車場も目の前にないとダメ。50mも離れていると「遠いなー」となってしまいます。
 友人間のレクなどの車移動でも乗り合わせての移動がなかなかできていない――これらのささやかな自粛は排出総量にはほとんど影響をあたえなくとも、社会的なモラルとかルールなることが大切だと思います。

A アイドリングストップなどのエコドライブをより奨励する

 今のゆとりのない社会、一分一秒をギリギリまで働かせる企業社会のあり方をかえることも重要です。
 特に陸運局などでは長距離バスの
運行計画(時間に間にあわせるには、スピードを上げるしかない)やトラック輸送などの運行計画を正確に指導し、無理のない速度とエコドライブを進めます。

B 交通渋滞を緩和させるための道路交通整備。

 交通渋滞を緩和させるには、特に交差点や踏み切りの改良が必要です。
 政府はこの問題を、すぐ高速道路の建設に結び付けますが、実際は交差点のレーンの改良,すみ切りなどが大切です。高速道路を作る金があるなら、公共交通の再生にまわすべきです。

C 低公害車の大衆車化と活用 

 現在は、電気自動車
メタノール自動車圧縮天然ガス (CNG) 自動車及びハイブリッド自動車 (HV) の4車種以外にも開発を進めます。普通の市民が購入できるように、低コスト化・大衆車化を目指すことです。
 特に、行政の公用車は率先して活用し地域社会のお手本となるべきです。

※ 意外と甲府市役所でも低公害車を入れていました。以下は2008年6月1日現在の資料です。

  甲府市庁用自動車における低公害車の保有状況


購入車両 リース車両
   
全車両
136台  96
232
低公害車
16台  92台
108台 うち本庁舎40台
配置率
11.8%  96.9%
46.6%

ハイブリット
CNG
ガソリン
LPG
軽油車
1台   4台
5台  うち本庁舎3台
6台   2台
8台  うち本庁舎6台
8台  57台
65台  うち本庁舎31台
        8台
8台
1台  21台
22台

 2輪車 137台(うち電動スクーター3台)

 しかし、私は、当面この低公害車の大衆車化もすすめる必要性があると思いますが、原則は公共交通体系の再生だと考えます。

D食料の自給率を高め、地産地消の推進です

 長距離輸送をしないためには、現在40%しかない食料の自給率を高めことです。そして地産地消を政策的に推進することです。
 例えば、学校給食では特に身近な地域の食材を使い「地産地消」をすすめます。また、学校に給食を車で配送する「給食センター方式」ではなく自校給食方式にすべきです。

E 極めて排気量の多い乗用車を税制上で抑制する

 高額所得者用の排気量多い高級乗用車や高級スポーツカーは、地球と地球温暖化防止の取り組みに迷惑をかけているのですから、課徴金的な意味で増税を行います。その増収分は、温暖化防止の取り組みの費用ともします。
 そのことよって「本来こんなクルマにのるのはおかしいよな!?」といった社会的雰囲気づくりに向け排気量の多い車の抑制をはかります。

F 乗用車に依存しなければならない働き方の改善

 都市部でも最終電車に間にあわないような残業や深夜業が当然とされる働き方の改善が必要です。派遣労働法改正も含めて労働基準法の改正と強化が必要です。
 さらには遠隔地の職場配転、長距離通勤、広域の営業活動も社会的に抑制されるべきです。
 車での通勤の抑制―個々の自家用車ではなく、会社通勤バスの活用など企業は時間短縮と福利厚生に努力すべきです。

G 身近な地域社会を優先する

a)昼間人口と夜間人口の格差是正
 「職住分離」の社会と雇用構造をみなす必要があります。
 また、同じ地域で働き、住み、育てる。地域の学校に病院に施設にいけるようにして人口の大都市集中化を是正させることです。
 特に、甲府市では2005年の国勢調査によると、意外と昼間における出入りが大きく通勤も通学もなるべく同じ地域内が望ましいことは言うまでもありません。
 居住の自由がありますが、甲府市の職員の方にもできるだけ甲府市に住んでもらうことです。
        甲府市の昼間人口

夜間人口(常住人口)  194.163
昼間人口        225.175
流入人口             55.690
流出人口         24.678
増 減          31.012
昼間人口の割合       116%

            『甲府市統計書』より

b)地域の小中学校・高校を大切に
 クールバスを出しても小中学校の統廃合が行われています。また高校の統廃合や全県一区の高校受験もが行われていますが、私は好ましくないと思います。
 「身近な地域に学校がある「子どもが歩いていけるところに学校がある」ことは現在の不審者対策も含めて大切です。

c)医療施設はできるだけ身近に
 医療構造改革にみられるブロック拠点病院化はひどいプランです
 総務省の方針である「公立病院改革」などの地域の公立病院・病床の削減ではなく、地域の公立病院・病床・病院バスを維持し、遠隔地の通院をしなくて済むようにすることです。

d)地域福祉圏の確立
 介護や障害者自立支援のケアホーム・クループホームやデイサービス・ショートステイなどの施設を送迎距離が短くてすむように身近な地域内に施設を置きます。
 福祉バスや乗り合わせ優先の福祉タクシー券などの活用します

H 公共交通体系を再生させ、公共交通の利便性を政策的に高める

 鉄道・路面電車・路線バスなどの再生をはかります。貨物トラックも鉄道貨物輸送体系に組み込みます。
 甲府市では行政で行っている公共バス路線維持運行費補助事業・代替バス委託事業を赤字バス路線廃止させないためのつなぎとしてではなく、公共交通バスの再生するために積極的に見直しをはからねばなりません。

 駐車場削減は、クルマ社会から抜け出す社会環境整備による結果から

●これらの、総合的な対策から乗用車利用と乗用車そのものを無理なく削減させていくことを目指すべきです。その結果として駐車場の削減があると思われます。そしてその結果は、いきなり現れるものではありませんから、駐車場の削減は段階的に徐々に進めるべきと考えます。

●現実には、車に乗りたくて乗っている人ばかりではありません。「生活も苦しいのに車の維持費もガソリン代も大変」と感じている人もかなりいると思われます。
 それなのにどうして車か? 車がないと生活や仕事ができない現実の社会環境・社会的条件があるからです。
 このクルマ優先の社会環境は個人の自由な選択ではなく、基本的には国が40年以上もかけて作られたクルマ優先社会の政策によるものです。

●新全国総合開発計画(1972年)などによっていくつもの総合計画で「モータリーゼーション」が煽られ高速道路網の建設が叫ばれてきました。
 このクルマ優先の政策は、国鉄分割民営化(1987年)で弾みがつきました。それまでのローカル線の廃止をはじめ鉄道旅客輸送・鉄道貨物輸送体系が分割民営化によって解体しました。
 人と物の移動(通勤・通学も)は個々のトラック、乗用車をなどのクルマが基本とされ、多くの地域では生活と仕事にクルマがなくてはやっていけなくされました。日本の大企業である自動車産業・道路土木業は、これによって大きな利益をえても、普通の多くの市民はクルマ社会になっても生活と文化は改善されたとはなりません。

●私は、駐車場をなくすことは、社会的な条件が整備された結果として、徐々にできることだと思います。その意味で小田切さんのいくつかのご提案も条件整備の一つ一つであると考え賛同いたします。
 かし、結果として実施すべき駐車場の廃止を、社会的な条件整備のない中で、まず先行実施したのならさまざまな弊害を生む原因にもなるものであると思います。新庁舎駐車場を活用する市民の自家用乗用車は、大企業の大口排出と異なり喫緊の地球温暖化防止の課題というものでもありません。それだけに一定の時間をかけて徐々に駐車場の廃止を方針とすべきです。

 社会的な条件整備がない中で市役所駐車場を先行して廃止してしまうと
 現状で、先行して駐車場を廃止してしまうとさまざまな問題点・弊害が生じると想定されます。

@ 市役所に駐車場がないと市民は民間の駐車場利用になってしまう

 市役所に駐車場がなければ、窓口に来る市民は、民間の有料駐車場を泣く泣く使うしかありません。こうなれば、実質的な公共料金の値上げとなってしまい、さらに市民の負担を重くすることになってしまいます。

A 市役所の駐車場が狭いとCO2をより発生させてしまう

 下の表は、市の駐車場利用台数調査から、利用回転数を出したものです。

      
  2007年度の本庁舎駐車場利用台数(平日のみ)


駐車台数
1日平均
利用回転台数

4
5月
6
7
8
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月

22.346
18.631
22.476
22.283
20.443
16.298
19.770
17.473
17.480
17.486
20.082
21.808

1.117
887
1.070
1.061
889
05
899
832
874
920
1.004
1.090

11.0
8.7
10.5
10.4
8.2
8.9
8.8
8.2
8.6
9.0
9.8
10.7
年間合計
236.576
962
9.3

 平日の1年間で23万6.576台にもなり、1日平均は962台です。市民来庁舎者用の駐車場は102台ですから、ここから利用回転台数を計算すると単純平均で1つの駐車場に1日9.3台の車が利用していることになります。これは、少ない数ではありません。
 
駐車場が少なく
駐車場待ちするクルマが多いと交通渋滞と同じとなり、かえって排気ガス量を増やしてしまいます。

B 障害者の増加によって障害者用の駐車場はさらに多くしなければなりません

 甲府市民でも 身体障害者手帳を持つ方は年々増加して現在甲府市では1万人以上もいます。そのうち肢体不自由の方は50%をこえてきています。伸び率も毎年高くなり20年前と比べると1.75倍にもなっています。

 甲府市の身体障害者手帳交付状況の推移


身体障害者総数
肢体不自由18歳以上
伸び率
1987年度
1992年度
1997年度
2002年度
2007年度
5.259
6.551
7.682
8.227
10.239
2.964
3.642
4.220
4.325
5.177
100%
123%
142%
146%
175%
※伸び率は87年度を100とした肢体不自由者の比率「甲府市統計書」より作成

 障害者用の駐車場は誰でも確保すべきとしますが、実際はどこでも確保すべき駐車場の数が足りません。甲府市の本庁舎ではわずかに障害者用の駐車場は4台しかありません。しかも決められたスペース(ハートビル法「高齢者・身体障害者などが円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」では幅3.5メートル以上とされています)が守れていません。
 したがって、新庁舎の障害者用駐車場はもっと多くし、ゆとりあるスペースにしていかなければなりません。

C 障害者用の駐車場だけだと混乱を招きかねない

 障害者用の駐車場は、どこでも健常者からも使われ障害者が迷惑しているケースがあます。私も4年ほど前に甲府市の施設を自分で調査しましたが、施設としてハートビル法が守られていないばかりか、わずかな障害者用の駐車場に、障害者用のマークが掲示されていないクルマや場合によっては業者のクルマすら駐車されていることがありました。
 駐車台数が多くゆとりのある施設ではこのようなことはありませんでしたが、しかし駐車場が狭く、管理人がいない施設では障害者用の駐車場が不当に使用されることが多いようです。
 最近はもっと悪質な事例があるようです。障害者から報告があったのですが、障害者が運転をする時、障害者マーク(次のページにマークと説明資料を掲載しています)が必要ですが、この障害者マークを購入して障害者駐車場を使う悪質な人もいるようです。
 障害者マークは、交通規則定められている重要なマークですが、 ケーヨーホーム、くろがねや、イエロハット、Jマート、さらには通信販売でも簡単に手に入ってしまいます。 それだけに今後さらに便利だからと健常者が悪用することが考えられます。


聴覚障害者標識
(聴覚障害者マーク)

身体障害者標識
(身体障害者マーク)

様 式

聴覚障害者マーク

身体障害者マーク

表示対象者

 普通自動車を運転することができる免許を受けた人で、政令で定める程度の聴覚障害のあることを理由に当該免許に条件を付されている人です。

 普通自動車を運転することができる免許を受けた人で、肢体不自由であることを理由に当該免許に条件を付されている人です。

表示義務

 表示しない場合、道路交通法違反になります。

反 則 金

 4,000円

行政処分点数

 1点

 表示するように努めてください(罰則はありません。)。

表示対象
自動車及び
表示位置


表示対象自動車


普通自動車(軽自動車も含まれます。)です。


表示位置


車体の前面と後面の両方に、地上0.4メートル以上1.2メートル以下の見やすい位置に表示してください。


購入方法

 運転免許試験場内の売店で販売しています(聴覚障害者標識は6月5日から販売)。

他の運転者
の遵守事項

 上記の表示対象者がそれぞれ対応する標識(マーク)を表示して普通自動車を運転しているときは、危険防止のためやむを得ない場合を除き、進行している当該車両へ「側方に幅寄せ」や「割込み」をした場合には、道路交通法違反になります。


反則金


大型車(中型車を含む)

7,000円


普通車・二輪車

6,000円


小型特殊

5,000円


行政処分点数


1点


                       警視庁ホームページより

 もし一般の駐車場がなく障害者用の駐車場だけがあるとするなら、健常者であっても障害者用の駐車場を使う悪質な人が必ず現れ、そのたびに障害者が迷惑する事態となってしまうでしょう。


※ところでハートビル法による駐車場の規定

 ・幅 350cm以上
 ・車椅子使用者用の表示をする
 ・経路ができるだけ短くする(施設の入り口付近)
 ・全駐車場の台数が200以下の場合は、駐車台数に1/50の数以上
  200を超える場合は、駐車台数に1/100の数に2を加えた数以上

 としているだけです。つまり、法的には障害者用の駐車台数は極めて少なく、しかも一般の駐車場をなくしてしまえば、障害者用の駐車場もなくてすむことにもなってしまいます。やはり、障害者を守るためにも一般の駐車場を確保しなければなりません。

D 「クルマで来るしかない人」も少なくない

 障害者だけでなく、「クルマで来るしかない人」も少なくありません。妊婦、乳幼児を抱える方、足が弱い高齢者の方、ケガで松葉杖の方、膝や腰を痛めて歩きづらい方 足が弱い高齢者の方、高齢者の付き添いできた方、これらの歩行弱者のためにも庁舎には駐車場は必要です。いきなり駐車場がないとなると歩行弱者をいじめてしまうことにもなってしまいます。
 特にこれからは高齢者社会ですから「歩いてはいけないが、車なら何とかいける」という高齢者も、同じく高齢者の付き添いに来られる方も増えていきます。また、運転レベルの低い方も多く、障害者に限らず個々の駐車場のスペース・幅は広く取る必要もあります。

E  公用車―業務用の自動車はやはりかかせない

 本庁舎では公用車の駐車場は61台もあります。それでも足りないとされ新庁舎では72台分の駐車場が必要としています。もし新庁舎で公用車用の駐車場がないとするなら、別の場所に駐車場を確保するしかありません。これでは新庁舎に駐車場をおかないだけで、まったく結果は同じことになりますし、また、業務上の効率も悪くなります。
 当面は、低公害車の導入で対応するしかないと思います。

F  防災時の緊急車両の駐車場は広く確保すべき

 新庁舎は防災上の拠点とするなら、災害時には 消防車・特殊車両・防火広報車・緊急輸送車両などの駐車場は必要となります。もちろん芝生広場でもいいのですが、とにかくいつでもつかえる平面は必要です。

 ※駐車場の防災上の機能を高めるには常緑樹で区切る
 甲府市の新庁舎の場合、地盤の状態がよく、かえって地下駐車場などの建設は無駄な費用がかかるとされています。その分、地上の駐車場となると考えられます。
 駐車場には、火災に強くCO2を吸収する常緑樹を多くし、常緑樹の生垣・区切りを多くし 芝生広場などを常緑樹で囲っていくことです。
 今後 クルマ社会からの脱却のための社会的条件整備に伴い駐車場の利用台数が減っていくにしたがってさらに常緑樹と芝を多くしていくことです。

 ※甲府市の「生垣設置奨励助成」事業の活用を
 甲府市でも緑化推進事業を行いブロック塀から生垣設置に帰る家庭への「生垣設置奨励助成」や「事業所緑化」、太い木へ「保存樹木助成」を行っていますが、いずれも宣伝が足りないのか助成件数が低調です。私は、防災上からもCO2の吸収のためにもブロック塀から生垣設置が必要と考えています。

甲府市の緑化推進事業の実績の推移


97年度
03年度
04年度
05年度
06年度
07年度
保存樹木助成
14
14
15
13件
10件
13件

生垣設置奨励助成

9件
10件
13件
14件
7件
5件
事業所緑化助成
4件
8
1
2
4件
4件






G 本庁舎でないとできない相談・苦情・意見の多さ

●本庁舎に出かけなくても市民センターなどの出先の窓口で用事が済むように、出先の窓口の充実は必要です。しかし、出先の窓口では、一定の専門的な知識がないと実質的な相談などの丁寧な対応ができず、また、分納や支払猶予などの判断と責任も出先にはありません。したがって本庁でしか対応できないこともかなりあります。

●しかもこの間、「小泉改革」移行、大きな法改正が相次ぎ市民負担もさまざまに重くなってきています。それだけ本庁の窓口は対へ混雑することになります。

 例えば、市民税の増税期・国保保険料の引き上げ期・後期高齢者医療制度の新設期などは、1つの課の窓口だけにも1日30〜70件、多い時は、100件近くもの相談・苦情が寄せられます。これらは全て本庁でしか対応できないのです。後期高齢者医療制度では高齢者に付き添う方も多く、それだけ駐車場も混雑するのです。


  市民の問い合わせ状態を調べてみました

1)2007年6月の市民税(税源移譲と定率減税廃止時)では
   窓口111件(6月4日から15日まで)÷10日間=平均11.1件


2)2007年8月甲府市国保保険料の値上げでは               窓口498件(8月16日から31日まで)÷12日間=平均41.5件

3)2008年3月から4月後期高齢者医療制度では
   窓口847件(3月21日から4月15日)÷18日間=平均47.1件


●したがって、クルマ社会から脱却する社会的な条件整備ができるまで新庁舎の駐車場は今までより広く確保するしかありません。駐車場が狭いと、さまざまな「不正利用」も生じやすく、「不正利用防止」を理由に庁舎駐車場の有料化も少なくない数の自治体でおこなっています。

 クルマ社会の弊害が明らかに、
  いまこそクルマ社会から脱却する社会的条件整備を

●今こそ、クルマ社会の弊害が明らかとなってきました。クルマ社会であるにもかかわらず、経済的にクルマを維持できなくなってきている市民が多くなっていることです。
 多くの市民の所得は、低下する一方で、さまざまな負担はますます重くなってきています。高負担の公共料金・保険料・年金そして増税です。しかも物価高騰、特にガソリンの大幅な値上げです。

 さしもの、自動車産業でも、国内では普通乗用車が売れなくなり、そして軽自動車まで売れなくなりはじめています。市民は「生活のどこかを節約しなければ」という経済的な強制によって、普通自動車を軽自動車に、軽自動車をバイクに、自転車に変えはじめています。

 このことが、必ずしも市民の生活条件を快適にしているわけではありませんから、今こそクルマを必要としない社会環境の条件整備に真剣に取組むべきです。

●特に甲府市では、まず既存の「バス路線維持運行費補助金」事業・「代替バス委託」事業などの取り組みの強化などから、公共交通体系再生の抜本的な政策が問われています。
 これらの、クルマ社会の脱却を進める社会的条件整備を進め、今後、温暖化防止の社会のお手本として新庁舎の広いスペースで設置した駐車場を、徐々に削減し、防災とCO2を吸収する常緑樹と芝生を徐々に増やしていく方針を掲げるべきです。



この問題での私の見解のまとめ

 地球温暖化防止は、大口の大企業のCO2排出総量を削減しなければ実効性がありません。そのため、大口の大企業の排出量削減にむけた社会的な圧力として市民の身近な取り組みも必要です。市民のクルマ使用の抑制は排出総量からみて大きなものではありませんが、喫緊な課題でなくとも身近な取り組みの1つとしての意義があります。
 甲府市の新庁舎にともなう駐車場の廃止は、クルマ社会から脱却するさまざまな社会的な条件整備による結果として徐々にできるものです。その社会的な条件整備がない中で駐車場の廃止だけを先行して実施するとさまざまな弊害を生む原因にもなります。現状では、弊害をさける現実的な対処として新庁舎にともなう駐車場は、障害者用駐車場も含めて今までの駐車場より広く確保しなければなりません。

 現在、クルマ社会の弊害は明らかであり、経済的にクルマをもてない市民も増える傾向があります。いまこそ政策的に公共バスの再生も含めてさまざまな社会的な条件整備を行い、今後、温暖化防止の社会のお手本として広いスペースではじめた新庁舎の駐車場の削減を徐々に具体化し常緑樹と芝による緑化をすすめていく方針を持つべきです

          2008年8月13日
                         甲府市議会議員 山田 厚