2008年12月15日
甲府市議会代表質問


市民負担の減免と相談体制の充実について
                                     山田 厚


@ 市民生活の苦しさと自治体のセーフティネットについて

●今、市民生活は大変です。物価が高騰し、景気が失速し、個人消費が悪化しています。大企業は溜め込んだ利益を確保したまま 大量に労働者を解雇。そして政府は、無策の上に消費税増税すら予定しています。
 甲府市では、今年度に入って
10月までで20社が倒産。物価は、昨年4月と先月を比べると24%も価格が高騰。自殺された方も毎月4名ほどの高いペースで続いています。

●このままでは、ごく平均的な家庭においても、年金や医療の保険料、給食費や保育料、水道料や下水道料、そして市税など、「払いたくても払えない」状態が今までになく強まります。

●収納が厳しくなると、「ビシビシ取立てよう!」「差押さえだ!」としか、考えないのなら、それは自治体の政治ではありません。

 まず冒頭に市長にうかがいます

・市民生活を守る立場にある甲府市長に、このような情勢認識とそれに対する政治姿勢をうかがいます。

●私は、この情勢においては、さまざまな市民相談の充実が必要であり、また市民負担にともなうさまざまな減免制度の活用もセーフティネットとして極めて重要だと考えます。

A 国保における資格証明書と減免などについて

 まず、国保の減免制度についてです。

 保険料負担が極めて重くなっていますが、災害や病気・倒産・リストラなどの事態に対する減免が充分に機能しているとは思えません。その一方で激増しているのは、正規の保険証ではない短期証と資格証明書です。

●資格証明書とは、保険料が払えない家庭から保険証を取り上げ、かわりに「保険証がないという証明」として渡されるものです。
 この資格証明書になると、医療費は患者の全額負担となり、保険証を再発行するにも、それまでの2年間ほどの滞納分が分割であっても請求されます。したがって資格証明書となると、ほとんど正規の保険証への復帰がむつかしくなり、必要な医療にかかれず、病状を重くしてしまいます。

このグラフ@ を見てください。


 甲府市でも介護保険料とこみの国保保険料負担が極めて重くなっています。青い線ですが、4人世帯で所得が250万円の家庭で、6年前と比べると一年間の保険料は12万円も高くなり、46万円です。こうなると、収入自体が低下していますから保険料の滞納が多くなり、短期証や資格証明書が5年前と比べて6倍近くにも激増しています。

 しかし減免件数は、5件から10件のままです。

●甲府市の場合では、2007年度当初で資格証明書が発行された350世帯ものうち、その証明書で医療を受けた人は、1年間でわずか7人。治療も定かではなく亡くなっている方が2人いました。

全国調査では、資格証明書の数は33万世帯にもなり。そのうち保険証がない小中学生は3万3000人にもなっていました。
 厚生労働省は、10月に資格証明書問題で通達を出しました。それによると、資格証明書は「納付相談の機会を確保するため」のものであり、「機械的な運用」を行うなとしました。特に子どものいる世帯には「よりきめ細やかな対応」を求め、医療を受ける必要があるときは、資格証明書ではなく「短期証の発行」を求めています。

●そもそも、この事態を作り出した責任は国にこそありますが、それでも・・・今の現状と比べるとこの通達は改善にもつながります。
 特に子どもさんへの配慮は欠かせません。林間学校や修学旅行、スポーツ少年団、部活動の宿泊などでは、保険証のコピーが必要です。学校の健康診断では虫歯の治療などの結果を学校から求められます。
 したがって子どもさんへの資格証明書は、健康や安全、家庭の問題にとどまらず、「子ども社会」の問題にもなってしまいます。

●これは、基本的人権の問題であり、教育上からも是正すべき社会問題です。児童福祉法の冒頭には、こうあります。
すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」。
国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」。
 児童に対する責任は、保護者にとどまらず、国と自治体にもあることをしっかり確認しなければなりません。

 <質問します>

・資格証明書の抑制に、どのような努力をされていますか?

 特に、子どもさんのいる家庭への配慮はどうなっていますか?

・また子どもさんのいる家庭に対しての「差押さえ」は、今後とも行うべきではない と思いますが、いかがお考えですか?

・なお、「子ども」とは、児童福祉法の「児童」をみても=「18歳に達するまで」としています。当然、配慮すべき対象年齢を高校生までと考えるべきですが、いかが判断されていますか?

・また、減免が十分に活用されていません。今後の周知の徹底や制度的な改善もすべきです。

 例えば、甲府市の減免制度は、保険料全体を減免対象としないで所得割の部分のみです。これでは低所得者にとっては効果がありません。一昨年行った国保年金課の類似都市調査によると、保険料全体を減免対象にしている自治体は、80%以上にもなっていました。甲府市も他市に見ならうべきです。



B 就学援助制度及び保育料・授業料の減免制度について

 小中学生の就学援助制度についてうかがいます。

●この就学援助制度とは、「義務教育は無償」「教育の機会均等」の原則にもとづき、子どもさんが安心して通学できるように、家庭の事情に応じて、学用品や給食費,修学旅行費を公費で補助する制度です。

 この制度は、本来国の事業ですが、小泉改革の悪政によって国からの予算がほとんど切られ、自治体任せにされました。そうなると、自治体の多くは増え続ける就学援助の支出を抑制しようと認定を厳しくし、適用数の削減をはじめました。

甲府市の場合、このグラフA を見ていただきます。


 緑の線ですが、甲府市の勤労者世帯統計の平均月収は6年間で約17万円も減収になっています。当然この間、小中学校の就学援助の生徒さんの割合は伸び続けてきました。赤い線です。
 
しかし2006年度から、逆に減り始めています。これは、国の予算が切られた翌年に甲府の教育委員会が認定の基準を厳しくしたからだと思われます。
 就学援助を本来受けるべき子どもさんが受けられなくなると、「給食費のただ食いはゆるさない!」とか「修学旅行をあきらめさせる!」などという深刻な混乱が生じてきます。

 就学援助における児童扶養手当の問題も検討しておくべきです。

●児童扶養手当は、苦労されながら子どもさんを育てている母子家庭を援助するためのものです。この手当の支給家庭は、就学援助にも適用されます。その数は大変多く、甲府市全体の就学援助の75%が、児童扶養手当の家庭です。
 しかし、児童扶養手当については、支給家庭のほぼ3割から4割近くを支給停止にするという間違った国の方針があり、現在はその支給停止が凍結されている状態です。

●もし、凍結が解除され、児童扶養手当が停止されるとなると、その家庭は、そのまま就学援助も切られるのでしょうか? もちろんこのような悪政は許せません。自治体としてどう対応するのでしょうか?

 保育料の減免制度についてです。

●甲府市の保育料減免制度は、災害や傷病だけでなく倒産や失業による世帯収入の減少に対応したものです。国保保険料などと同じく保育料の金額は前年度収入で決まります。リストラなどで今までの収入がなくなり、最も生活が苦しい時にこそ、この減免は極めて大切です。

●しかし、制度ができても昨年まで減免が1件も適用されず、ようやく今年度になってわずか2件の適用です。今回、私が調べた65の類似都市の調査では、保育料減免の平均は昨年度で38件でした。

 甲府市の減免数は少なすぎます。3500名の子どもを預かっている保育所の先生方にも、この制度を理解していただき、その周知を徹底していただきたい。

 甲府商業高校の授業料などの減免も極めて重要です。

●減免の生徒さんの割合は、今年度は7.5%です。これからは、保護者の失業などによってさらに増加する可能性があります。勉強している生徒さんの未来を守るために、甲府市はしっかり対応する必要があります。
●なお、減免を受けている生徒さんであることは、重要な個人情報であり、特に教育的な配慮が必要です。丁寧な対応を求めます。

 <質問します>

・この生活苦の情勢で、就学援助の子どもさんの割合が減りはじめていること自体が、極めて不可解です。教育委員会が認定で絞りすぎているのでしょうか?

・また、今後、給食費の滞納や修学旅行にいけない子どもさんが多くなる可能性が強くあります。社会の宝であり、甲府市の宝である子どもさんをいかに大切に育てていくのか、その対応をお聞きします。

・もしもの問題ですが、凍結解除による児童扶養手当の支給停止が生じた場合、甲府市は、就学援助をこれによって停止するのか?それとも継続にむけて何らかの対応をするのか? お聞きします。

C 介護保険料などの減免について

甲府市の介護保険料の減免制度についてです。

●風水害・火災・入院・失業・収入などに配慮した保険料の減免があります。今回調べた73の類似都市の中で65の自治体が独自の減免制度がありました。甲府市にも収入に配慮した独自の減免制度もあり、いままでの減免件数も少なくありませんでした。

●しかし、昨年度から減免件数がかなり減っています。例年と比べると23%も減り、今年度はさらに減少する状態が見込まれています。また、条例による災害・失業などの減免もこの間ほとんど適用されていません。
●周知と相談が不充分ではないかと思います。介護保険課の窓口や包括支援センターでの相談はもとより、ヘルパーさんやケアマネさんにもこの制度を理解していただくようにすべきです。

 後期高齢者医療保険の保険料の収納についてです。

●いままでの老人保険制度の下では たとえ家族が滞納し資格証明書であっても、対象の高齢者の方には 保険証が渡されていました。現在甲府市の天引きではない普通徴収の後期高齢者は約7千名ですが、10月段階では、そのうち約千名の方に保険料の督促状が発送されています。

●今後どうするのか? 資格証明書を出さないで済む方法をぜひ検討すべきだと思います。これについて強く要望します。

D 水道料金と下水道使用料の減免制度について

 下水道使用料の減免についてです。

●甲府市の下水道条例には、「公益上その他特別の事由がある」ものは、減免できるとして、規程によって、2004年度の大雨災害の時、床上浸水69件、床下浸水237件が減免の実績となっています。

●しかし、災害はこの年だけではないはずです。他の年はどうなっているのでしょうか。よくみえません。

 水道料金の減免についてです

●甲府市の水道条例には、下水道と同じく「公益上その他特別の事由がある」ものについては…減額または免除することできるとしています。

●しかし、漏水対応以外は、その実績がほとんどわかりません。これはどうしてでしょうか?条例を具体化するには、規則・要綱・規定などの整備が必要ですが、この事由では、丁寧に整備されていないようですが、いかがでしょうか?

 <質問します>

・下水道使用料の減免の実績が、なぜ2004年度だけだったのか? なぜ小規模であっても発生している災害には対応があきらかではないのか?

・また水道料金の減免についてですが、どうしていままで災害における減免が明らかでなかったのか? また今後は、そのための条例以下の対応規定を整備する必要があると思いますが、いかがでしょうか?

E市民税・固定資産税・都市計画税の減免制度について

 市税の減免についてです。

●市税においても地方税法に基づいて、災害・失業・病気などに対応する減免制度があります。甲府市も条例と規則で具体的に定めていますが、しかし私は、その適用が不十分ではないか?と心配しています。

●例えば、市民税の規則にある「失業、疾病など・・・著しく困難であると認められる者」の減免は、5年間でわずか1件の実績です。
 
また、固定資産税・都市計画税の規則にある「生活保護以外の扶助をうけたもので、特に、資力に乏しいと認められる者」の免除については、この5年間全く実績がないのも不思議です。

●私の類似都市調査では、69自治体の昨年度における市民税減免の平均は78件。甲府市は9件です。

 また固定資産税と都市計画税では、45都市の昨年度平均は 471件。甲府市は毎年300件ほどです。いずれも少ないと思います。
 <質問します>

・市税における減免制度の周知広報活動はどのようにおこなっていますか?

・市役所全体の窓口や市民相談のなかで、市税における減免の活用をどのように結び付けていますか?お聞きします。

●減免が充分機能しているとは思えないのです。グラフB を見てください。

 この緑の線は甲府市の勤労者世帯収入が下がっている状態です。5年間で月平均13万5千円も下がっています。
 
青の線は甲府市の世帯統計の平均食料支出です。5年間で月1万8千円ほど支出が少なくなっています。つまり市民は月1万8千円も食生活を切り詰めているのです。

 また、この棒グラフは火災・水害件数です、大規模災害を除いても毎年20件,30件はあります。

●したがって、この間をみても、病気、失業、リストラ、災害などさまざまな減免対象があったはずですが、その実績がみえていません。

●市民が、減免を知らなければ減免の申請はできません。それだけにもっと市民への呼び掛けを積極的に行い、手を差し伸べていただきたい。
 特に、障害者や要介護者の方への働きかけは不可欠です。

●自治体の減免制度とは、滞納を野放しにするということでありません。逆です。困難となった家庭を放置するのではなく、その家庭の状態に触れ、困難をのりこえる対応を、ともに見出していくためのものです。

 はじめの質問に ここで区切りをつけます。