要援護者に対する防災対策の充実について











2008年9月5日      甲府市議会 山田厚


防災対策を特にしっかりしなければならない甲府市

●今、防災の強化を改めて痛感させられています。

 5月にはミャンマーのサイクロンや四川大地震。6月には岩手・宮城内陸地震。夏には、都市型洪水、集中豪雨などの様々な水害が発生しました。身近に停電や電車が長時間ストップする事態も生じました。
●どこでも例外なく防災の強化が問われていますが、特に私たちの甲府市はしっかりすべきです。それは、甲府市が『東海地震防災対策強化地域』にも指定されており、今後30年以内に震度6弱以上の地震がある確率は82.3%とされているからです。これは全国の県庁所在地では静岡市に次ぐ極めて高い確率です。

 また、東海地震は100年から150年周期で発生すると考えられており、前回の安政地震から、すでに154年たっているだけにその切迫性は強まっています。しかも、東海地震以外にも曽根丘陵断層地震など、様々な地震が想定されているのも甲府市です。

●つまり、甲府市は切迫した地震の危険性がきわめて強い地域であり、それだけに防災対策は、最重要課題の一つとして絶えず取組んでいかなければならない自治体といえます。


 障害者などの要援護者への防災上の配慮について

●阪神淡路大震災の経験から防災において、特に重視されているのが「災害時要援護者」への支援です。

 この要援護者とは、「避難するなどに支援を要する人々をいい、一般に、高齢者、障害者、外国人、妊婦、難病者など」が上げられています。

 国も県も要援護者を支援するための「ガイドライン」や「マニュアル」をすでに作成しました。甲府市でも、「支援マニュアル」をつくりました。

 甲府市が対象とする要援護者は絞りすぎ

その要援護者の甲府市の対象者数をお聞きしたところ。障害者では身体障害者手帳1級〜3級など。介護保険では要介護35の方などとかなり絞ったものにしています。特に高齢者では「ふれあいペンダントの利用登録者」のみとなっています。そして対象者の単純合計が、11152名で、重複している人や家族との同居者などを除くと、その半分のおおよそ5千人程になるのではとのことです。

●この5千人も少ない数ではありませんが、問題は、甲府市の対象者を絞りすぎる考え方です。

要援護者を「自分自身では避難行動などが困難な人」として、ひろく想定するなら、甲府市の障害者は1万人、要介護認定者は8000人、1人暮らし高齢者は7300人、虚弱高齢者2000人、また80歳以上の高齢者は12300人、就学前の乳幼児5600人、妊婦1300人、登録外国人5500人、そのほかに難病者もかなりいるはずです。

こうなるとダブっている数を除いても、広く想定すると3万人以上にもなると思われます。

私は、何も要援護者を3万人にしろと言っているのではありません。はじめから対象者を入り口で限定しては、災害時の要援護者を支援することにはならないと危惧しているものです。

 要援護者の登録制度について

●ところで要援護者への安否確認や避難誘導を迅速に行うには、あらかじめ要援護者の所在や状況を把握する必要があります。そのため甲府市でも要援護者からの「登録申請書」で『台帳』を整備するとしています。

 またこの「申請書」には要援護者を支援する近隣の支援員3名の依頼を求めています。これは必要なことですが、「要援護者の申請まかせ」だと実際の登録はなかなか進みません

●それは、特に支援が必要な要援護者ほど、
なかなか近所の方との日常的なつながりがなく、孤立している状態がかなりあるからです。

聴覚障害の方からお話をお聞きしました。

「私は甲府の市民だけど中途難聴者になって30年間、市役所には一度も行っていない 自分のことでもみんな家族に頼んできました。今回、手話通訳の職員が市役所にいることで、要約筆記もしてくれます。中途難聴者の気持ちがわかって 丁寧に対応してくれます。 それから市役所にいけるようになり、私の視野も広がってきました」とのことです。

●特に中途の障害者は出かけるのが辛く、引きこもりになりやすいのは当然です。甲府市がおこなった手話通訳の配置のように、やはり、まず行政の側から手を差し伸べて、要援護者の登録を進めるべきです。

 福祉避難室・福祉避難所について

●甲府市の「マニュアル」にも、避難所に要援護者に配慮したスペースを確保するために『福祉避難室』を設置し、福祉避難室の生活が困難になった場合には、社会福祉施設などの協力を得て設置する『福祉避難所』で対応するとしています。

●この方針も歓迎すべきことですが、この「マニュアル」を「完成品」にしてはなりません。これから具体的な福祉避難室・避難所の訓練も何回も行い、関係者の声をあつめ、改善し、整備しなければなりません。

●また、市の「マニュアル」では「健常者の方や手続きをしていない要援護者が、直接、福祉避難所に避難しても受け入れはできません」と−なっていますが、その手続きがどのようなものかわかりませんが、避難してきた要援護者のうけいれ拒否では一体何のための福祉避難所かわりません。

●また指定した福祉避難所の防災上の安全性もしっかり点検すべきです。

 各施設の耐震性、所在している地域のハザードマップから水害や地震などの安全性も点検し、もし安全性が不充分ならその改善を図るべきです。

 私が調査した範囲では、耐震性が不充分な施設、地盤が地震に弱かったり、急傾斜地であったり、また水害の危険性がある地域の施設も少なくありませんでした。事前にその点検と安全確保を図るべきです。


 要援護者対策の基本はマンパワー

●また要援護者の基本的な支援は、マンパワーにあります。先ほど手話通訳者の配置によって市役所に来ることができた中途聴覚障害の方の話を紹介しましたが、災害時こそ専門的な知識と技術を持つマンパワーが不可欠です。このマンパワーが今の時点でも不足しています。

 例えば、先ほどの手話通訳者は、甲府市内では14人ほどといわれ、中途難聴者には必要な支援である要約筆記者は甲府市内では、4人ぐらいといわれています。

 ぜひ、お膝元の甲府市役所から専門的な知識と技能を持った人を優先して複数正規採用し、育て、防災にも対応していただきたい。

●同じく外国語に堪能な市の職員を複数配置しておくことも大切です。甲府市の登録外国人はすでに5500人をこえています。今後ハザードマップや標示に外国語の使用も必要です。


 防災では特に色覚特性に理解を

ところで「色覚特性」または「色覚異常」ということをご存知でしょうか?

今は死語ですが、昔でいう「色盲」「色弱」という色覚の特性です。

全国では300万人といわれ、甲府市では想定で5000人ほどの「色覚特性」を持つ方がいます。

この本会議場にも5〜6人は「色盲」「色弱」といわれた方がいるはずです。

私もその1人です。

●私の小学校時代ですが、色覚検査が終わると、なぜかクラスのみんなが知っていて、「山田くんこの鉛筆は何色か?」と色鉛筆を何本も示して質問されます。私が「『赤』それは『青』」というと、「なんだ わかるの。じゃあこの色は」などとよくやられたものです。当時は子どもの社会でも『まともな就職もできない」「自動車も運転できない」といった風聞が強いものでした。

今では、社会における規制はほとんどなく、日本だけ行っていた「学校の色覚検査」もいまでは廃止されています。これは当然であり、歓迎すべきことです。

●しかし色覚の特性が異なる人がいることを社会がまったく理解していないと、逆に、色使いでバリアをつくり人為的に「色覚障害」をつくりだしてしまいます。

 文部科学省では2003年に学校での色覚検査を廃止した時だと思いますが、チョークの色使いなどでの指導をしました。

 これはこのときの色使いの指導です。

 この色使いでは、私たちだけでなく誰にでも分かりやすいものになっています。指導は大切だと思います。


●私は、学校を卒業してから自分の色覚特性が多くの人と異なることをほんど意識することはありませんでしたが、最近になってとくに感じたのは甲府市のホームページに掲載されている「地震ハザードマップ」をみたときです。

 この色使いは大変わかりづらいものです。自分の地域もよくわかりません。色彩に関する専門の方とも相談して、自分にとってわかりやすい改善マップ案をつくりました。そして、これの方が誰にでもにもでも分かりやすいものになったといわれました。

●ハザードマップや防災上の標識においてもその特性を理解した色使いでないと、バリアをつくってしまいます。防災に限らず日々の業務にも色づかいへの配慮を強く求めるものです。

 質問します

@幅が狭すぎる要援護者の対象範囲を再検討していただきたい。

A要援護者にたいする登録・支援者の依頼を進めるには、「要援護者の申請任せ」にしない対応をもとめます。

B福祉避難室・福祉避難所の充実を求めます。

 そのためには、高齢者、障害者や支援者を招いての訓練が大切であり、要援護者から行政が学ぶ機会を作るべきです。

 遅れている保育所施設などの耐震強化を

● さて、私たちはいままで甲府市の小中学校及び高校の耐震化を求め続けてきましたが、甲府市もいままでの遅れを取り戻し学校施設の耐震補強工事・改築などの耐震化は、ここにきて力強く進み、2011年度までには計画の前倒しも含めて耐震化率100%の目標が示されています。これは感謝したいと思います。

● しかし残念ながら保育所施設の耐震性については極めて遅れています。私立(わたくしりつ)保育園も甲府市立保育所も保育所施設は全体的にその耐震化は進んでいません。

 お手本となるべき市立の中央保育所でも、耐震化の必要性は明らかになっても、その耐震化の具体的な計画は明らかにされていません。

 早急に耐震化を進めていただきたい。

● また放課後児童クラブ室・児童館の耐震状態の点検・及び必要な改善をしていただくこと要望します。 同じく県の管轄である幼稚園施設についても同様な点検と耐震化を強める指導を県に要請していただきたい。
 質問します
C まもなく甲府市立となる笛南中学校も含めて小中学校の耐震化目標を必ず実行すること改めてここで明言していただきたい。
D 同じく甲府市のすべての保育施設の耐震化を進めていただきたい。そのためにもまず市立保育所の耐震化をもとめます.

今後の防災用の備品・資材の充実について

●さて、今後の防災用の備品・資材についてです。一般の被災者のための乾燥米、カンパン、粉ミルク、毛布、仮設トイレなどの資材や非常食の備蓄を今後さらに充実させるべきです。

●そして、福祉避難室・福祉避難所を設置するわけですから、従来の防災上の備品・資材だけでなく、要援護者用の防災備品・資材を確保しなければなりません。高齢者や障害者などの関係者の声を聞き必要な備品・資材の確保に努めていただきたい。


 孤立集落・限界集落の防災対策を

●ところで、岩手・宮城内陸地震で改めて、土砂崩れなどによって交通や通信が寸断される「孤立集落」対策の強化が求められています。この救援部隊もなかなか入れない孤立集落は、山間部の多い甲府市にもかなりあります。調査では15集落678世帯もあるとされています。 この孤立集落の防災対策が重要です。

●また、中山間地では過疎化高齢化が急速に進行し、集落の機能が衰え消滅に向かう「限界集落」の問題も指摘されています。65歳をこえる方が50%以上という高齢化した限界集落は、甲府市では8集落81世帯あります。準限界集落まで含めると321世帯、754人にもなり、当然、要援護者も多く防災上の対策も必要です。

●しかも、
「孤立集落であり限界集落」でもあるという最も困難な集落も、甲府市にはすくなくありません。ここでは、地域住民が自立した防災活動も困難であり、外部からの救援も困難、そして要援護者も少なくないはずです。−防災上のあらゆる事前の取組みが特に重要と考えるべきです。

質問します

E 防災の非常用食料・備蓄資材の充実と 今後、要援護者用の資材の確保にも努力していただきたい。その計画はお持ちでしょうか?

F とりわけ困難な孤立集落・限界集落にたいする防災上の方針を早急にたて、事前の防災対策を強めるべきです。

G とにかく防災上の予算はしっかり確保し、継続すべきです。しかし、このところの防災費の予算額と決算額をみると頭打ちから抑制傾向にあるのではないか?と危惧しています。

以上 はじめの質問に区切りをつけます。