12月甲府市議会 山田厚代表質問   2007年12月6日


1 市職員の健康とゆとりの確保について

●この数年、私には心配になる数字があります。それは甲府市の職員の皆さんの有所見率です。有所見率とは、定期健康診断にもとづく、要観察・要再検査などの健康不全状態をしめす数字です。この職員有所見率の数字は毎年上がり続けています。つまり市職員の皆さんの健康状態が悪くなっているのです。

 今日の多忙なストレス社会において労働者の健康不全は全国的な傾向です。しかし甲府の市職員の皆さんの有所見率は全国と比べてもかなり高い数字です。
 1991年に12.6%だったものが、
2000年に39.3%となり、2006年には、66.7%にもなっています。 

全国の定期健康診断の有所見率も高くなっていますが、2006度平均は49.1%です。甲府市はそれより18%も高い状態です。それもここ5−6年ほどでかなり健康状態が悪くなってきていることがわかります。

●このことは有所見率だけでなくこの5―6年の傷病休暇や傷病休職の増加傾向にも感じられます。またメンタルヘルス不全状態も多くなっています。2007年度現在では、傷病休暇と傷病休職の約40%にメンタルヘルス系の不全が占めています。

●この心身の健康状態不全傾向の原因はどこにあるのでしょうか?

簡単に、「酒だ、たばこだ、生活習慣病だ、メタボリックだ」「その人の自己管理ができていないから」というまえに、私は自治体職場のこの間の多忙な状態を振り返る必要があると思います。
 私は多忙化の背景要因としては、まず小泉内閣当時から激しくなった悪い政治の流れがあると思います。この数年間で、どれだけ多くの法改正が行われ、どれだけ多くの制度上の改変が慌ただしく求められてきたでしょうか。また、どれだけ多くの国の補助金や交付金が減額・廃止されてきたでしょうか。

このことは、市民にとっては生活苦と格差化が進むと共に、自治体職場にとっては財政難の一方で業務量の増大となりました。

また、普通の市民にとっては深刻な暮らしに追い打ちをかけるように、行政による増税、保険料の値上げ、公共料金の値上げ、社会保障の後退が相次ぎました。当然、市民には行政に対する不信や不満が強まっていきます。もちろんこれは自治体というより国の政策によるものがほとんどですが、市民にとって行政とは、直接接する市役所であり、市の職員です。市民の不信や不満は、届かない国家の官僚にむけられるのではなく、市の職員にキツクむけられることが多くなります。庁舎の一階の窓口でもいままでになく、声をあらげられる市民の方も多くなっていると思います。

こういったことも、職員のストレスをため心身の疲労を増していることは言うまでもないと思います。 

●職員管理関係の資料を検討しました

 ・年休の消化率もこの5―6年はよくありません。このところ50%以下の消化率です。

 ・職員の定年退職より自己都合退職が増えています。2006年度は109名の退職者数のうち69名が自己都合退職でした。この内の約60%は医療職ですが、定年退職者より自己都合退職者が多い状態は健全ではありません。健康で安心して働き続けられようにすべきです。

 ・市町村合併があったこともありますが、この間3人に1人以上という人事異動数も多いと思われます。抜本的な法改正や制度の見直しが頻繁に行われているときには、職員の中に仕事をよく知る専門家やベテランを作るべきで、頻繁な異動は業務量を多くするだけでなく、仕事についていけない、分からないストレス過重の職員にしてしまいかねません。


●全国の都市の比較においても、甲府市の総額人件費は決して高いものではありません。市民のためにいい仕事をするためにも 職員の皆さんの心身が健康でなければなりません。そのためにも職場の環境の改善、人のゆとりが必要です。

質問いたします。

@この高い有所見率や傷病休職者の増加など、職員の皆さんの心身の健康不全傾向をどのように考えておられますか。その主な原因と対策についてお聞きします。

A特に対策として安全衛生上の研修や法令を遵守した職場環境の改善など、どのように努力され、また努力されていくつもりでしょうか

B今後、ゆとりある健康的な職場にむけて、年休が取りやすい職場づくりなど、人員の確保も含めてどのように検討されているでしょうか。お聞きします

2 非正規労働者の待遇改善について

●今、非正規労働者は政府調査によると全国で1726万人以上、年収200万円以下の労働者は1023万人にもなっています。「ワーキングプア」という言葉が定着するほどの厳しい社会状態が明らかとなっています。 その一方で、大企業は空前の利潤を上げています。5年間ほどの期間で年収2000万円をこえる「給与所得者」が4万5000人も増加しているそうです。とんでもない社会がつくられています。これでは社会的な貧困と格差が進むわけです。

●このままでいいわけがありません。非正規労働者の待遇改善をおこなう社会的な気運もいままでになく高まってきました。

@ 今年の5月にパート労働法が改正されました。この改正はかなり不十分です。それでもパート労働者に、賃金・教育訓練、福利厚生など差別的取り扱いではなく均等扱いをもとめ、部分的であっても正規労働者への転換推進も義務化されました。自治体はパート労働法の適用外職場ですが、その法の趣旨は尊重すべきことはいうまでもありません。


A 8月に中央最低賃金審議会が答申を出しました。正規と非正規の格差是正として全国平均で時給は14円引き上げるとしました。ここ数年と比較するとささやかではあっても「大幅なひきあげ」となっています。

10月に山梨県の最低賃金は時給665円 となりました。これも前年度と比べると10円の引き上げで、また前々年度と比較すると14円の引き上げであり、近年では、ささやかな「大幅な引き上げ」がはじまったといえます。

B また10月に 労働組合のセンターである連合は、定期大会で「非正規労働者の現状に対する感度が鈍いと批判されている。これからは全力を尽くす」として非正規の待遇改善重視の方針を示しました。「非正規労働センター」も新設しました。春闘では「非正規の待遇改善」を目標に掲げるとしています。

C 11月には、改正最低賃金法が成立しました。この改正も極めて不十分でありますが、それでも生活保護水準以下の収入しか得られないワーキングプア層の解消が目指され、罰則強化や 「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むこと」との言葉も加わったことも含めて、最低賃金の大幅な引き上げが期待されています。

D また、同じく11月には自治体の非正規職員にとって東京高等裁判所の大変意義深い判決がなされました。それは中野区立保育園の非常勤保育士の解雇無効と慰謝料をもとめる裁判ですが、判決は「(中野区は)解雇回避の努力を怠り『任期切れで縁が切れるから放置すればよい』との認識だった」と厳しく批判し、解雇無効としないもまでも「違法性が強い」として中野区に賠償額750万円を支払うことを命じたのです。

 この判決で特に注目すべきことは、自治体の非常勤職員の契約更新が民間の雇用契約よりも不利なのは不合理とし、「実情に即した法整備が必要」と見直しをせまったことです。

 ここにきて、生活苦と格差化を許さないために、困難な非正規労働者の待遇改善にむけた社会的な動きが、ようやくはじまったといえます。

 ●この動きを地域で具体化するためにも甲府市は市内で働く非正規労働者に心を配ることは当然です。甲府市は、昨年はじめて権利ガイドパンフである『はたらく若者のサポートガイド』を発行し、多くの関係者から歓迎されています。労働相談をはじめ今後ともぜひ取り組みを強めていただきたい。


3 甲府市の非正規職員の待遇改善も課題です

さて、お膝元の甲府市役所ではたらく臨時・嘱託の非正規職員さんの状態はどうなっているのでしょうか? 私は改善すべき課題がかなりあると思います。

 甲府市の非正規職員さんの19年度賃金の現状は
 
嘱託図書司書さんの月給は144.400円
 嘱託給食調理員さんの月給は133.200円
 臨時看護師さんの日給は8500円、
 臨時保育士さんの日給は6900円、
 臨時事務職さんの日給は6300円、
 −これらは随分少ない金額だと思います。

●しかも、8年前から甲府市の非正規職員さんの賃金が下がりはじめています。例えば、嘱託事務職さんの賃金は、2007年度は年額172万円程ですが、2001年度と比べるとこれは年額41.400円も下がっています。
●1日8時間働く臨時保育士さんの場合、1999年度までの日給は7900円でした。それが2007年度では6900円となり8年前と比べ日給で1000円も引き下げられています。これは年額では25万円以上もの賃下げになっています。これでは「官製ワーキングプア」を作っているようなものではないでしょうか。
私は、このたびご協力を頂いて81の自治体で臨時保育士さんの待遇調査」を行いました。
 臨時保育士さんの日給を他都市と比較しました。甲府市の日給6900円とは、42自治体で下から7番目の低さでした。県内の5つの市の内では、残念ながら甲府市が最も低い日給で、甲府をのぞく市の平均日給は7325円でした。時給、月給も含めると80自治体のうちで、甲府市はほぼ下から18番目に低い金額でした。大幅な賃金の引き上げが必要だと思います。

●調査で明らかになった改善課題もありました。
 甲府市は公的な責任での
健康診断がなされていません。県内11の市で健康診断がなされていないのは甲府市だけです。
 夏季休暇もありません。県内11の市で、ないのは甲斐市と甲府市だけです。県内の有給の夏休みは平均3日以上有りました。その他、「教育訓練 研究制度」の均等扱いもほぼ半数の自治体ではじめています。 また「産前産後休暇」も36%の自治体が制度化していました。

臨時の保育士さんからお話をうかがいました。

「お給料が低い、休みも取りづらいです。忌(き)引き休暇や病気休暇があることも知らない臨時さんも多いのでは」

「半年の任用期間の繰り返しで、いつまで勤められるのか、先がわからないので不安です」

「子どもに対しては同じ仕事で保護者からしてみれば同じ先生ですから、責任は『臨時だから』と軽くはなりません」

「つらいのは年2回の雇用の中断期間があることです。そのたびに健康保険証を返し新しい健康保険証をもらうことになります。それで保険証がない期間が、一年間の内約3ヶ月間近くにもなってしまいます」

調査だけではわからない、非正規さんの悩みや不安がたくさんあると思います。また、非正規さんの困難さは、同じ職場で働く正規さんにも連動して職場全体を苦しいものにしていきます。ぜひ、甲府市はお膝もとの非正規職員さんの待遇改善に力を入れていただきたい。

以下 質問させていただきます

@ 新年度より臨時・嘱託の非正規職員さんの給与をぜひとも大幅に引き上げる必要があります

A また非正規の皆さんの健康診断を、事業主である甲府市の責任でぜひ実施していただきたい。

B 均等な待遇改善にむけて、一歩ずつ歩むことが大切です。業務上の教育訓練・安全衛生の研修、被服の支給、夏休み休暇、産前産後休暇の制度化、そして「勤務条件の明示と周知」の徹底などです。
特に法令で明らかになっていることは、すぐにも改善すべきです。
当局の見解をお聞きします。


4 最後に これは要望ですが

●今回、新年度の一年間限定で、常勤特別職給料と一般管理職手当が一律減額されます。これは、市民の皆さんに、財政上の難しさがある中で『都市計画税率』などの理解を求めたい議案を出す時にあたっての、市長さんをはじめトップの方々の市民に対する真剣な配慮だと思います。

しかし真剣であってもこの配慮は、私はおかしいと思うものです。本来このような一斉のトップと管理職の、給料と手当のカットとは「市民の信頼を大きく損ねた不祥事」また「財政破綻をしりながら放置しそして現実に破綻を招いたとき」など、 これらのよほどの理由がない限り、期間限定のカットはすべきことではありません。かえって市民にいらざる誤解や不信、不安を与えることとなります。

●私は、室長さんや課長さんなどの管理職手当は、1円の残業代も支払われないことの代償とも言えるものだと思います。

多忙な職場で、管理職手当も削られてしまっては、職場に夢や、やる気がもてなくなります。「課長にはなりたくない」と思う職員さんも多くなってしまうのではないでしょうか。

また、出される議案などによって管理職の給料が減額されるのなら、職員の皆さんも「いつでも給料が削減されかねない」とびくびくして働くことになってしまいます。

●職場に夢がもて、健康的であることこそが、いい仕事のできる職場であり、市民にとって安心できる、たよりになる市役所です。支出の削減は、高額になっている地方債の金利削減やIT関連の委託料の削減に向けるべきです。

ぜひ、トップの方や課長さんの期間限定の給料または手当のカットは、今回限りにしていただきたいことを、要望いたします。
      以上