ROAD TO BLUES Memphis
安宿探しに半日以上も重い荷物をしょいながら歩いていた二日目。やっと手に入れた情報で一泊$15の宿を探しているうちにいつのまにかフリーウェイを歩いていた、何てこともあった。雨も降ってきたし、なんとか中心地まで徒歩で30分くらいのモーテルを見つけ、持っていたクーポン券で値段交渉の末、$28で決定した。中心地は安い宿で$50はする。あると思っていた格安の宿は、どうにもこうにもない。どうやらその手の宿は、語学留学とかワーホリなんかの制度と設備がある国や都市に多いと思う。
宿は確保したので、毎晩のようにBeal st(ビールストリート)へ行ったんだな。時季外れなせいもあってか、そこは人通りもまばらなすっかり寂れた観光都市であった。地元の情報誌で郊外のライブもチェックしたけど、とりたててなかったので、ナイトライフはBeal stで過ごすことに決めたんだ。なんてったって、B.B.KINGのブルースクラブに行きたかったし、歴史的なそのストリートをうろつきたかった。
いくつものブルースクラブが軒を連ねるBeal st、今後しばらくはビッグなミュージシャンは来ないことがわかり、やや残念だったけど、地元で有名なミュージシャンも出演するってんで、ライブをはしごしては聞きにいったんだ。
ある晩、B.B.KINGブルースクラブで、B.B.KING All Starsと、ゲストのWalter"wolfman"Washingtonのライブで、BUDLIGHTを飲みながらそのショーを見ていると、カウンターの僕のとなりでサラダを食べていた細くてキュートな(とても美人だった)黒人の女の人が僕にこう言ってきた、「Do you wanna dance?」と。僕は、迷ったんだ。というのも、New Orleansでちょっとした店に行ったとき、この手の言葉は、いわゆるHしない?ということだったからなんだ。結局僕は断ってしまった。今となっては、単純に私と踊らない?(踊るときは、たいてい二人一組なんだ)ということだったと思うし、そうでなくとも…ちょっと複雑な体験だったな。ごめんよ。
ちがう晩には、Beal stの交差点でまた黒人の女の子から声がかけられた。その子は今香港に住んでいるといっていたな。僕はそのとき、ヘッドホンでCDを聞いていたんだけど、「何聞いてるの?」という問いに、彼女の耳にヘッドホンの片方をかけて聞かせてあげた。彼女はそんなことは大して興味もなかったみたいで、とにかくおしゃべりがしたいようだった。僕はもうモーテルへ帰りたかったんだけど、彼女もその時は一人っきりで僕の後をついてくるもんだから、ちょっとばかり歩いたんだ。すると、公園からバンドの音が聞こえてきた。この寒空の中、なんと生バンドがブルースを演奏していたのだ。それも全員黒人というゴキゲンなバンドだった。彼女に感謝、だ。
Beal stからの帰りは、いつも決まったリカーショップへ行き、安いビールを買っては、モーテルでTVを見て、103.5のSoul classicというラジオ番組を聞いていたんだな。そうこうしているうちに、リカーショップのおじさんが顔を覚えてくれて、もうIDなしでもビールを買えることができるようになったんだ。
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