ROAD TO BLUES Memphis
Memphisといえば、世界中の誰もが知っているあのエルヴィス・プレスリーの街でもある。
エルヴィスといえば、サンスタジオ、グレースランドが有名だ。僕はエルヴィスについては、それほど深くは傾倒していないので、グレースランドは、数年前にできたハートブレイクホテルに一時停車する無料のシャトルバスでちょっと行っただけにとどまった。このバスはとってもお得で、何しろ僕のモーテルから中心地まで乗せてってくれるもんだから幾度も利用したんだな。サンスタジオ、映画「ミステリートレイン」でも永瀬正敏と工藤夕貴が訪れるそのスタジオは、モーテルと中心地とのちょうど間にあった。だからいつもサンスタジオを見ながら夜な夜な繰り出していったんだな。そのサンスタジオも訪問した。映画のとおりスタジオ見学ツアーに参加したんだ。なんだか知らないけど無料にしてくれた。ツアー客は僕ともう一人だけ。なんだか知らないけどエルヴィスみたいにもみ上げをたっぷりはやした兄ちゃんがこれも映画の通り早口でしゃべっては曲を流してくれた。ただ、エ
ルヴィス同様、ハウリンウルフ、ルーファスト―マス、ジェリーリールイス、カールパーキンスその他もろもろ、リアルタイムではないけど僕らが今手にしている例えばBest of ELVISだとか、その手のレコードの音源は、このスタジオで録られたものなんだ(デジタルリマスターはあれ)と思うと、なんだかちょっとミーハーに感動するのであった。
当然この街でもギターやCDを探しに出かけたんだ。有名なギターショップはすでにどこかへ移ってしまっていた。それで、イエローページと路線バスの極簡単なルートマップをにらめっこして、いけそうなところをくまなく回ったんだ。極簡単なルートマップだったもんで、一日二件が限度だったし、行ってみたらピアノ専門店だったりしたし、歩いてる時間のほうが数倍多かったけど、その間にレコードショップを発見するという楽しさもあった。とある郊外で手に入れたルーリードにはいろんな場面で助けてもらったな。
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そのあるギターショップで、ドブロギターを物色していると、やさしそうな社長の白人おじさんが話し掛けてきてくれた。ちょっといい感じになると、そのおじさんは二階に案内してくれた。そこには中国製の琴がおいてあって、「これはなんなんだ?君しってる?」と僕に聞いてきたんだ。これはこれは。母親が琴,、三味線の先生なもんで、僕はその名前と、弾き方と、ギターで言うチョーキングなるものを教えてあげたんだ。おじさんはたいそうその琴の音色がお気に入りらしく、(琴の調弦はいわゆる和音なのだが)「オープンチューニング!」と何度も嬉しそうにシャランシャランしていた。そのうち、僕を社長室に案内してくれて、かつてはプロのバンドでギターを弾いていたんだぞと大事そうに飾ってあるフェンダーのジャガーを自慢げに僕に見せてくれた。
また、とあるギターショップでは、初めて本物のディドリーボウという弦楽器を目にしたんだな。
シャングリラレコードで$48分のCDを$40に値切った僕はある時はオークランドから車で旅をしているという白人の兄ちゃんと偶然再会したり、ある時はブルース博物館に出向いてみたり、ある時は黒人のチンピラ三人の誘いを断りながら、ミシシッピ川ほとりを雨の中ぼんやり歩いた。相変わらずミシシッピ川は泥の川で、流木が無造作に漂流していたんだな。
そのうち、当初の予定にはなかった、Nashvilleへ、なけなしの金をはたいて行くことにしたんだ。
ブルースの都、「Memphis」。エルヴィス、B.B.King、ハウリンウルフ、ルーファスト―マス、ブッカーT&MG'S、W.C.ハンディ…「Memphis」。ポークリブBBQ、サザンスタイル、ランブギーカフェ、ブルースシティカフェ、メンフィスミュージック、キング牧師、「Memphis」。サンスタジオ、サムフィリップス、ハイ、スタックス、「Memphis」。ビールストリート、「Memphis」。
―バイバイ「Memphis」。―数日後グレイハウンドバスでカントリーの都、Nashvilleへと向かった。
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