ヒゲナガヤチバエ(髭長谷地蠅 ;ハエ目ヤチバエ科)

野川遊水地には同好者による小さな水田が維持されているが、その周辺数十mのススキの原だけは除草されない。とても貴重だと思っている。その原の中で、黒っぽいハエ目と出会った。翅端まで1cmほどで、目に白縞がある。独特の触角があり、なによりも印象的なのは常に頭を下にして止まることである。これだけで、すぐヒゲナガヤチバエが特定できた。
ネット検索で「ヒゲナガヤチバエの生活史」(永冨昭・櫛下町鉦敏 1965)という論文が公開されていることを知った。この論文にはヒゲナガヤチバエの「幼虫はヒメモノアラガイを食べ,又卵はズイムシアカタマゴバチに寄生されて直接間接人類に役立つている」というくだりがある。昆虫を見るとすぐさま「害虫-益虫か?」と発想する時代の文章だが、ヒメモノアラガイは「肝蛭 かんてつ」の中間宿主、ズイムシアカタマゴバチは0.5mmという微小種で、「ズイムシ類の天敵として知られ,幼虫はニカメイガ,サンカメイガなどの卵に寄生する」(百科事典マイペディア)。二様の仕方で「益虫」だということになる。実に絡み合った生き物の生活の複雑さを思わせる。65年と言えばまだ生態系という概念も普及していなかった時代だ。

('14) 10月8日撮影 於小金井市
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