シンハラ語Q and A / かしゃぐら通信index

国際結婚
シンハラ人と日本人の場合


 スリランカの新聞『ディワイナ』に載った記事は日本でも話題となった事件です。NHK,TBSがそれぞれ朝のモーニング・ショウで,信州放送がドキュメンタリー番組をつくり、放映しました。

 アジアの花嫁と日本人男性との国際結婚を計画した長野の結婚相談所の営業活動が正当なものかどうか,という視点でそれぞれの番組は作られていましたが,シンハラ女性と日本人男性の国際結婚の問題点が次のように指摘されました。

1 国際結婚に打算はないか?
2 文化の違いは乗り越えられるのか?
3 見合いの方法に問題はないか?

3に関しては、言葉も通じない日本人男性とシンハラ女性の見合いが果たして可能なものかという、ごく当たり前な,自然な疑問から指摘される問題点です。実際の見合いはシンハラ女性の胸に番号札をつけさせて,見合い相手の日本人男性がその番号を紙に書きこんで「好みの女性」を選ぶという方法が取られていました。このシーンは信州放送,NHK共に放送しましたが、見る側にとってはショッキングな場面でした。人身売買を思い起こさせたからです。もちろんこのシーンだけで,国際結婚の見合いが成立したわけではないのでしょうから,画面に現れた”人買い”のシーンが、また、一人300万円(TBSでは300〜1,000万円)という見合い成立の費用がどれほど胡散臭いものであっても、この国際結婚の是非を問うことはできません。

 また、TBSは東京都在住の男性と長野の結婚相談所が斡旋したシンハラ人の女性との離婚訴訟を取り上げ、「パスポートを取り上げられた」「日本での滞在費を払うために日本人と結婚しろ」と言われた等,彼女の証言には生々しいものがあります。番組ではシンハラ女性の側の言い分だけを扱っており,やや,勇み足の中途半端な番組制作という感があります。
 ただ、番組の中に日本青年館の結婚相談所長のコメントがありました。それは、アジアの花嫁が抱いている心情を紹介したものです。

 「彼女達は生きていくための宿命として日本へ来た。日本よりアメリカへ行きたかったのだが、日本へ来ないかという誘いがあったから日本へ来た。愛していたから結婚したのではない。ただ,結婚したからこの男性を愛していく。彼女達はこういう発想を持つんです」

 「日本人の男性がなぜアジアの女性を選ぶか。一つには差別意識があると思います。日本の教育・社会の中に差別意識があると思います。また、国際結婚には言葉,文化,価値観といった乗り越えなければならない壁があるのですけれども,男性の側は”嫁が来た“とだけ思ってしまう。斡旋業者の側は結婚を成功させなければこのビジネスは成り立たないわけです。だから業者はいいことばかりを言うわけです」

 インタビューでは「宿命」という単語が何度か繰り返されました。これをシンハラ口語でいえば「カルメー」。カルマです。逃れられぬ人生の路、カルマ。彼女達にとっては文明の進んだ国・日本へ来るという”晴れ晴れしいこと”でさえも,厭わしくも逃れることのできない「宿命」の中の出来事でしかなかったのです。
 「カルメー」、宿命。これはシンハラ語の文化と価値観のキーワードです。