「サー・デイヴィッドは、一体何が起きたのか、どの程度までご存じですか?実のところ、ぼくには何が何だか、皆目分からないのです。あの学者たちが、実は密偵だった ― ハリーはカスティーリャの密偵だったとお思いになったようでしたが。」
 デイヴィッドは一度、大きくため息をついた。
「私も、色々な話を継ぎ合わせるしかないのです。あれこれと嘘をつく輩もいたし。連中のなかで、今や唯一口をきけるトレスも、あまり多くを語りませんでした。
 カペッロと、トレス、リベイラの三人は、どうやらカスティーリャの密偵で間違いなさそうです。パリの大学で学者や学生をしながら、情報収集をしていたのでしょう。あそこに居れば、各国から集まった連中から情報を得られますから。
 そして、カスティーリャ本国では、ある一部の貴族たちが、お父上のサー・ジョージ・ロリマーが作った、セウタの詳細な地図の存在を知った。彼らは、現国王フアン二世と、摂政である王母のカタリナ様に敵対する勢力だった。昔、フアンの曾祖父と対立していたエンリケ王支持派の流れをくむ一派です。
 彼らは、『セウタの地図』を手に入れることによって、政治的優位に立とうとした。そこで、送り込んだのが、パリにいたあの三人の学者です。もちろん、従者の三人も一味でしょう。反王母 ― ひいては、反イングランド派であることは隠し、サー・ジョージの蔵書を写本するという名目でこのレミントンにやってくると、蔵書の中にあると思われる、『セウタの地図』を探し始めた。それがおよそ一年前というわけです。」
「でも、リベイラはどうなのですか?」
 ダニエルは白い腕を組んで、尋ねた。
「彼はポルトガル人で、母やぼくも知っている、ポルトガル王室関係者の紹介状を携帯していたのですよ。サインに間違いはなかった。だからこそ、我々は彼らを疑うことなく、客人として迎え入れたのです。」
「ええ、そこが問題でした。あなたや、レディ・ロリマーを信用させるには、ポルトガル王室のお墨付きが必要だ。これは確認してみなければなりませんが、私が思うに、あのリベイラは本物のリベイラではなかったのかも知れない。」
「つまり、偽者?ポルトガル人であるリベイラになりすました、別人だったというのですか?」
「推測ですけれど。あの三人は、パリの大学に在籍していたのですから、ポルトガル王室からの身分保証がもらえるような、正真正銘のポルトガル人学者と知り合いになる機会もあったでしょう。まず、この男 ― 本物のリベイラを、学者として仲間に引き入れ、サー・ジョージの蔵書研究という名目で、ポルトガル王室関係者からの紹介状を手に入れる。そして、その紹介状を持って、三人のカスティーリャ人学者は、三人の従者を連れて、イングランドのレミントンにやってきた。」
「本物のリベイラは…」
 ダニエルが眉を寄せて、すこし声を潜めると、デイヴィッドは首をひねった。
「普通に考えれば、殺されていてもおかしくはないですね。確認しないことには、なんとも。ロンドンに戻ったら、ウィンチェスター司教に事情を話して、パリに調査員を向かわせましょう。」
「ぼくも、ポルトガルに使いを出しますよ。それで、あのカペッロ、トレス、偽のリベイラは、このレミントンに来たというわけですね。」
「ええ。彼らは一年間ほど、蔵書の研究と、写本を装い、『セウタの地図』を探し続けた。レミントンの蔵書は膨大だ。一年経って地図が見つからなくても、それは想定内だったでしょう。しかし、想定外だったのは、イングランドの皇太子,プリンス・ヘンリーと私がレミントンを訪問するということだった。」
「彼らの様子の変化にぼくが気付いたのも、お二人がここにいらっしゃることが決まってからです。」
「ええ。彼らは、皇太子たちは当然、『セウタの地図』の存在を知っており、それを手に入れるためにレミントンに来るのだと考えた。」
「実際には、ご存じだったのですか?」
 ダニエルは、少し頭を傾け、いたずらっぽく微笑んだ。デイヴィッドは苦笑するしかない。
「いいえ。私もハルも、『セウタの地図』なんて、聞いたことがありませんよ。」
「ぼくもです。」
 ダニエルはそう言って声をあげて笑いながら、続けた。
「なるほど。つまり、カスティーリャの学者たちは、ぼくが地図の存在を知らないという点については、正しい認識をしていても、ハリーと、あなたのお二人については、誤解していたのですね。だから、お二人が来ることによって、自分たちの企みと、素性が露見し、地図の入手が困難になることを恐れた。」
「ええ。危惧した彼らは、一芝居打つことにしたわけです。連中にすれば、一刻も早く地図を手に入れて、レミントンから脱出したい。その一方で、もし、皇太子と、デイヴィッド・ギブスンが地図のありかを知っているのであれば、巧みに情報を引き出せれば好都合だ。
 そこで、まず皇太子一行が来る前から、リベイラが演技を始めた。何か隠しているような、不安を抱えているような、怪しい態度を取る。サー・ダニエルをはじめとする周囲の連中にそれを見せ、さらに皇太子と私に見せれば、リベイラがほかの二人を恐れ、何かを隠しているように見えるでしょう。実際、私はその計略に乗せられました。」
「一方で、ラリーはどう関係するのでしょう。彼は水路の点検に出かけ、竪穴に閉じ込められたのですよね。」
「ラリーは、ポルトガル人だそうですね。」
 ダニエルはきょとんとした顔で頷いた。
「ええ。父がポルトガルから連れてきた男で、本名はカルロ・コレドン。ラリーは通称です。イングランドでの暮らしも長いですから、すっかりイングランド人化していますが。」
「そのラリーもまた、様子がおかしくなったリベイラのことを、懸念し始めた。そこで彼は、自分の母国であるポルトガルの知人を通じて、リベイラの、ひいては学者達の素性を、もう一度確認しようとした。 彼は自分の執務室で手紙を書いていました。これです。」
 デイヴィッドは、ラリーの執務室から失敬してきた手紙を取り出し、ダニエルに渡した。
「それはさっき、私がラリーの執務室で見つけた物です。リベイラと、学者達の素性の照会を、ポルトガル語で書いている。しかし、これを発送する前に、水路の点検に出なければならなくなった。そこでこの手紙を執務室に置いたまま、ヒューとともに出かけたのです。」
「そして、この手紙をあの学者達が見たのですね?」
「彼らは、領主やその母親である ― つまりは高い身分のサー・ダニエルや、レディ・ロリマーよりも、実務的なラリーを警戒していたのでしょう。しかも、実はラリーがポルトガル人だったのは、予想外だった。それをこの手紙を盗み見る事で知った。ラリーの存在は非常に危険だ。そこで、何人かで闇夜に紛れて、出かけたばかりのラリーとヒューを追い、人のよりつかないストークの窪地にある、深い竪穴に閉じ込めたのです。一年も書物を調べていたから、レミントンの水路と竪穴には詳しくなっていたでしょう。」
「なぜ、ラリーとヒューをすぐに殺さずに、生きたまま閉じ込めるような真似を?」
「取引の材料に使えるかも知れないという、計算でしょうね。カスティーリャの密偵達にとって、現状はかなり厳しかった。地図は未だ見つからず、皇太子はもうすぐやって来る。少しでも使える手駒を増やして、この状況を乗り切ろうとしたのでしょう。私を閉じ込めたのも同じ理由です。」
「なるほど…」
 ダニエルは少し腕を組んで考えた。

「マニュエルはどうなのですか?彼はここ数日、まともに仕事もしていなかた。そして、今朝、死体になって発見された…」
「トレスからその辺りの事情は聞きましたが、ただ『裏切ったから殺した』とだけ、言っていました。
 マニュエルもまた、皇太子と私がレミントンに来ると聞いて、仲間と同じように動揺していました。彼が仲間とは違っていたのは、飽くまでも保身を考えたことです。どうやっても地図を手に入れ、カスティーリャに持ち帰ろうとは思わなかった。
 詳しくは分かりませんが、おそらく単独でレミントンからの、ひいてはイングランドからの脱出を目論んだ。もしくは、どうにかしてポルトガルとの連絡をつけて、身の安全を確保しようとした…。要するに裏切りです。台所でネリーにポルトガルへの発送物について尋ねていたそうですから、おそらくそんなところでしょう。
 しかし、単独行動を取っているマニュエルを、あの密偵達も無視はできない。何か具体的に行動される前に、殺害したと考えられます。」
「マニュエルが単独行動を起こした時点ですぐに殺す方が、密偵の行動としては普通だと思いますが。」
「ええ、そうですが…」
 デイヴィッドは小さく首を振った。
「彼らは客人としてこのレミントンに滞在しています。妙な動きをしてサー・ダニエルに怪しまれるのはギリギリまで防ぎたかった。でも、皇太子一行が到着して、もう放置できないと考えたのでしょう。」
「そして、今朝を迎えたわけですね。」
「ええ、あなたとハルが早朝か城を空けると、次にリベイラに一芝居打たせて、私から地図の情報を聞き出そうとした。すっかり騙されましたよ。話の半分は本当でしょうが、リベイラが実は無理矢理連れて来させられただなんて、大嘘だったんだ。
私は簡単な嘘に引っかかったものの、『セウタの地図』なんて存在も知らなかった。そこでリベイラは私を竪穴に閉じ込めた。
 一方、サー・ダニエルと、ハルが二人だけで、城に戻ってきた。城内からは捜索のために人手が出払ったのを幸いに、カペッロとトレスは、従者二人と共にあのような大胆な行動に出たというわけです。中庭で、あなたを刺し、ハルを脅迫して地図を入手しようとした。さらに、私を閉じ込めて戻って来たリベイラが、ハルを背後から押さえつけることに成功。しかし、ハルは本当に地図の存在を知らない。そこで、さらに取引を申し出て、国外逃亡までの身の安全を保証させようとしたわけです。」
「『セウタの地図』…。彼らにあそこまでそうさせるほどの地図ですね。」
「ええ。あのグラナダ王国領の詳細な地図なんて、ヨーロッパに存在しているはずがない。もしそれを手に入れよう物なら、政治的にも、外交的にも、そしてカスティーリャの内紛にとっても、大きな影響力を及ぼすでしょう。」
「父は本当に、そんな物を持っていたのでしょうか。」
「本当にご存じないのですね。」
 デイヴィッドはダニエルの顔を見つめながら尋ねると、彼は首を振った。
「聞いたこともないです。確かに父が若い頃、自由にヨーロッパ中を旅して周り、アフリカにまで行ったという噂話はあります。だから、『セウタの地図』を手に入れることは絶対不可能ではありませんが…いや、しかしぼくは聞いたことがありません。」
「蔵書は膨大なのでしょう?サー・ジョージがその中に隠したという可能性はあるかも知れませんね。」
「困ったなぁ。」
 ダニエルは形の整った太い眉を下げて笑った。
「農地や、水路の整備で忙しいのに、書庫の本を片っ端から調べるだなんて。」
「私の兄のエドマンドなら、興味を持ちそうですけど。」
「サー・デイヴィッドの兄上なら、大丈夫ですね。あやしい学者密偵と違って。」
 そういうダニエルにつられて、デイヴィッドも笑い出した。
「いや…笑い事じゃありませんね。本当にサー・ダニエルには悪いことをしました。ハルと私の訪問が、この騒動のきっかけになってしまったのですから。ラリーは瀕死の目にあい、あなたにも怪我をさせてしまった。」
「ただのきっかけですよ。いずれ、こんな事は起きたでしょう。」
「でも、私がリベイラに簡単に騙されていなければ…」
「騙されていなければ、ラリーとヒューの居場所もわからずじまいですよ。」
「そう言っていただけると、助かります。どうも…昨日あたりから、私は鈍いようです。いつもならこんなへま、しないのですが…」
 口ごもりながら言うデイヴィッドに、ダニエルは優しく微笑みながら言った。
「何か、心配事でもあるのでしょうか。もしや…ハリーと喧嘩でも?」
「ええ?」
 デイヴィッドはびっくりして顔を上げた。

「昨日から何となく、そんな気がして。喧嘩というほどの事ではないかも知れませんけどね。今朝、ハリーがサー・デイヴィッドを起こさずに私と出かけることになったので、ますますそうじゃないかと。
 それに、ハリーはずっと、私に何か訊きたがっていたような気がするのです。あなたの居ないところで。それが何なのか、この騒ぎでまだ分かりませんけど。」
「ああ、それは…」
 デイヴィッドが語尾を濁すと、ダニエルははっきりとした口調で言った。
「父、サー・ジョージが、リチャード二世を救出したという言い伝えについてですか?」
「お察しが良いですね。」
「ぼくもその話は聞いたことがありますよ。でもね、サー・デイヴィッド。ただの作り話です。父はリチャードを救い出してはいません。リチャードが退位した頃にはもう、父の具合はだいぶ悪く、レミントン城から動けない状態でしたから。」
「それは、間違いない。ハルも、私も分かっています。ただ…」
「ぼくがそれをどう思っているのかが、ハリーも気になるのですね。」
 ダニエルは明るく笑いながら続けた。
「ばかげた作り話です。ぼくは何とも。国王陛下と、ハリーのお立場からすれば、快くない話ですよね。でも、このあたりの住民はみんな、サー・ジョージをおとぎ話の英雄のように思っているのです。英雄には、塔に閉じ込められた高貴な人を救出してもらいたいもの。ただ、それだけですよ。イングランドの皇太子が気に病むようなことではありません。それに…」
 ダニエルはまた微笑んだ。
「ぼくはハリーが好きですし。」
「私が鈍くなっている理由が分かりましたよ。」
 デイヴィッドが唐突に言ったので、ダニエルはきょとんとした表情になった。
「なんです?」
「嫉妬です。」
「ああ…!」
 ダニエルは急に神妙な顔つきになった。
「それは気づかなかった。嫌な思いをさせて申し訳ない…」
「あなたにじゃありません。ハルに、です。」
 デイヴィッドは真面目くさった顔で言った。ダニエルはしばらくその顔をじっと見つめていた。やがて声を上げて笑い出した。あまりにも笑いすぎて、縫合したばかりの傷が痛み出す始末だった。デイヴィッドは赤面して耐えていたが、たまらず口を開いた。
「そんなに笑わなくてもいいでしょう、ダニー!」
「いや、すみません。笑ったりして。デイヴィッド…ああ、良かった、その…ぼくだって、心配していたのですよ。デイヴィッドが、ぼくを信頼してくれるかどうか、気になっていたから。」
「ハルは、人とすぐ打ち解ける。俺との違いはそこです。」
「ハリーは、いつもあんなことをするのですか?」
「あんなこと?」
「大の男を抱き上げて走り出すのだから、びっくりしましたよ。こっちは恥ずかしくて、恥ずかしくて…!」
 デイヴィッドは噴き出した。
「ハルもパニックだったのですよ。ひどく狼狽えていたようですから。」
「しかも、もの凄い力持ち!」
「あれは、火事場の馬鹿力ですね。」
「デイヴィッドを抱き上げることも?」
「まさか!俺の方が背は高いのだから。ダニーが小柄だから、できた芸当ですよ。」
「どうでしょうね、ハリーもパニックになれば、やりかねない。」
「俺が断ります。」
 デイヴィッドが手を振ってみせると、ダニエルはたしなめるように返した。
「熱意と好意は、素直に受け入れるものですよ、デイヴィッド。」
「どうせ、俺は仏頂面の音痴ですよ。」
「音痴?音痴と何か関係が?」
「夕べ、ダニーとハルが楽しく楽器を弾きながら歌っているのを見て、羨ましかった。」
「でも、それを楽しそうに眺めているデイヴィッドをみて、ぼくは嬉しかったけどなぁ…」
 ダニエルは涙をこぼしながら笑っている。デイヴィッドは、ハルとダニーが大酒を飲みながら楽しく歌っている夕べの様子を思い出した。
突然、デイヴィッドは飛び上がるように立ち上がった。ダニエルがびっくりしてデイヴィッドを見上げた。
「デイヴィッド、どうしたのです?」
「ダニー!大事な事を思い出しました。俺は行きます。どうか、お大事に!」
 デイヴィッドは、ダニエルの寝室から飛び出して行こうとする。ドアを開けるや、入ってこようとしていた小姓のロブとぶつかりそうになった。びっくりするロブに構わず、デイヴィッドが怒鳴るように尋ねた。
「ハルはどこだ?!」
「皇太子殿下?殿下なら台所で…」
 ロブが言い終わらない内に、デイヴィッドは走り出していた。呆然とするロブと、ダニエルが後に残された。

 デイヴィッドがズカズカと台所に乗り込むと、簡素な食卓で、ハルが大量の料理をむしゃむしゃと平らげている最中だった。
 ハルの頭の混乱が収まってみると、抱き上げたダニエルは軽傷で、治療のために寝室に運ばれ、デイヴィッドも身なりを整えに行ってしまっている。残されたハルはまず中庭の惨状収拾の指示を出し、城に続々と戻ってきた男達を落ち着かせ、事情を説明し、運び込まれたラリーとヒューへの処置、手当てをするように指示した。
 そうしてやっと一息つくと、ひどく空腹になったため、台所にやってきたというわけだ。厨房係たちは、皇太子の食べっぷりの良さに感心して、どんどん料理を並べていった。それらを胃に押し込んでいる最中に、デイヴィッドが勢いよく乗り込んできて、いきないハルに言った。
「ハル、話がある。」
「俺にもある。」
「後にしろ。こっちは緊急事態だ。」
「何だよ。」
 ハルは心底嫌そうな顔つきで、デイヴィッドを見上げた。その顔に近づいてデイヴィッドが説明すると、その後の行動はまさにつむじ風のごとくだった。

 ハルはロンドンから連れてきた輸送隊員のうち、スパイクと、護衛二人を呼び出し、いそいで指示を伝えた。曰く ―
 皇太子の名の下に命令書を発行する。ピュージーより南の街道沿いの治安判事、領主、その他全ての機能を動員して、二人の旅楽師を確保せよ。特に、港へは急いで手配して、フランスか、イベリア半島、特にポルトガルが最終目的地である船で、その二人の旅楽師が出発するのを阻止せよ。
 身柄を確保して、荷物も全て差し押さえること。危害は極力加えるな。確保したら、皇太子とサー・デイヴィッド・ギブスンが到着するまで、待機。牢屋に入れる必要なし。
同時にウィンザーか、ロンドンに居るはずの王子を急派すること。そうだ、ジョンがいい。ジョンに一師団つけて、向かわせろ。 
 身柄を確保すべき二人の旅楽師。名前は、トム・リックと、マイク・バック。前者は中背、まっすぐな金髪。後者は長身で、黒い巻き毛。二人とも、四十歳程度。絶対に国外にへ出すな、必ず確保せよ ―

 使者三人は良い馬をあてがわれ、ハルが急いでしたためた命令書を携えて散った。三方へ出せば、ウィンチェスター司教の諜報網が素早く機能するだろう。
 ハルとデイヴィッドも、身支度を素早く調え、ダニエルの寝室に駆け込むと、口々に、ちょっと失礼する、また来る、お大事にとまくし立て、残ったロンドンからの護衛二人を連れ、馬にまたがってレミントンから飛び出していった。
 後には輸送要員 ― もちろん、ネッドも含まれている連中が、まだ仕分けの済んでいない大量の荷物と共に、レミントンに残された。



→ 14.ジョン王子、首尾良く任務を遂行する事


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13.デイヴィッド・ギブスン、細切れの情報をつなぎ合わせ、最後にひらめく
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