あさみ様からのいただき物

  衝撃!(笑撃?) ヘンリー五世の
野望を叶えたルビー!

 事の発端は、イラストごった煮サイト「はっちぽっち。」の管理人,あさみさんがネットサーフィン中、鉱物,ジュエリーのお店のHPの中に、「誕生石物語・7月 ルビー」というコンテンツを見つけ、見覚えのある名前を発見したことでした。
 そのページでは、イギリス王室の至宝「黒太子(ブラック・プリンス)のルビー」についてのお話を、以下のように紹介しています。

 「黒太子のルビー」の持ち主となったヘンリー五世(=ハル)は、膠着状態にあった百年戦争を再開。フランス王女カトリーヌとの結婚と、フランス王位を要求。1415年のアジンコートの戦いで、彼はこのルビーを鎧に縫込み(イギリスのサイトではヘルメットに飾ってあったと書いてある)、これが致命的な一撃から、ヘンリー五世の命を守った。戦いの勝利の結果、ヘンリー五世はカトリーヌと、次期フランス王位を勝ち取った

 さて、このページの記述のどこが衝撃かと言いますと。何やら、表現が凄いのです。いや、一般的には、普通なのかも知れませんが、「ハル&デイヴィッド」を書いたり、読んだりしている者にとっては、なかなか凄いのです。
 
 「彼は彼女をイングランドとフランスの両方の王妃にしてやると
豪語。」
 
カトリーヌへの王位をかけて1415年にフランスに侵略。」
 「ヘンリー五世は
恋のと戦いの勝利を導くルビーを鎧の下に縫い込み…」
 「ヘンリー五世の
野望を叶え、命を救ったルビー」

 …とまぁ、とにかく熱い!!熱血なのです!燃える国王ヘンリー五世!イメージ的には、背後には紅蓮の炎でしょうか?いや、イングランドの赤いバラか?愛する姫のために、ヘンリー五世は今日も行く!ヘンリー五世はルビーを胸に、今日も戦う!それ行け、ヘンリー五世!白馬に跨って…!

 笑いました…。私の描くハルとは、あまりにもイメージがかけ離れております。だって…「カトリーヌへの愛」ですよ?!
 あさみさんも、ハルと「恋の炎」とい言葉が並んでいる事に大ウケしたそうです。同感です。そこであさみさんは、この記述を見つけてしまったハルとデイヴィッドを、こんな可愛いイラストにしてくださいました。

Gifts   Foolscapへのいただき物

  ハル & デイヴィッド  
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 偶然ですが、私のPCもThinkPadです(笑)。
 このデイヴィッドの白けムードと、ハルの軽い乗り、分かります。私の書くハルの結婚観は、「甲冑職人の失踪」に書いたとおりですからね。あさみさんは、ハルにお嫁さんが来た時のデイヴィッドと、親父の反応にも興味がおありのご様子。特に、親父は地団駄踏んでいそうですからね。ハンカチ噛み締めて、「・・・エリザベス、本当はお前の花嫁姿が見たかった」とか。哀れな親父…。

 拙宅のハルのことは、置いておきまして…。
 ヘンリー五世が、カトリーヌに恋をしていたかと言うと、甚だ疑問です。フランスの王位を勝ち取るための政略結婚ですし、かなり年もはなれていました。第一、本当に結婚が決まるまで、二人は会ったことさえもなかったでしょうから。双方共に、「話には聞いていた」という感じではないでしょうか。
 しかし、「恋」と「愛」は別物です。
 その辺りを、シェイクスピアは「ヘンリー五世」で中々面白く描いています。フランス王女カトリーヌは、侍女を教師にして、英語の勉強に余念がありません。ヘンリー五世は大勝の後に対面したカトリーヌに、律儀にプロポーズ。下手なフランス語でアタフタしたり、「踊れとか歌えとか言われたらお手上げだ」などとぬかし、王女の侍女に「フランスの女性は結婚前にキスなんてしません!」と怒られたり…カトリーヌが「父が許可すれば…」と言うと、「それはもう、話が出来ているんだ!」…おいおい、だったらその必死なプロポーズは何なんだよと、思わず突っ込みたくなります。映画での、ローレンス・オリヴィエの演技が、特に良いです。
 いかに政略結婚であり、年の差カップルであったとしても、必ずしも不幸な結婚だったとは限りません。シェイクスピアは、その辺りをなかなか上手く描いているような気がします。

 それにしても、なんと有難い事でしょうか。毎度、あさみさんには感謝してもし切れません。
 これからも、あさみさんがイラスト描きたくなるような、ハルデヴィを創造できるよう、頑張りますね。…と、言うよりあさみさんのイラストに、インスパイアされて書く…と言ったほうが的確でしょうか。現に、「ブラック・プリンスのルビー」なんて、ハルデヴィのネタに良いななんて、企んでいる私です。
 皆様も、「おや、では私もハルデヴィ描いてみようかしらん」と思ってくださったなら、ぜひとも拝見させてくださいませ!
 あさみさん、改めてありがとうございました。



 
ブラック・プリンスのルビーについて

 「ブラック・プリンスのルビー」は、ブラック・プリンスと仇名されたエドワード三世の長男リチャードに贈られた事からその名がついたそうです。ブラック・プリンスは、ハルにとっては大叔父に当ります(系図参照)。
 高価なルビーを戦場で着用するというのは、どうなのでしょうか。少なくとも、ルビーに命を助けられるというのは、出来すぎの話のような気がします。ブラック・プリンスとヘンリー五世という、人気のある人物に纏わる宝石なので、いくらかの脚色が加わっているのかもしれません。

 その後、このルビーはイングランド王室に代々受け継がれ、現在ではイギリスの最高位の王冠 The Imperial State Crownに飾られています。大きさは170カラット。最近の鑑定で、実はルビーではなく、スピネルである事が判明したそうです。
 ブラック・プリンスの下が、世界最大級のダイヤモンド「アフリカの星」です。そのほか、ダイヤモンド 2,868個, サファイア,17個,エメラルド11個, ルビー5 個,パール273個などなど。ヴィクトリア女王の戴冠時に製作されたのですから、時代的にはホームズという事になります。

 現在では、ロンドン・タワーの宝物館に保管され、観光客も見る事が出来ます。もっとも、動く歩道のお陰でゆっくりとは見られませんが…。現エリザベス女王二世も戴冠式に被りましたし、毎年議会開会の式典でも、この王冠を被って列席しますので、テレビでその様子が紹介され機会もあると思います。

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