晩夏の木曽駒ヶ岳 2009年9月5日-6日 テント定着

9月5日 曇り

千畳敷
千畳敷カール全景(12:09)
早朝の各駅停車を乗り継いで、駒ヶ根駅に着いたのは11時ちょっと前。すぐに11時のバス便に乗る。しらび平は一般車が入れないのでパークアンドライドになっている。途中の駒ヶ根高原でマイカー族を乗せて、およそ50分でしらび平に到着した。バスは基本的には全員を着席させて運行される。
この日のこの時間はロープウェイは9分間隔の臨時体制となっていて、まったく待つことなく乗れた。ロープウェイのきっぷは往復で購入すると幾分か安くなる。片道だけ買って帰りは将棊頭山を経由して歩いて下りるというプランも考えていたが、果たしてそんなことができるのか自信が持てず、早くも日和って往復券を買ってしまった。
12時頃に千畳敷に到着すると、雲は多かったものの、カールの全景と宝剣岳が見えていた。トイレで着替えを済ませてから、千畳敷ホテルの食堂で昼食をとった。

13:09 出発(高度計:2600m, 温度計:24.6℃)

花
カールには意外にも花が多かった(13:22)
道
カール斜面を登る(13:29)
喫茶エーデルワイスのすぐ目の前にある駒ヶ岳神社の脇からカールに下りると、意外にも多くの花があって驚いた。もう花なんてないと思っていたのだ。しかも種類が多い。観光客も夢中で写メっている。一番目立ったのはハクサンボウフウで、大雪山の裾合平を思わせる見事な咲きっぷりだった。ほかにトリカブト、オンタデ、グンナイフウロ、アザミなどなどなど。コオニユリはまだまだ活きがよかった。夏の名残りのキンポウゲもちょっぴりだけあった。穂になったチングルマ、葉が黄色くなったコバイケイソウが秋の始まりを感じさせた。
八丁坂にかかると急に傾斜が増す。つづら折りの道は、落石防止のために滅多やたらと太い針金で補強してあり、まるで蛇籠が積んであるかのようだ。これがなんだか妙に歩きにくい。そのうえ、歩いている人の半分ほどは譲り合いもへったくれもない観光客で、道の真ん中に座り込んでいたり情け容赦なく突っ込んできたり。もちろんそんなこと覚悟はしていたのだけど、それでもやはりストレスがたまる。

14:00 乗越浄土(2785m, 19.0℃)

八丁坂の最上部は桟道になっている。桟道を通過すれば広々とした乗越浄土に到着だ。いったんザックを下ろしてゆっくり休憩をとる。
晴れていたら和合山の方にいって宝剣岳を眺めたかったのだが、ガスが立ちこめているので、すぐにテント場を目指すことにした。
ここから2軒の山小屋の裏を回って右にカーブする感じで進む。道標が立っており、中岳直登ルートと巻道に分かれる。道標には『巻き道(危険)』とあるが、これは残雪があるときのことだろう。
登るのは面倒なので巻道を行くことにした。この巻道は切り立った斜面のトラバースで、細かいアップダウンの連続する道だった。手を使うような場所もあり、岩が張り出していたりして、大ザックだと神経を遣い、こりゃあ選択を誤ったかと少し後悔。が、途中で、小屋にビールを運ぶボッカさんが後ろから疾風のようにやってきて、我々を颯爽と追い抜いて行った。山をよく知っているボッカさんが中岳経由ではなくこの道を歩いているということは、きっと正しい選択だったんだろう。

14:30 頂上山荘キャンプ場着

道
意外に険しい巻道(14:20)
途中でガスがどんどん濃くなって、とうとう視界は10mほどになってしまった。道が唐突に平坦になったと思ったら、分岐を示す道標に遭遇。ということはたぶんこの辺に小屋があるはずだが、とキョロキョロすると、風で一瞬薄くなったガスの合い間から、びっくりするほど近くに小屋が出現した。そしてその近くにテントも見えた。今日の行程はこれでお終いである。
サイトを選定したあと、小屋で幕営の受付をしたころには目の前のガスはとれて、視界はもう少し良くなっていた。

テント場

テント場
頂上テント場と中岳(15:37)
テントの設営後、中でまったりしていると空が明るくなった気配がして、外に出てみると、駒ヶ岳や中岳の山頂が見えていた。今日のうちに山頂に登ってもよかったが、すっきり晴れているわけでもないので、引き続きテント場でまったりと過ごした。どうせここからは20分ほどだから、登ろうと思えばいつでも登れるのだ。
17時過ぎに夕食をとってから眠ろうと思ったが、この日のテントは計40張りで、なかなかの混み具合。周りがなんだか騒がしくて寝付けなかった。それでも20時を過ぎるとみな一斉に寝静まり、自分もいつの間にか眠っていた。
夜中にテントを叩く雨のような音で目が覚めた。まさかと思ったがホントに雨で、しかもしっかり降っていた。時刻は0時ちょっと過ぎ。降られはしたが風がほとんどなかったのは幸いだった。雨はまったく予想していなかったのでテント張りをテキトーにしていたのを思いだし、外に出て張り綱をきちっと張り詰め、フライと本体の間に泥はね避けの石を敷いてから再び眠りについた。

9月6日 晴れのち曇り

5時起床。明け方のテント内は10.1℃。夜半の雨は上がっていて、空はきれいに晴れ渡っていた。
ご来光が拝めそうな気配だ。テント場からだと宝剣岳が見えないので、山に上がることにした。朝焼けの宝剣岳を見てみたいと思ったのだ。山頂でじっとしていると寒くなると思われたので、ダウンのヴェストとカッパを上下着込んだ。

5:24 テント発(2780m, 9.0℃)

夜明け
木曽駒中腹で夜が明けた(05:29)
満月
振り返ると満月が(05:31)
朝食もとらずに歩き出したが、テント場を出てから5分ほどで、雲の向こうから太陽が現れた。真後ろの空には満月が輝いていた。気温が低く寒かったが、風がほとんどなかったのは幸いだった。

5:38 木曽駒ヶ岳山頂(2855m, 7.7℃)

御嶽山
木曽駒山頂から御嶽山(05:48)
テントから15分ほどで山頂に到着。広い山頂は結構な人で賑わっていた。
雲が多くちょっと霞んでいたが、思ったよりは遠くまで見通せた。近くの御嶽山はもちろんのこと、乗鞍から槍穂、白馬の方まで北アはばっちりだった。逆に南ア方面は雲が湧いていて見えなかったのは残念。中アは空木岳もよく見えた(ぐるぐる写真)。宝剣岳は少し逆光だったが、かえってシルエットになっていて美しかった。千畳敷からの姿はあまり「宝剣」という感じがしないが、駒の山頂から見るとなるほど宝剣そのものだ。

6:09 頂上発(2865m, 13.6℃)

山頂
にぎわう山頂(05:50)
朝の景色を堪能しまくり、満足してテントに帰ることにした。日が出て30分ほど経っており、ダウンヴェストが暑くなってきた。
登りのときは暗くて気づかなかったが、道の周りはトウヤクリンドウでいっぱいだった。咲き残ったコマクサもあった。木曽駒の花というと、どうも千畳敷カールに一面に咲くコバイケイソウやらシナノキンバイをイメージしてしまうのだが、実はかなり種類の豊富な山なのだということを思い知った。

6:23 テントに帰着(2780m, 14.4℃)

みそ汁ご飯の朝食をとりながら、本日の行動を計画。サブザックで出かけて、濃ヶ池に投影する宝剣岳を眺めに行くことにする。

7:33 テント発(2815m, 23.6℃)

道
広々とした山頂への道(07:35)
ふたたびテントを出発。ふたたび山頂を目指す。トウヤクリンドウを愛でながらの登りは清々しい気分だ。

7:47 ふたたび木曽駒山頂(2905m, 24.6℃)

山頂
広々とした木曽駒山頂、中央が宝剣岳(08:15)
山頂には、もうこの時間だと朝一番のロープウェイで登ってきた人たちがいた。日の出直後より雲が増えていて、朝は完璧に見えていた空木岳は早くも雲に飲み込まれていた。北アも白馬の方は見えなくなっていたが、時間が経つにつれて徐々に乗鞍も御嶽も隠れてしまった(ぐるぐる写真)。

8:25 山頂発(2880m, 19.2℃)

道
伸びやかな縦走路が続く(08:30)
道
花崗岩の道(08:31)
槍穂が見えなくなったのを機に、山頂を後にした。東に向かって続く伸びやかな稜線を気持ちよく歩いて行く。ほとんどの人は千畳敷と駒ヶ岳を往復するだけなので、ちょっと脇道に入ると人が少なくてとっても静か。

8:37 分岐(2860m, 28.2℃)

テント場への分岐。この付近から、中岳の脇から宝剣岳が見えるようになってきた。しかし雲が湧いてきた。

8:52 濃ヶ池が見えた(2855m, 29.6℃)

濃ヶ池
はるか下に濃ヶ池が見えた(08:51)
山頂から30分ほどのところで、はるか下に濃ヶ池が見えた。かなり干上がっていて、しょぼい感じに見えた。また、池の手前に雲がかかり始めて、このまま下りて池まで行っても、「水面に映る宝剣岳」の図が見られる確率は低そうだ。
というわけで濃ヶ池へ行くのは中止。帰りは山頂を経由せずに分岐から直接テントに戻る。で、このショートカット道には9月だというのに、なんとウスユキソウが咲いていた。木曽駒特産のヒメウスユキソウだ。これは嬉しかった。目的を達成できずに不完全燃焼だった気分をぱっと吹き飛ばしてくれた。

9:41 テント帰着(2830m, 26.9℃)

日差しが強く、テントはもう乾いているかと思いきや、意外にも表面にまだちょっと水滴が残っていた。しかし撤収には問題なかった。花崗岩でかなり水捌けがいいらしく、昨夜しっかり降ったのにテントの底はさほど汚れていなかった。

10:14 出発(2840m, 29.4℃)

もうこの時間になると中岳-駒ヶ岳間は大勢の人たちで大騒ぎになっていた。往きと違って帰りは巻道ではなく、中岳を通ることにする。あの狭い道ですれ違いが頻発することを考えるとそれだけでもうウンザリだ。

10:26 中岳(2900m, 28.7℃)

木曽駒
中岳から木曽駒ヶ岳をのぞむ(10:26)
中岳への登りは大したことはない。だらだら歩くといつの間にか着いてしまう感じだ。
ここもまた大勢の人が休んでいた。登山者よりは、観光客の方が多いような気がした。

10:43 乗越浄土(2830m, 28.2℃)

宝剣
迫力の宝剣岳(10:40)
宝剣山荘の裏手からは宝剣岳が間近に見られるが、このときはガスがかかっていて、なかなかの迫力だった。
乗越浄土の標識のある広場にザックを下ろして和合山方面へと向かうことにした。宝剣岳を正面から眺められる恰好の展望台となっているらしいのだ。しかしその肝心の宝剣岳は雲の中に隠れたままだ。

10:55 9合目(2850m, 24.9℃)

宝剣
9合目からの宝剣岳(11:06)
空
宝剣は見えないのに木曽駒側はよく晴れている(11:09)
分岐から10分ほどで「9合目」の標識があるところでストップ。振り返るが依然として宝剣岳は雲の中だった。15分ねばって見えなかったら帰ることにしてじっと待つ。すると、10分ほどで雲の中にうっすらとだが宝剣の姿が見えてきた。雲が多くてはっきりとはわからないが、なかなか良い姿のようだ。
100%ではないが、見えたところでまあまあ満足して乗越浄土に戻る。

11:25 乗越浄土(2820m, 25.6℃)

道
大混雑の八丁坂(11:33)
ガスはますます濃くなって、宝剣岳は乗越浄土からも見えなくなった。そのくせ木曽駒本峰側はよく晴れていて、中岳はすっきりと見えていた。千畳敷カールからの雲が湧いているのだろう。
時間的にも、また周りの人出を見ても、ロープウェイの下りの混雑が恐ろしくて、早めに下りることにした。

12:08 千畳敷駅(2620m, 24.6℃)

花
ガスガスの花畑(11:47)
カールの花は昨日と変わらず美しかった。宝剣岳はずっと見えないままだったが、我々が千畳敷駅に着いた直後に一瞬だけ雲がとれて見えた。
駅ではすでに下り待ちの行列ができていた。千畳敷ロープウェイは混雑が激しくなると整理券を配って乗客をさばくが、このときはまだそれほどではなかった。しかし我々が列について少しすると、整理券の配布が始まった。9分間隔の運行のところ3本見送り、つまりおよそ30分ほど待って乗車できた。

駒ヶ根駅へ

13:10のバスで駒ヶ根駅へ。運転手の綾小路きみまろ風のしゃべりがおもしろくて飽きずに済んだ。駅には14時に着いたが電車は14:48までない。腹が減ったので駅前の大きなスーパーでヱビスビールとB級グルメのソースカツ丼を買って食べた。日曜午後の飯田線は部活帰りの高校生で混んでいた。
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