信州高山村桜ハイキング 2007年4月28日 - 29日 一般旅館利用

4月28日 雨

小布施観光を終え、夕方のバスで須坂から信州高山村へと向かう。
バスは蕨温泉に到達するまでに村の中心部を通るが、その沿道に多くある桜はすでに花が終わっているものがほとんどだった。翌日のハイキングがちょっと心配になる。

蕨温泉

宿は蕨温泉の一軒宿の旅館「わらび野」。和室のスイート(つまり二間つづき)だったが飾り気のない素朴な部屋だった。部屋にはお茶受けのお菓子のほかにリンゴが3個もあった。すぐ隣りの村営共同浴場を外湯として利用できるほか、宿内にも風呂がある。湯は無色透明で若干の硫黄臭がある。肌がすべすべになる感じ。
せっかくの和スイートなのに食事は部屋食ではなかった。が、夕食の会場は大広間ではなく個室だった。食事は量が多く、体育会系の我々はなんとか完食したが、食べきれない人もかなりいるだろうと思った。

4月29日 晴れ

北アルプス
宿の裏からの北アルプスと雲海
朝からどっぴーかん。ひげを剃ろうと朝風呂に行き、露天風呂から外を見てみると北アルプスがどかんと展開していた。雲海もきれいだ。朝食前に宿の裏手にまわって山々を眺める。鹿島槍の双耳峰が特定できたので、あとは並びからわかった。右端が五竜で、一番左が槍ヶ岳だった。
朝食もボリューム満点で、なんと朝から馬刺が出てきた。この馬刺が旨い旨い。やわらかく、くさみもなく、今まで食べた馬刺の中で一番おいしかった。
8:10発の須坂行きバスに乗って出発。バスの乗客はひとりだけだった。

8:34 横道のしだれ桜

桜
桜の巨木を目指して歩く
横道の桜
横道のしだれ桜
バスを原宮で降りて、坪井のしだれ桜を目指す。バス通りからちょっと集落に入ると、遠くに巨大な桜が咲いているのが見えた。あれが坪井のしだれ桜か、とわくわくしながら進んでいったが、実はそれは横道のしだれ桜だった。
この桜は五大桜ではないが、堂々とした大きな木だった。きっと6番目の名桜に違いない。形がなんだかユーモラスな感じもする。花も満開だったが、ヤドリギのせいで緑がかかって見た目はイマイチ。見た目もそうだが、ヤドリギのせいで枯れてしまわないかが気がかりだ。

8:57 坪井のしだれ桜(五大桜)

坪井の桜
坪井のしだれ桜
北アルプスを振り返りつつ坂道を登っていくとほどなくして臨時駐車場があり、その向かいの畑の奥に坪井のしだれ桜が見えた。見目形がすばらしい。
畑をぐるりとまわりこめばすぐ下に入れる。まだ朝9時で人も少なく(臨時売店も準備を始めたばかりだった)、ゆっくりと眺めることができた。左右に大きく枝を広げた姿には風格を感じる。形のよさでは五大桜の中でも一番ではないだろうか。
ところで臨時駐車場は村内循環バス「ふれあい号」の停留所。バス停の時刻表のところになにやら貼り紙があったので読んでみると、桜まつり期間中は渋滞を引き起こす可能性があるためバスは運休とあった。パーク・アンド・ライドの逆だ。停留所が駐車場となってしまっているので仕方ないのかもしれないが、とにかく珍しい手法だと思った。

9:37 中塩のしだれ桜(五大桜)

中塩の桜
中塩のしだれ桜
坪井から中塩までは1/25000図にない近道があるらしいが、駐車場の番をしている人に聞いてみると、民家の敷地を通過しないと行けないという。それに土の道は昨日の雨で状態が悪くなっているだろう。そこで諦めて原宮に戻ることにした。
バス通りまで完全には戻らず、1本手前の裏通り(?)を左に折れて中塩を目指した。この道も花が多くて楽しい道だった。すぐに中塩のしだれ桜が見えた。家を出る前に高山村のサイトで開花状況をチェックしたとき、ここの桜は「散り始め」となっていたが、それでもまだまだじゅうぶん美しかった。住宅地の中にあり、まさに「里の桜」という感じ。木の下に地蔵がちょこんと座っているのがいい。

9:57 ゆうゆう橋

道
北アルプスを眺めながらゆうゆう橋へと向かう
中塩から近くの「ゆうゆう橋」を渡る。できたばかりの橋で、当然1/25000図にはのっていない。橋を渡るとすぐに村営施設の「You游ランド」がある。今日は村主催の「桜トレッキング」が開催されており、この「You游ランド」が出発地点となっている。路面には矢印が引いてあった。トレッキングの道しるべに違いない。ちゃっかり利用させてもらうことにする。

10:19 高山村歴史民俗資料館のソメイヨシノ

資料館の桜
歴史民俗資料館のソメイヨシノ
トレッキングコースの矢印から一時離れて歴史民俗資料館へ。ここは一列に並んだソメイヨシノが盛りを迎えていた。資料館前は小さな広場となっていてトイレがあるので、ここでトイレ休憩とした。館内には入らなかった。ちなみに、今回のコース中でまともなトイレはここだけだった(ほかはすべて工事現場のような簡易トイレだった。You游ランドにもあるとは思うが寄っていないのでわからない)。

10:41 明徳寺のしだれ桜

明徳寺の桜
明徳寺のしだれ桜
資料館から明徳寺までは緩やかな登り坂が続く。
途中、子安神社のしだれ桜は、高山村のサイトからダウンロードした「桜めぐりトレッキングコース」の地図にも載っているので、ぜひ見たいと思い探し回った。神社周辺にはしだれ桜はこれしか見当たらないところをみると、どうやらこれがその桜のようだ。道端にひっそりと佇むほっそりとした姿を、貧相と見るか、はたまた楚々とした美人と見るか。自分には残念ながら前者のほうだった。
汗をかきながら子安神社を過ぎ、明徳寺に到着。しだれ桜は脇の路地側にあり、ごっついワイヤーで引っ張られるようにして立っていた。
枝が隣の古びた建物にかかってしまっているため、被写体としての魅力はあまりない。勢いも門前のソメイヨシノの方が勝っており、そちらの方に目がいってしまう。

10:54 ふたたび歴史民俗資料館

道
戸隠・黒姫を眺めながら資料館へ
幟
巨大な幟がたくさん立っていた
先ほどは登りだったので、資料館へ戻るには下りとなる。車も少なく、正面に戸隠連峰や妙高山を眺めながらの気持ちよい歩き。ここまでほとんど歩きどおしだったので、資料館広場で腰かけて足を休めた。
ところでこのあたりでは、5月の節句だからだと思うが巨大な幟をあげているところが多かった(そういえば昨日寄った小布施の豪商高井鴻山は、幟の揮亳の名手だったとか)。明治時代に書かれたものなどもあった。中でなんとなく気になったのがあるお宅の前の「慈厚懐黎民」というもの。サインを見ると「長野縣知事從四位勲三等大村清一謹書」とあった。帰宅してどんな人かと調べてみたら、のちに内務大臣や防衛庁長官を勤めたほどの人だった。

11:17 資料館の裏の山

山
北越の山々(左から飯綱・戸隠・黒姫・妙高)
資料館からは再び矢印コースに戻る。裏山は結構な勾配で、息を切らせながら登りきる。登りきったところはT字路になっているが、矢印は自分が思い描いていた方向とは逆の左に向いていた。ここは自分のカンに従って右に進む。少しすれば左に下りていく道があるはずだ。
・・・と思っていたのだが。やはり正しいのは矢印のようで、結局また資料館へ通じる県道まで戻ってしまう始末。だが上からはアルプスや北越の美しい山並が見られたので、まあよしとしよう。

皇太神社のしだれ桜

道
果樹園と芝桜の中を行く
皇太神社の桜
皇太神社のしだれ桜
道路と合流した樋沢橋から二ツ石のしだれ桜が近いので寄ってみたが、すでに花は終わっていた。
橋からはまたまた矢印が復活した。こちらはおそらく黒部への短縮コースのものに違いない。今度は素直に矢印に沿って行く。果樹園や畑の中を進む。林に入って抜けると、民家の屋根の向こうに目指す黒部の桜が見えた。満開のようだ。凄い人ごみだろうと覚悟していたが、思いのほか閑散としていた。
坂を下りきった左手に皇太神社があり、マップでも紹介されているしだれ桜がある。みかけは立派だが終わりかけで、ずいぶんと葉が出ていた。盛時はさぞや美しいだろう。

11:54 黒部のエドヒガン桜(五大桜)

黒部の桜
黒部のエドヒガン桜と黒姫・妙高
黒部のエドヒガン桜は、畑の中に立っている孤高の一本桜だ。木の周囲は車止がしてあるのが嬉しかった。
枝振りも見事でちょうど満開。すぐ近くに菜の花が咲いており、前景に菜の花を入れると桜の木が丸く浮いたように見える。まさにフォトジェニック。数人のカメラマンが陣どっていた。
根元にある説明書きを読むと、元々は幹が2本に分かれていたが、道から見て後ろ側の幹が10年ほど前の台風で折れてしまったとのこと。そんなわけで、後ろの畑側から見ると枝が少なくてちょっと形が悪い。2本揃っていたときはさぞかし豪勢だったことだろう。
昨夜宿で見たパンフレットに「高山村はいたるところでカモシカが見られます」というようなことが書いてあり、山奥ならともかくこんな人里には出ないだろうと思っていたら、ほんとにカモシカが現れてびっくりした。
光の向きが変わって、西南側からもきれいに見えるようになってきた。1時間近くいたが、まったく飽きない。名残惜しいが次の桜に向けてここを去ることにする。

13:06 謙信道へ

道
山々を眺めながら春爛漫の道を歩く
分岐
謙信道のハイキングコースへの分岐点
春爛漫の風景の中をゆるやかに下っていく。果樹の間からは北越の山々が見えた。
わっかりにくい謙信道の標識から左手の山の中に入っていく。1/25000図には載っていないハイキングコースだ。明るい林床にはカタクリやスミレが咲いていた。ハイキングコースとはいうものの、道はトラバース気味の緩やかな登り。さっき道を間違えた資料館の裏側の方がはるかにキツかった。

13:20 城山展望台

山
城山展望台からの眺め
登りきったところがT字路になっていて(ここがまたわかりにくい)、右に行くと展望台。途中に、展望台まで200m、100mのふたつの標識がある。
展望台は尾根の先端の開けたところだった。こういう場合「展望台」というと開けて見晴らしがいいだけのところが多いが、ここは鉄製のほんとの展望台が建っていた。鹿島槍や白馬などの北アルプスの山々と、飯綱・戸隠・黒姫・頚城がよく見えた。しかしもう光線の具合はよくなくて、だいぶ霞んできてしまった。
テーブルとベンチがあったので、腰をおろして宿からボッカしてきたリンゴを1個食べた。

13:57 赤和観音のしだれ桜(五大桜)

赤和観音の桜
赤和観音のしだれ桜
黒部側と同じように緩やかな道を赤和集落に下る。山道が終わってから赤和観音までまた登りとなる。午後になったせいか車での来訪者が増えてきた。汗をかきかき到着。このしだれ桜も五大桜のひとつに数えられるが、これまで見た3つに比べて見劣りがする。
門前には売店があって、そこの人の話では、この桜は数年前に台風で幹が折れてしまったために貧弱になってしまったとのことだった。また、今年は鳥が花芽を食べてしまったために花の数が少なく見栄えが悪いという。売店には前年やさらにそれ以前の写真が飾ってあり、その盛りの姿と比べてしまうとイマイチ感が増幅してしまうのだった。
余談だが、花芽が鳥に食べられてしまって花が少ない、という木が今年は全国的に多いようだ。ネットで開花状況などを調べていたら、そんな報告を多く目にした。暖冬だと、渡るはずの鳥が渡らなかったりしてそういう結果を招くらしい。

14:30 赤和集落センターのしだれ桜

赤和センターの桜
赤和集落センターのしだれ桜
下りでは周りもよく見え、往きは登りに必死で気づかなかった立派な篠原家のしだれ桜も見えたが、もう花は終わりだった。
下りということもあって赤和集落センターにはすぐ着いた。建物の前には枝振りの良い美しいソメイヨシノがあった。その裏にひっそりと隠れるように小ぶりなしだれ桜が。花はちょっと終わりかけ。幹がぐにゃりと曲がっているが、それでも支柱がないのが凄い。センターの前で休憩していた地元の老人が話しかけてきて、このしだれ桜は赤和観音のものよりも古いという。確かに幹のこぶも凄い。「腰は曲がっているが気丈でしっかりとしたお婆さん」という印象を受けた。
いい木なのにみんな車で赤和観音ばかり目指してここには寄ろうともしない。ひとりじめしたようでいい気分だ。

15:23 水中のしだれ桜(五大桜)

水中の桜
水中のしだれ桜
だらっと下りて尾根を回り、またまた汗をかきかき登って(ここが今日一番キツかった)水中のしだれ桜に到着。本日最後の五大桜だ。日がかげってきたのでカメラのPLフィルタは外した。
この桜は話題になった映画「北の零年」に登場する桜なんだとか。大きさは高山村の桜の中でも一番なのではないか。四方をぐるりと回ったが、どこから見ても均整のとれた立派な姿は、この桜めぐりのラストを飾るにふさわしい。下から見上げたときの、桜の花がなだれ落ちてくるような感覚も随一だ。
しかしこの日は鑑賞には環境がちょっと悪かった。人々が集まれるような広場がない。唯一の広場らしい広場は駐車場となってしまっていて、マナーの悪いカメラマンたちは駐車場の係員に叱られてばかり。危ないから駐車場では撮るなと言われ、大挙して移った先は「お願い:畑に入らないでください」という札の中の向こう側・・・

高山村をあとに

16時のバスに乗るために、水中を15:40に出立した。途中で振り返ると、水中の桜が遠目からもはっきりとわかった
地図を見ながら適当に下っていき、県道に出たら運良く目の前がバス停だった。すぐにバスが来たので停留所の名前を確認するのを忘れてしまった。須坂から小田急ロマンスカーのお古の特急「湯けむり」に乗って長野へ。長野駅前のホテルメトロポリタン長野の和食レストラン「しなの」で信州アルプス牛と戸隠そばのコースを堪能してから帰路についた。
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