晩秋の仙丈ヶ岳 2004年10月16日-17日 テント定着

10月16日 曇り

16日から18日にかけては高気圧に覆われ秋晴れが続くという絶好の予報。しかしどういうわけか曇であった。本日は移動だけだからいいものの、明日が心配だ。

甲府

甲府9:30発バスの席を確保するために早めに家を出た。接続している特急が着くと混むので、それより早い鈍行列車で8:40頃に到着。しかしすでに20人弱の列が出来ていた。まあこれなら座れるだろうと思っていたら、なんとバスを5台も動員して全員着席。おいおいどうしちゃったんだい山梨交通。車を増やしてもらえず広河原まで2時間立ちっ放しの経験がある自分には信じられないのであった。
バスの混雑だけでなく、テント場の混雑も心配だった。甲府11時発のバスでも北沢峠に14時過ぎには着けるのだが、良いサイトがなくなってしまうのではないかと考え、早い便に乗ることにしたのだ。

広河原

夜叉神 - 広河原は崩落によりこの7月まで1年以上も不通が続いたが、ようやく通れるようになった。ただし今シーズンは一般車通行禁止で、マイカー利用の人も夜叉神か芦安に車を止めてバスを利用することになる。おかげで広河原付近のあの強烈な路上駐車はなく、バスはスムーズに広河原到着。
上空はヘリコプターがバンバン飛んでいた。どうやら御池小屋の建設資材を運んでいるようだ。待合所の、激しくデフォルメされた「案内図」に苦笑しつつ(甲斐駒の形と言ったら!!)、北沢峠行きのバスを待つ。周囲を見ると、意外なことに一般の観光客が多い。紅葉を見に来ているのだろう。今年は紅葉の進みが5日から7日くらい早いらしい。しかしそれでも広河原周辺はまだまだといった感じだった。日差しもないのでイマイチ映えない。北沢峠行きのバスに乗り、車窓から見上げるときれいなところが少しあった程度だった。これでは観光客はがっかりしたろう。

北沢峠

長衛小屋
長衛小屋の裏は紅葉がきれいだった
キャンプ場到着は13時。長衛小屋の裏の木が紅葉していた。小屋は増設工事をしていた。心配していたテント場の混雑はそれほどでなく、最終的には40張りくらいだった。2段になっている下の段のサイトには10張りもなかったようだ。
テントを張り、昼食にカップラーメンを食べ、サブザックに次の日の携行品を詰め込んでもまだ14時だった。することがなくなったので一眠りした。曇っているのでテントの中も涼しいものだ。
15時に目を覚ます。相棒は日ごろの疲れなのか、なかなか起きられないようだった。気温は16.2℃だったが(プロトレックを日陰に置いていた)、15:10過ぎに太陽が山の向こうに隠れると一気に下がり、16時には10℃まで下がった。ここで相棒を起こして食事の準備を始めた。

摩利支天
摩利支天が日に輝く
だんだん雲が薄くなってきて、とうとう青空が見えるようになった。テント場からは摩利支天まりしてんの先っちょが見える。その摩利支天を眺めながら食事。
今日の夕食は豚肉味噌漬と野菜炒め、松茸ごはん。久々にワインを担いできた。味噌漬は、冷えても美味しいので山メシ向きだと思った。しかし、17時の時点で気温は8℃に落ち込んだ。さすがに冷えすぎなので、コンロを弱火にして保温モードで食べた。赤ワインも冷えすぎたので、ブランデーのように手のひらで温めて飲んだ。

雲はどんどん少なくなり、最後には夕焼けまで見えた。
大学生くらいの男女混合パーティと、どっかの山岳会のテント初体験グループに囲まれるという、かなり騒々しいロケーションとなったが、ワインの酔いも手伝って18時過ぎには眠れた。天気予報では、この日は平年より気温が低めで朝夕は冷え込むということだったので、防寒対策には念を入れた。靴下は2枚、下半身はズボンとアンダーパンツ、上半身はTシャツ・ウールシャツ・フリースセーターを着て、毛布をかけるようにカッパの上着をひっかけて寝た。スタッフバッグなど、布という布をすべてシュラフの足元に押し込んだ。それでも他にダウンのベストも持っていたし、最後の手段にはツェルトをかければいいと思っていた。結局ダウンやツェルトは使わなくても一晩過ごせた。
20時過ぎにもよおして目が覚めた。外は満天の星空であった。気温は未だ8℃ほどあった。大学生はまだ騒いでいた。

10月17日 快晴

隣の大学生テントの大音声で目が覚めた。3:52だった。ほぼ時を同じくしてテント初体験組も騒ぎ出した。まあ我々もいちおう4時起床の予定ではあったので、ちょうどよいと言えなくもないのだが。
フライシートの内側を触ってみたら、結露した水滴が薄く凍りついていた。思ったより結露が少ないのは、前日の夕食を摂ったのが外だったからであろう。枕もとのプロトレックを見ると3.2℃。さっ、寒い。これは堪らぬとテント内で朝食を準備。今朝はフンギポルチーニのエスプレッソパスタだ。やはり火を使うと効果てき面で、室内は8℃にまで復活した。しかしフライ内側の氷の解凍が急速に進み、テントの前室にはぽたぽたと雫が落ちるようになってしまった。慌てて山靴を避難させた。

5:44 北沢キャンプ場発(高度計:1970m, 温度計:11.0℃)

もたもたしていて結局こんな時間になってしまった。もうヘッドランプは必要ない明るさだった。
上半身はTシャツ・ウールシャツの上にカッパを着て出発。あまりの寒さに、暑がりのため普段滅多につけない手袋をつけた。

5:53 北沢峠(2015m, 9.5℃)

峠は、長衛荘の宿泊客らしき人が2人いただけで閑散としていた。登りは薮沢コースをとるので峠はそのまま通過、林道を長谷村方面に向かう。数分で大平おおだいら山荘への標識があり、林道を離れ林の中の下りになる。標識のところから槍・穂高が赤く染まっているのが見えた。

6:05 大平山荘(1955m, 11.1℃)

山荘前の広場からは槍・穂高がきれいに見えた。ここらで夜が明けたらしく(辺り一帯は斜面の西なので日が当たらない)、体感温度がぐんとあがった。暑がりのかつりんは手袋をとったが、寒がりの相棒はフリースの手袋をしているのにまだ手が冷たいままだという。そこで、かつりんのゴア・ウィンド・ストッパーの冬用手袋をその上からつけた。これでようやく温かさが戻ったということだった。
大平山荘からはいよいよ登りとなる。

6:30 落ち葉の道

落ち葉の道
落ち葉の道
小さな沢を渡ったりしながら、斜面を斜めに登っていく感じで道が続く。30分もすると開けたカンバの林になった。カンバの葉は全て落ちきっていた。落ち葉の道をサクサクと歩くのは楽しい。
ここで相棒がかわったものを見つけた。枯草に霜がまとわりついているのだ。自身の茎から滲み出た水が凍り、ベールのようになるのだという。以前にTV番組で見たのを相棒が覚えていた。見回すとあちこちにあり、なんだかティッシュがいっぱい捨ててあるみたいだった。触ってみたらパリパリと乾いた音をたてて崩れる。たしかに氷だ。相棒も植物の名前は忘れていたので、帰宅後調べてみたら「シモバシラ」であった。そのまんまじゃん。
道はふたたび樹林に入り、斜面を直登するようになる。

7:01 そーっとのぞいて見てごらん(2190m, 13.2℃)

滝
そーっと滝をのぞく
滝の展望台への廃道を分けて、10分もすると滝を見下ろす小広場に到着。地元の学校の看板が笑みを誘う。ずっと休憩していなかったことに気付き、いったんザックを下ろした。
ここで道は直登をやめ、山腹をトラバースするようになる。トラバースの先は明らかに谷地形に見える。

7:14 薮沢

薮沢
寒々とした薮沢の最奥に小仙丈ヶ岳が見える
甲斐駒
振り返ると甲斐駒
傾斜が緩くなり、薮沢に出る。沢沿いは風を遮るものがなく、しかも日陰なので、とにかく寒い。足の筋肉がこわばっている感じで、歩くペースが全く上がらない。
10分ほどで丸太の橋を左岸へ渡る。振り返ると甲斐駒が朝日に輝いていた。花で有名な薮沢だが、もちろんこの季節には花などない。周辺のカンバの葉も落ちきっていて、沢に転がっている流木が荒涼とした印象だ。道は、滲み出た水が薄く凍っているところがあったが、他は歩きやすく問題ない。

8:16 薮沢分岐(2530m, 8.7℃)

小滝
沢に落ち込む小滝は半分凍りついていた
なにしろ寒い。プロトレックは腕に付けているので、値は外気温よりも5℃以上は高いはずだ。
沢を観察すると、水しぶきのあたったところはそのまま凍りついていた。まるごと一株凍って、氷細工のようになっている枯草などもあった。山腹の小さな滝は半分凍っていた。でっかい氷柱が垂れている。滝のしぶきがあたるところは飛沫がそのまま凍って白く、見ているだけでこごえそうな気がした。
ずっと休憩したかったのだが、あまりにも寒い。しかし幸い、緩いカーブで風が弱く感じられるところがあったので、ザックを下ろして斜面に体を寄せるようにしてメロンパンをかじった。テルモスに詰めてきたお湯を飲むと体がじーんと温まる感覚があった。やはり体がかなり冷えていたようだ。
薮沢小屋への分岐に着くと、沢を離れて左岸の斜面を馬の背に向かって登る。ここでようやく日があたるようになった。太陽の偉大さを痛感した。

8:24 馬の背ヒュッテ(2590m, 13.2℃)

登山道
ヒュッテ前のカンバの道
馬の背ヒュッテは今年の営業を終了していた。
ヒュッテ前のベンチに座り、あらためて休憩をとった。一帯はカンバの林で、黄葉していればさぞかしきれいだろう。落ち葉すら見当たらないのは、今年次々とやってきた台風に吹き飛ばされたからだろうか。

8:47 馬の背(2655m, 15.2℃)

仙丈ヶ岳
馬の背から仙丈ヶ岳山頂を望む
10分ほどで馬の背の稜線に出る。カンバの林の向こうに、目指す仙丈ヶ岳山頂が姿を現した。その手前、6年前にはなかった新しい仙丈小屋の、風力発電のプロペラが異様だ。
稜線は背の高いハイマツに囲まれているが、途中でところどころハイマツが低くなっているところから展望が得られる。見事な秋晴れで、目の前の中央アルプスから、はるか遠くに白山までもが見えた。

9:00 稜線を行く

甲斐駒
甲斐駒・八ツをバックに稜線を歩く
快晴の稜線を気分よく歩く。北アルプスは素晴らしく、振り返れば甲斐駒の後ろに八ヶ岳もいた。徐々に気持ちが高ぶっていく。
しかし、予想していたことだが、稜線は風をまともに受けて寒い。ついさっき15℃を超えたばかりのプロトレックの値は再び下がっていった。日なたなので先ほどの薮沢のような底冷え感がないのが救いだ。それでも道端の巨大な霜柱は全く崩れる気配がない。もう9時で、しかも日が当たってるんだけど・・・ 小屋が近くなると、道の左側に小沢が現れた。妙に白い。なんと、凍っているのだった。う゛う゛〜、見てるだけで寒くなってくる・・・

9:32 仙丈小屋(2825m, 12.6℃)

水場
流れ出る水が凍りついた最後の水場
北ア
小屋前からの眺め、槍・穂・笠
「最後の水場」の看板があると、そのすぐ上が仙丈小屋だ。水場の下の石段は、スケートリンクさながらにツルツルに凍っていた。そう、凍った沢の正体は、実はこの水場から流れ出ていた水だったのだ。辛うじて露出している石をおっかなびっくり渡り歩き、どうにかこうにか通過できた。水源自体は凍っていなかったので、水を補給することはできた。
この小屋前も眺めはすんばらしい。秋らしい透明感のある風景を楽しんだ。

9:37 仙丈小屋発(2825m, 12.6℃)

仙丈ヶ岳
薮沢カールと仙丈ヶ岳山頂
トイレを済ませて、いざ山頂へ。ここからは、山頂に人がいるのがよく分かるし、山頂標識も見える。だいたい30分の見当だ。
道は大きく西側に折れ、まずカール壁をジグザグに直登して稜線に出る。それから稜線上をゆるゆると登っていく。高度を上げるとカールの反対側の壁の上から鳳凰が見えてくる。風は相変わらずで、寒い。帰りのバスの時間から逆算して、11時には下山を開始したいと思っていたが、この寒さではとてもじゃないけどそんなに山頂にはいられないだろうなあと思いながら歩いた。

10:04 仙丈ヶ岳登頂(2970m, 12.8℃)

中央ア
伊那谷と中央アルプス、右後ろは御嶽山
快晴の山頂に到着。360度大展望(ぐるぐる写真)。6年越しの願いがかなって気分はサイコー。
中央アルプスが青くて美しい。乗鞍は雪で薄化粧。立山・白馬はちょっと化粧が厚めだ。頚城山脈・八ツ・奥秩父もバッチリ。南アルプスの面々はずらりと勢ぞろい(ぐるぐる写真)。もうこたへられぬ。
風下の岩陰に陣取ってコーヒーを飲んだりどら焼きを食べたりしているうちに、だんだん体が温まってきた。これならのんびりできそうだ。

11:22 下山開始(2995m, 19.0℃)

甲斐駒と八ツ
八ツと甲斐駒と稜線の登山道
山頂には入れ替わり人がやってきて、結構な賑わいだった。さほど広くないので満員状態。大仙丈の方へちょっと下ったところの方が広々として休憩にはよさそうだが、いかんせん風が強すぎる。
天気はずっと安定したままだった。里まできれいに見えるのはやはり秋ならではのことだろう。
そんなこんなで、結局1時間20分も山頂にいた。テントを撤収して15:10のバスに乗るにはもうこの時間が限界だろうということで、山頂をあとにした。

稜線漫歩

小仙丈
小仙丈ヶ岳と小仙丈沢カール。緑の帯がいかにもモレーンっぽい
仙丈ヶ岳
先ほどまでいた仙丈ヶ岳山頂
小仙丈までは稜線歩きとなる。この稜線を歩くのも楽しみにしていた。進むにつれ、正面の甲斐駒がどんどん近づいてくる。右には富士山・北岳・間ノ岳と、南ア南部の山々が連なっている。左には相変わらず北アがよく見える。
振り返ると、仙丈ヶ岳の山頂部がカッコいい。仙丈はよく「南アの女王」とか言われる。しかし、自分には、このきりっとした山頂と、南ア的な大らかな全身からは「女王」はイメージできない。

稜線漫歩2

馬の背
馬の背のカンバ斜面と馬の背ヒュッテを見下ろす
左下を覗き込むと、薮沢の上流部だ。馬の背ヒュッテが見える。完全に葉の落ちきったカンバの、雪の重みでひん曲がった幹の形がよくわかる。「L」字を横に倒した形の木が、斜面いっぱいに広がっているというのはちょっと奇妙な眺めだ。これも、葉が落ちてから雪が積もるまでの間だけの景色なのだろう。
ちょっとした岩場を攀じれば、あと数分で小仙丈に着く。岩場には赤ペンキの○×がくどいくらいについているので初心者でも問題ないだろう。
ずっと日当たりがよかったので、猛烈に暑くなってきた。さっきまであれほど寒がっていたのに・・・

12:07 小仙丈ヶ岳(2845m, 27.4℃)

小仙丈沢カール
小仙丈ヶ岳から秋色の小仙丈沢カールを望む
小仙丈ヶ岳から眺める小仙丈沢カールも、この道のハイライトのひとつだ。この大らかな姿は南アルプスならではと言えるだろう。ザックを下ろして写真を撮りまくる。相変わらず白峰三山や富士山はよく見えている。しかし太陽が南中し、ちょっと逆光気味になってきた。その分、北にある鳳凰・甲斐駒がイイカンジになってきた。
そう、なんといっても今日の最大のスターは甲斐駒だろう。ここから見る姿は、仙丈山頂で見るよりも近いので、迫力の点で勝っているように思う。山腹の北沢周辺の紅葉が彩りを添え、美しさも増している。

12:23 小仙丈ヶ岳発(2825m, 19.3℃)

鳳凰三山
小仙丈ヶ岳から秋色の鳳凰三山を望む
先を急ぎたかったが、このすばらしい眺めである。気づくと15分も経っていた。朝からずっと着ていたカッパはここで脱いだ。
小さくジグザグを切りながら尾根を下り、少しすると樹林帯に入る。

12:54 5合目(2495m, 16.2℃)

樹林帯に入り、20分もしないうちに5合目到着。でっかい看板が立っている。ここからも木の合間に甲斐駒が見える。
そういえば、小仙丈ではひたすら写真を撮ったり景色を眺めたりしていて、まともに休息するのを忘れていた。ここで腰を下ろして軽食をとったりしてしっかりと休んだ。プロトレックの値は朝の馬の背あたりとそう変わらないが、風がないのではるかに暖かい。

13:36 2合目(2160m, 15.8℃)

急坂
急坂を振り返り見る
4合目まで10分、それからちょっと見晴らしのいい3合目まで7分、その後2合目までは15分くらいかかった。
2合目は樹林の中で、小さな鞍部のような地形になっている。直進すると北沢峠に出るが、我々はテント場に戻るので右の近道を進む。
5合目 - 3合目間はかなりの急坂もあり、段差の大きいところもある。拇指球もかなり痛くなってきたし、2回も転んだ。日帰り装備なのでストックはなくてもいいかなあと思っていたのだが、持ってきてよかった。8月の赤石では、中敷なしの登山靴でテントを担いで2,000mの標高差を降りたが、どういうわけか、デイパックひとつ、標高差1,000mの今日も同じくらい辛い。
いったんザックを下ろして水分補給し、足をうりうりしてから出発。

13:53 「あと8分」の分岐(2055m, 15.3℃)

北岳
北沢峠からほど近いところからも北岳が見える
近道は、水平に近いゆる〜い下りで、土の歩きやすい道。スピードアップ可能だ。ほどなく「キャンプ場まであと8分」の看板が出現。そこが分岐点で、直進すると北沢峠に舞い戻り、右に折れると、テント場と林道の合流点付近に出る。ホントに近道なのだ。
つづら折れをずんずん下ると、途中で栗沢山がきれいに見えたので写真を撮ったりした。北岳が紅葉の上ににょきっと頭を出しているさまも見られた。この北岳ビューポイントからほんの10mくらいで林道に合流。

14:03 北沢キャンプ場(1970m, 16.2℃)

「あと8分」から10分かかったが、写真を撮っていた時間を差し引けば確かに8分。
40分でテント撤収完了、北沢峠バス停へと急ぐ。

北沢峠

峠に着いてみると、広河原行きのバスの行列がすでにできていた。並んでみたが4人前で打ち止めとなり、15:00にバスは出発。よくよく話を聞くと、なんとこれが定時のバスだった。広河原から臨時便がこちらに向かっている最中なので待ってくれという。うーん、もうちょっと早く峠に着いていたら・・・ しかし、さらによくよく聞くと、なんとバスは1台だけしか来ないという。ベンチに座っていた人たちも慌てて列に並びだす。遅く並んだ人は広河原まで立ちっぱなしだ。「2台出しゃぁいいのによ・・・」「長谷村見てみろ、バンバン出してるぜ・・・」という呟きが峠に充満する。
案の定、バスは超満員。通路もぎゅうぎゅう詰めで15:20に出発。この最後のバスにはなんと峠の出札職員まで同乗して帰る。「今回一番キツかったの、山じゃなくてこのバスだよ・・・」という呟きが聞こえてきた。
そして、こうなると怖いのは甲府行きのバスだった。

甲府へ

席に座っていたということは、下車が一番遅いということ。甲府行きバスの列に並んだら、やはりほとんど最後尾であった。タクシーも1台もないので、バスに乗るしかない。山梨交通の係員がやってきて、我々の8人前で「ここから後ろの方は座れません」という。ガビーン・・・ 恐れていた事態が現実になってしまった。しかしバスは5台あり、通路でもステップでも好きなところに座っていいからその5台に分乗するように、との指示。なーんだ、それならザックを寝かせて座ればいいじゃん。足伸ばせるからかえっていいかも。
で、乗ってみると、係員の数え間違いだろう、なんと空席が4つもあったので、ちゃっかり座って万事OKだった。しかし仮に空席がなかったとしても、夜叉神で降りる人が結構多かったので、それ以降は座れたことだろう。我々の乗った他の4台のうちのひとつは、半分くらいが夜叉神で降りていた。
甲府駅では、山梨でしか手に入らないワインを土産に買って、臨時のあずさで帰った。みどりの窓口には指定席の自動券売機があったので驚いた。
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