蔵王お釜テレマークツアー 2003年3月21 - 22日 一般旅館利用

3月21日 曇り

山形新幹線

つばさ105号の発車1時間前、東京駅にはすでに行列ができていた。二人ともばらばらになってなんとか席を確保できた。ミニ新幹線に乗ったのは初めてだったのだが、普通の新幹線と違って席が通路をはさんで両脇に2つずつしかなかったのでびっくりした。自由席は喫煙・禁煙ともに1両ずつしかないし、道理で混むわけだ。スキー板を置く設備はあったので、この点はよかった。
福島駅を過ぎて10分ほどすると小雪が舞ってきた。すぐに山間部にはいると、ちょうど少女編を再放送していたNHK「おしん」の風景であった。頭の中から「おしん」のテーマ曲が離れなくなってきた。
11:20、10分ほど遅れてかみのやま温泉駅に到着。この頃にはすでに雪はやんでいた。

蔵王ライザスキー場

かみのやま温泉から、無料シャトルバスに乗りこむ。バスは朝・昼・夕の3往復。ペンション村でバスを降り、とりあえず宿にチェックインして着替える。しかしなんと相棒がカッパのズボンを忘れたことがここで発覚。幸いスキー場にいるので、スキーウェアをレンタルすることにした。ちなみに、我々はスキーツアーをするときは、いつも雪山用のジャンパーとお古のカッパのズボンといういでたちである。
荷物は宿に全部置いて、早速蔵王ライザスキー場へ。まずレストランに入り腹ごしらえ。石釜で焼いたピッツァを売っていたので、試しに3種類のチーズのピッツァを食べてみたら、これがなかなか美味かった。明日も食べようっと。

テレマークスキー教室

あらかじめ予約してあった、ヒュッテハイジのテレマークスキーレッスンを受ける。このレッスンでようやくプルークボーゲンに自信がついた(笑)。しかし講師から得たさまざまな情報の方が収穫としては大きかったと思う。
今年の雪質はすばらしいのだそうだ。3月下旬でこんなパウダースノーは滅多にない。雪も多く、リフトの下の雪を掘るほどだった。こんなことはたぶん10年ぶりくらいではないか。これならおそらくGWは充分滑走可能だろう。でも人件費や人手が足りないため、スキー場の営業はしないだろう。そんなような話を聞いた。
明日お釜を見に行くという我々の予定を考慮してくれたのか、それともあまりの力量の無さに呆れ果てたのか、お釜からの帰りに下る予定のエコーラインを最後に案内してくれた。途中でブナの林の中に入り、トラバースのときのテレマーク姿勢などを教えてもらった。これは役に立つ技術だと思った。それよりも、明日通る予定のルートを下見できたということが大きかった。
スキー場からは、クロカンコースをそのまま下って宿へ帰った。

宿

宿はスキー場のちょっと下、ペンション村の原ペンション。WEBサイトの写真で外観を想像していたのだが、雪にほとんど埋もれていてまったくわからなかった。食事はフルコースの形式で、白身魚のロールキャベツなど工夫もあっておもしろく、とてもおいしくいただけた。その他は、あらゆる意味でシンプルな宿だった。
昼間のレッスンの疲れか、20時過ぎには眠ってしまった。

3月22日 快晴

リフト終点付近の樹氷群
リフト終点付近の樹氷群
微風快晴。すばらしいツアー日和だ。出発前にネットなどで山行記録を探したのだが、お釜ツアーは悪天・強風が圧倒的に多い。なんという幸運だろう。リフトの周囲は大きな樹氷たちに囲まれている。後ろには吾妻・飯豊・朝日・月山と、山形の名峰たちが全て見えた。すばらしい山行になる予感がした。

9:50 出発(高度計:1475m, 温度計:19.5℃)

出発地点
出発地点
朝日連峰をバックに登る
朝日連峰をバックに登る
リフトを降りてシールを着け、道標に従って出発。道標は結構短い間隔で付いているが、それでもガスると見落とすこともあるという。今日はそういう心配はまったくない。気温も暑いくらいで、最初からシャツ2枚で歩く。
いきなり樹氷に囲まれた道だ。樹氷はリフトの周囲のものより小さめのものが多いようだ。本体のアオモリトドマツ自体が、もうこの標高では大きく育たないのであろう。

10:10 お田の神(1555m, 19.9℃)

お田の神
お田の神の眺め、左端が熊野岳、右端が刈田岳
エコーラインを2度横切ると、シール付きでも直登できない短い坂になる。斜登高で小さく2度ほどジグザグを繰り返して登りきるとお田の神だ。広々とした雪原の向こう、左手に熊野岳、右手には刈田岳が見渡せる。どちらの山頂にも神社があって、雪に覆われた社も分かる。
異様なのは右前方の、夏の観光リフトであった。支柱が氷に覆われ、まるで氷の門が並んでいるように見えた。観光リフトは2本あり、向かって左側は廃止路線だという。しかし、避難小屋よりも大きな駅舎が残っており、休憩するにはよさそうだ。先行していたかんじきトレッキングツアーの大部隊がちょうど休憩をとっていた。

リフト脇を登る

雪の斜面
雪の斜面を登る
リフトに沿って登るかんじき部隊
リフトに沿って登るかんじき部隊
ほとんど平らな雪原を観光リフトを目指して歩く。シールを着けたままなのでスキーの滑りは悪い。かんじきらしきトレースが2本のリフトそれぞれの下に付いている。リフト沿いに行けば道に迷う心配がないからだ。しかしリフトの下はスキーで歩くにはちょっと急なように思えた。
見上げると、刈田岳に向かって直登している山スキーヤーがいた。我々は途中までその跡に従い、斜度が急になったところで進路を変え、向かって右の観光リフトの右側の、まだ誰も歩いていない斜面を登っていった。気付くとすぐ隣、リフトの下をかんじき部隊が我々に並ぶように歩いていた。

11:12 刈田岳登頂(1765m, 16.4℃)

雪の要塞
雪に覆われたレストハウスが要塞のようだ
右奥に再び刈田岳山頂が見えてきたところで、リフトから離れて右に曲がり、刈田岳を目指した。かんじき部隊はそのままリフトに沿って行くようだ。稜線に出たことで、クラストしたがりがり道になる。喉が渇いてきたので雪を食べながら歩く。少しシャリバテ気味で、山頂が見えてから15分ほどかかってようやく登頂できた。宮城県側からも人が次々とやってきた。山スキーの人が多い。みな凍りついた神社の鳥居の前で記念撮影をしていた。遅れてかんじき部隊がやってきて、豚汁パーティーが始まった。
予定ではこの刈田岳でのんびり昼食をとって、そのままライザスキー場に下るつもりでいた。しかし熊野岳へと続くこの馬の背稜線はとても気持ちよさそうな道だ。今日は天気もいいし、大好きな稜線漫歩と行こうではないか。というわけで予定変更、軽食で済ませて熊野岳へと向かうことにした。

11:34 刈田岳発(1740m, 10.3℃)

氷結したお釜
氷結したお釜
凍りついたお釜を眺めながらスキーで下る。道は踏み固められておりちょっと怖かったが、シールをつけたままなので適度にスピードが押さえられ、難なくクリアできた。
そういえば今回は凍ったお釜を見に来たんだったっけ。でもなんだかあまり感動しない。夏のお釜を見ていないせいだろうか?

11:45 夏リフト終点を通過(1700m, 5.7℃)

馬の背稜線と熊野岳
馬の背稜線と熊野岳
馬の背稜線の道標
馬の背稜線の道標
広々とした馬の背稜線は、風が西から東へと吹き抜けるので、無数のえびのしっぽが西側に発達している。雪だまりも複雑に盛り上がり、熊野岳に向かって北上するとまるで波をかきわけて進む小舟のように上下動を繰り返すこととなった。あまり快適とは言えないなあ。
ちなみに、稜線の中心部からはお釜は見えない。刈田岳か熊野岳の方に寄らないと、自らの腹で見えないのだ。

12:35 熊野岳登頂(1835m, 4.2℃)

熊野岳山頂付近
熊野岳山頂まであと少し
馬の背をずっと進み、熊野岳避難小屋の真下に着く。小屋に向かって直登している山スキーヤーもいるが、ここは夏道のように斜登高で山頂を目指すのが正解だろう。登りきると広い稜線に出て、奇妙な雪のでっぱりが見える。それが雪に埋もれた神社で、蔵王最高峰の熊野岳山頂でもある。
ちょっと霞んでしまっているのが残念だが、それでもすばらしい眺めだった。朝から見えた吾妻・飯豊・朝日・月山に加えて、ここからは鳥海山も見える。この眺めを満喫したくなり、帰りの16時のバスにはこだわらずに、思う存分ゆっくりすることに決め、ちょっと遅くなった昼食をとることにした。今日はおでんとマグヌードル、デザートにスポンジケーキを食べた。
おでんを食べ終わったころ、行きから刈田岳まで一緒だったかんじき部隊ががやがやとやってきた。また、地蔵岳方面からも板を担いだアルペンスキーの軍団がやってきて、山頂は急ににぎやかになった。

13:30 熊野岳発(1835m, 4.1℃)

熊野岳斜面を下る
熊野岳斜面を下るかんじき部隊
登ってきた斜面を斜滑降で下る。ちょっと不安なのでシールはつけたままだ。熊野岳の南斜面は下りきったところが窪地状になっているので、途中から直滑降に切り替え、猛スピードでそのまま乗り切る。・・・つもりだったが途中で自爆。雪にまみれるのが楽しい。ようやく起き上がりあたりを見回すと、1列になったかんじき部隊が遠くを転がり落ちていた。我々はそのまま馬の背稜線を行き、かんじき部隊は我々の50Mくらい右手を並走する格好となった。アルペン軍団が猛スピードで我々を抜き去っていった。アルペン軍団は夏リフトまで行かずに右(西)に進路をとり、沢の中へと下っていった。このあたりは広々とした雪原となっているが、稜線に近いこともあって、雪面は風でうねり、ちょっと滑りにくい。かんじき部隊はいつの間にか姿を消していた。我々はしばらくアルペン軍団のトレースを追っていき、トレースが沢の中へと急下降しはじめたところでリフト側に転進し、沢の左岸の斜面をトラバース気味に斜滑降で下っていった。

14:33 夏リフト中間でシールを外す(1560m, 4.3℃)

お田の神を見下ろす
お田の神を見下ろす
斜度もゆるやかになってきたし、行く手はお田の神の雪原なので、シールを外すことにした。夏の観光リフトのだいたい中間点あたりだった。少しだけターンを使って下りてから、思い切って直滑降することにした。楽に遠くまで行くためだ。・・・ったのだが、ここでも自爆。

お田の神

エコーライン
お田の神付近のエコーライン
お田の神のすぐ直下、往きにジグザグを切って登った急斜面は我々にはヘビーだと思い、お田の神からエコーラインを下りることにした。道路標識も頭を覗かせているので迷うことはない。クロカンらしきトレースがついていた。
エコーラインはゆるやかにカーブを描いているが、そのカーブを適当にショートカットする。カーブの内側は樹氷の森となっていて、その間を縫うようにして滑るのが楽しい。しかし樹氷は根元が大きくくぼんでいたりするので注意が必要だ。うっかりすると進退窮まる、なんてこともある。

15:17 リフト終点付近(1425m, 5.1℃)

樹氷原を滑り降りる
樹氷原を滑り降りる
で、ようやく本日のスタート地点付近まで戻ってきたわけだが、なななんと。昨日ここから下ったとき、エコーラインは自然の雪のままだった。それが今日は圧雪されているではないか。しかもクロカンのトレースが錯綜しており、午後も3時を過ぎるともうカチンコチンなのだ。
こんなんじゃあ楽しくない・・・

16:18 蔵王ライザスキー場着(1080m, 4.4℃)

エコーラインは、1本目のリフトの中間くらいまでが除雪されていた。除雪区間まで、ずっとエコーラインを下った。道路に降りるとそのまま車道を歩いて下りなければならないので、雪のついた崖をなんとかトラバースしてスキー場へ入った。1時間ずっとふんばっていたので、ようやくスキーを脱いだときには膝の内側が痛くてたまらなかった。
スキー場のレストランに入って早めの夕食とした。ピッツァ・マルゲリータとそば粉のクレープ(サーモン)を注文して、クレープに合うというシードルで乾杯した。ピッツァは昨日の方が美味しかった。シードルは追加して結局2人で5本飲んだ。
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