入笠山 2003年1月13日 日帰り・単独

1月13日 晴れ

ゴンドラ山頂駅前からの眺め
ゴンドラ山頂駅前から八ヶ岳方面の眺め
始発列車で家を出て電車を乗り継ぎ、おなじみの高尾6:15発の松本行き普通列車に乗り込む。スキー板を担いでいる人は見当たらない。朝食のパンを食べて一眠りし、目覚めるとなぜかいつも甲斐大和駅のあたりだ。電車が甲府盆地に入ったところから景色を眺めるのが楽しくなる。勝沼付近からの白峰三山。線路がぐるっと弧を描くと塩山あたりから富士山が見える。甲府を過ぎてからの鳳凰三山。小淵沢手前で八ヶ岳。あれ・・・なにか足りない・・・あっ、甲斐駒。甲斐駒は、と・・・え・・・雲の中?・・・すると、ごく近い入笠山もひょっとして?・・・そんなあ・・・
しかし入笠山は晴れていた。よかったあ。富士見駅で列車を降り、バスで富士見パノラマスキー場に向かう。バスは片道10分、300円。乗客は自分も含め5人だけだった。
スキー場の無料休憩所で身支度を整え、ゴンドラに乗る。ゴンドラ内からも八ヶ岳がすばらしくよく見えた。期待は膨らむ。曇る前に登って景色を見るぞう!!

9:43 出発(高度計:1715m, 温度計:5.4℃)

アンテナ塔
標識はアンテナ塔の裏へと誘うが(写真は帰りに撮影)
標識に従って入笠湿原を目指す。まずはごく短く、緩い林道の登り。板のウロコが効かず、逆ハの字でなんとかしのぐ。あとで気付いたのだが、ウロコが効かなかったのは、初めて履いたプラブーツで拇指球のところに上手く力が入らなかったためらしい。
登りきったところにアンテナ塔が。そして標識はその裏を指し示している。裏は木が密集して、ちょっとスキーではつらそうだったが、スキーのトレースもついていた。さんざん迷ったがその道は採らずに、林道をそのまま滑り降りた。道の中央はでっこぼこに踏み固められていたので脇の新雪に乗り換えたが、やはりスキーのコントロールが全く効かず、あっという間に転んで雪の中にヘッドスライディングだ。やれやれ・・・

10:10 早稲田寮(1760m, 1.9℃)

入笠湿原
入笠湿原
下りきったところはT字路になっていて、すぐそばには早稲田すずらん寮がある。ここも標識にしたがい左に進路をとる。するとすぐに、雪に埋もれた入笠湿原が視界に入ってきた。Uの字を描いて湿原を半周したような感じだ。
さて湿原の右手(ゴンドラ駅方面)はなだらかなスロープとなっており、いくつかシュプールがついていた。そーか、ここを滑ればよかったんだ、と思ったが後の祭り。

10:36 マナスル山荘(1715m, 0.9℃)

マナスル山荘裏
これはマナスル山荘裏の斜面
湿原を過ぎるとすぐ登りになる。しばらくすると左に道を分ける三叉路を直進するが、そこから斜度が少し増し、とたんにウロコが効かなくなった。坂の上はすぐそこに見えるが、効かないウロコで体力を消耗するよりは、と、シールをつけて登ることに。あっという間にマナスル山荘に着いた。
山荘の裏には緩やかな斜面が広がっていた。小入笠だ。帰りに時間があったら寄ることにして、まずは入笠山登頂を目指す。
マナスル山荘の目の前は実はスキー場の跡地で、見事な斜面が広がっていた。スキーやらスノーシューやらさまざまなトレースが付いていた。登山道は踏み固められて狭くて急に見えたので、その斜面をジグザグに登っていった。斜面はふかふかのパウダースノーで、スキーを履いても膝までもぐってしまう。

11:22 スキーをデポする(1840m, 3.3℃)

旧スキー場を登りきると、スノーシューのトレースは右に曲がって登山道へと戻っていった。しかしスキーの2本線は、くっきりと、まっすぐ林の奥に伸びていた。林の中を滑り降りてきたようだ。さては頂上から滑ってきた人がいるに違いないと思い、雪の堅い急な登山道には戻らず、林の中へと進んだ。このまま、山頂を中心とした渦巻き型に斜登高で登っていけば頂上までスキーを履いたまま登れるかもしれないと思った。
しかしやがて木がだんだん密度を増してきた。このシュプールの主は相当上手いのだろう、ものすごく狭い樹間を抜けていた。木が密集しすぎて、ついにジグザグ登高ができなくなってしまった。斜面は急で、シールを貼っているのにずるずる後退してしまう。しかたがない、引き返して登山道に合流しよう。右後ろを見ると遠くに人が歩いているのが見えた。しめた、あそこまで行こう。
と、いうわけで、へとへとになりながら登山道にたどり着き、スキーを脱いだのだった。

11:35 入笠山登頂(1900m, 5.2℃)

入笠山頂
入笠山頂標識と中央アルプス
デポ地点からすぐに45度くらいの急坂になった。今日はアイゼンは持っていない。スノーシューできれいに固められている斜面を、キックステップで蹴り込みながら登っていく。振り返ると蓼科山、続いて八ヶ岳の山並みも見えてきた。スキーを脱いでからほんの10分ほどで登頂できた。そう、山頂のすぐ下までスキーで来ていたのだ。
山頂は、期待通り360度の大展望(ぐるぐる写真)に、今まで数えるほどしか経験したことのないような上天気。北アルプスも全て見える(ぐるぐる写真)。電車からは見えなかった甲斐駒もすっきり晴れ。真正面の八ヶ岳は美しく、ずうっと眺めていても飽きなかった。3連休の最終日だからか、他には単独の人がひとりだけで、静か。もうサイコーの気分だった。
しかし山頂は風が強く、吹きさらしでとても寒い。温度計の値だけ見ると暖かそうだが、体感ではずうっと寒かった。特に写真を撮ろうと手袋をはずすと、風でぶれるので狙いがなかなか定まらないこともあって冷え切ってしまった。おかげでぐるぐる写真もかなり斜めになってしまった。

12:04 下山開始(1900m, 1.3℃)

山頂直下の急坂
山頂直下の急坂を前にアイゼンを取り出すパーティ
直下の急坂はちょっと怖かったが、グリセード気味に降りたらなんのことはなかった。山頂で会ったりすれ違ったりした人のうち半分以上はアイゼンかスノーシューをつけていたようだった。
デポしたスキーを回収。そのままザックにつけて登山道をツボ足で下る。ちなみにデポ地点までは下りではものの5分とかからなかった。

12:16 旧スキー場

旧スキー場
旧スキー場を見下ろす。後ろは蓼科山
旧スキー場までやってきた。スキーの出番だ。シールをはがしてレッツゴー!!
・・・しかし雪はあまりにもふかふかで板がもぐってしまい、スキーを全くコントロールできなかった。曲がるとか、そういうレベルではない。ほんの数メートルでコケる。すると今度は立ち上がれない。板がもぐったまま出てこないのだ。そういえば自分の左足も見つからない。太腿から徐々に自分の足を掘り出していく。ようやくブーツが見えた。次は板を掘り出す。よっこらしょっ・・・うわ、足首が曲がらない!! そうだ、今日はプラブーツなんだっけ。前後には曲がるけど左右に曲がらないから横座りの姿勢から立ち上がるのが一苦労。
はあ・・・マナスル山荘はもう見えているというのに、いったいいつになったら抜け出せるのだろうか・・・

13:00 マナスル山荘着(1740m, 5.1℃)

マナスル山荘のきなこもち
マナスル山荘のきなこもち(700円)
朝、電車内でパンを食べたきり何も食べていなかったことに気付いた。山荘でなにか軽食はないかと入ってみたところ、山菜そばときなこもちが出来るというので、もちを食べた。2個で700円・・・お茶をたっぷりといただいてから、山荘を出発。
なお、山荘ではクロカンスキーのレンタルもやっているようだ。

13:37 入笠湿原

入笠湿原のスロープ
入笠湿原のスロープを見上げる
山彦荘手前で林道を外れ、白一色の入笠湿原に入り込んだ。帰りはこのスロープを敬遠して林道を迂回する人が多いようだ。どうしようか迷ったが、シールを貼ってスロープを登ることにした。途中で気が向いたら1本滑ってもいいし。
最初は順調に、他人のシュプールの上を進んだのだが、途中で斜度がきつくなってシールが効かなくなってきた。やむを得ず斜登高でジグザグに行くことにする。こうなるとラッセルで疲労が倍増。もう「気が向いたら」なんて言ってられない。まず左斜めに登って、よし、ここでキックターン・・・あれ、できない。ブーツのせいか、はたまたケーブルがきつすぎたのか、板がブーツにくっつきすぎて、いつもよりうんと足をあげないとキックターンができないのだ・・・
どうにかこうにか登りきると、トレースは左前方の林の中へ。木々の間からアンテナ塔が見えた。

14:23 ゴンドラ駅着(1725m, 1.5℃)

ゴンドラから八ヶ岳
ゴンドラからの八ヶ岳の眺め
林の中を進んで林道と合流した地点は、往きに分岐で悩んだアンテナ塔だった。つまり、アンテナ塔前の標識どおりに林に入っていれば入笠湿原のスロープ上に出てくるということだ。
アンテナ塔からそのままゴンドラ駅へ下って本日の行程は終了。
威勢良く滑り降りていくスキーヤーたちを尻目に、誰も乗らない下りゴンドラで帰還。雲は多くなったものの、まだ正面には八ヶ岳が優美な裾野を広げている姿が見えた。
ページ内を句点で改行する