八甲田・紅葉・湯けむりまったり紀行 2002年10月12日-14日 テント定着

10月12日 快晴

連日突貫工事で仕事を進めた結果、なんとか12日から14日までの3連休は確保できた。しかしそのおかげで直前の3日ほどは深夜の帰宅が続き、11日も帰宅が午前3時となってしまった。始発列車に乗るために4:30には家を出なければならない。全く準備ができていなかったので、パッキングして軽く風呂に入ったらもう出発の時間になってしまった。行き先は最後の最後までどこにするか迷い、11日昼にようやく八甲田に決めたところだ。相棒Kはテント2泊分の準備こそ済ませていたものの、出発するまでどこに行くかも知らされていない状況だった。

青森へ

貫徹ではあったが今日は移動だけである。新幹線も3本見送って席を確保、猛爆睡。盛岡からは特急はつかりの臨時便が出ていたが見送って、かつりんは鮭いくら弁当、相棒は前沢牛弁当を買って、次のはつかりの座席に着いて食べる。ビールも入ってさらに超爆睡。13:30に青森に着いたころ、ようやく睡眠不足の分を取り返したように思えた。
14:30発のバスを待つ間に駅前をうろうろする。青森駅前の観光案内所の紅葉情報によると、紅葉前線は山の上は終って酸ヶ湯あたりまで下りてきているということだった。駅前のリンゴ屋で夕食デザート用のリンゴを購入。さすが青森、果物屋ではなくて「リンゴ屋」の看板なのであった。

酸ヶ湯へ

酸ヶ湯の重々しい看板
酸ヶ湯の重々しい看板
JRバスで酸ヶ湯へ。途中、萱野茶屋停留所で休憩をはさむ。ここでは「1杯飲むと3年、2杯飲むと6年、3杯飲むとなんと死ぬまで長生きする」というなんとも哲学的なお茶が無料で振舞われていた。また「そば粉100%酸ヶ湯そば」なるものも食べさせていて、麺好きな我々二人は大いに食指をそそられたが、この茶店は酸ヶ湯温泉直営ということなので、明日以降食べる機会はあるだろう。
酸ヶ湯には15:30ころ到着。反対車線は紅葉狩り帰りの車で猛烈な混雑だった。

キャンプ場

キャンプ場の水場と炊事場
キャンプ場の水場と炊事場
早速、バス停から数分のキャンプ場に向かう。管理棟の前の運動広場も仮設駐車場になっていたりして、なにしろ車だらけだ。幸いテントのスペースは林の奥にあり、車の影響はない。この管理棟の前から大岳が正面に見えるのだが、ちょうど夕日を浴びた紅葉が本来の色以上に赤く、実に見事な眺めであった。
テント場は、駐車場から近いこともあるのだろう、巨大なテントにタープを張って優雅に炭火で調理、なーんて人たちが多かった。また、バンガローもあって、そちらは車の乗り入れもできる。

その夜

テント場の紅葉
テント場の紅葉
テントを張り終えた頃にはかなり寒くなってきたので、今日は風呂に入るのはやめることにして、とりあえず温泉「街」の偵察にでかけた。宿には売店と食堂があり、食堂では予想通り、酸ヶ湯そばもメニューに載っていた。宿の売店で夕食のために十和田アップルワインを購入し、テントに帰った。
で、夕食はハンバーグ、サラダ、おこわ飯、千秋リンゴ。リンゴを食べたら腹いっぱいになってしまいスープは飲めなかった。やはり疲れがあったのか、食べ終えたらすぐに眠くなり、少し離れたところに陣取った大パーティの大宴会の騒音もものともせずにぐっすりと寝てしまった。

10月13日 快晴

6時起床。7時に出発、10時ころ山頂という計画だ。ロープウェイの始発時間から計算して、10時までに山頂に着けばさほど混雑はないというヨミだ。夜中に寒くて一度目が覚めた。あとで知ったのだがこの日の明け方は青森市内でも6℃まで下がったということだった。6時の温度はテント内で9℃であった。
うだうだと準備しているうちに7時を過ぎてしまった。最初は厚手のTシャツ+フリースセーター+カッパという格好だったが、トイレに行ったりしているうちに日が当たってきて暑くなり、結局Tシャツ+カッパで出発することになった。

7:32 出発(高度計:910m, 温度計:20.1℃)

登山口
登山口
酸ヶ湯の古い建物の脇に登山口がある。いきなり急登が見える。道は右手にまわって美しいブナの森にいったん入り、抜け出ると先ほど登山口からよく見えた草の斜面に。この標高差100mを一気に登りきると、ほとんど平坦なぬかるみ道となる。
観光客対策なのだろうか、ぬかるみには、かつりんが今まで見たことのない、木の「飛び石」がひんぱんに置いてある。ぬかるみに足をとられることもなく、石より安定している。こいつは具合がいい。

8:14 下毛無岱(1065m, 24.7℃)

下毛無岱から主峰群
下毛無岱から主峰群
下毛無岱から岩木山
下毛無岱から岩木山
小さなアップダウンをだらだらと繰り返す。高度計は1000m前後を上がったり下がったりするばかり。やがて前方が開けてきて湿原になったところが、下毛無岱だ。前方の逆光の中に北八甲田の主峰たちが居並び、振り返ると木道の先に岩木山が浮かんでいた。
もうすっかり暑くなり、カッパはこのあたりで脱いでTシャツ1枚になった。

8:31 木の階段

下毛無岱のようす
下毛無岱のようす
湿原のどん詰まりで、段差が小さく比較的歩きやすい木の階段が出現する。10年前の記憶が蘇る。この階段からの下毛無岱の眺めは実に美しいのだ。期待に胸をふくらませながら、1、2の3で振り返った。
眼下には草もみじの下毛無岱が絵葉書さながらの美しい景色で広がっていた。(大きな写真:60KB)
期待通りの景色に満足していたが、通りかかった地元のおじさんは「今年は最悪だ、いつもなら赤い色が入ってきれいなのに」と愚痴っていた。

8:52 上毛無岱ベンチ(1235m, 30.5℃)

下毛無岱の眺めに別れをつげ、木道をふらふらと歩くと半壊状態のベンチが現れた。上毛無岱の方が下よりも広いようだ。あたりは一面の草もみじである。(ぐるぐる写真

9:10 上毛無岱発(1265m, 31.3℃)

10:02 大岳避難小屋発(1485m, 26.9℃)

大岳避難小屋
大岳避難小屋
針葉樹の林の中をなんとなくだらだらと歩いていたらいつの間にか小屋に着いてしまった。なにしろ好天で暑いので、ズボンの下に履いていたタイツを脱いだ。
ここで大部隊に遭遇。20人くらいはいるだろうか。また、井戸岳の斜面を見るとどんどん人が押し寄せてくる。どうやらロープウェイで来た人のラッシュが始まったようだ。大部隊は山頂方面へと向かっていった。

10:24 大岳登頂(1610m, 22.3℃)

山頂は大賑わい
山頂は大賑わい
大岳登頂。山頂直下からは毛無岱が一目で見渡せるところがあり、カメラマンがひとり頻りにシャッターを切っていた。
山頂は先ほどの大部隊のせいもあってものすごい大混雑であった。快晴で、眺めはすこぶるよい(ぐるぐる写真)。遠く岩手山が、いかにも「片富士」の名にふさわしい姿で横たわっているのも見えた。しかし快晴すぎてまぶしく、陸奥湾などは霞んでいるような感じに見えた。なんと贅沢な悩みだろう。この僥倖にひたすら感謝したのだった。

11:06 下山開始(1590m, 26.1℃)

酸ヶ湯のあたりがちょうど紅葉の盛りだ
酸ヶ湯のあたりがちょうど紅葉の盛りだ
みかんなどを食べてのんびりと過ごしてから下山しようと立ち上がると、突然近くで叫び声が。「安全だいいーち! 安全にしゅっぱあああつっ!」・・・ずいぶん気持ちよくなっているらしく、この20人ほどの「安全部隊」は意気揚々と出発した。
下り始めてすぐのところから酸ヶ湯方面が見えた。遠くには岩木山が山水画のように美しい。やはり酸ヶ湯周辺が一番色づいているようだった。

11:20 大渋滞

大渋滞
大渋滞
安全部隊と、登りの大パーティがすれ違いで大渋滞を巻き起こしていた。道は崩壊を防ぐためだろう、なんと蛇籠で囲われてかなり狭く、追い抜くどころか人がすれ違うのがやっとという有様だ。
ロープウェイから登って毛無岱を下る人が多く、仙人岱コースは空いていると予想していたのだが、意外にも人が多い。しかもすれ違う人のいでたちをよく見ると、Gパン+スニーカーの素人風の人が大半だ。・・・そうか、我々と同じ、もしくは逆コースなら酸ヶ湯に戻るので、車を置きっぱなしにできるのか。なるほど、気軽に歩けるわけだ。

11:53 仙人岱着

仙人岱の水場と小岳
仙人岱の水場と小岳
結局安全部隊の、文字通り後塵を拝することになってしまった。おかげで仙人岱まで30分で下りる予定が50分近くかかってしまった。仙人岱の辺りは木道が複線になり、水場にはベンチがあった。そして安全部隊は予想通り、仙人岱の水場で大休止するのだった。
高田大岳まで縦走するプランもあったのだが、ここまで時間がかかりすぎたのと、帰りに猿倉温泉から酸ヶ湯までバスに乗らなければならないので渋滞が心配なのとで、素直に酸ヶ湯に下ることにした。
というわけで、ここでようやく安全部隊を抜き去ることができたのだった。

12:30 紅葉のトンネルを行く

紅葉の道
紅葉の道
仙人岱から湧き出た水はいつの間にか立派な沢となり、その脇を歩いてゆく。やがて左岸が崩壊している地点を過ぎると立派な橋で対岸に渡り、よく踏み込まれた歩きやすい道に変わる。このあたりから紅葉が美しくなってきた。標高はだいたい1000m辺りだろうか。

13:21 酸ヶ湯に帰着(930m, 24.1℃)

カンバの黄葉の道
カンバの黄葉の道
いったいいつ下っていたのだろう、と思うくらい、下りを意識しないでだらだらと歩いていると、最後に鳥居をくぐって酸ヶ湯に到着。宿の裏手のちょっと上のところで、あたりは工事中だった。駐車場でも作っているようだった。宿へは近道があるようだが、テント場へはそのまま車道を下っていった方が近い。

酸ヶ湯温泉にて

酸ヶ湯
酸ヶ湯
テントに戻りザックを置き、タオル・着替えを持って酸ヶ湯の宿へ。まだ日も高いし、今日は暖かいので湯冷めすることはないだろう。
まずは食堂の「鬼面庵」。店内は人でごった返していた。空いた席に先を争うようにさっと座る。早速ざるそばを注文したがもう終わりで、温かいそばしかないと言う。少々不満だったが仕方ない。かつりんは天ぷらそば、相棒Kは山菜そばにした。天ぷらそばというのでえび天だとばかり思っていたらなんとかきあげ。メニューをよく見るとえび天そばというのが別にあった。そういえば天ぷらそばの方が山菜そばより安かった。その時点で気付くべきだったのかもしれない。まあかきあげも嫌いじゃないので別にいいや。
さて肝心のそばのお味はというと、温そばだったので風味はよくはわからなかったがまあ美味かった。麺は真っ白だった。芯の方を使っているのだろう。

名物千人風呂

汗だくになって店を出て、次のお目当ての温泉へかつりんは名物千人風呂、相棒は内湯に入ることにした。湯は白く濁ってさらさらしていた。両手ですくって顔を流すと、目に湯が入ってしみて、しばらく目が開けられなくなるくらい痛かった。「酸ヶ湯」というだけのことはある。相棒は肌に合わなかったらしく、その夜から翌日にかけて体中にじんましんのようなものが出てきた。(翌日夜にはもう治った)
さて千人風呂は脱衣所が男女別になっている混浴風呂である。千人風呂というので、どでかい浴槽がひとつどどーんとあるものだとばかり思っていたが、熱の湯・冷の湯・四分六分の浴槽と、湯滝という打たせ湯がひとつ、という構成。酸ヶ湯公式サイトの「湯治のしおり」に写真や見取り図があるので参照していただきたい。熱の湯はちょっとぬるめで気持ちよかった。冷の湯は、のぼせ防止のために頭からかぶるためのごくぬるい湯で、四分六分の湯が一番熱かった。四分六分の湯の浴槽の湯の噴出し口には猪口が置いてあり、湯を飲むこともできる。ただし1〜2杯が適量とのことで、やはり成分が強いのだろうと思った。
熱・四分六分のそれぞれの浴槽の脇には「男性はこれより通行ご遠慮ください」という木の看板があって、ほぼ中央で女性ゾーンと男性ゾーンに分けられているなど女性への配慮もあるものの、やはり堂々と入るには勇気が要るようだ。一緒に仲良く入っている夫婦もいたが、やはり女性は多くはなかった。売店には「湯浴み着」なるものも売っていて、使っている人をひとり見かけた。TVの温泉番組などでは女性が大きなタオルを体に巻いて入るが、その状態で縫い合わせて、脇の周囲にゴムを入れた形になっている。
相棒によると、女性内湯はたいそう狭かったそうだ。しかしドライヤーが備え付けてあったそうな。

風呂あがり

風呂から出たあとは食料売店へ。ところで今回、油を持ってくるのを忘れてしまった。2日目の野菜は袋にセットで入っているラーメン用の野菜で、メインがもやしなのだ。ここは元来湯治宿である。湯治客相手の売店になにかよい食材でも売っていないかと探しに来たというわけだ。サラダ油も置いてあったがどでかいボトルだったので、コンビーフのような油分が多く野菜と一緒に炒められる食材を、ということになった。残念ながらコンビーフはなかったので、鯨の大和煮の缶詰を買った。
宿の前のベンチに腰掛け、かつりんはビールを飲み相棒はソフトクリームを食べて、ま〜ったりとしてからテントに帰った。帰り際にふと気になって、車やバスの通行整理をしていた宿の職員に「朝一番のバスはいつも混みますか」と尋ねたところ、きっぱりと「混みます」という。なんでも、酸ヶ湯に車を停めてバスでロープウェイ駅まで下り、山を縦走して酸ヶ湯に帰ってきて車で帰る、というパターンなんだとか。こりゃあ明日は早く並ばないとなあ・・・

テントに帰る

夕食はふくカレー、鯨やさい炒め、トマト、スープ、ふじリンゴ。カレーは山口県産のレトルトカレーで、「ふく」とは下関名物河豚のことである。たしかに白身の魚肉が入っていたがなんだかぼそぼそしていて、これじゃタラが入っていてもわかんないなあと思った。カレー自体は美味かった。鯨やさい炒めは、元々大和煮なので甘ったるかったが、塩こしょうで味をひきしめたらまあまあ食べられた。山中でしゃきしゃきのもやしを食べられるのは嬉しい。
この日も食べ終えたらすぐに眠くなってしまった。昨日と同じ大パーティがいて今日はさらに宴会がヒートアップしていたが、ぐっすりと眠ることができた。

10月14日 くもり

バスで下る

今日はくもり
今日はくもり
6時起床。朝からどんよりと曇っていた。一日行程がずれていたら昨日のようなすばらしい景色にめぐりあえなかったのだと思った。
テント内の温度は12.7℃もあった。そういえば夜中に一度暑くて目が覚めたことを思い出した。朝食をとってゆっくり撤収してもまだ7:30だ。ずいぶん早いがバス停に行って並ぶことにした。当然1番だった。「4人集まればバスと変わらないよ」とタクシーにも声をかけられるが、フリーきっぷで来ているし、急ぐ必要もないので断った。
停留所にザックを置いて、宿の前のベンチに座って缶コーヒーなどを飲みながら周囲を眺めていたがなんだかパッとしない。昨日の夕方に同じようなところで写真を撮ったが色がまるで違う。やはり紅葉は晴れてこそ引き立つのだとあらためて思った。
天気のせいかバスは心配したほど混まず、座席がちょうど埋まるくらいで出発した。それもロープウェイ駅で半分くらい降りてしまった。

青森駅にて

青森駅前市場でうにいくら二色丼を食う
青森駅前市場でうにいくら二色丼を食う
山へ向かう道はそろそろ混み始めていたが、下りはすいすい。定刻どおり9:50に青森駅に到着した。このまま帰っても芸がないので三内丸山遺跡にでも行こうかと思ったが、だいぶ遠そうだし二人ともあまり興味がないので止めた。その分お土産タイムをたくさんとることにして駅前の市場に入ったら、食堂があった。港町の駅前市場の食堂・・・絶対美味いものがあるパターンだ。もうたまらない。土産は適当に決めて、早速カウンターに座った。目の前にでかいアワビがごろごろ転がっていて、アワビ・うに・いくらの三色丼\3,500なんてのもあったが、さんざん迷って二人ともうに・いくらの二色丼\2,200にした。さらにかつりんは生ビールを2杯飲んでしまった。朝からたいそう幸せな気分になれた。
青森からの特急はつかりも盛岡からの新幹線やまびこもすんなりと座れ、大宮で降りて埼京線 - 小田急と乗り継いで、家には18時くらいには着いてしまった。
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