秋晴れの稜線漫歩 --双六岳・笠ヶ岳-- 2001年9月22日 - 24日 テント縦走

9月22日 霧

新穂高温泉への夜行バスはこの季節は運行していないので、上高地行きに乗って沢渡上で降りることにした。バスは朝4時まで全く眠れなかった。ようやくうとうとしたと思ったら5時頃沢渡上バス停に到着。初日から睡眠1時間で行動開始ということになってしまった。沢渡上からはタクシーで新穂高温泉に向かった。タクシー料金は11,000円ほどだった。

7:00 霧雨の中、新穂高温泉を出発(990m, 18.9℃)

昨日は乗鞍では雪が降ったそうだが、今日は天気予報は晴れ。上はきっと晴れているに違いないと期待しながら歩く。

8:12 ワサビ平小屋着(1315m, 20.4℃)

ザックを置くと背中から湯気がもうもうと出てきた。
ワサビ平からまたしばらく林道を歩くと左岸に渡る橋があり、そこから岩ゴロの登山道が始まるのだが、この日はその取付点が工事中で、大きく迂回させられた。工事が終わればかなり歩きやすくなりそうだ。

9:42 秩父沢着(1635m, 21.2℃)

10:11 秩父沢発(1635m, 22.4℃)

11:32 シシウドが原についた(1995m, 22.5℃)

シシウドが原
シシウドが原
シシウドが紫色に輝いていた。どうやら実が紫色になるらしい。大柄で、個人的には好きな花ではないが、こうして一面白と紫に彩られた斜面はなかなかのものだ。

12:37 鏡平(2160m, 15.4℃)

鏡平の少し上部の紅葉
鏡平の少し上部の紅葉
鏡池に映る槍穂が見られると期待していたが、またもや鏡平はガスであった。小屋前の広場は混雑しており、この寒さでラーメンが飛ぶように売れていた。木々はようやく色づいたばかりといったところか。

14:01 分岐着(2425m, 15.0℃)

分岐
ガスの分岐
寝不足・力不足・トレーニング不足の3拍子で物凄く疲れてきた。分岐にようやくたどりついたが、すっかりガスに包まれて展望はない。そのうえ寒くなってきた。

15:27 双六小屋到着(2415m, 15.0℃)

双六小屋・鷲羽遠望
双六小屋・鷲羽遠望
分岐からの道は概ね稜線の東側をたどり、双六小屋の少し手前で西側に移る。一日ずっとガスの中だったが、稜線の西側に出てようやく晴れ間が見えたのだった。
テント場は20数張りでがらがら。小屋も思ったほどは混んでいないようだった。(怒号が聞こえなかったので)

テント場

夕食は、寒いのでテントの中で食べた。デザートにマンゴープリンを用意したが、寒さのため結局食べなかった。
この夜はたいへん冷え込み、明け方のテント内の気温は1.6℃まで下がった。夜中、寒さで2回ほど目が覚めたが、前日の寝不足が勝ったようでよく眠れた。

9月23日 快晴

6:13 テント発(2495m, 12.7℃)

双六小屋前より鷲羽
双六小屋前より鷲羽
寒いので、ゆっくり起きて笠ヶ岳を目指すという選択肢もあったが、今回は双六岳稜線の草紅葉を見たくてやってきたのだから、双六山頂までピストンすることにした。
雲ひとつない、まさしく秋晴れだ。

7:15 双六岳登頂(2795m, 14.4℃)

双六稜線と槍
双六稜線と槍
写真を撮ったりしながらだらだら歩いて双六岳登頂。展望は360度(ぐるぐる写真)。ほんとうに雲ひとつない・・・と思っていたら、西は雲海が美しかった。
予想以上にいい雰囲気の道で大満足であった。

8:23 テント場帰着(2520m, 24.7℃)

テント場
閑散としたテント場
30分近くも山頂でのんびりとしてしまいテントに帰ってきたときは予定時間をかなりオーバーしていた。昨日の疲れがとれていなかったのか、かなりキツく感じられた。
右端に笠ヶ岳の頭が見える。あそこまで登るのか・・・遠そうだな・・・

9:38 出発(2515m, 24.9℃)

テントを撤収して、出発。鏡平への分岐まで、昨日と同じ道を歩く。

10:50 鏡平分岐(2535m, 24.2℃)

途中、昨日見えなかった景色も見え、実は意外に遠くから双六小屋が見えていたことを初めて知った。

11:14 大ノマ乗越に到着(2425m, 22.5℃)

大ノマ乗越から槍
大ノマ乗越から槍
弓折岳から急斜面を一気に下り、大ノマ乗越に到着。狭い鞍部であるが、日陰がほとんどなく炙られる。そしてまた、ここから大ノマ岳まで200mを一気に登る。
この登りは道のすぐ脇に大きな岩がごろごろしていて、休憩のしやすい道だ。岩に腰掛けて槍穂を眺めながら風に吹かれていると気持ちよくなって、昼寝でもしたい気分だ。

12:23 秩父平着(2545m, 27.1℃)

ここもやはり日陰がない。秋なので花もない。

12:52 秩父平発(2510m, 25.5℃)

秩父岩と穂高
秩父岩と穂高
小さなカール状地形の斜面を登っていく。高度が上がるにつれ、秩父岩がはっきりと見えてくる。そしてその向こうには穂高の岩峰がそびえている。

14:42 新道分岐(2670m, 28.9℃)

笠ヶ岳
カールを登りきると笠ヶ岳が見えた
カールを登りきって2700mの稜線に出ると、笠ヶ岳の優美な姿が視界に飛び込んでくる。まだまだ先は長そうだ。ここからはアップダウンの少ない道になり、だらだらと歩いていく。
ガイドブックでは1時間とされているコースを1時間50分かけ、ようやく新道分岐に着いた。
稜線に出てからはずっと大笠・小笠を眺めながら、やはりアップダウンの少ない道をだらだらと進む。

16:01 テント場着(2715m, 22.7℃)

テント場まであと少し
テント場まであと少しだ
新道分岐から徐々に高度を下げる分、最後の登り返しがキツい。岩にいろんなメッセージが表れるとまもなくテント場に到着だ。
テント場は、夏の間は融雪から水がとれるが、今はない。また、トイレも小屋に借りることになる。小屋までは岩ゴロの道を10分ほど登らなくてはならず、何度も往復するのは避けたいところ。そこで、サブザックに夕食と防寒着を詰め込み、山頂に登った帰りに小屋前のテラスで夕食をとることにした。

16:47 笠ヶ岳山荘着(2760m, 18.2℃)

小屋は凄まじい混雑だ。廊下にもザックが置かれ、「食堂に寝る人の荷物置き場」と張り紙がしてあった。建物自体は新しくきれい。まだ4シーズン目という話だ。

17:11 笠ヶ岳登頂(2835m, 15.8℃)

笠ヶ岳山頂より槍
笠ヶ岳山頂より槍
こんな夕方になってもまだ雲はなく、大展望が得られて満足(ぐるぐる写真)。しかし日は傾き、急に寒くなってきた。
夕日がまぶしくて白山は確認できなかったが、ほかの山々は朝と変わらず健在だ。それに加えて、富士山・南アルプスも見えた。山座同定で楽しい時間が過ぎてゆく。

17:36 山荘着(2730m, 18.8℃)

アーベントロート
アーベントロート
下る途中でちょうど日が沈み、槍穂が赤く染まった
予定通り小屋の前のテラスで夕食をとる。今回もワインを持ってきたが、相棒Kの疲労が激しいのでワインは止め、かつりんだけビールを買って飲んだ。
水は小屋の洗面所から分けてもらえた。天水を使っているという。ただ、この洗面所の水がちょろちょろとしか出ず、ものすごい渋滞となってしまった。食後に水筒をマンタンにし、トイレも済ませて、テントに戻った。今宵のテント場は14-15張りくらい。まだ張れるスペースはあった。

9月24日 快晴

テント内の明け方の気温は4.6℃で、昨晩ほどの冷え込みではなかったといえる。が、目覚めてテントの外に出てみると、テントの周囲は霜柱でびっしりと覆われていた。
大キレットのあたりが明るくなってきた。夜明けだ。カレーピラフの朝食をとりながらなんとなく眺めていると、南岳のあたりから日が出た。槍穂連峰から昇るご来光が眺められるロケーションというのはあまりないのではないだろうかと考えると、ちょっといいものを見たような気がした。右手はるかかなたには富士山も南アルプスの山々とともに姿を見せていた。
小屋がよほど混んでいたのだろう、何人か通りすがりの人が「昨日はテントで正解だったよー」と声をかけてきた。

6:54 テント場発(2635m, 24.7℃)

朝の笠ヶ岳
朝日を浴びる笠ヶ岳
今日は1500m近くを一気に下る。まだ朝7時だというのに温度計は25℃近くを示しているのが気になる。気を引き締めて行こう。
新道分岐までは昨日歩いた道をゆく。

8:01 笠新道分岐(2655m, 26.5℃)

笠ヶ岳
笠新道分岐の上から見た笠ヶ岳
昨日は余裕がなくて気づかなかったが、新道分岐までの道ではところどころウラシマツツジの紅葉が見られた。
笠新道の分岐は抜戸ぬけど岳山頂のすぐ南についていて、分岐点の上からは眺めがよく、ここからの笠ヶ岳のすがたはりりしく、立派だ。

9:01 杓子平(2375m, 25.0℃)

杓子平からの笠ヶ岳
杓子平からの笠ヶ岳
カールを下ってゆく。結構な急坂だ。カール底のモレーンらしき平坦なところに杓子平の看板があり、みんな休憩していた。笠ヶ岳方向の斜面はちょうど紅葉が始まっていて、美しかった。

9:30 杓子平発(2390m, 30.2℃)

秋晴れの空
抜けるような秋晴れの空
カール底をトラバースする感じで、カール外の斜面に出る。最後にカールを振り返ると空が青かった。そしてこれからはひたすら下る一方だ。
標高1900mくらいまでは日陰がほとんどなく、灼熱の道が続く。しかしその分穂高の岩壁の眺めはよい。ジグザグをきりながら、黙々と下ってゆく。

12:51 登山口にようやく下りてきた(1330m, 27.5℃)

暑さでもうへとへとだ。上の分岐点には「新穂高まで4時間」なんて書いてあったけど、休憩時間を含めて、ここまで約5時間かかってしまった。

13:49 新穂高温泉着(990m)


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