酒飲みの記憶

水平テイスティングもどき

Puligny-Montrachet 1995 (Antoine Chatelet) \5,000?
Puligny-Montrachet 1995 (Domaine Leflaive) \5,000
Puligny-Montrachet
A. Chatelet Puligny-Montrachet 1995
Puligny-Montrachet
Leflaive Puligny-Montrachet 1995
垂直テイスティングに懲りずに今度は水平テイスティングをすることにした。水平テイスティングなんて、いっぱしのワイン通っぽいじゃないか。ふっふっふ。今度は1日であけて比べる。食事はジャガイモのガレット(マッシュポテトみたいなの)、鮭とベーコンのホイル焼き、鯛のカルパッチョの3品を用意した。
さて、まずはワインそのものを味わう。明らかに違う味がするのに驚く。 Leflaive の方がまろやかに感じる。
次に食事とあわせてみる。するとその変化にますます驚いたのだった。 Leflaive は強い自己主張が災いして、特に鮭のホイル焼きと合わない。鮭がすっぱくなってしまうのだ。逆に、Chatelet は料理の味がますます複雑になっておいしくなるように思った。
ワイン自体は Leflaive の方が美味いと思ったのだが、それは必ずしも食事とともに飲んでも美味いということにはならないことを知ったのだった。恐るべし、水平テイスティング。またやってみようっと。少しワイン通気分が味わえた夕べだった。
教訓
同じ銘柄のワインでも、メーカーが違うと味が違う。

店探しの楽しみ --町の酒屋さん--

ワインをどこで買うか。値段は高いが品揃えが豊富なデパートか、安くて美味いモノが多いワイン専門店、このどちらかが常道だろう。元酒屋のコンビニも意外に穴場だ。「腹減ったから肉まんでも食うか」と思って店に入ると片隅に Mouton が置いてあったりして、びっくりすることがたまにある。ウチの近所のコンビニには、そんなに有名じゃない Bordeaux のグランクリュ(L'Arrosee とか Croizet-Bages など)が手ごろな値段で置いてあるのでよく利用している。
コンビニなら入りやすいが、町の酒屋だと、店内に入ったら品物を買わずに出てしまうにはちと勇気がいる。したがって、なかなか偵察できない。1年くらい前のこと、いつもは前を通り過ぎてしまう近所のS酒店。自販機でビールを買うつもりでいたら売切れだったため、店に入った。住居兼用の店舗は売り場面積数坪、冷蔵庫には\500前後の国産デイリーワインが並んでいるという、典型的な「町の酒屋さん」。しかし、何気なく冷蔵庫の中をのぞいてみると、MadonnaEiswein (\9,500くらい) と Beerenauslese (\6,500くらい) があった。おお、Madonna にもそんなのがあったのか、初めて見たぞ、と思っていたら、その脇には Marilyn Merlot 96 (\6,300くらい) があった。商品札に手書きで『マリリン・モンロー』とあるのが微笑ましかった。
やはり昨年、職場の歓送迎会場にほど近いA酒店。乾杯までに間があったので、暇つぶしにちょっと寄ってみたら、なんと奥には別室のワインセラー。中には登美 87Robert Mondavi Cabernet Sauvignon 87 (リザーヴかどうかは忘れた)が埃をまといながら置いてあった。とっても欲しかったが、値段もはるし、そのあと飲み会なのでやめた。今でもまだあるのだろうか。
というわけで、それ以来かつりんは酒屋の前を通りかかると外から品揃えをチェックし、面白そうだと思うと中に入って缶ビールを名目に偵察するようになった。
かつりんの好きな輸入ビールがある、近所のM酒店。いつもは見向きもしないワインコーナーをビールを買うついでに偵察すると、なんとサントリー登美が\2,500で売っている!! この前のA酒店では高くて買わなかったあの有名ワイン登美!! これは一大事だ!! 速攻で買って家に帰り、にんまりとしながら袋から取り出してあらためて眺めた。しかし、登美だと思ったそれは「登美の丘」だった......

教訓
近所の酒屋でも珍しいワインを売っていることがある。
初めての酒屋の冷蔵庫を偵察するには缶ビールを買いに来たふりをするとよい。
ラベルをよく見ずに焦って買うとショックを受けることがある。

高級シャンパーニュとデキャンタ

Veuve Clicquot La Grande Dame 90
かつりんには高級シャンパーニュを飲む機会はそれほど多くない。 Pommery とかの一番安いタイプのものは飲んだことはあった。それはそれでうまかった。しかし、高級タイプはもっとうまい。
数年前に近所のスーパーが改装閉店セールということで店内全商品を3割引で売り出したので、ドンペリを買って飲んだ。それが初めての高級シャンパーニュだった。今まで飲んだシャンパーニュとは違ううまさだった。ドンペリは、ワインの味がした。これがウワサのドンペリか、そう思ったものだ。しかし、\10,000以上もするようなシャンパーニュは、なにか理由がないと買う気にも開ける気にもなれない。\10,000も出せば Bordeaux や Bourgogne のいいワインが飲める。どうしてもそっちに目がいってしまう。あのドンペリはものすごく安く買えたので、飲んだのだ。
かつりんにとってその理由が初めて訪れたのは1998年の秋のことである。そのとき飲んだのは Henriot Brut Millesime 89 と Salon 88 であった(しかも嬉しさのあまり Sassicaia まで開けてしまった)。理由があって飲んでいるのだからうまいのは当然だが、シャンパーニュそのものもうまかった。シャンパーニュは、ワインの味がした。それも非常に濃厚な。そして、次に高級シャンパーニュを飲む機会はもう1年待たねばならないのだった。
それはミレニアムであった。かつりんは切支丹ではないので何の感慨もないのだが、世間が浮かれていたので、それに便乗して、高級シャンパーニュでお祝いをしようということになった。検討の結果、La Grande Dame を飲むということで落ち着いた。そして今回はもうひとつ、試してみたいことがあった。シャンパーニュのデキャンタージュである。ある雑誌の記事で、有名タレントソムリエのT氏がシャンパーニュについて、「自分で飲むならデキャンタする」と言いきっていたのを読んで、いつかやってみたいと思っていたのだ。シャンパーニュをデキャンタージュして飲むなんて、いっぱしのワイン通っぽいじゃないか、ふっふっふ。
さて、当日。まず瓶からグラスに直接そそいでから、残りをカラフェに移す。デキャンタ前と後とでの違いを比べようという趣向である。T氏によればシャンパーニュでもデキャンタすると香りが開くらしい。さあ、その違いやいかに。期待の一瞬だ。
しかし、わからなかった。泡が弱くなったのはわかった。そのために口当たりがまろやかになったのはわかった。でも、香りはホントに変わったのか? しかし、真のワイン通にはわかるらしいのだ。ううむ、ワイン通への道は果てしなく遠い
教訓
高いシャンパーニュはうまい。
シャンパーニュをデキャンタするのはワイン通になってから。

垂直テイスティングもどき

Chateau Chasse-Spleen 92 \5,000?
Chateau Chasse-Spleen 86 \7,200
1986
Chateau Chasse-Spleen 1986
1992
Chateau Chasse-Spleen 1992
最近評価が高いこのシャトー、二つのヴィンテージを入手したので、飲み比べることにした。垂直テイスティングなんて、いっぱしのワイン通っぽいじゃないか、ふっふっふ。が、2本いっぺんに開けるのはつらいので、2日に分けて飲むことにした。(すでに軟弱)
初日は、92。澱がちょっとあったので、カラフェにうつした。うまかった。まだまだ熟成させても大丈夫。食事の1時間くらい前にデキャンタしたのだが、最初はちょっと渋味が残る。そして食事中もどんどん美味しくなっていくのがわかった。
翌日は、86だ。昨日の感じからして、こいつは相当うまいに違いない。ばかでかい澱がうようよしていたので、デキャンタすることにした。しかし、ヴィンテージが古い。ひょっとしてデキャンタするとすぐに味が落ちてしまうのでは? 心配になって、飲む直前まで、コルクを抜いて瓶を立てたままにしておいた。
結果。92のほうが美味しく感じた。86は終盤では年代を経たワインの熟成したものが感じられて、よかった。しかし、古いほうがうまいとは限らないのだ。理由はわからない。あるいは、条件が違いすぎたのだろうか? もし、2本同時に飲んだらどうだったのだろう? ううむ、ワイン通への道は険しい
教訓
ワインの味は古さや値段ではない。

値段の話

Chateau Haut-Brion 92 \16,000
Chateau Ausone 92 \16,000

赤ワインブームで、有名ワインがべらぼうに高くなった。
93・94年ころに飲んだワインの値段のメモを見ると、Mouton 85が¥13,500、Latour 84が¥6,900、などなど。新宿伊勢丹の床に Lafite が\6,000の値札をつけて木箱のままごろごろ転がっていた光景を覚えている。しかしその後これら Bordeaux 5大シャトーは¥20,000以下ではお目にかかれなくなってしまった。
97年の暮れに、近所の酒屋で92年の Latour、Haut-Brion、Lafite が¥6,980〜¥7,980で売り出されたときは眼ん玉が飛び出るほど驚いた。このときは Latour と Haut-Brion を買った。喜んで正月に飲んだ。そしてその後2年間、¥20,000を切る Bordeaux 5大シャトーはついぞ目にしなかった。Mouton 85には¥60,000の値札がついたりするようになった。ワインの世界だけはバブルが続いていた。
が、ついに出た。デパートで「円高差益還元」というふれこみで、Haut-Brion 92が\16,000だ。およそ2年前に¥6,980で飲んだことを考えるといまいちだが、今回ほかにも Ausone'92 が¥16,000で特売である。こいつは飲んだことがないので、とりあえずこちらを目当てにして、開店前のデパートに向かったのだった。(↓につづく)

ここまでの教訓
赤ワインは値段が高くなった

グランヴァン争奪戦

Chateau Haut-Brion 92 \16,000
Chateau Ausone 92 \16,000

(↑より続く)この日の特売はすべて限定2本。他にもMouton92(\19,800)などがあり、激しい争奪戦を予想して早めの出陣と相成ったが、意に反して朝9:50のデパート入り口には誰もいないのだった。
10:00 開店。売り場を見ると各2本限定なのに1本ずつしか置いていないではないか!! 速攻で Ausone をカゴに入れ、とりあえず Haut-Brion もカゴに入れてキープ態勢に入る。
10:05 若い夫婦がきた。売り場でなにやら相談している。もうグランヴァンが売り切れたと勘違いしているのだろうか? 売り場には最初から1本しかなかったのだ、もう1本がきっと倉庫にあるはずだ。よっぽど教えてやろうかと思ったが、ホントに Haut-Brion を探しているのかわからないので、余計なお節介はしないことにした。カゴの中の Haut-Brion は、どうしようかさんざん迷ったが、2年間の熟成料だと割り切って、結局購入することにした。件の夫婦は店員となにやら相談をしていた。われわれは2本分の会計を済ませて意気揚々と引き上げたのであった。

- - 1ヶ月後 - -
ふたたびそのデパートで獲物を探していると、グランヴァンたちはまだそこにあった。あのときと同じ値段で。あの2本限定とはいったいなんだったのだ?

- - さらに2ヶ月後(つまり、先週) - -
まだある。誰も買わないのか? オレのつかんだあの2本はそんなに人気ないのか? 高いと買えないし、安く買ってもショック。人生の縮図を見るような気がしたのだった。

教訓
特売ワインを死に物狂いで買うと、人生の悲哀を感じることがある。

山で飲むワイン

Beaujolais-Villagesとステーキ
八ヶ岳・行者小屋キャンプ場で飲んだBeaujolais-Villagesとステーキ
かつりんの山登りは小屋泊よりもキャンプ泊が多い。食料などはすべて自分でまかなわなくてはならない。ウチの定番メニューはサイコロステーキである。肉をニンニクと油にまぶし、ガチガチに凍らせて保温バッグにいれる。ほかにゼリーなども凍らせて一緒に入れる。こうすれば真夏でも一日は持つ。だから、入山初日の夕食はたいていサイコロステーキだ。
なぜステーキなのかというと、ワインを飲むためである。山の中にはなにもない。キャンプ場に到着してテントを張ってしまうと、あとは「食う」か「寝る」しかすることがないのだ。だったら「食う」を楽しみたい。ステーキは、肉料理のなかでも最もてっとりばやく、余分なゴミがでない。ワインと肉を担いで、夕暮れの山に抱かれて食べるのだ。最高に贅沢な時間だ。
さて、今最大の悩みとなっているのがグラスである。山ではステンレス製のカップをいろんな用途に使いまわしている。当初はワインもそれで飲んでいたのだが、どうにも渋ったい。果実酒とステンレスは相性が悪いことに気付き、ワイングラス形のプラスティック製のものを持っていった。が、行動中にザックの中で割れてしまうのだ。
というワケで、たいへん困っています。
→と思っていたら丈夫なプラスティック容器をゲットできました。これで山でもワインを思う存分楽しめる!!(2000年6月)
教訓
山の中で飲むワインは格別である。
ステンレス製の容器に果実酒をいれてはいけない。
プラスティックは割れやすい。