店探しの楽しみ --町の酒屋さん--
ワインをどこで買うか。値段は高いが品揃えが豊富なデパートか、安くて美味いモノが多いワイン専門店、このどちらかが常道だろう。元酒屋のコンビニも意外に穴場だ。「腹減ったから肉まんでも食うか」と思って店に入ると片隅に Mouton が置いてあったりして、びっくりすることがたまにある。ウチの近所のコンビニには、そんなに有名じゃない Bordeaux のグランクリュ(L'Arrosee とか Croizet-Bages など)が手ごろな値段で置いてあるのでよく利用している。
コンビニなら入りやすいが、町の酒屋だと、店内に入ったら品物を買わずに出てしまうにはちと勇気がいる。したがって、なかなか偵察できない。1年くらい前のこと、いつもは前を通り過ぎてしまう近所のS酒店。自販機でビールを買うつもりでいたら売切れだったため、店に入った。住居兼用の店舗は売り場面積数坪、冷蔵庫には\500前後の国産デイリーワインが並んでいるという、典型的な「町の酒屋さん」。しかし、何気なく冷蔵庫の中をのぞいてみると、Madonna の Eiswein (\9,500くらい) と Beerenauslese (\6,500くらい) があった。おお、Madonna にもそんなのがあったのか、初めて見たぞ、と思っていたら、その脇には Marilyn Merlot 96 (\6,300くらい) があった。商品札に手書きで『マリリン・モンロー』とあるのが微笑ましかった。
やはり昨年、職場の歓送迎会場にほど近いA酒店。乾杯までに間があったので、暇つぶしにちょっと寄ってみたら、なんと奥には別室のワインセラー。中には登美 87や Robert Mondavi Cabernet Sauvignon 87 (リザーヴかどうかは忘れた)が埃をまといながら置いてあった。とっても欲しかったが、値段もはるし、そのあと飲み会なのでやめた。今でもまだあるのだろうか。
というわけで、それ以来かつりんは酒屋の前を通りかかると外から品揃えをチェックし、面白そうだと思うと中に入って缶ビールを名目に偵察するようになった。
かつりんの好きな輸入ビールがある、近所のM酒店。いつもは見向きもしないワインコーナーをビールを買うついでに偵察すると、なんとサントリー登美が\2,500で売っている!! この前のA酒店では高くて買わなかったあの有名ワイン登美!! これは一大事だ!! 速攻で買って家に帰り、にんまりとしながら袋から取り出してあらためて眺めた。しかし、登美だと思ったそれは「登美の丘」だった......
- 教訓
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近所の酒屋でも珍しいワインを売っていることがある。
初めての酒屋の冷蔵庫を偵察するには缶ビールを買いに来たふりをするとよい。
ラベルをよく見ずに焦って買うとショックを受けることがある。
値段の話
Chateau Haut-Brion 92 \16,000
Chateau Ausone 92 \16,000
赤ワインブームで、有名ワインがべらぼうに高くなった。
93・94年ころに飲んだワインの値段のメモを見ると、Mouton 85が¥13,500、Latour 84が¥6,900、などなど。新宿伊勢丹の床に Lafite が\6,000の値札をつけて木箱のままごろごろ転がっていた光景を覚えている。しかしその後これら Bordeaux 5大シャトーは¥20,000以下ではお目にかかれなくなってしまった。
97年の暮れに、近所の酒屋で92年の Latour、Haut-Brion、Lafite が¥6,980〜¥7,980で売り出されたときは眼ん玉が飛び出るほど驚いた。このときは Latour と Haut-Brion を買った。喜んで正月に飲んだ。そしてその後2年間、¥20,000を切る Bordeaux 5大シャトーはついぞ目にしなかった。Mouton 85には¥60,000の値札がついたりするようになった。ワインの世界だけはバブルが続いていた。
が、ついに出た。デパートで「円高差益還元」というふれこみで、Haut-Brion 92が\16,000だ。およそ2年前に¥6,980で飲んだことを考えるといまいちだが、今回ほかにも Ausone'92 が¥16,000で特売である。こいつは飲んだことがないので、とりあえずこちらを目当てにして、開店前のデパートに向かったのだった。(↓につづく)
- ここまでの教訓
- 赤ワインは値段が高くなった
グランヴァン争奪戦
Chateau Haut-Brion 92 \16,000
Chateau Ausone 92 \16,000
(↑より続く)この日の特売はすべて限定2本。他にもMouton92(\19,800)などがあり、激しい争奪戦を予想して早めの出陣と相成ったが、意に反して朝9:50のデパート入り口には誰もいないのだった。
10:00 開店。売り場を見ると各2本限定なのに1本ずつしか置いていないではないか!! 速攻で Ausone をカゴに入れ、とりあえず Haut-Brion もカゴに入れてキープ態勢に入る。
10:05 若い夫婦がきた。売り場でなにやら相談している。もうグランヴァンが売り切れたと勘違いしているのだろうか? 売り場には最初から1本しかなかったのだ、もう1本がきっと倉庫にあるはずだ。よっぽど教えてやろうかと思ったが、ホントに Haut-Brion を探しているのかわからないので、余計なお節介はしないことにした。カゴの中の Haut-Brion は、どうしようかさんざん迷ったが、2年間の熟成料だと割り切って、結局購入することにした。件の夫婦は店員となにやら相談をしていた。われわれは2本分の会計を済ませて意気揚々と引き上げたのであった。
- - 1ヶ月後 - -
ふたたびそのデパートで獲物を探していると、グランヴァンたちはまだそこにあった。あのときと同じ値段で。あの2本限定とはいったいなんだったのだ?
- - さらに2ヶ月後(つまり、先週) - -
まだある。誰も買わないのか? オレのつかんだあの2本はそんなに人気ないのか?
高いと買えないし、安く買ってもショック。人生の縮図を見るような気がしたのだった。
- 教訓
- 特売ワインを死に物狂いで買うと、人生の悲哀を感じることがある。