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私は、2007年12月7日、東芝を提訴しました。日本語ワードプロセッサの生みの親として、真実を世に問いたかったからです。

私は2004年に56歳で定年扱いで退職しました。私が,「発明者の名誉をかけた訴訟である。技術立国を支える技術者の地位の向上の為」と主張しているのは,この退職と関係があるのです。私は,1970年代当時不可能と言われた仮名漢字変換を実用に導き,日本語ワープロの製品化に成功しました。ところが・・・その栄誉は人事的には私には付けられていないことが退職時に明確に判明したのでした。そのため,非常に劣悪な条件で退職を余儀なくされました。このような事件がなければ,精神的にも,肉体的にも,経済的にも大変な負担を伴う訴訟など行うこともなく平和な人生を送ったことでしょう。退職から3年間の守秘義務が切れる2007年9月を待って提訴に踏み切りろうとしました。しかし,弁護士の助言でいきなりはそれをせず,東芝に通知したため和解交渉をしたいと言われ席につきました。3ヶ月の交渉の後,補償金額の交渉まで行くことなく決裂を通知され,提訴に踏み切ったのです。

続きは,東芝ワープロ発明訴訟事件ブログで。



2007.12.7

湘南工科大学教授 天野真家


日本語ワープロの特許譲渡対価を求める為,東芝を提訴しました。


湘南工科大学教授私儀天野真家は,本日,鞄月ナに対し,日本語ワードプロセッサの特許権を同社に譲渡した「相当の対価」を求める訴訟を東京地裁に起こしました。

日本語ワードプロセッサの基本技術の発明は東芝在職中,私が行ったものです。従来,事実上不可能であると言われていたカナ漢字変換は人工知能の技術を応用した私の2つの発明により実用化されました。それらはマイクロソフト鰍フWindowsを始めとして,広範に用いられている局所意味分析を用いた「カナ漢字変換」と短期記憶を用いた「同音語選択装置」であり,今回の提訴ではこれらの特許の対価を求めています。これらの特許はカナ漢字変換になくてはならない重要な機能に関わり,

 1.カナ漢字変換を用いる全ての専用ワープロ(例:Rupo,Oasys)
 2.Windowsパソコンで用いるパッケージソフトのワープロ(例:一太郎)
 3.Windowsに組み込みのカナ漢字変換ソフトであるIME(例:MS-IME,ATOK)
などで用いられています。

カナ漢字変換の解決すべき問題は同音語の削減とその選択効率の改善でした。従来の文節解析だけでは,この問題は完全に解決することはできませんでした。「保障」と「保証」は人間でも良く間違える例で,現在の技術ではコンピュータではどちらかに決定することが出来ないことは良く知られています。私が日本語ワープロを発明した時,このような同音語の問題を解決するための方法として新方式の局所意味分析を用いたカナ漢字変換と,同音語選択装置を発明し,特許を取得しました。前者の発明は同音語を飛躍的に減少させ,後者の発明は局所意味分析後も残った同音語を効率よく選択できる画期的技術でした。

1970年代はすべての漢字をキーボード上に並べる全文字配列式入力装置が主流でした。そのような装置は特殊技能者しか使う事ができません。英文タイプライタと同様な性能を持つカナ漢字変換による文字入力装置の実現は,当時は不可能であるとみなされていました。東京大学の情報工学の権威,渡辺茂教授はその著書の中で「できる道理がない」と断言されているのです。このような技術の状況の中で私は局所意味分析を用いたカナ漢字変換方式を発明し,カナ漢字変換を実用に導きました。1978年のJW-10発表後に後続してきた他社のワープロにはカナ漢字変換が用いられた物が一台もなかった当時の技術の状況を考えれば,この発明が如何に画期的であり,どのように重大な意味を持っていたかは容易に推測できましょう。

私は人工知能研究のメッカと言われた京都大学工学部電気工学教室坂井研究室(後,情報工学教室に移転)で,坂井利之教授(京大名誉教授),長尾真助教授(前京大総長,現国会図書館長),杉田繁治助教授(国立民族学博物館名誉教授)に師事して学んだ人工知能の理論と技術を用い,上記2つの大きな発明を行うことにより,渡辺教授の「不可能予測」を覆して,1978年9月26日(ワープロの日)新方式のカナ漢字変換と同音語選択機能を搭載する日本語ワープロを実現したのです。

私は京都大学大学院を1973年に修了すると,東京芝浦電気(現鞄月ナ)総合研究所に予約配属になり,森健一氏(文化功労者)の下で,人工知能としての自然言語処理の研究を始めました。カナ漢字変換は京都大学,九州大学を祖としていますが,渡辺教授の「できる道理が無い」宣言が出されていたように,理想的な日本語入力方式であるが,実現は不可能であると信じられていました。私は,1974年から1979年の製品出荷まで5年間一貫してカナ漢字変換の研究開発に携わり,従来技術を凌駕した局所意味分析を用いたカナ漢字変換方式を創案,飛躍的に変換率を向上する事により,「できる道理がない」宣言を覆して実用化に成功したのです。

これは京都大学の人工知能研究の勝利でもありました。当時,最先端の学問である人工知能を大々的に研究していたのは京都大学一校であり,この理論と技術の強力さは学界にさえ十分には認知されていなかったのです。こうして,人工知能技術を駆使して実用化されたカナ漢字変換技術は日本語のみならず,中国語を始めとするアジアの言語入力法に希望の光を与え,その後,各国で自国語のコンピュータ入力が可能になっていったのです。私はこの功績により「自然言語処理機器の実用化と自然言語処理研究活動の隆盛化への貢献」を事由として情報処理学会からフェロー(顕著な功績のある会員に贈られる称号)に認証されています。

日本語ワープロは東芝が大型計算機から撤退し,困窮に瀕した正にその時期に,突如,救世主のように現れて大型計算機撤退後のビジネスの空白を埋める重要な役割を担っただけでなく,時あたかも勃興しつつあったオフィスオートメーションの旗手ともなる戦略商品として東芝の電子計算機事業を支えたのです。日本語ワープロとカナ漢字変換技術は一大産業を巻き起こし,叢がり出た企業群によって3000万台を越える専用ワープロを世に送り出したばかりか,「一太郎」のように一企業で1800万本の出荷数を越えるワープロソフトの出現を可能にし,更には2億本になんなんとするマイクロソフトWindowsの日本語入力手段(MS-IME)として企業,家庭の隅々にまで浸透していったのです。

2007年,時あたかも,欧州司法裁判所は欧州連合と米国マイクロソフトとの独占禁止法違反係争において,欧州連合を支持し,マイクロソフトはビジネスにおける自らの商習慣を改める方向に向かいつつあります。Windowsにおいて私の特許がどのような形で東芝への利益供与に使われていたかにも深い関心を寄せています。

東芝は,「明日をつくる技術の東芝」というキャッチコピーを誇っています。日本語ワープロ専用機は1979年以来,最終機の2000年に至るまで約20年間東芝を支え続け,舛岡氏のフラッシュメモリーにバトンを引き継ぎました。然るに,その二つの巨大技術を発明した,まさにその発明者2人が,已むに已まれず対価を求める訴訟を起こさざるをえない状況を現出している今日の東芝の,「真の技術者軽視」の体質は,「技術の東芝」のモットーにもとり,創業者「からくり儀右衛門」こと田中久重の,技術への志をないがしろにし,技術を萎縮せしめる方向に進んでいると言う以外,語るべき言葉を知りません。発明者としての名誉の為,そして何よりも,理科系離れの傾向著しい今日,技術立国を支える技術者の地位の向上の為,厳粛に事を進めて参ります。


本件特許の相当の対価等:
 支払いを求めている金額:2億6160万円:
 被告が得た1996年及び1997年分の実施料収入相当額合計:26億1600万円
 原告の貢献度: 10パーセント
 本件特許の対価としてこれまで被告が原告に支払った対価:
 1996年及び1997年においては合計23万4500円(東芝調べ)

以上

注:上記「本件特許の相当の対価等:」は訴状からの引用です。数値は出所が分かるようにしてあります。記者会見では,このプレスリリースと訴状が一組になって配布されています。








中日新聞 1面

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007120702070261.html

【社会】
ワープロ変換技術は23万円? 発明者が対価2億6千万円請求

2007年12月7日 朝刊


 仮名漢字変換など日本語ワープロの基本となる技術を発明した電機大手・東芝(東京都港区)元社員の天野真家(しんや)湘南工科大教授(59)=名古屋市出身=が7日、特許譲渡の対価として同社に約2億6000万円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こす。

 天野教授によると、日本語は同音語が多く、仮名と漢字が交ざる。このため、仮名漢字変換は1970年代当時、不可能とされていた。発明は現在も、ほとんどの日本語ワープロソフトの基礎となっているという。

 天野教授は東芝総合研究所に在職中の74−78年、入力した仮名を前後関係から判断して漢字と仮名の交ざった文章に変換する「二層型仮名漢字変換」と、意図しない同音語が出てくるのを減らすため一度使った漢字を優先的に出すようにする「短期学習機能」を発明した。この発明によって、仮名を適切な漢字に変換できる確率が飛躍的に向上したという。

 東芝は、この2つの発明について社内規定により特許出願のための権利を継承し、77年と78年に天野教授ら4人の連名で特許を出願した。この際、同社は特許譲渡の対価を支払っておらず、報奨金などとして計約23万円を天野教授に支払っただけだった。

 特許は出願から20年で権利が消滅するため、天野教授は民事訴訟の時効になっていない96、97年の2年分の特許譲渡の対価を求める。訴状では、同社がこの2年間に特許から得た利益は少なくとも約26億円と試算。このうち天野教授の貢献分を10%と見積もり、同額を請求する。

 天野教授は「訴訟を通じて、発明から生ずる権利は技術者のものだと訴えたい」と話している。

 東芝広報室は「特許の対価は当社の規定に基づいて適正な額を支払っている。提訴については聞いていない」とコメントしている。



読売新聞




日刊工業




毎日新聞


<ワープロ>仮名漢字変換の発明者が東芝提訴

12月7日20時20分配信 毎日新聞

 日本語ワープロの根幹技術となる漢字仮名交じり変換装置や同音異義語選択装置を発明した元東芝社員の天野真家・湘南工科大教授(59)が7日、同社に特許の対価として約2億6136万円の支払いを求め、東京地裁に提訴した。

 訴えによると天野教授は東芝の技術者だった77年、仮名入力時に同音異義語のうち使用頻度の高い漢字を優先的に表示する装置を発明。78年には、文節単位で漢字と仮名を正しく変換する装置を発明した。ともに当時は非常に困難とされていた技術だったが、人工知能の応用で実現しワープロの実用化につなげた。

 東芝は二つの発明を特許出願したが、天野教授には職務発明規定に従い毎年数万円の補償金が支払われただけだった。04年に退職した天野教授は、特許に伴う支払い請求権の時効が経過していない96、97年度の2年間について、東芝が発明に基づく自社製品やライセンス料で26億円の収入を得たと試算し、10%を発明対価として支払うよう求めた。この2年間で実際に天野教授が東芝から得たのは約23万円だった。

 提訴後に会見した天野教授は「日本は技術立国なのに技術者が軽んじられている。名誉のために提訴した」と話した。【北村和巳】

 ▽東芝広報室の話 当社としては、特許の対価については規定に基づき適正に支払っていると考えている。

最終更新:12月7日20時20分





産経新聞


発明対価求め東芝提訴 元技監、カナ漢字変換で2億6000万

12月8日8時0分配信

 ワープロやパソコンで使われる「カナ漢字変換装置」などを発明した大手電機メーカー「東芝」元技監で、湘南工科大教授の天野真家(しんや)氏(59)が7日、東芝に発明対価として約2億6000万円を求める訴訟を東京地裁に起こした。天野氏は「技術立国を支える技術者の地位向上を図りたい」などと提訴の動機を語った。

 天野氏は事業部長レベルの技監だった平成16年に東芝を退社した。請求額は民事上の時効にかからない8、9年分の発明対価になる。

 訴状などによると、天野氏のグループは昭和52、53の両年に、日本語ワープロの実用化に不可欠だった「同音語選択装置」と「カナ漢字変換装置」を開発した。

 東芝は社内規定に基づいて天野氏らから特許を受ける権利を継承し、特許を出願。その後、ワープロなどの製造・販売や他社とのライセンス契約で多大な利益を上げた。平成8、9年だけでも、発明が東芝に与えた利益は26億円に上るとしている。一方、天野氏が両年に東芝から支給された発明対価は約23万円だったという。

 天野氏は「お金というよりも、ワープロ発明者の名誉のために提訴した」などと話している。

 東芝の話「特許の対価については、会社の規定に基づいて適正に払われている」

最終更新:12月8日8時0分



こどもアサヒ





The Japan Times
Sunday, Dec. 9, 2007

Word-processor inventor sues Toshiba over redress

Kyodo News

A former Toshiba Corp. employee sued the major electronics manufacturer Friday for about \260 million in remuneration for profits the firm reaped from basic technologies he says he invented for Japanese word-processing software.

KYODO PHOTO Shinya Amano, a professor at Shonan Institute of Technology, said in a written complaint that although the firm received patents for the technologies in conjunction with him and three others and paid him tens of thousands of yen annually in remuneration, he actually developed the technologies alone.

Amano is claiming 10 percent of an estimated \2.6 billion in profit Toshiba made in 1996 and 1997 -- much higher than the roughly \230,000 he was actually awarded for the work over the two-year span. His claim is believed valid, taking into account the statute of limitations and the terms of the patents.

"This is not about the sum of the money -- I filed the suit for my honor," Amano said in a press conference after bringing the case to the Tokyo District Court.

"Japan is a technology-oriented country, but engineers are treated too lightly here," he said.

Toshiba said through its public relations office that it believes it paid Amano fair compensation in line with company policy. The company declined to comment on the lawsuit before receiving the complaint in writing.

Amano claims that he invented the technology that converts a sentence composed of kana alone into a sentence composed of both kanji and kana by assessing its context, and another technology needed to prioritize kanji previously used in such conversions.

Using theories of artificial intelligence, the two technologies developed in 1977 and 1978 are still used today in most Japanese word-processing software, he said.





朝日新聞 英語版

TOKYO: Ex-Toshiba employee sues over patents

12/08/2007
THE ASAHI SHIMBUN

A former engineer at Toshiba Corp. on Friday filed a 260- million -yen lawsuit against the consumer electronics maker for his contribution to patented Japanese word-processor technologies.

Shinya Amano, professor of Information Science at Shonan Institute of Technology, filed the lawsuit with the Tokyo District Court.

According to the suit, Amano, 59, developed technology for converting phrases in hiragana letters into phrases in Chinese characters and hiragana letters in the 1970s when he was a Toshiba employee. He also developed technology to enable word processors to indicate candidate Chinese characters for conversion in order of frequent usage.(IHT/Asahi: December 8,2007)








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