やはり、女性は男性用トイレの在り処を原則的に知らないことになっているのかと、彼なりに理解したのである。 日本のデパートなどでは男性用はここですとちゃんと売子が教えてくれるのだがと彼は不満であった。 夜になり、共に同行した樋口ら四、五人が寄宿舎の集会所に集った。 その中の一人が免税店で買ってきたジョニ黒を持ってきたのでこれを皆で呑むこととなった。同行者の殆んどが初めての海外であったので、アメリカの話題は尽きることを知らない。 アルコールが多少まわった彼は自分の部屋に戻った。 この部屋は初めてのアメリカ旅行としてはお粗末なもので、御世辞にも、ホテルなどとは言えない。
学生は二人づつ入るものと見られ、ベットが二つ、造り付けの机が二つ、備わっている。 ここに、彼は一人で泊るのであるが、何分にも、殺風景な部屋である。 部屋の窓を彼が開けるだけで、造り付けの粗末な洋服タンスの扉が自然に開いてしまう。しかし、ベットのシーツだけは、きれいに洗濯してあり、部屋の中も整頓してある。 昼間、確認しておいたのであるが、部屋の錠は、鍵がなくても懸かってしまう構造になっている。一般には、自動車のドアのロックをして、閉めると、施錠されるような構造になっているものである。
これもその類(たぐい)であると彼は考えていた。 彼は部屋に入ると、アルコールが入っているのと、疲れから、ベットに入ると直ちに眠りについてしまった。幾許かして、夕べの酒の性で何回かトイレに起きた。 彼の寝姿は、日本にいる時と同じ気持ちで、ランニングシャツとステテコ、更に事もあろうに腹には毛糸の胴巻をしている。この胴巻には、ドル札、トラベルチケット、パスポートなどが入っている。
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