十三才の直子がこの水汲から風呂焚きまで努めた。その直子の母親が彼にこの直子と共に風呂に入れというのである。 未だ、誰も入っていない風呂である。 当然、彼はその意味は理解できなかった。 年上にはなるが若い娘と共に風呂に入ることは、彼自身としても、興味のあることというか、好奇心にも似た気持を抱いていた。
彼が入る前に直子は風呂に入っていた。 湯気で上気した直子の体は艶艶と輝き、美しく見えた。 あの白い肌と胸もとのふくらみ、微かに生え初めた陰毛はとても美しく彼の胸は高鳴りを覚えた。 直子はその胸のふくらみを隠すでなく自然な振る舞いでお湯を浴びていた。 「ねえ、早く入りなよ」と直子は彼に云った。
五衛門風呂は鉄製でできていて、これに直接足を入れると熱くなった鉄面に触れるので、木製の浮蓋が付いていて、これを跳みつけ、下に沈ませて入るのである。 中央に入っていないと、周囲は熱い鉄面に触れてしまうので気をつけて入るようにするのである。
石川五衛門がその家族と共にこれに入れられ茹でころ殺されたということで、その名前が付けられたということである。 彼は熱い鉄に触れないように、眞中に入り、直子は彼を押えていてくれた。 五衛門風呂は火が消えてしまうと周囲の鉄の部分も、湯の温度と同じになるので、触れても大丈夫なのである。
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