佳境、辛酸に入る-第6章-

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何故、専務は谷口が病人と分かって居ながら、性格を十分に理解して居ながら、仕事を与えたのか彼は理解できなかった。すでに、谷口は組織を上手く活用して、会社の利益を上げようなどという管理者としての能力を具えていないことも会社中に知れ渡っていた。
しかし、谷口の今のポストを外すことは、専務にはできないのである。
それは専務自身が優秀だとして、谷口を連れて来たのである。それを専務自からだめだから、谷口のポストを外すなどと云っては自分の首が危くなるのである。
そこで、病気でいっそ潰れてしまえば谷口をポストから外すことが出き、自分の首も安泰だと考えているのではないか。
企業におけるパーキンソンの法則を地で行くことを考えていることが彼にも分かって来た。

谷口は彼のいるこの子会社に入社する条件として部長にすることが条件であった。
従って、部長としての資質を十分に備えていると理解されていたのである。
しかし、谷口はその実力を持って居なかった。専務は部長としての常識があるとして、谷口と意見を交換するのであるが思うように期待した反応が返って来ない。それはそれとして、教育をしようとは考えていないようである。
自分の健康管理の出来ないものが人間の管理などできる筈がないという考え方をしていることは明瞭であった。
このように谷口は専務と同調しないのであるから、彼とも、折り合う筈がなかった。

彼が提案する研究開発内容を全て、それは出来ない、旨く行かないと言ってしまうのである。
彼はこの谷口が腹立たしかった。
谷口の出来ないということを理由付けして、説明することは非常に上手いということは定評があった。
谷口の前の会社時代も、できないことをできないと説明することがうまかったと彼は聞いていた。
彼に云わせれば、出来る可能性のある事まで出来ないと言ってしまうように思えた。また、出来上ったものについては批判してしまうのである。
このような態度は担当者を困らせ、憤慨させ、会社を辞めるものまで出る始末である。

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