佳境、辛酸に入る-第4章-

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彼の部下は、永田のもとに連れて行かれた。
彼は、永田がこのようなことをするのは、それなりに理由があることを知っていた。
それは、彼にこの仕事をまとまられてしまうと永田自身の立場がなくなってしまうからである。
確かにそうであろう。
永田こそが、自分が良いと言って米国から購入した水晶時計をアレンジして商品化するプロジェクトの推進者だったのである。
それが駄目だとなり、それに代る仕事は彼が担当するとなると、永田の顔は丸潰れである。

それにしても、彼の実績を認めた上で、自分の仕事として譲り受け、自分のアイデアイを入れて発展させることもできた筈である。
永田は、十年前問題を起こしたため、産洋自動車から廻されてきた人間である。
その問題とは、自分の能力が劣るためか、他人の実績をなんとか自分のものにしてしまおうと試みたためだと言われている。
表面的には物腰の丁寧な人間であるが、その実態は禿げ鷹のような存在で、隙あらば獲物を攫ってゆくことを平気でする人間であった。
彼はその時の役員にも、食い下がったが、すでに永田の手が廻っており、役員から、
「お前の実績ではない。」
とまで言われてしまったのである。
彼は怒りを爆発させたが、自分にその破片を飛ばす結果となり、目の廻る病気で倒れて入院してしまった。
これで完全に永田の思い通りになったのである。

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