佳境、辛酸に入る-第2章-

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トップの座を狙う策謀を巡らしている人物が、この人材銀行 の幹部と旧制中学時代の同窓であり、どうやら谷口の噂を知っていたらしい。そこで策謀者は 産洋自動車の副社長に手を廻した。
産洋自動車の副社長も産洋精工の社長が、なかなか自ら辞めないので辞めさせる口実が ほしかった。
産洋精工の社長に電話が入った。
「君のところで欲しがっているコンピュータ屋がいるのですがどうしますか?」
社長は物事を深く考える性格でないので、直ちに人材銀行に調査に出かけたのである。 これで罠は仕掛けられてしまった。

産洋精工の社長は彼の所属している開発部門の担当役員を している専務とよく協力し合い策謀などにも対処していたのであるが、今回は別で、 策謀と解せず、社長、専務ともその経歴に惚れ込んでしまい、全てが見えなくなってしまった。
何度か谷口を説得させて、その気にさせたのである。その条件として部長とすることで あったから、彼の上司として配属されることになってしまった。

彼は人材銀行の幹部の一人と親しい仲であったので この辺の一部始終を教えて貰っていたのである。
話は変わって、あれはマイクロコンピュータに関する応用技術をSID(情報表示学会)に 彼が論文を発表しようと目論んだときのことである。
折りしも、SAE(米国の自動車技術会)に専務、谷口などが出かけようとする 一週間前のことであった。
彼はこの時期が論文提出を申請する絶好の機会であると感じ取った。

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