(十八)
彼は卒業した大学の先輩が経営している会社に副社長として、引き抜かれて行くことに決まっていた。 しかし、その先輩と最終的な処遇条件について、調整すると約束していた時期が、当に過ぎているのに気付いていた。 何故、連絡が来ないのであろうか。彼が以前1年後に移るといってから、 先輩はのんびりしているのであろうか。
それとも状況が変わって、全てがご和算になってしまったのではないだろうか。 もしかすると、彼が期待していたポストは夢であったのか。 彼は不安になって来た。 そこで、彼から先輩の会社に電話をしてみることにした。 彼の心配は吹き飛んでしまった。処遇条件を決める日程が決まっていたのである。・・・・・
彼が退社すると宣言するとき、彼自身が会社から、どの様に思われ、どの様に評価されているのか、今後の参考のために知りたかった。
先ず、専務に話をするのであるが、彼が話の筋道を準備しているが、なかなかその通りに事は進まないと覚悟していた。 彼は専務室に行き、口火を切った。 「専務、私を部長にしてくれませんか」突然の申し出に、専務の顔が心なしか蒼白くなって行く様に見えた。「今の内の会社には解決しなくてはならない問題が山積しています。それなに、部長連中はやる気があるのか、ないのか、知りませんが、何も手を打ってないようですね。」
「どうかするとこれがマンネリ化して、問題意識がないように感じますが。」「もし、私を有効活用したいなら、部長にするしか方法はないと思います」「それをしないなら、この企業のために、私は能力を充分に発揮できず、申し訳なく思います。今の侭だとおしゃるなら、私自身の人生から見て、効率が悪く、自分を駄目にしてしまことになりますので、私は辞めさせて貰います。私の人生を豊かに、さらに他人のためになるチャンスが、今の私には、幾つもあるのですから」
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