佳境、辛酸に入る-第13章-

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ここに泊っているのではその後の一週間は、飲まず食わずで野宿する以外この国にとどまることはできないのである。
彼は早く眠りたいので今晩はここに泊るとして、明日考えればよしとしてベットに就いてしまった。
彼は朝早く、ドームで打ち鳴らす鐘の音に目が覚めた。彼は時差の関係で、眠くて目が開かない、この国の時刻からすれば早くない、六時か、七時なのである。

今朝は訪問する会社に、十時までに行けばよい。八時半に食堂に行き、軽食を食べ、タクシー乗場へ出掛けた。
どこの国でも同じである。朝の通勤は混んでいる。彼は訪問会社での見学をできるだけ早く済せたかった。それは、午後五時を廻ってしまうと商店が閉ってしまい買物ができないからである。
仕事が大切なのか、買物が大切なのか、いささか疑問であると、彼は自分自身を考えていた。
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訪問会社では彼の知りたいと思っていたところは見せてもらえず、むしろどうでもよい所のみを見せて貰った感じで、彼は不満であった。
昼食は寂れたドイツ風のドイツ人好みのと云った方がよいかもしれないレストランに連れていかれた。
食事は二時半頃に終ったが、これからの予定はと聞いてきた。彼は早速に、町にいって土産でも買いたいと云うと、英語の解る若い男を案内に付けて貰った。

その若い男に、先ず安いホテルを捜してほしいと彼は云った。安いホテルに変えないと土産も買うこともできないと彼が冗談めかしてドイツ語でいうと、若い男は笑いもせず頷いてみせた。昨夜は高いホテルであると認めて彼に同情してくれたのか、さもなくば考え方に異があり当然のことであったのか、彼には解らなかった。

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