佳境、辛酸に入る-第13章-

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迎えに来てくれる筈のドイツ人は、まだ自分の会社にいた。直ぐに迎えに行くからその郵便局の前で待っているようにとのことである。
車をとばしてきたのであろう二〇分もすると若社長が現われた。
「グーテン、モルゲン」
おはようございますと型どおりの挨拶をすると、型どおりの挨拶が返えって来た。

彼は、BMW製のスポーツカーに乗せられ、ケルンの郊外の目的地まで行くのであるが、その道すがら彼が乗って来た航客路線で、昨日ハイジャックがあったというのである。逮捕された犯人はケルンの近くに住むクレージィな男であったということである。
彼は航空機内での新聞記事などと照合して合点がいった。
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自動車はアウトバーンに入り、周囲の風景が目まぐるしく後退して行くのが感ぜられた。速度計を見ると百八十キロを超えていた。彼は西独に来たのだという実感を抱いた。
彼はその若社長の案内でその工場を見学し、形ばかりの打合せを終えて、長旅であるので疲れたという理由でホテルに送ってもらった。それはケルンの有名なドームの近くにあるドームホテルであった。

ホテルのフロントでキーをもらい、さらに彼は室代の記入されたシートを貰った。そのシートに記入された金額は百二十五マルクとなっていた。
このホテルには三日泊ることになっているので、この合計であると何回も思おうと試みたが、それにしては安過ぎる。さりとて、一泊の料金にしては高過ぎるのである。
一泊の料金であるとすると、彼が日本から持って来た現金は三日でなくなってしまう勘定である。

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