佳境、辛酸に入る-第12章-

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彼はこれをチャンスだとも思った。しかし、今までのように、目の色を変えて、突き進むようなことはなかった。
よく、落着いて、周囲の状況を見ながら、ゆっくり、確実に作戦を練るようになっていた。また、反面、今までのように云わなくてはならないことを黙っているとか、与えられたもののみで我慢しようなどとも思わなくなっていた。
云うべきものはいい、欲しいものは是が非でも得ることにした。
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このような態度に出ることは、今の産洋精工という会社では、失敗する危険性も孕んでいるので、そのときの準備を考えることにしていた。彼は転職先を探すことにしたのである。
それと同時に別の角度からの準備を始めたのである。
例の人質部長こと谷口のことである。

この谷口は彼が仕事する上で、意見が異なるため、いろいろと障害となっていた。そこで、この障害をとり除くべく手を打つことにした。
そのために格好の材料があった。
それは産洋精工の現社長の引退が決まっていたことである。当の社長自身がそう云っているのだから間違いない。

彼の知り合いのメーカ担当者が突然彼を訪ねてきて、彼に告げていったのである。
「産洋精工の社長はもう変るのですか。」
「任期は何時までなのですか。」
とメーカの担当者が質問してきた。
「そう、変るよ」と彼は答えた。
「そうなんだそうですネ」と逆に切り返してきた。
「たまたま、私の会社の社長が産洋自動車の副社長を知っていて、その副社長から、聞いたのですが、産洋自動車の購買部門の佐藤専務が、社長になることが決定しているそうですよ。」と云っていたのである。

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