時折、この艦載機は道沿いに滑空し、機銃掃射してゆく。彼も学校の帰りにこの道で艦載機に出会い、思わず道端の溝に入って身を伏せたが、その傍らを弾丸が一米間隔で撃ち込まれていたのを彼は今もはっきりと記憶している。
幼かった彼は全身が震えて、歯茎が噛み合わないのを感じていた。 艦載機が通り過ぎてゆくのを見て、石を投げつけたが力が入ってなく、すぐそこの手前に落ちてしまった。
艦載機の乗員の顔が彼の方を見たような気がした。 引き返してくるのではないかと、溝に伏せたものである。
しかし、戻っては来なかった。
子どもの頃は幅の広いものに思えていたが、幅の狭い三、四メートル程の県道になっている。
小学校の校門を出て、帰途につくと樹齢千年以上の銀杏の木を左に見ながら進むと一メートル程の川幅の小川の橋を渡る。
艦載機の爆撃から、この橋の下に避難したことがある。 ズックが水に濡れていたのを彼は今も覚えている。
この橋からさらに進むと、左手に雑貨店があり、次いで理髪店がある。右手には精米所があり、いつもガラガラという音がしていた。このあたりがさしずめ、この村の銀座に当たるところである。
道はゆるやかな登り坂になり、峠まで五百米程ある。 この登り坂の両側は麦畑で、その向こうは小高い丘で、右手が雑木林、左手が杉の林になっており、この杉の林の裏が彼の住んでいた家である。
峠を登りつめると、道の両側に丘が迫り出しており、左手に丘に駆け登るように、道ができている。
露を含んだ草が両側から足を濡らす獣道である。この道は、右手にある杉の林に向かって丘の地形なりにうねりくねって彼の住んでいた家まで通じている。
獣道の取り巻く丘の上には、火の見櫓があり、半鐘が備えてある。
この半鐘は火事のとき村人に伝えるためのものであったが、戦時中には空襲警報を知らせるために打ち鳴らされたものである。
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