佳境、辛酸に入る-第10章-

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しかし、確かに自分の実績だと思った仕事も、いつの間にか他人のものに変ってしまっていることがあった。しかも、それは親会社の顔色を窺いながら自分の安全のために自分が推挙した人物に与える役員がいる。
社内には、この間の事情を知っている人間もいると思われるが、何も云わないのである。年を経るうちに、いつか他人の実績になり、彼は何もしないという話だけが戻って来るのである。このようなことがあったので、彼は仕事を始める前に、他人に横取りされないように準備をするのであるが、なかなか難しい仕事である。

困難な仕事の時は、八時間もしないうちに、時には気が変ることがある。
従って、困難な仕事をするには強い情熱と憤りを持ち合せていることが必要と考えている。また、これをいかに長い間、持続しなくてはならないかということである。そこで、憤りを感じ決心して、彼自身の決心を不動のものにするため、彼自身に手枷、足枷を掛けるのである。

それには、喧嘩をして、どうしてもやらなくてはならないような羽目に、自分自身を追い込んでしまうのである。このようにして仕事を始めれば、他人に、公知となり、奪われることがないということである。しかし、最近では、彼は非常に馬鹿げたことであると思うようになった。
例え、彼が約束した期間内に成果を出したとしても、今は、鳶が奪うものがないから、彼のやった成果が実績に結び付かないように(商品化できないように)、工作するのである。これ程までにして、彼を陥れて、鳶自身は何か利益があるのであろうか。
彼の成果が工作で実績に結び付かなくなると、ただ彼は自分の意地が通せたということだけになる。

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