2002/1/31 ★2002　金大フィル定演感想



★感想その１

９３年OB

出来は、はっきり言って、うーんという感じでした。
新田ユリさんもオケの力量の限界を感じていたのか、完全に交通整理だけの指揮をしている風に見えましたし、（金さんはシベ1の4楽章とかもっと感動的な指揮をしていたように思う。思い込みかもしれないけど）木管と弦の音色の系統がぜんぜん違うというのがすごく気になりました。（特にシベリウス）
金管はTb,tubaは前回のときよりはよいかも。ホルンは1,2回生がほとんどでこれからに期待という感じです。

私としては出来栄えは結構残念な結果だと思います。
金大フィルも音楽的にいい方向に向かっているとうわさで聞きましたが、結果はそうか？という感じでした。弦楽器はそれなりに面子がそろってるのかもしれませんが。
　コンサートホールで聞くのは初めてなのですが、あまり音が飛ばないホールだなと思いました。
★金沢大学フィルハーモニー管弦楽団第62回定期演奏会

　　　　　　2002年1月19日（土）石川県立音楽堂　　18：30開演



　こうもり序曲。キレイ。拍がそろっている。音が澱みなく流れていく。指揮者が、無理に拍子を合図することもない。その進行を乱す者がいない。
突き抜ける音がない。ステージの近くでもやもやと音が漂っている。その和をはみ出す者がいない。
自分が現役の頃には考えられない整い方。実に、スマートな演奏。
しかし、音が詰まっていない。拍の頭以外、音の動きが見えない。絶えず同じ響きが維持されて、揺れることがない。
　流行りのイージーリスニング音楽みたい。ＢＧＭとして、どこか遠くから流れてくる音。身構える瞬間も、意識を預けてしまう瞬間もない。違う世界の出来事の様。キモチいい時間が通過していく。できることならコーヒー片手に会話を楽しみたい雰囲気。
　何か違う。いや、こちらが固定観念にとらわれているのかもしれない。
はっきりしているのは、これは偶然に出来る演奏ではない、ということ。おそらく練習には時間がかかっている。たやすく出来る演奏ではない、と思う。
とはいえ申し訳ないけれど、拍手を送りつつ、素直に共感できない。


　カレリア組曲。同じフレーズの繰り返しが目立つ曲。個人に任される部分も多い。
穏やかなテンポ。リードするパートを全く意識させない。従って、緊張感を強いることがない。オケの反応が指揮者の棒より遅いのが気になる。
コールアングレのソロ。やわらかい響きに包まれた雰囲気が好印象。トゥッティよりもソロの時のほうが、音はよく届く。総じて、トゥッティは控えめなのか。
　弦楽器の一回生初心者は、この曲に参加していた。それがトゥッティを感じさせない理由か。なんといっても、1stヴァイオリンは9プルトもいるのだから。見た目と音量のギャップが大きい。そんな単純な話ではないかもしれないけれど。


　シベリウス第一交響曲。前回この曲を取り上げた時、演奏メンバーだった。ますます、固定観念に悩まされるのではないか。
こうもりの響きと、どこか印象が重なる。ホールを支配する響きが、フォルテでもピアノでも変わらない。なんとなく雰囲気は伝わるのだけれど。音の強弱も、フィルターを通っているみたいで平坦に聞こえる。
　拍の進行にも共通するものを感じる。拍子の頭の音符にピントを合わせている。結果として、それ以外の音は流れてしまっている。曲の流れは恐ろしくスムーズなのだけれど、流された音の行方が気になって仕方ない。
そうか、はっきりした。おそらく、これが今日の演奏の特徴なのだ。こういう演奏をしようとしているのか。
　困ったことに、仕掛けや種を明かす場所を自分で勝手に予想しているため、何のためらいもなく進んでいく音に、どうしても気持ちが追いつけない。



　おそらく、ウマイ演奏に違いない。打ち合わせが十分に出来ているのだろう。というのも、観客に、苦労したであろう姿を全く感じさせないのだ。
加えて、汗臭さを全く感じない。寒くて震える様子もない。満面の笑みもないし、困って悲壮感を漂わせることもない。気持ちの振幅が感じられない。そんな意味でも、現実の出来事に思えない。

　拍手をする。自分の叩く音ばかりが目立って聞こえる。遠くの拍手はざわざわしている。というのも、音が全く跳ね返らないのだ。従って、音が天井やホールの後ろからふりそそぐことがない。どこか盛り上がらない。千人以上の拍手には、到底聞こえない。
　日本のホールは、残響の長さを売り物にすることがある。しかし、響きが残ることだけが音楽を楽しむ必要条件ではない。
ひょっとすると、今日、一番キモチが良かったのは、ステージ上の人たちではないか。最も鳴っていた場所は、楽器の周りに違いない。そう考えると、今日の演奏も少し納得できる。

　アンコールは、同じくシベリウスの悲しきワルツ。余計な音が排除された透明な響きの曲。今日の雰囲気に一番合っている曲ではないか。



　新築のホールで迎える初めての演奏会。運営面で戸惑いがあったかもしれない。
まず、開場前に、二階のホール入口から階下へ続く行列。初めて来た者には、何事かと思われた。一度エスカレーターで二階に上がった人たちが行列に逆らうように階段を降りてくる姿は、大変見苦しかった。一階からは見通せない場所なのだから、せめて列の最後尾に案内する人がいて欲しかった。
ホール入口。扉は二ヶ所開いているにもかかわらず、行列の流れのまま一階からの階段に近い扉に人が集中していた。建物の構造からして仕方ないとはいえ、目の前で起きている出来事に気づいて欲しかった。
　気になったことを挙げるときりがないが、少し気配りが足りなかったことを指摘する。



　どこか納得できないものを抱え、消化不良のまま帰途についた。個人的な希望をいえば、楽譜の音符の連なりを、音で聞きたかった。雰囲気は、体に響いてこないから。
　強い不快感を抱いてはいない。しかし、よく知っている曲だからこそ、はぐらかされた気分だった。もやもや漂う響きはキモチ良くても、音楽を聴きに来た者にはお尻がむずむずして座り心地が悪く、決して心地良くない。


　今日の演奏会で確実にひとつだけ言えるのは、演奏の雰囲気は覚えているけれど、印象に残った音がないこと。一個でよかったのだけれど。

　　　　　　　　　　　　　文責　　唐木　玲
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