――絵画を言葉で語るなんて難しすぎる。
自分で企画しておいて、初っぱなから躓いてしまった。というわけで、『カキトメ帖』閲覧者の皆様はじめまして、『じーらぼ!言戯道場』というサイトを運営しております、みやもと春九堂と申します。
さて、今回ayaさんの自サイト開設に寄せて、お祝いを兼ねてこの文章を書かせていただいております。思えばayaさんとの最初の出会いは僕が主催したボウリング大会でして…とか2人の馴れ初めを話しても仕方ないですね、ごめんなさい。
あ、でも彼女の絵を最初に見たのもその時だったのです。彼女は僕にオリジナルのTシャツをプレゼントしてくれまして、そこにはウチのサイトのキャラクターである、アフロパンダの太々君がボウリングをし、あまつさえ転んで「そんなところまで!」さらけ出しているユニークな絵が描かれていました。
御礼しつつお話をしてみると「絵描きなんです」との事。ふむ?こういう絵で?等と訝しげに思っていたモノの、後に彼女の作品を見せていただき「うわ、本当に画家だ!」と驚いてしまったという大変失礼な過去があったりするのです。ayaさん、ごめんなさい。
その時僕が見せてもらったものは、主に『画帖』内の2000年の作品、それと『暮れ初む(1994)』等の作品達でした。僕は絵心のない人間ですし、これといって美術的な審美眼があるとも思っていません。だったらこんな文章書くな、という話もあるのですが、それはそれとして、彼女の絵に非常に引き込まれてしまったのです。
心理学の芸術療法の分野に『コラージュ療法』というものがあります。雑誌などの記事見出しや文字列、写真やイラストを切り抜いて一つの形にする。絵の苦手な人もそれで自己表現が可能となり、その過程で心を癒す――そういう事を目的としたものです。
僕が初めて彼女の作品を見たとき、真っ直ぐに想起したのは、その『コラージュ』でした。デジタルカメラで撮影され、トリミングされ、パソコンのモニターの解像度を落とされた『ayaさんの描く世界』。そこまで変化させられたモノでも、絵の画面の端々に感じるモノが多くあったのです。
その一つ一つのモノに注視し、そして全体を見る。
それはバラバラの世界が薄皮のように重ね合わせられ、接がれるように紡がれる。高台と碗の継ぎ目を水を着けた指先で丹念になぞる陶芸家の様に。そうして違和感なくバラバラであったモノとは思えないほど自然に一つのカタチとして出来上がっていく。そんな「過程」を見る想いでした。
気がつけば数々の作品を観る内に、僕はすっかり彼女の描く世界に迷い込んでしまったようでした。ですが、そこから見る風景はどこか物悲しくて、「懐かしく暖かだった居場所」を探してしまう…そんな寂寥感がありました。
――『異邦感』。
だから僕は ayaさんに そんな言葉で 感想を述べたのです。
冒頭にも述べましたが、絵画を言葉で表現するのは難しいです。いや、それ以前に自分の思考を相手に伝えることすら難しいのです。なにしろ言葉とは不自由なものですから。僕は会話という行為を『自分の中にある風景や情景を、如何に正確に相手のキャンパスに描くか』という風に解釈しています。そして自分が文章を書くときも、それを念頭においています。
ayaさんは『雑記帖』の中で、御自身の絵画制作について語っていますが、それを「会話」と表現されています。(■言葉のない会話 2003-5-9(金)参照)実はこの「会話の概念」については、随分と前の彼女との雑談の中でも出ていまして、偶然なのかニワトリがタマゴなのかタマゴがニワトリなのかはたまたヒヨコなのか、それはともかく奇妙に楽しい符合を感じます。
そんな奇妙な符合の「会話」。ですが、ayaさんの作品からは「これがこうでこうなのよ!」という説得じみた圧迫感が感じられません。それは旅人が、その風景を情感ごとココロごと記憶に焼き付けた様な、旅の吟遊詩人が詠う見聞録の歌のような、そんな飄々とした雰囲気すら僕には感じられるのです。かといってそれは決して淡々としているわけではなく、旅人の持つ、または旅先で感じる、独特の「温もり」があるのです。
ああ、どんなに努力してみても、やっぱり絵画を言葉で表現するのは難しいです。あ、でも便利な言葉がありました。
『百聞は一見に如かず』
こんな駄文を読んでいるより、さっさと『画帖』に飛んで、彼女の世界を旅してください。そして興味を持ったら是非モニター越しではなく、生の彼女の絵を見てください。そしてその描き手である旅人のayaさんと握手の一つでもしてください。
そうして、もし、もし、僕の書いてきたこの文章の中の矛盾を沢山抱えた精一杯の感想と、少しでも同じ感想をもてたら、今度は僕と握手してやってください。その為にも僕は、彼女の個展に出かけるとしましょう。
もちろんメインは、彼女の世界に迷い込む、そんな旅に出る為に。
2003-5-15 みやもと春九堂
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