ピコ通信/第161号
発行日2012年1月24日
発行化学物質問題市民研究会
e-mailsyasuma@tc4.so-net.ne.jp
URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. 2012年1月23日 政府に提出 市民団体共同声明 水銀条約に「水俣の教訓」を反映するよう求める
  2. 1/14〜15 脱原発世界会議 世界から 日本から 「原発やめよう」の声が響いた
  3. 調べてみよう家庭用品(50)食品添加物 (9)
  4. お知らせ・編集後記


1/14〜15 脱原発世界会議
世界から、日本から 「原発やめよう」の声が響いた


2012年1月14〜15日、パシフィコ横浜にて「脱原発世界会議2012 YOKOHAMA」が開催されました。参加者は、海外からの約30カ国約100名を含め、2日間あわせて延べ1万1,500人に上りました。会議はインターネットで全世界に中継され、約10万人が視聴しました。
 メインの2会場での17企画、アーテイストラウンジでの演奏・パフォーマンス、シアターでの映画上映、ふくしまの部屋での対話、海外ゲストと話そう、そして50以上の様々なもちこみ企画等々と、大変盛り沢山、パワフルな会議内容でした。
 当研究会は賛同団体となり、2日間通しての参加、そして会場近くで行われたデモ行進(4,500人)にも参加しました。
 閉会にあたり「原発のない世界のための横浜宣言」が発表されました。横浜宣言は、@福島の被災者の権利、A日本政府と東電の説明責任、B住民の被ばく最小化、C世界的な脱原発の工程表づくり、D日本は停止中の原発を再稼働しないこと、E途上国への原発輸出の禁止、F地方自治体の役割などを強調し、福島を支援する国際ネットワークを進めることをうたっています(後述)。そして、来る本年3月11日に全世界での行動を呼びかけています。
 今号では、横浜宣言とメイン会場での企画のいくつかをピックアップして報告します。なお、メインの映像記録が以下から見られます。http://npfree.jp/program.html


セッション A-3
問題だらけの原子力
1月15日(日)企画団体:原子力資料情報室/グリーン・アクション

セッションA-3の狙い
 日本の原子力の問題点はどこにあるのでしょうか。エネルギー政策、経済、倫理、雇用・・・。国内だけでなく海外の視点でこれらを読み解いたとき、日本の原子力がなぜ問題なのかが明らかとなるはずです。日本が原子力を進められない理由を浮き彫りにし、改革のための具体的な道筋を示します。(プログラムから引用 以下同様)

登壇者
▼マイケル・シュナイダー(フランス/原子力・エネルギー専門家)▼アディ・ヌグロホ(インドネシア/インドネシア環境NGOフォーラム)▼エドウィン・ライマン(米国/憂慮する科学者連盟)▼アイリーン・美緒子・スミス(日本/グリーン・アクション代表) ▼金子勝(日本/経済学者、慶應義塾大学教授)

 アイリーン・美緒子・スミスさん、マイケル・シュナイダーさん、金子勝さんのお話の概要を紹介します。

■アイリーン・美緒子・スミスさん
 日本の原発は全54基中、現在運転中は5基で、運転再開がなければ、来年5月にはすべて止まるという状況です。脱原発をどう実現するかというと、運転再開を止めるということだと思います。どこの原発が一番はじめに再開されそうなのか、おそらく関西電力の福井県にある大飯3号機、あるいは四国電力の伊方3号機ではないかと思います。

 この間、各地を周ってきましたが、みなさん、反対して憂慮しています。市民だけではなく、自治体が心配しています。関西では福井と関西が一体になって、四国も一緒に、2月4日に琵琶湖で大きな集まりを開きます。

■マイケル・シュナイダーさん
 世界の原発の動きをみると、最高で424基が稼動していましたが、それは1987年〜89年です。現在は多くが廃炉となったり、閉鎖されてきて、そのレベルにはないのですが、日本は1989年以降、廃炉になった原子炉はありません。現状を維持してきたといえます。

 現在の全体的な傾向を見ると、国内重要エネルギーのほとんどを原発で生産している国は少数になってきています。需要の3分の2を生産している国は7カ国、ドイツのように急速に減った国もあります。

 現在、全世界で建設中の原発は、80年代に比べるとずっと少なくなっているけれども、61基です。そのうち2基は日本(大間、上関)。建設中のものが多数ありましたが、中断したものが多い。建設中で多い国は、中国が26基、ロシアが10基、インド6、韓国5と続きます。

 ベルギーは、2015年〜2025年にかけて段階的に廃止することに最近合意しました。

 中国は多くのプロジェクトがあるけれども、今のところ凍結していて、新たなプロジェクトはありません。福島原発以降、原発反対の世論が高まっていて、建設再開は凍結状況にあります。ところが、現状では電力需要が急速に伸びているというジレンマがある。それに対応するために、太陽光、水力など総動員している状況です。風力は福島事故後、4倍にもなっています。

 フランスは、政府の発表によると、未だに原発に賛成しているとのことです。みどりの党、社会党がこれからすぐある大統領選挙に向けて、脱原発を示しています。一部の原発を閉鎖して再生可能エネルギーにシフトしていくという方向です。福島事故の影響で、電力会社が膨大な赤字を抱え、経営困難がおおっぴらになりました。フランス電力は2007年に比べて株価が79%も下落。アレバ社は見込み資本の喪失が15億ユーロ、株価も75%下落。一般大衆も原発に対してだんだんと批判を強めています。

 イタリアは原発モラトリアム、スイスは新しい原発建設に反対する国会決議をしました()。

 原子力発電がエネルギー部門で果たせる役割はひじょうに小さいのです。そういう限界を知らなくてはいけません。原子力発電は世界の電力の13%、一次エネルギーの5%、再生エネルギーの2%という数字を忘れないことです。

注: 2基の新設計画中止。稼動中の5基のうち3基を2018年までに、2基を2032年までに廃止。

■金子 勝さん
 私が昨年9月に選ばれた政府の原子力委員会/原子力政策大綱」策定会議は、原子力既得権関係者が圧倒的多数を占めていて、原発をなぜ減らさなければいけないのか? という意見から始まり、なかなか議論が進まない状況にあります。

 なぜそんなに推進派が強いのかというと、日本の原発は民間の電力会社がやっていて、それを10社が地域独占し、コストアップで必ず利益が保障されるように総括原価主義が支えているからです。国民から電気料金として大量に引き上げたお金が、まず自民党に政治献金として行き、原発推進の電力総連から民主党に行き、経済産業省からは天下りを受ける。事務次官が東電の副社長になるという経路が確立していました。

 電力会社は東電を中心に財界の中心を占めていて、研究費が学会に、広告費がメディアに流れるという構造となっています。その周辺に様々な国の機関=通称"原子力ムラ"(高木仁三郎さんが名づけた)が形成されていて、脱原発に対して根強い抵抗が存在しています。日本の原発の再稼動問題は、エネルギーの供給不足問題というよりは、実は電力会社の経営問題に深く関わっている。そのため、激しい抵抗が存在しているのです。

 現在の事故の賠償スキームは、賠償支援機構に向けて政府は交付国債を出し、それを東電は引き出して賠償に当てる。そして、金融機関が融資をしていく形です。これは財務省が赤字を出さない、つまり交付国債を貸す形になっています。この賠償スキームは、もともと東電の存続を前提にしているのです。ゾンビ企業として、東電が賠償を続けるというスキームです。したがって、地域独占と総括原価主義を崩さないという点で、経済産業省の利害にも適っています。

 ところが、現実に起きているのは、原発の再稼動と電気料金の引き上げがないと、東電は間もなくつぶれるという事態です。東電は多額の借入金があって、その返済が次々やってくる。安全性が疑わしくて稼動できない原発は不良債権と化していて、東電に限らず電力会社は電力債を発行できない状態です。銀行からも借り入れができない。近いうちに、自己資本が不足して債務超過になります。

 原発も再稼動しないと、固定費を割込んできて、膨大な経営赤字を発生させるのです。東電は昨年7月末で、未償還社債残高が4兆4657億円、長期借入金が3兆5487億円、短期借入金が4040億円、2012年3月〜2015年3月の返済必要額は3兆〜4兆円となります。

 政府の東京電力に関する経営・財務調査委員会のシミュレーションによると、電気料金の値上げがなく、再稼動がないケースでは、2020年末までに8兆8,427億円の資金調達が必要となる。ところが、再稼動して10%値上げすると、7500億円で済む。来年も再稼動ができない状況が続くと、来年度は1兆円を超える赤字が発生する。銀行は原発を再稼動して、電気料金を上げて黒字化すれば融資すると言っていて、交渉が綱渡りのように続けられているのです。

 ではどうするか。選択肢を考えると、即時廃止が望ましいと私も思っているのですが、以下のようなことが考えられます。
 即時廃止の場合は
  1. 東電の実質国有化は不可避 ずるずる公的資金注入は最悪である。経営責任、電力改革(発送電分離)は不可避。
  2. 六ヶ所村再処理工場閉鎖→日本原燃の破綻→電力会社の債務保証と引当金不足→電力会社も損失
  3. 直接処分方式へ転換→引当金不足は表面化しない→電力料金に上乗せ(再処理費)の一部は除染費用へ
  4. だが、最終処分場が決まらないと不可能→原発は便所のないマンション状態へ
  5. 巨額の国民負担を生じさせる。おそらく東電だけで10兆円を下らないだろう。他の電力会社も数年のうちに債務超過に陥る。→国民の合意に依存するだろう。
一方、漸進的脱原発の場合は
  1. 安全問題が発生
  2. 新規建設禁止
  3. 危険な原発から廃炉に
  4. 事故調査委員会の結果に基づいた新しい安全基準を設ける 
  5. 原発批判派も含めた第三者委員会による複数チェック体制
  6. 分離国有化も検討の余地が出てくる
 しかし、ずるずる処理で原発だけ国有化するというのは最悪のシナリオです。東電の負担を免れさせて、電力会社の地域独占や総括原価主義を守っていくことになるからです。

 メディアはこういう構図で動いていることを報道しないし、分析もしない。エネルギーが足らなくなる、いや、ならないという議論をやり続けているだけです。

 90年代のバブル崩壊では、財務省と大手金融機関が腐ってしまいましたが、今回の事故は、財界の中心である電力会社と日本株式会社を仕切ってきた経済産業省に危機管理能力がなくて、完全に壊れてしまっています。日本全体が壊れてしまって、責任は問わなければならないけれども、巨額の負担をどうするかについて明確なビジョンと主張がないと、この状況を突破することはできません。残念ながら、民間会社が原発をやったせいで、こういうことになっているのが日本の現状です。
(A-3 まとめ:安間節子)


セッション A-4
原発は止められる
1月15日(日)企画団体:原子力資料情報室/グリーン・アクション


セッションA-4の狙い
 福島の事故を受けて脱原発を決定したドイツも、かつては原発推進国でした。ドイツの例から学び、日本においても原発からの安全な撤退が可能な理由を明らかにします。雇用はどうなるの?電気は足りるの?そもそも、どうやって止めるの?国内外の視点からそんな疑問に答えます。

登壇者
▼ミヒャエル・ザイラー(ドイツ/ドイツ原子力安全委員会元委員長・現委員、エコ研究所所長)▼ミランダ・シュラーズ(ドイツ/ドイツ政府環境諮問委員会) ▼アイリーン・美緒子・スミス(日本/グリーン・アクション代表)▼金子勝(日本/経済学者、慶應義塾大学教授)▼河合弘之(日本/弁護士、脱原発弁護団全国連絡会代表)

 金子勝さん、河合弘之さんのお話の概要を紹介します。

■金子 勝さん
 日本国内で出回っている言説の根拠の批判から始めたいと思います。

  1. 原発がないと成長できないという嘘
     原発は電力会社の不良債権、重荷になっています。世界経済は1929年の大恐慌の時は、GDPに比べて1.57倍の借金をふくらまして、崩壊。経済が急速に小さくなりました。米国は2007年末で2.88倍、日本は90年代初めバブルが崩壊した時には3.8倍でした。借金が3倍、4倍あって、急速に縮んでいる経済で、財政や金融を猛烈に赤字にしたり緩和したりしても、もたせるのが精一杯で、新しい成長を実現するのはほとんど不可能です。
     規制緩和をした小泉構造改革では、日本の一人当たりGDPが2000年に3位だったのが、2007年には19位まで落ちて、かつ日本の製品の国際競争力が急速に落ちました。規制緩和で産業が生まれるという事はなくて、100年に1度の経済危機を乗り切るには大きなイノベーションを生み出す分野以外にないのです。再生可能エネルギーへの転換が、一つの焦点になってくると思います。エネルギーが変わると、さまざまな分野が更新しなくてはならなくなり、内需拡大につながります。
     原発をこのまま続けていると、輸出できている一部のトップのグローバル企業に都合のいい政策だけで、日本全体が食っていけるようにはならないのです。むしろ、日本を見捨てていく展開となります。再生可能エネルギーへの転換は、新しい、日本全体が食べて行けるシナリオとなります。

  2. 原発はコストが安いという嘘
     資源エネルギー庁のシミュレーションでこれまで5.6円/Kwhでしたが、政府のエネルギー・環境会議のコスト等検証委員会の同じシミュレーションを使っての試算で、8.9円以上ということが12月に発表されました。これに事故処理費用、賠償費用が加わると、もっと高くなります。しかしこれはシミュレーションです。実際に大島賢一さん(立命館大)が有価証券報告書を使って計算したところ、原発総単価は10.68円、揚水発電コストを入れると12.23円となり、一番高かったのです。
     私が原子力委員会で開示要求し続けているのは、我々が負担している電力料金との関わりでいくらなのかということです。これは、再生可能エネルギーの買取り価格と比較する時に必要となります。しかし、開示をずっと拒否している。
     実は、電力会社は原発を建設する時に運転発電許可申請書に発電単価を書いているのです。それによると、16円〜20円超。これに稼働率や送配電ロス、核燃料サイクル費用を加えると、20円をはるかに上回ると思います。それを公表すると、再生可能エネルギーよりも高くなる可能性があるので、公表を嫌がっているわけです。

  3. 再生可能エネルギーは不安定という批判
    • おそらく過渡期は、エネルギー効率的なガス発電、コージェネレーション、コンバインド(生産工程から出てくる熱で発電、ガスで発電した熱の利用)。エネルギーのハイブリットを繋ぎのエネルギーとする。
    • 非変動型再生可能エネルギー
      比較的安定していて、調整可能
      小水力、地熱、バイオマス(森林木材、畜産糞尿メタン)中山間地や農村部を潤す。
    • スマートグリッド:不安定な部分を貯めて平衡化していく双方向的なネットワーク(賢い送配電網)。
    以上の対策で克服できる。

  4. 再生可能エネルギーは高いという批判
    • 規模の経済性が働く。液晶テレビや電卓の例。
      【以下の電力改革が必要】
    • 発・送配電分離改革:90年代、ドイツをはじめ各国が取り組んだ。2003年に検討気運があったが、小泉内閣は財界の圧力に封じられた。
    • 固定価格買取制度:初期投資で利益が上がることを保障する合理的な価格の設定が必要
    • 技術革新へのインセンティブを高める必要:ポストシリコン(エネルギー効率が今の太陽電池の8倍)、ギアなし風力発電などの開発税制や補助を組み合わせて、インセンティブを高めていくことが重要。
■河合弘之さん
 浜岡原発指止め訴訟の弁護団長をしています。10年間闘ってきました。脱原発弁護団全国連絡会の代表もしています。

 まず話したいのは、日本は、原発の問題でいかに特殊な場所にあるかということです。日本の国土は世界の0.3%です。そこに全世界の地震動の10%が集まっています。単純に計算しても世界平均の約33倍、数えようによっては約100倍の率で地震が発生している。地震がいっぱい発生して原発をいっぱいやっているのは、世界で日本だけです。私は世界の人に向かってそのことを言いたい。

 日本は断然トップの地震大国なのです。だから、ほかの国はともかく、日本は原発をやってはいけない国だ。やってはいけない度をドイツが1とすると、日本は100倍くらいやってはいけない国。世界の人は日本に「危なくて仕方がないから、原発とめろ」と声明を出してほしいのです。地震大国で、原発なんかやめろと世界中の人が日本に向けてメッセージを発してほしい。もし再稼動が行われると、事故が起きる。そうすると迷惑を被るのは日本国民であると同時に、世界の人類です。

 "原発やめて自然エネルギーへ"論、確かに正しいけれど、危険性があります。「今すぐ廃止するのは非現実的。電気が不足して困る。だから、原発はそろそろやめて脱原発依存して、自然エネルギーやりましょう」 こういう議論に乗りがちですが、これは危険です。じゃあ、明日事故が起きたらどうするんですか。3年以内に起きたらどうするんですか。浜岡が再稼動して東海地震が来たら、東南海地震が来たらどうするんですか。その時は、自然エネルギーの話は全部吹っ飛んでしまいます。

 だから、日本の原発は全部、今すぐにとめるべきだ。ゆっくりなんかしていられない。みなさん、毎日不安じゃないですか。だから、まず全部とめる。そして、もし電力が足りないなら、火力発電を少し増やす。日本の原発を全部とめても、火力発電の稼働率を現在の50%から70%に上げるだけで、全部補えるのです。東電は計画停電をやったけれども、今は関電と東北電力に電力を送ってやろうかと言っている。一事が万事で、全原発をとめても電気が足りなくなることはあり得ない。少し、発電のコストが上がるだけです。放射能の恐怖に怯えるよりも、1円、2円上がってもいいじゃないですか。

 再稼動阻止のための方策について話したい。まず、すべての原発についてもう一回差止め訴訟を起こすことです。3・11までは、日本の裁判官は「おおげさなこと言って、そんなの大丈夫だよ。あんた達オオカミ少年だよ。ありもしないことをおおげさに言い立てて」と思っていた。だからぼくたちは20連敗しました。しかし、3・11以後は違います。「原告の言っていたことは本当になっちゃった。おっかないな。被害もすごい。これはまじめに聞かないとだめだ。真剣に向き合おう」という風に、裁判官が変わってきました。これは、国民が変わったから、裁判官も変わったんです。

 それならば、もう一度問い直そう。「原発、安全ですか。危険でしょ。とめてくださいよ」と。そのために、脱原発弁護団全国連絡会を呼びかけました。そうしたら、あっという間に120人の弁護士が集まってきて(現在は130人)、北の泊から南の川内まで、続々と新しい訴訟が提起されつつあります。このことはひじょうに重要です。裁判官は今までとは顔つきが違うんです。

 次は株主代表訴訟です。福島へは何度も行きましたが、地元は地獄です。離散し、家族は分裂し、地域がなくなり、不本意に人生を変えられ、職を失いました。かたや、東電の役員はどうですか。未だに給料をちゃんともらって、内幸町のオフィスでぬくぬくと仕事をしている。定年がくれば退職金をもらって、いくつかの天下りをやってその度に退職金をもらって、最後は奥さんとどこかのクルージングに行く、幸せな生涯が待っている。加害者天国、被害者地獄です。これでいいんですか。元凶は東電の役員です。これまでに、いくつもいくつも警告があって、15.7メートルの津波が来るという社内の試算でさえ握りつぶした。武藤副社長、そして吉田所長もです。

 個人的に損害賠償債務を負ってもらうということで、株主の人たちと株主代表訴訟を今月末に起こすことにしました。株主40人が結束して、請求額は5兆5045億円です。この訴訟は、単に役員の責任を追及するということではありません。うっかり再稼動して重大事故が起きたら、個人的に財産上の責任を問われるという警告になる。ストレステストが終わり、政府がOKと言う、自治体の首長がOKと言うかもしれない、いよいよ再稼動という時には役員会に諮ります。その時に、「東電であんな訴訟が起きている。再稼動して事故が起きたら個人責任を追及しますよという警告書も来た(警告書を9電力の全役員に出す予定)」ということで、簡単に再稼動はならない、一つの歯止めになるだろうと考えます。

 5兆5,045億円は、世界史上、最大の請求額です。これを普通の損害賠償訴訟でやると50億円くらい印紙代が要る。しかし、株主代表訴訟は印紙代がたったの13,000円でできるのです。

 しかし、訴訟だけでは原発は止まりません。地元の首長への働きかけがひじょうに重要です。法律上は自治体には発言権がないことになっていますが、事実上、地元と原子力安全協定を結んでいるので、知事や首長がNOと言うと、なかなか再稼動できない。だから、みなさん、知事や首長に働きかけてほしいのです。同意するな、絶対拒否しろと。同意したら、次の選挙で落とすぞとはっきり言うべきです。これがひじょうに有効な方法となると思います。

 同じように大事なのは、国会議員への働きかけです。もうすぐ選挙があるので、その時は公開質問状を出してほしい。原発を即時とめることに賛成ですか、反対ですかと。反対または消極的な人は落とす運動をやるべきだと思います。

 そして、大事なのはこういう集会を重ねること、デモをやること。我々が本当に怒って、本当に原発をとめてほしいと願っているということを訴え続けることが、ひじょうに大事だと思います。
(A-4 まとめ:安間節子)


セッション B-4
原発も核兵器もない世界へ
1月15日(日)企画団体:ピースボート

セッションB-4の狙い
 原子力開発と核兵器開発は切っても切れない関係にあります。日本はアジアや中東諸国に原発輸出を進めようとしていますが、それは核兵器の拡散にもつながる問題です。南アジア、中東、アフリカなど世界各地からの報告を受け、核の連鎖を断ち切る道筋を考えます。

登壇者
▼フェリニシティ・ヒル(豪州/緑の党)▼キャスリン・サリバン(米国/軍縮教育家)▼プラフル・ヒドワイ(インド/ジャーナリスト)▼ダンビール・モカメル(バングラデシュ/映画監督、作家)▼ムナ・マハメラー(ヨルダン/弁護士)▼ジャマール・ガツモー(ヨルダン/国会議員、エネルギー委員長)▼ポール・サオケ(ケニア/核戦争防止国際医師会議)▼鈴木真奈美(日本/ジャーナリスト)

 原発を日本から輸入しようとしているヨルダンのムナ・マハメラーさん(弁護士)のヨルダンにおける原発問題のお話の概要を紹介します。

■ムナ・マハメラーさん
 ヨルダンは、北側はシリア、イラク、東及び南側はサウジアラビア、西側は占領されているパレスチナとイスラエルに囲まれています。人口は約600万人、産業は、りん鉱山、石油精製、セメント生産、カリ鉱山、軽工業、観光などです。

 エネルギーについては近隣諸国からの石油に頼っており、エネルギーの90%以上を輸入しています。ヨルダンは世界で最も水資源が乏しい国のひとつです。

 中東の紛争により石油価格は20%以上も値上がりしました。ヨルダンへのエネルギーを80%供給しているエジプトからのガスのパイプラインが爆発したことで、ヨルダン政府の支出は莫大な金額となっています。

 ヨルダン政府は原子力発電所の建設を推進していますが、原発は国民の懸念の的です。政府は原子力が国のエネルギー問題を解決すると考えています。ヨルダンではエネルギー問題の解決が必要ですが、原子力より、年間340日の晴天日のあるヨルダンでは太陽光発電のような再生可能エネルギーのインフラに着手することが国の責務です。エネルギー専門家も晴天日の多いアラブ諸国に適する太陽光発電を推奨しています。環境活動家はエネルギー開発計画を公に討論できるよう訴えています。

 ヨルダンは核拡散防止条約の署名国であり、政府は国際原子力機関(IAEA)に対して完全な透明性を提示すること、核の監視を受け入れることを承諾することで、原子力を得ようとしています。

 ところがヨルダンが位置する中東は世界で最も情勢が不安定な地域です。歴史、宗教、政治、経済に多くの不一致があります。中東ではこの数十年間、"平和のため"に作られた発電所が爆撃されています。1980年イランがイラクのオシラク原発を爆撃、1981年イスラエルがオシラクを爆撃、1985年-88年にイラクがイランのブーシェフル原発を7回爆撃、1991年アメリカがオシラク発電所を爆撃、1991年イラクがイスラエルのディモナを攻撃、2007年イスラエルがシリアの申告されていない原発を爆撃しました。

 ヨルダンは世界で最も水資源が乏しい国のひとつです。全予算を水資源に費やさなくてはならないようなヨルダンになぜ日本政府が原発を輸出しようとするのか不思議です。イスラエルとイランとの間の緊張でヨルダンは衝突に巻き込まれる可能性があります。原発が設置されれば、何時でも大災害を引きこす可能性があります。日本国民が原発輸出に反対し、ヨルダンの視点(政策)を変えさせてくれることを望みます。
(B-4 まとめ:安間 武)


セッション B-5
原発のない東アジアをめざして
1月15日(日)企画団体:東アジア環境情報発伝所/エネルギー正義行動


セッションB-5の狙い
 原発の活用を積極的に勧めてきた東アジア各国。中国では増加の著しい電力需要を賄うために積極的に原発建設を推し進めています。一方日本や韓国は、国内での新規建設が行き詰まりを見せていることから、海外への原発輸出に乗り出しています。福島原発事故を目の当たりにした東アジアに暮らす市民が、「原発のない東アジア」というビジョンを共有し、その道筋を探ります。

登壇者
▼崔冽(チョ・ヨル) 韓国/環境財団代表▼李憲錫(イ・ホンソク)韓国/エネルギー正義行動代表▼付濤(フー・タオ)中国/中国発展簡報編集長▼程淑玲(チェン・シュリン)中国/ブルー大連代表▼セレンゲ・ラグヴァジャヴ モンゴル/モンゴル緑の党・元党首▼平田仁子 日本/気候ネットワーク東京事務所長▼山崎求博 日本/東アジア環境情報発伝所

 日米が関わる使用済み核燃料貯蔵施設建設や原発建設、ウラン採掘などの計画の状況を報告し、脱原発を呼びかけたセレンゲ・ラグヴァジャヴさん (モンゴル緑の党・元党首)のお話を紹介します。


■セレンゲ・ラグヴァジャヴさん
 2010年9月にアメリカのエネルギー省副長官ポネマン氏がモンゴルを訪問した時に、モンゴルに使用済み核燃料の貯蔵施設を建設することについて話をしました。それから5ヵ月後の2011年2月に日・米・モンゴルの代表がワシントンで会談し、3国間で非公式な外交文書が合意されたことについて、アメリカの雑誌が3月30日号で、日本の毎日新聞も5月9日に報道しました。(編注:署名直前に経産省主導に外務省が横槍を入れて署名は延期された。)

 元モンゴル科学省の科学者は、"日本の54基の原発から出る膨大な核廃棄物を特定期間、モンゴルのゴビ砂漠に貯蔵することは可能であり、海外の核廃棄物のモンゴルでの貯蔵はモンゴル経済に大きな影響を与える"と述べました。

 モンゴルの国会議員の中にも使用済み核燃料廃棄物は膨大な利益をもたらすビジネスであるという人も少なくありません。しかし、モンゴル人の権利、国の独立、安全より価値があるビジネスとは何でしょうか?

 モンゴルの土地に日本、韓国、台湾の原発の核廃棄物を貯蔵することについて毎日新聞、共同ニュース、イズベスチャ紙などで報道されました。私たちモンゴル緑の党は、モンゴルの核廃棄物貯蔵施設の建設計画に反対してきました。署名運動、記者会見を何度も行い、福島第一原発事故の6か月後の9月11日には、"核の危険のないモンゴル"という国民運動を展開し、モンゴルの原発建設、ウラン採掘、核廃棄物の貯蔵施設に反対する約6,000人の署名を集め、反原発を求める手紙と共に、モンゴル大統領、国会議長、首相に送りました。

 私たちの反原発運動の結果、9月13日に、モンゴルの大統領は、"モンゴルの土地に海外からの核廃棄物を貯蔵することを禁止する法令"を出しました。一週間後に国連総会で、"モンゴルは海外の核廃棄物をモンゴルの土地に貯蔵させない"と宣言しました。しかし、モンゴル政府、日本、フランス、中国、アメリカ、ロシア、オーストラリア、カナダなどとの原子力分野での連携計画、ウラン採鉱計画、原発建設計画、核廃棄物貯蔵計画の中止は進展しません。

 モンゴルは原子力エネルギーの利用と放射性物質資源を採掘する目的で、2009年、"原子力エネルギー利用法"をたった1日で制定しました。モンゴルには約140万トンという世界最大級のウラン埋蔵量があるといわれており、現在4か所でウラン採掘を推進していますが、技術者と核物理学者が足りません。また現在、モンゴルで18社がモンゴルでのウラン探査権を所有しているという報道もあります。フランスのアレバ社はモンゴルでウランの試掘事業を進め、本採掘を行いました。国際的なウラン関連企業8社のうち5社までがモンゴルに進出していると報じられています。

 去年の8月にモンゴルと日本は原子力エネルギー庁において原発建設について協議し、この計画を2012年から始めるとしています。モンゴルの国民、自然、土地の全てを商売にしようとしている人たちの手に我々の運命がかかっています。ですから私たちの闘いは決して終っておらず、わが国及び世界の国々を核の危険から守るために皆さんの知恵がとても大切なのです。核の危険のない世界を作るために努力していきましょう。方法は簡単です。原発に反対することです。皆で一緒に脱原発を進めましょう。
(B-5 まとめ:安間 武)


原発のない世界のための
横浜宣言

(抜粋)

 私たちは、次のことを呼びかけます。

1. 東京電力福島第一原発の事故で被害をうけた人々の権利を守ること。
 避難の権利、健康対策、除染、補償を受ける権利、そして、2011年3月11日以前と同様の水準で生活する権利が保障されなければなりません。

2. 日本政府および東京電力は完全に情報公開し、説明責任を含むあらゆる責任を果たすこと。
 これまで行ってきた情報の隠蔽や矛盾した情報の提供を改め、公衆に情報を普及する独立機関を設置すること。

3. 人体、食料、水、土壌および空間における継続的かつ包括的な放射線測定とデータ収集を行い、住民の放射線被ばくを最小化するための緊急かつ必要な措置を公衆に知らせること。
 データ収集は数世代にわたって必要であり、省庁間連携による取り組みと国際社会による支援が必要です。原子力産業から利益を得てきた企業は、これらのコストを分担しなければなりません。

4. ウラン採掘から廃棄物に至る核燃料の連鎖から段階的に脱却し、原発を廃炉にしていくための世界的な工程表をつくること。
 「安全神話」は崩れました。核技術はこれまでも決して安全ではなく、莫大な公的補助金無しには生き延びて来られるものではありませんでした。自然エネルギーはすでに立証されており、固定価格買い取り制度のような地域経済を支援する政策さえ実施されれば、地域において地方分権的な形で実施可能になっています。

5. 現在稼働が停止されている日本の原発を再稼働すべきではないこと。
 法制化された固定価格買い取り制度を実施し、発送電分離などを通じて自然エネルギーを拡大すれば、日本のエネルギー需要は満たすことができます。

6. アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパなどの途上国に対して原発やその部品を輸出することを禁止すること。

7. 原子力に頼らない社会をつくるために重要な役割を果たしている地方自治体を支援すること。
 コミュニティを強化し地方分権とボトムアップを進め、経済、人種、性別に基づく差別のない社会をつくるために、地方自治体の長、地方議会および市民社会の間の連帯を強めましょう。

8. 2012年3月11日に世界中で行動、デモ、セミナー、メディアイベントなどを行い、福島の人々が置かれている状況に抗議し、原発のない世界を呼びかけること。

2012年1月15日
「脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA」にて発表 横浜、日本


化学物質問題市民研究会
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