ピコ通信/第130号
発行日2009年6月23日
発行化学物質問題市民研究会
URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/


文科省が「学校の耐震化工事に関する要望」に回答
現在の対策で十分とする危機感ゼロの姿勢



 昨年12月に文科省あてに出した「学校の耐震化工事に関する要望書」(ピコ通信124号参照)に対する回答を、1月15日までにとお願いしていましたが、結局、2月20日に口頭で答えるとのことで、取りまとめ団体の化学物質問題市民研究会、CS支援センター、市民がつくる政策調査会の3者が文科省で回答を聞きました。(文科省は文書での回答はしていないとのこと)
 この要望書は、今後約4万8千棟(約38%)もの学校施設の耐震化改修が進められようとしており、過去にも多数例があるように、使用・発生する化学物質等による健康影響について未然に防止することを目的としています。
 対応したのは、大臣官房文教施設企画部施設企画課防災推進室防災推進係・小林和弘さん、大臣官房文教施設企画部施設企画課指導第二係長・栗本和良さん、大臣官房文教施設企画部施設企画課企画係長・河村雅之さん。

回答
要望1. 耐震化事業の計画および工事の実施にあたっては、子ども達への健康影響を最小限にすることを最重要課題とすること。
回答:児童・生徒の健康・安全には十分配慮して行うことが重要だと考えている。「学校整備指針」において、工事に伴って学習・生活に支障のないようにと指導している。したがって、工事の際、学校設置者である各自治体においては、健康・安全には十分に配慮されているものと考えている。
(「学校施設整備指針」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/001/index.htm#gijiroku

要望2.耐震化事業の計画および工事は、グリーン購入法に定める特定調達品目(物品、役務、公共工事)及びその判断基準に適合するように実施すること。

要望3.耐震化工事は長期休業・休学中の初期段階に実施し、子ども達が学校施設内等に居る期間は避け、また工事後の一定期間は入室等のないようにすること。

要望4.やむを得ず就学期間に工事を実施する場合には、教室の移動・工事現場の遮蔽などして工事現場から子どもたちを遠ざけるなど、影響が少なくなるよう対策を取ること。

2、3、4 回答:
 学校整備指針の中で、工事後、化学物質が基準値を超えないことを確認した上で引渡しを受けるということを盛り込んでいる。その前の設計の段階にも、建設時にできるだけ化学物質が発散しないようになど、建設時の留意事項や室内空気汚染についてのパンフレットをつくって配布することを進めている。

要望5.化学物質に敏感な子ども達については、保護者とよく相談して影響を極力少なくするよう対策を講じること。

要望7.「学校環境衛生の基準」を遵守するとともに、室内の化学物質濃度やこどもたちへの健康影響を考慮したさらなる対策を講じること。

要望8.耐震化工事にあたっての留意事項を、各自治体、学校に通知すること。

5、7、8 回答:
 学校整備指針とパンフレットによって、適切な情報が教育委員会に届くようにしていきたい。 要望6.工事が原因で授業を受けられない場合は、自宅学習、訪問授業などの代替策を講じること。
回答:学校環境は安全で快適でなければならない。安心・安全な教育環境をつくる責任は、自治体・教育委員会の責任である。耐震改修工事においても、児童・生徒の安心・安全な学習環境の確保のために、例えば代替施設としてプレハブ校舎を建てるというようなことが計画的に実施されていると考えている。プレハブのリースにかかる経費についても国庫補助の対象としている。工事が原因で教育機会が損なわれないように適切に対応していただいていると認識している。

質疑
 耐震化工事における留意事項について通知を出したことはあるか?
 通知ではなく、パンフレット「健康な学習環境を確保するために」を配布、周知している。 (http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/06062908.htm 参照)

 耐震化工事が原因で学校に行けなくなったなどの事例の報告は上がってきているか?どの程度把握しているか?
 定義が難しいということもある。現時点では調査はしていない。学校へ行けない原因は何であるにしても、毎日安心して学校で学習できる環境を整えるというのが、第一である。教育委員会であらゆる選択肢を考えて、対応していただいていると認識している。

 以上が回答及び質疑の概要です。
 過去の例だけではなく、最近になっても、東京都日野市の中学で耐震化工事による健康被害が起きている等にもかかわらず、まったく危機感がなく、すべて自治体にお任せしているという姿勢でした。

■今後の取組みについて
 学校施設の改善等については、学校施設整備指針やパンフレットなどの提示により、各自治体の判断で進める事業であることから、指針やパンフレットの内容についてチェックし、その問題点の整理と変更(改善)などを求めることが必要だと考えます。
 また、危機感がまったく欠如しているので、健康被害等の事例を集めて、文科省に示して認識を変えさせることが必要です。
 全国の学校における耐震工事の情報を集めて、引きつづき文科省に働きかけていきたいと思いますので、情報をお寄せください。

■今年度中に"化学物質による健康障害に関する参考資料"作成
 話し合いの後、スポーツ・青少年局学校健康教育課・成瀬保健管理係長と、かねてより要望書を出しているシックスクール対応マニュアル作成の件で、面談しました。
 面談で分かったことは
 「本年4月1日より学校保健法が学校保健安全法に改正されたのに伴い、学校環境衛生基準が法律で定められ、4月1日から施行された(これまでの"学校環境衛生の基準"は指針で、法律で定められたものではなかった。学校環境衛生基準はほぼ同じ内容)。それに対応して学校環境衛生管理マニュアルも改正することになっている。また、「参考資料」(我々がシックスクール対応マニュアルと呼んでいるものにあたる)も今年度中には発行する予定である」

 その後、再度確認したところ、「参考資料」は「健康的な学習環境を維持管理するために」−学校における化学物質による健康障害に関する参考資料−というもので、現在編集作業を行っているということが分かりました。
(安間節子)


化学物質問題市民研究会
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