ピコ通信/第92号
発行日2006年4月24日
発行化学物質問題市民研究会
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URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. 環境ホルモン小冊子『チビコト』問題 随意契約問題が連続報道される
  2. 厚生労働科学研究費健康科学総合研究事業成果発表会一般向けフォーラム
    シックハウス症候群・化学物質過敏症−最近の研究成果(その2)
  3. 3Rイニシアティブにとってのバーゼル条約の意義
    廃棄物貿易を促進するアメリカの孤立/高宮由佳(BAN シアトル)

  4. 海外情報/混合するとベンゼン生成可能な2成分が子ども用飲料中に
    米食品医薬品局(FDA)は知っていて沈黙
  5. 海外情報/大手医療用品会社 環境によい新たな非塩ビ製品を
    CleanMed 2006 で発表
  6. 化学物質問題の動き(06.03.24〜06.04.24)
  7. お知らせ・編集後記


環境ホルモン小冊子『チビコト』問題
随意契約問題が連続報道される



 本紙89号と90号で、環境省が一方的内容の環境ホルモン小冊子『チビコト』を「ExTEND2005リスクコミュニケーション推進検討会」の委員が編集長を務める月刊ソトコト誌に随意契約で発注しているなど、不明朗な形で作成、配布したことを取り上げました。
 環境省は当会からの再質問状に対して2月20日付けで誠意も中身もない回答を寄こし、ますます不信の念が強くなりました。
 そこへ、3月22日の参議院環境委員会でこの問題が取り上げられ、質疑が行われました。4月4日にはNHKテレビで、環境省の随意契約問題が取り上げられ、さらには全省庁の問題に発展して連日報道され、大きな動きとなってきました。
 こで、これら一連の動きについて報告します。

参議院環境委員会での質疑(概要)
3月22日 岡崎トミ子議員(民主党)

 環境省の契約には随意契約があまりにも多いこと、および天下り団体が様々な業務を受注していることについて岡崎トミ子議員が質問を行いました。その中で取り上げられた小冊子『チビコト』の随意契約に関する不明朗さについての質問のさわりを、議事録(未定稿)からピックアップします。
  • (ExTEND2005)リスクコミュニケーション推進検討会のメンバーが編集長の商業誌「ソトコト」に1,105万50円で随意契約している。
  • LOHAS(ロハス)は「ソトコト」登録商標で、内閣府によれば特定企業の登録商標を使った広報は通常はあり得ない。
  • 『チビコト』の中身を、環境省が監修もしていないということであれば大変問題。環境省が伝えたい中身そのものでなければ税金を出してはいけない。
以下は、やりとりです。

岡崎議員(以下岡崎)
 そのほかに、環境省が随意契約を行ったということで、市民団体から批判が上がっているものがある。今年1月に発行した雑誌「ソトコト」付録は10万部と環境省への納品5千部を契約した平成17年度化学物質の内分泌攪乱作用に関する冊子作成業務、1,105万50円の契約についてうかがいたい。これは特定の雑誌に付録の作成を補助した形になっているが、なぜ随意契約にしたのか。

滝澤秀次郎環境保健部長(以下滝澤)
 化学物質の内分泌攪乱作用に関する情報提供と、リスクコミュニケーションの推進という一環で行ったもの。販売数の多い一般市販雑誌を活用することが有効かつ効率的であると考え、雑誌に付録する小冊子という媒体を採用した。雑誌社の選定に当たっては、幅広く一般市民の手元に届くことを条件とし、雑誌の内容や発行部数、これまでの環境分野での情報提供の実績等を考慮した。

岡崎
 20代、30代向けで10万部の雑誌を出しているところは他になかったのか。この雑誌にはLOHASという登録商標が取られているが、これは特定の営利企業の商標。仕様書にはコンテンツとしてLOHAS、化学物質の内分泌攪乱作用問題に基づき考える新たな生活スタイルの提言とある。内閣府に尋ねたところ、特定企業の登録商標を使った広報は通常はあり得ないと答えた。 なぜ、特定の企業の商標を環境省が推奨するような随意契約をしたのか。他社との比較はどのようにしたのか。

滝澤  LOHASは、健康と環境の面を中心とした持続可能性を重視した生活スタイルというような概念だと思う。第三次の環境基本計画案でも、このLOHASという記載が出てくる。自然との触れ合いを大切にし、物質的な豊かさも精神的な豊かさをも求める人々の志向を反映した一般名称と認識している。

岡崎
 「ソトコト」という雑誌の出版社と商社がLOHASの商標権を持っている。LOHASという名前の関連商品を売り出したいという戦略を持っている。こういうものに随意契約を行うというのは、そこに補助金を出したということになるわけだから、納税者に説明がつかない。(問題の冊子)「ソトコト」の別冊、チビコト「ロハス的環境ホルモン学」がこれである。ここには環境省のマークが付いている。中身について環境省は監修をしたのか。

滝澤
 コラムや対談といった直接執筆者や対談本人が紹介されている記事については、その内容は執筆者あるいは対談者本人の意見そのもの。環境省が、特にあえて検討を加えるという性質のものではないと考えている。その他の記事については、雑誌編集者が執筆、編集したもので、環境省から情報提供など協力を行い、内容は環境省の見解と異なるものではない。

岡崎
 環境ホルモンの問題についてやるということであれば、環境省が伝えたい中身そのものでなければ税金を出してはいけない。 (冊子の)中身にも問題があるが、それについては他の機会に触れたい。
 環境省のマークが付いて、(読んだ人は)あたかも環境省が出版したかのように思う。(ところが、)出版するものを推奨しているわけでもなく、その中身についても別に監修もしていないということであれば大変問題だ。もう一つ、「ソトコト」の編集長は正にこの(ExTEND2005)リスクコミュニケーション推進検討会のメンバー。メンバーのところにお金を出しているのだから、客観性についても問われる。こういうものは非常に透明性を求められるものではないかと思う。
 こういう一営利企業に対して、会計基準や法律に関係なしで税金が投入されることがないようにしていただきたい。

NHKの一連の報道
4月4日「ニュースウオッチ9」で
 NHKテレビは4月4日の番組「ニュースウオッチ9」で、「税金の無駄遣いを追う 中央官庁で徹底調査」として、情報公開制度を利用してNHKが独自に調査した環境省の随意契約の実態を報道しました。
 NHKの調査によれば、環境省が平成16年度までの5年間に行った、工事の発注や物品の購入など500万円以上の契約およそ3,000件のうち、全体の93%が、特定の業者と結ぶ随意契約で、競争入札は7%しかありませんでした。年度別にみても、91%から98%と毎年ほとんどが随意契約で占められていました。
 随意契約の相手の半数が公益法人で、その6割余りに環境省のOBが天下っていました。このうち、環境省のホームページの管理運営については、OBが天下っている環境情報普及センターに随意契約で発注され、毎年、仕事の内容が違うにもかかわらず、契約額は4年間、4,920万円と同じ金額で、まったく変わっていませんでした。
 これに対して民間のHP作成等の業務を行っている会社の専門家は、文章をHPに載せるだけの単純な作業で、この普及センターでなければできない特殊な業務ではないし、12か月で360万円で対応が可能で、1千万円というのは高すぎるとのコメントを出していました。
 中央省庁が契約を結ぶ場合、随意契約は、業者間で競争相手がいない場合など例外として認められているだけで、業者との癒着をなくし契約額も低く押さえるために、原則として競争入札の実施が義務づけられています。

4月18日19時ニュースから
 20の中央省庁が、平成16年度までの5年間に行った工事の発注や物品の購入など500万円以上の契約一覧を18日に開かれた衆議院の行政改革特別委員会に提出し、NHKは内容を分析しました。
 その結果、平成16年度では、20省庁で7,800件あまりの契約が結ばれ、このうち70%にあたる5,500件あまりが、特定の業者と結ぶ随意契約だったことがわかり、競争入札は30%でした。随意契約の割合は、環境省の92%が最も高く、次いで国土交通省が90%、金融庁が84%、内閣府と経済産業省が82%と、5つの省庁で80%を超えていました。
 今回の結果について、千葉大学の新藤宗幸教授は「随意契約は競争がないので金額が割高になってしまう上、役所側の一存で仕事の発注先を決めるため、腐敗の温床になりかねない。中央省庁の随意契約の割合がこれほど高いのは、異常と言わざるを得ない。徹底的に調査し、早急に改めるべきだ」と話しています。

4月18日12時ニュースから
 小池環境大臣は18日の閣議後の会見で、「随意契約が全体の9割以上を占めているのはあまりにも多すぎる。基本的には競争入札を増やし、効率性、透明性を高めるとともに、随意契約を半減させるぐらいの勢いで見直しを進めたい」と述べ、官房長を責任者とするプロジェクトチームを作り、契約のあり方を全面的に見直す考えを明らかにしました。プロジェクトチームは、今週から各部局の契約の実態について調査を始めることにしており、今年6月までに結果をまとめ契約のあり方を改善することにしています。
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環境ホルモン問題は終わった?
 3月29日の平成17年度第2回ExTEND2005リスクコミュニケーション推進検討会を傍聴しました。小冊子『チビコト』についても、「大変好評で、12,000部配布した」と報告がありました。ただし、企業からの希望が一番多かったということもポロリと漏らしていました。「化学物質問題市民研究会から、内容が偏っているとの批判の質問状をいただいた」との報告もありました。  しかし、国会で取り上げられたことには一言も触れませんでした。
 また、環境ホルモン国際シンポジウム(注)は10回目になる来年からは、小児の環境保健国際シンポジウムも一緒にして、化学物質の管理に関する国際シンポジウムにリニューアルする。今年の国際シンポジウムは釧路で、来年への橋渡しとして開催すると上家和子環境安全課長は発言しました。
 環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)という名称は完全に消えてしまうようです。ということで、完全に環境省は環境ホルモン問題は終わったものとして、あるいは化学物質の管理の一分野として縮小化しようとしていることが分かりました。
 当会では、6月10日に環境ホルモン学会長の森田昌敏さんを講師に迎えて講演会を開きます。環境ホルモン問題は今どうなっているのかについて、みんなで学習したいと思いますので、ぜひご参加ください。(詳細は今号に入れたチラシを参照ください) (安間 節子)

(注) 正式名称は、第1回(1998年12月)〜第7回(2004年12月)までは「内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」、第8回(2005年12月沖縄)は「化学物質の内分泌かく乱作用に関する国際シンポジウム」と変わった。

化学物質問題市民研究会
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