ピコ通信/第68号
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文科省 室内空気調査項目に2物質追加
文部科学省は、2月10日、「学校環境衛生の基準」を改訂し、各都道府県教育委員会及び各都道府県知事等に通知しました 。改訂項目から、化学物質と関わりのあるものを拾ってみます。 1.「教室等の空気」について
「ネズミ、衛生害虫等の発生を見た場合」は、「児童生徒等の健康及び周辺環境に影響がない方法で駆除」を行うようにするとしたこと。 化学物質の室内空気濃度の学校実態調査 エチルベンゼンとスチレンを検査項目に加えるに当っては、同日発表された「学校における化学物質の室内空気濃度の実態調査」の結果が参考とされました。 ■調査方法 調査対象 全国各地の新築・改築(1年程度)、全面改修(1年程度)、築5年程度、築10年程度、築20年程度の学校から各10校、合計50校を選定。 測定事項 エチルベンゼン、スチレン、テトラデカン :教室、保健室、図工室、音楽室、パソコン教室、体育館、外気 クロルピリホス、ダイアジノン :教室、保健室、体育館、外気 フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル :教室、保健室、図工室、音楽室、パソコン教室、体育館、外気 エチルベンゼン、スチレン及びテトラデカンについては、50校を対象に測定。また、1日のうち、午前・午後の2回の測定を実施。 クロルピリホス、ダイアジノン、フタル酸ジ-n-ブチル及びフタル酸ジ-2-エチルヘキシルについては、50校の中から10校を抽出して測定。また、測定時間がかかるため、午前・午後の2回の測定ではなく、1日1回の測定を実施。 調査期間 エチルベンゼン、スチレン、クロルピリホス、フタル酸ジ-n-ブチル :夏期:平成13年 9月〜10月 冬期:平成12年12月〜平成13年2月 テトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン : 夏期:平成13年 9月〜10月 冬期:平成13年12月〜平成14年2月 ■結果の概要 エチルベンゼン 夏期及び冬期において、厚生労働省の室内濃度指針値(3800μg/m3)を超えた箇所はなかった。 (単位:μg/m3)
スチレン 冬期において、厚生労働省の室内濃度指針値(220μg/m3)を超えた箇所はなかった。 夏期において、午後で277箇所中1か所(0.4%) (図工室)で室内濃度指針値を超えた。 当該図工室で、午前の測定の後、午後の測定の前の授業においてスチレン系接着剤を使用したことが室内濃度指針値を超えた原因であった。 (単位:μg/m3)
テトラデカン、クロルピリホス、ダイアジノン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル:夏期及び冬期において、厚生労働省の室内濃度指針値を超えた箇所はなかった。 文科省がようやく室内濃度調査に取り組んだのは、一歩前進です。しかし、これらの調査結果からは、今、子どもたちが苦しんでいるシックスクールの実態は浮び上がってきません。それはなぜなのでしょうか。 一つは、調査がシックスクールの原因を適切に調べていないのではないかということ。 もう一つは、厚労省の指針値が決して安全値ではないという理由からです。 厚労省自身「そもそも指針値は、化学物質によりシックハウス症候群を引き起こす閾値を意味する値ではない」(出典:室内空気質健康影響研究会報告書の概要)と言っています。いわば"目安の値"といった漠然としたものなのです。ですから、指針値を絶対視することは危険なことです。 たかだか数種類の室内汚染物質を学校毎に測定しても、子どもたちの健康を守ることは困難です。それよりも、子ども達の健康に影響のある物質を使うことをやめるという方向に変えていくべきです。それは、そんなに難しいこととは思えません。文科省では、健康実態調査も行うとしているので、結果の発表を待ちたいと思います。(安間 節子) |