ピコ通信/第65号
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研究会2004年活動の課題と展望
−化学物質の子どもへの影響を調査研究したい− 化学物質問題市民研究会代表 藤原寿和 ■はじめに 当研究会では、昨年から「子どもの健康を化学物質から守るための施策調査及び提言」プロジェクト(以下「子ども健康プロジェクト」)を開始しました。 発達過程にある子どもは化学物質に対する感受性が強く、子どもの環境政策の実施が緊急の課題として国際的に叫ばれています。 こうした取組みはすでに欧米では推進されていますが、日本では、東京都が化学物質ガイドラインを制定したものの、国レベルでの取組みは遅々として進んでいないのが現状です。 昨年3月に、環境省が「小児等の環境保健に関する取組」の企画を公表し、当面は「小児等への化学物質の暴露量を算定するための手法を開発し、暴露評価を行うための基礎資料を集積するために、小児等の生活時間、行動パターン等に関するアンケート調査を実施する」こととしています。 私たちは、身近にあふれる化学物質が、とくに発達過程にある子どもたちに与える影響に着目して取り組む中から、あらためて化学物質政策全般の見直しにつなげていきたいと考えています。 ■2003年活動を振り返って 子ども健康プロジェクトの初年度に当たる2003年度の事業として、私たちは、次の4つの事業を推進してきました。 (1)海外における各国(アメリカ、EU、デンマーク等)の取組み事例を調査(文献収集等)し、国内向けに翻訳紹介すること。 この事業は9月に開始し、すでにその成果の一部を私たちのホームページに「子どもの環境健康」と題したコーナーを設け、収集した海外文献を翻訳して紹介しています。 (2)国内では、全国の都道府県及び政令市、中核都市を対象としたアンケート調査(子どもを対象とする化学物質対策の実施内容及び計画等)の実施。 昨年8月に47都道府県、13政令市、35中核都市に宛ててアンケート用紙を送付し、現在、66の自治体から回答が寄せられており、その取りまとめ作業を行っております。 中間的な取りまとめ結果を私たちのホームページの「子どもの環境健康・自治体調査」に掲載しておりますので、ぜひご覧下さい。 (3)関連するテーマでの学習講座の開催 「化学物質から子どもを守るために」をテーマに、これまで5回の連続講座を開催してきました。この1月17日には、最終回として東京都の「化学物質の子どもガイドライン」をテーマに、都の担当職員から、その内容と今後の展開などについてお話を伺いました。 ホームページ「研究会主催の講座−化学物質から子どもを守るために」 (4)以上の調査結果等から国・自治体への政策提言 3月中にまとめ、提出する予定です。 ■2004年活動の課題と展望 今年の活動方針としては、昨年に引き続き子どもと化学物質をメインテーマに活動を展開していく予定です。 昨年は文献調査と啓発事業が活動の中心となりましたが、今年は、子ども用商品の実態調査を考えています。化粧品や玩具、文具、食べ物など、子どもをターゲットにした商品が氾濫していますが、そうした商品にどのような化学物質が使われているのか、企業アンケートや試買調査により明らかにしていきたいと思います。 それをもとに、子どもや若者向けに身の回りの物についての化学物質を中心とする環境情報を伝えるウェブサイト作成にとりかかる予定です。 また、子どもを取り巻く環境の中で、どの程度化学物質に日常的に暴露を受けているのかの調査も必要と考えています。 シックハウスやシックスクールの原因物質であるホルムアルデヒドやトルエンなど揮発性有機化合物(VOC)を計測できる「フィルムバッジ」を子どもたちに一昼夜つけてもらい、それを回収して計測することによって、1日の生活の中でどういう汚染状況に曝されているのかを測定することができます。 屋外では、有機リン系の殺虫剤や農薬の散布に曝されていますが、こうした汚染状況についても明らかにしていきたいと考えています。 こうした実態調査結果を踏まえて、子どもを取り巻く環境から有害な化学物質の排除、安全な物質への代替化、子ども用商品の成分表示の義務化などを提案していきたいと思います。 以上のような2カ年の取組みをもとに、子どもの健康を化学物質から守るための「子ども健康基準」の設定や「子ども健康保護対策」の実施などを検討し、関連する取組みを行っている団体等と一緒に、「子ども健康保護法」の制定運動に取り組んでいきたいと思います。 今年もどうぞ研究会の活動にご参加、ご支援をよろしくお願いします。 |