ピコ通信/第63号
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1. 連続講座第「化学物質から子どもを守るために」 2003年11月2日開催 第3回 「化学物質の子どもへの影響の実態 −有機リン中毒・化学物質過敏症医の報告」 青山美子さん(前橋市・青山内科小児科医院) ■ラジコンヘリで有機リン農薬空中散布 百万言を費やすより、これを見ていただくのが早いので、最初にビデオを見ていただきます。これが空中散布地帯からやって来る患者さん達の実状です。 群馬県でもラジコンヘリで農薬の空中散布が盛んに行われています。8リットルしかつめないのでディブデレックス(劇物)、フェニトロチオンなどの有機リン系農薬を5〜8倍希釈で撒いています。基準は1000倍希釈のものです。人家にも知らせずに勝手に撒けるので、窓を開けていたり、登校途中の子どもの上に撒かれます。するとたくさんの患者さんが私の医院にやってきます。 その方たちは有機リンの慢性中毒になって、ぜん息、神経障害、顔面ヘルペス、皮膚炎、うつ病などの障害に苦しみます。解毒剤で治療すると、目つきや表情もよくなり、おむつをしていた老人がバイクを運転するまでになります。しかしそうなるまでにたくさんの人生の豊かさが奪われてしまっているのです。子どもたちは治療しても精神的な後遺症が残って、不登校や引きこもりになる例が多いのです。 このラジコンヘリを作っているのは、ヤマハの子会社で、ヘリを操縦しているのもヤマハの子会社です。日本全国どこでも同じだと思います。雪印が小さな子会社のためにつぶれたのに、ヤマハの経営者は、そのことをまったく認識していないとしか考えられません。環境に良いと称するバイクを売り出し、当社は環境に配慮しているなどと新聞で宣伝しています。ヤマハの音楽教室に子どもを通わせている方はすぐにやめ、カワイのピアノを買い、カワイの音楽教室に通わせましょう。 ■症状が遅れて出てくる 撒かれた農薬は揮発してガスとなって大気中に留まります。撒いた地点より離れた、しかも高い場所がより高濃度になります。患者の症状が撒かれた時より後にひどくなるのは、大気中に残っているか、体内に残っているためでしょう。また、有機リンは急性毒性もこわいが、最もこわいのは慢性毒性と遅延型神経毒性の方です。 建物の中も、ハエ、カ、ゴキブリ、ナンキンムシ駆除と称して有機リン農薬が撒かれます。役所、公民館、学校、病院、デパート、新幹線の中も撒かれています。植木屋も農薬を撒くのが主な仕事です。公園、サッカー場、校庭にも撒かれます。 住宅も、シロアリ駆除のために有機リン農薬が撒かれます。トルエン、キシレンよりも有機リンの方がこわいのです。急性毒性では、ぜん息による突然死、慢性毒性では精神疾患になります。 パラジクロロベンゼンも防虫剤だけでなく、シロアリ駆除にも使われています。発がん物質であるうえに、学力低下、登校拒否の原因の1つにもなっています。学校ではワックスに入っているリン酸エステルが問題です。これも農薬と毒性は同じなのです。 ■有機リンは増え続けるぜん息の原因物質 人の化学物質の摂取は、空気から83%、水から8%、食べ物から7%、その他2%です。無農薬野菜を食べていても、息をしている限り無駄です。しかし、無農薬野菜を求めないと、安全な空気も得られないのです。 大気汚染のうちイオウ酸化物は劇的に減っているのに、3才児のぜん息が1年で2倍になって原因不明だとされています。この間増えているのは有機リン農薬です。ぜん息による突然死も、1990年の統計で急に4倍になりました。私は1985年ころから横浜国立大学の花井さんたちと有機リン農薬による大気汚染を警告してきましたが、未だに使用量が増え続けています。 生物学的異常が子どもに起きているのです。遺伝子によって、同じ条件でも症状が出る人と出ない人がいますが、妊娠6カ月から生後1年までの早幼児期の子どもは全員一番敏感な部類に属します。だから子どもたちのために法律を変えないといけないのです。 まず、有機リン農薬の空中散布をやめるべきです。しかし若いお母さんに危機感がないのです。撒く方も悪いが、ラジコンヘリが近くを飛んでいてもなんとも思わない方も問題です。みんなで文句をいい続ければ変えることはできます。 ■子どもの行動障害の原因物質では? 都会より田園の方がぜん息の発生率が2倍も多いのです。不登校の子どもも同じ比率で多くなっています。農薬の中毒になった子どもは過敏な食物アレルギーになったり、不登校や引きこもりになります。 早幼児期に脳障害が起きると、思春期の行動異常につながります。幼児を殺した14歳の子どもも農薬による被害者なのかもしれないのです。 ADHD (注意欠陥多動性障害)が増えていて、待合室を改造して子どもを隔離するようにしました。3家族も来るとうるさくて診療になりません。子どもたちの落ち着きのなさ、騒がしさはただごとではありません。社会行動を行うのに必要なワーキングメモリーの障害なのです。 10月30日の朝日新聞の記事で、多動障害も有機リンのせいではないかというアメリカの研究が紹介されました。9月16日には農水省が住宅地への農薬使用の規制を出しました。 ■学校で使うワックスにも大量の有機リン 現場の学校では遅れていて、未だにリン酸エステル入りワックスを使っていて、無作用量が0.03%なのに5%入りのワックスを塗らせています。 シックスクール対策では、国はリン酸エテスルはもう使っていないものと考えて規制物質の中に入っていません。 シックスクール対応と書いてあるワックスの方がリン酸エステルが大量に入っています。ここまでくると犯罪です。シックスクール対応製品の MSDS (化学物質安全性データシート)を取り寄せたら、入っていると書いてありました。製品安全データシートでは化学式は書いてありません。ひどいものだと MSDS イコール製品安全データシートとなっていて、可塑剤としか書いてありません。 ■これからリン系可塑剤・難燃剤が問題に 奇形タンポポが全国で問題化していますが、土壌から一番出てくるのはリン酸トリスで、有機リンと同じような毒性があります。 塩素が6個、真ん中にリンがついています。可塑剤、難燃剤としてテレビやコンピュータ、自動車で使われていて、同じメーカーで同じ様な機種で若干安いもの、東南アジアで作られたもので臭いがきついものにはリン酸エステルが大量に使われています。買ったとたんに化学物質過敏症になる例も多いのです。 これから、可塑剤、難燃剤が問題になってくるでしょう。特に有機リンは化学物質過敏症の原因物質として最大、最強のもので、かつ難治性です。トルエン、キシレンが原因だと比較的治りやすいのですが。 有機リンの問題は、急性毒性だけが問題とされてきましたが、遅発性毒性の神経障害がようやく問題とされるようになってきました。遅発性で、あとに残る、人間の尊厳にかかわる精神毒性があります。アメリカの軍関係の研究所で研究がされていて、日本はアメリカがやると変わる国だから、いくらかはいい方向へ行くのではないでしょうか。 【質疑応答】 Q 井上雅雄さん(コニシ) 都営住宅の室内空気の測定を行なったところ、畳のブルーシートにフェンチオンが使われていることがわかった。東京都の住宅都市整備公団指定だ。 A(青山 以下同様) これはとうの昔になくなっているべきもので、ダニ対策にもならないのに未だにやめない。1m2に1gも入っていてガス部屋になる。畳の裏の防虫加工紙ブルーシートはもう10数年使われている。自分の家を点検する必要がある。 Q 近所のグラビア印刷工場の有機溶剤にやられた。一人で訴えているが勝ち目がない。化学物質の治療に医療保険がきかない。 A 保険はきくはずだ。化学物質過敏症はまだ認知されていないが、シックハウス症候群が認知されたので、外気からだとしても室内空気中の溶剤による中毒というのでいいのではないか。 Q 製品安全データシートと、MSDS のちがいについて。学校での問題で取り寄せたが、可塑剤とかしか書いてなかった。 A 製品安全シートでは意味がない。 MSDS はケンカしないと出さない。マスコミや弁護士を差し向けるというと、MSDS が FAX されてくる。 MSDS では少量の物質でも全部表示義務がある。 Q 30年間やってきて、患者の数や症状の増減について教えてほしい。 A 数は空恐ろしくなるほど増えている。日本の全人口のかなりの割合が有機リンを原因とする化学物質過敏症になっているのではないか。若い女性で向精神薬を飲んでいる人がひじょうに多い。精神病患者が右肩上がりに激増しているのは日本だけだ。ヨーロッパ、アメリカでは劇的に下がっている。精神科の患者が、特に農薬空散地帯で激増している。群馬は農薬多用地帯なので特に多いと思うが、日本全国に広がっているのではないか。 Q 農薬を撒く方で患者として来ている人はいないか。 A 農業者が一番やられている。農家の子に登校拒否や引きこもりが多い。撒いているおじいちゃんはそれを認めない。一番こわいのが花卉(かき)栽培、それから果樹園、コンニャク。患者が家を建てる時は土地から指導する。隣に何があるか。農地、学校、運動場、公園の隣がだめ、草一本生えていない都市の廃墟みたいなところがいい。 Q シックハウスを作らないための工務店を組織している。計画換気で外気の農薬が流入して来ないか。外気由来のシックハウスという表現は、工務店にとって大きな問題だ。 A 外気によるシックハウスというのは、苦し紛れの言葉だ。しかしそうでもしないと、苦しんでいる人を救済する途はない。実際に室内で検出されたら、原因が建物でなくて外気にあっても、中毒であることには変わりがない。 群馬県のように農薬を多用しているところでは、計画換気をして入れ替えをした方がいいか悪いかは答えられない。化学物質が発散する素材を使って、計画換気したから大丈夫だという考えは甘い。真冬で最大限の換気をやっても患者は出る。計画換気では、発散する量に対して換気量が少な過ぎる。 Q 北里でコリンエステラーゼの血中濃度や瞳孔反応が数字上は正常でも、過敏状態が続くことがある。データが正常だと、病気を家族に信じてもらえなくなる。 A 北里研究所病院は別にして、化学物質過敏症や有機リンの慢性中毒のかたは家族や医者に信じてもらうことをまずあきらめなくてはいけない。無駄な労力を使うより、まず逃げて自分だけ助かることを考えるべきだ。コリンエステラーゼの測定はなんの役にも立たない。それと関係ない機序で人間の神経、精神がやられる。 Q 群馬県が危ないことはよくわかった。安全な県はあるか。 A 私こそ、それが知りたい。日本はもう駄目だ。国破れて山河なしだ。行く場所はない。山の中でも空散でやられる。いいとすれば海風が吹く半島で暑いところ。屋久島も佐渡島も有機リンを撒いている。 Q 文科省に要請に行くが、先生が文科省に一番言いたいことは何か。 A 農水省からの農薬使用に関する通達(7頁参照)に続いて、文科省も出した。しかしシックスクール患者がいてもジャンジャン撒いているのが現実だ。通達を守るよう指導して欲しい。また、末端の学校にいくまでになぜ6カ月もかかるのか。3日で下までいくように。 Q 息をしてはいけないというのでは困る。オウムのサリンの時は、農村の臨床医からのアドバイスが出た。そういう医者との連携が図れないか。弧軍奮闘でなく切り開く途はないか。 A 朝日の記事で、アメリカの動きが紹介された。有機リンがさらにいろいろなことを引き起こしている疑いがある。アメリカ主導でいよいよ有機リンの息の根が止まる見通しが出てきた。 他の医者との連携といっても、農薬空散の連絡が医師会に降りてきても末端の医者には知らされない。いつ撒くか、撒かれた農薬は何か知らされないで患者が死んだら誰が責任をとるのかと言ったが対応なしだった。他の医者に「先生、また農薬ですか」と笑われる毎日だ。農薬に関心をもつ医者がいない。 こんど有機リンが中枢神経をやっつけるという新聞報道が出てきて、よかったと思う。アメリカではこういう研究をやっている。希望の光だ。そういう私の立場もご理解いただきたい。 空散をやるのは土日だから、子どもの患者が私のところにたくさんきても、役所も医師会も休みで、何が撒かれたか知ることもできない。農村だけでなく、東京都の大気からも90%の地点で有機リン系で劇物指定のジクロルボスがかなりの濃度で検出されている。自分の問題として考えて欲しい。 |
2. 地球環境戦略研究機関で起きたシックハウス問題 匿名希望 地球環境戦略研究機関(IGES)(注)の新研究棟が2002年の6月に完成してから約半年の間に、職員の半分近くが化学物質過敏症と診断されました。私もその例外ではなく、様々な症状に悩まされました。ここでは被害者側から見た健康被害の経過を、職場の対応などにも触れながら報告させていただきます。 ◆完成後1カ月以内に健康被害発生 2002年の6月に新しく完成した建物において、本来ならば1か月以上置いて換気を済ませてからのところを、私たちはすぐさま働き始めることになりました。入って1か月も経たないうちに、数名の職員が健康被害を訴え始めましたが、因果関係がはっきりしないため、その後さらに1か月経ってから、体調不良者を暫定的に別の事務所へ避難させるという対応がとられました。建物の構造上、窓が極端に少なく換気が十分になされなかったため、その後、体調不良を訴える職員が日毎に増えていきました。 化学物質過敏症の初期症状としては、目がチカチカする、喉が痛い、頭痛、疲労、倦怠感、集中力低下、湿疹、痒みなどがあります。しかし、これらの症状は普段の生活でも経験するものなので、疲れや生活環境のせいだと見逃しがちです。 その後、湿疹やひどい肩こり、吐き気、不眠、食欲不振、そして手足の痺れや痙攣なども起きてきます。これらの症状が出てきて継続すると、さすがにただの疲れではないことが明らかになるため、病院へ行かざるをえなくなりました。上記のような症状は、自律神経や中枢神経の失調によって引き起こされるそうです。 またこの期間、経験したことのない様々な体調不良と向き合うのですが、財団側も初めてのことであったためか、当初は職員側が自主的に求めれば応じる(病院の治療費負担など)、といった対処療法的で不透明な対応がなされていました。原因が分からない上に、どんな対策がとられているかも知らされず、かなりの精神的ストレス及び不安感に襲われました。 その後建物への疑念が強まっても、変わることなく不透明な対応が続き、多くの職員が同様の精神的ストレスを受け続けることになりました。自律神経が失調している上に過度のストレスが加わることで、諸症状が悪化するという悪循環が見られていました。 ◆「因果関係分からない」と一斉検診せず 先に健康被害を訴えている職員が次々と北里研究所病院で診断書をもらってくる中、理事長を含め財団側へ職員の一斉検診を依頼しましたが、「因果関係がはっきりしない」として顕著な症状のある者のみ、個別に病院へ行くように命じられます。この際の診察代や交通費は負担してもらいました。しかし、「原因が分からない」といった高リスクの状況下において、まだ大きな被害にはあっていないけれどその可能性の十分ある職員に対して、予防的措置は取らないのだと驚いたことを覚えています。 そして、開所してから2カ月ほど経った頃に初めて建物内の化学物質測定が行われました。この時のホルムアルデヒドの数値が、厚生労働省の指針値0.08よりわずか0.002低い0.078、トルエンが指針値の0.07を下回る0.02でした。測定物質はホルムアルデヒドとトルエンのみで、その他の物質は測定されないままでした。 この後、同年11月にも同じ会社によって測定が行われますが、測定物質はアセトアルデヒド一つが増えたのみ、また測定を行ったところが建設会社と関係がある会社であるという噂が出ていたため、私たちの間では非常に大きな不信感が生まれつつありました。 ◆汚染環境での勤務継続で症状悪化 この頃からかなり多くの職員、特に女性に上述の症状に加えて継続した不眠やひどい湿疹、情緒の不安定(すぐ泣く、怒る)、生理不順、激しい物忘れや微量の臭いへの過敏な反応などが現れてきました。大きな不安を抱えながらの勤務は非常に苦痛であったため、原因を究明するために建設会社とは無関係の第3者機関に測定を依頼してほしい旨、再三財団側へ訴えましたが、「依頼する根拠が無い」と取り合ってもらえませんでした。 しかし、さすがに20名近くも診断書を持ってくると、財団側も避難用に仮の事務所を準備しました。ただ、業務は変わらず本部中心に行われることから、化学物質過敏症と診断された後でも、本部建物へ入らざるを得ない状況は続きます。 化学物質過敏症は、一度かかってしまうと、その後は微量の化学物質にも過剰に反応してしまいます。たとえ本部に入らなくとも、本部からやってきた人の衣服の臭いに過敏に反応する職員が多発しました。そのような悪環境の中で働き続けた職員は、次々に症状を悪化させていき、ついには内臓疾患(特に化学物質を処理する臓器である肝臓、腎臓の炎症)や言語障害、対人恐怖症、ひどい落ち込みなどのうつ症状までもあらわれてきました。 ◆測定結果は指針値以下でも被害者続出 財団側は、職員に起こっているこのような症状の変化を正確には把握していませんでした。「測定毎に数値が下がっているから大丈夫」との説明が常でした。しかし、8月から翌年3月まで計3回にわたる測定では、全て結果は指針値以下であったにもかかわらず、健康被害を訴える職員は増加するばかりでした。推測されるのは、初期のひじょうに高い数値の時から継続して許容量以上の化学物質を体内に取り込んだため、その後いかに指針値以下の微量の化学物質であっても、暴露すれば反応してしまったということです。最も数値が高かったであろう6月、7月の時点での検査結果はないため、どれだけの濃度の場所に2カ月間居続けたのかを把握することは不可能でした。 よって、指針値とは建設する側が建設の際に参考にする値にとどまり、一度化学物質過敏症にかかってしまった人々への安全宣言にはなりえないということです。これを取り違えた対応をしたために、必要以上に症状を悪化させたり、被害者を増やすといった結果につながったのではないでしょうか。 また、20数名が北里研究所病院から「化学物質過敏症」の診断書を受けていましたが、財団側は信用性が低いとの見方を示し、本部から離れていることで出てくる仕事上の不都合に対して負い目を持たせるなど、被害者はまるで罪人のように扱われるようになっていました。少なくとも健康被害にあった職員全員はそう感じていました。 ◆9カ月後にようやく県保健所が検査 健康被害が出始めてから9カ月近く経った頃に、やっと県の保健所の検査が入り始めます。この時、上述の3種類に加えてエチルベンゼンやキシレンなどの物質も検出されますが、例によって「結果は指針値以下でした」との報告でした。健康被害にあっている職員にしてみれば、新たな測定はあまり意味のないことでした。 財団側は最後の最後まで対応に困り、結局は、化学物質を測定する、避難場所を用意する、治療費を出す、療養休暇を認めるという4つに基本的に終始していたように思います。こうした中、化学物質過敏症は神経系の失調によって同時に引き起こされる症状が多いため、治りづらいという印象を受けました。逆に、物理的ストレス、精神的ストレスの相互作用(悪循環)で悪化していくようでした。 ◆予防的対応をしてほしい! その後、健康被害にあった職員の多くは長期療養休暇をとるか、退職しています。同じ環境下での勤務に耐えるのは難しい状態にまで健康状態が悪化していました。症状が軽く、たとえその後改善した人でも、以前のような健康状態にはなく、体力及び免疫能力の低下や内臓、呼吸器の脆弱化があります。健康被害を受けた職員で完全に回復している人は少なく、ますます悪化させ、呼吸困難や臭いへの異常な反応(新しい本や新聞などには触れられない、公共の場へ出られない等)から普通の生活を送れない人がいるのが現状です。 化学物質過敏症は因果関係の特定がひじょうに難しい症状だというのは事実です。また、日本では比較的最近になってから一般に知られてきた症状であるなどの背景から、対策に困るといった現状もあるでしょう。 だからこそ、最善の策を尽くす必要があり、予防的対応を取る必要があるのだと、今回のことで強く実感しています。指針値のみに振り回されず、医師や当事者の意見に耳を貸して、その場から一時的にせよ全員撤去させるなどの対策をとらない限りは、職場における健康被害はどこまででも悪化する恐ろしい症状なのだと感じました。 また、この「指針値」に関しても、一体何の指針値なのか改めて再考される必要があるのではないでしょうか。IGESの件からのこういった教訓がいかされ、今後、予防的対応で防ぐことができる同様の被害が起きないことを心から祈っています。 注:地球環境戦略研究機関(IGES) 1998年、地球環境を保全し、持続可能で公平な社会の実現を目指して、実践的な手法を提案するために設立された研究機関(財団法人)。神奈川県葉山町にある。 |
3. 農水省が農薬使用について通知出す 農水省は9月16日、「住宅地等における農薬使用について」という通知を出しました。内容は、公共施設や住宅地に近接する場所における病害虫の防除については、極力、農薬散布以外の方法をとるべきこと、やむを得ず農薬を使用しなければならない場合の注意事項(散布に関する事前の周囲への周知、飛散防止のための天候や時間帯に関する配慮等)等を定め、農薬使用者等に対する遵守指導について関係省庁を含む関係者あて要請したものです。 この通達は、昨年改正された農薬取締法第12条第1項の規定に基づき定められた農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令第6条において、「農薬使用者は住宅地等において農薬の飛散防止措置を講ずるよう努めなければならない」と規定されていることを受けたものです。 〈ばっすい〉 ○学校、保育所、病院、住宅地に近接する公園等の公共施設内の植物、街路樹及び住宅地に近接する森林等における病害虫防除については、病害虫の発生や被害の有無に関わらず定期的に農薬を散布することを廃し、被害が発生した場合に被害を受けた部分のせん定や捕殺等により病害虫防除を行うよう最大限努めること。 ○病害虫の発生状況を踏まえやむを得ず農薬を使用する場合は、農薬の飛散が住民、子ども等に健康被害を及ぼすことがないよう最大限配慮すること。 ○住宅地内及び住宅地に近接した農地(市民農園や家庭菜園を含む)において栽培される農作物等の病害虫防除に当たっては、農薬の飛散が住民、子ども等に健康被害を及ぼすことがないよう最大限配慮すること。 問合せ先:農水省消費・安全局農産安全管理課・農薬対策室 TEL代表03-3502-8111(内3140,3145)直通03-3501-3965 ※通知全文 農水省ホームページ http://www.maff.go.jp/ の報道発表資料9月16日分からも入手できます。 |