ピコ通信/第60号
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2. 市民政策円卓会議「シックハウス・シックスクール問題について」開催
6月27日、衆議院第2議員会館において「市民政策円卓会議−シックハウス・シックスクール問題について」(主催:市民がつくる政策調査会)が開かれました。当会も参加しましたので、概要を報告します。 この会議は、昨年7月24日に開かれたシックスクール対策・文科省交渉(ピコ通信48号参照)に続くもので、今回は化学物質過敏症患者団体・支援団体から約30人が参加。国側は環境省、国交省、厚労省、文科省から計16人が出席しました。コーディネーターは前回と同じく岡崎トミ子参議院議員です。シックスクール問題に直面している学校の保護者の方たちの参加が目立ちました。 環境省への質問と回答 1.化学物質過敏症についての、これまで及び今後の施策は? 2.近年、諸外国では「予防原則」や「予防的措置」等の考えのもとに化学物質の安全性や環境保護が推進されている。化学物質過敏症について、今後そのような政策的判断によって取り組む予定は? 回答: ごく微量の化学物質によって体の不調を訴える病態(「本態性多種化学物質過敏状態」いわゆる「化学物質過敏症」)の存在が内外の研究者によって指摘されている。 環境省が97年に設置した専門家による研究班において、内外の文献調査や米国の視察等を実施し、2000年2月に報告書をまとめた。それを踏まえて、調査研究を進め01年に発表したが、症例数が少ない等の理由によりその原因について明確な判断ができなかった。今後対象者数を増やし二重盲検法を実施し、動物実験を行う予定。 予防的方策あるいは予防的取組み方法については、環境基本計画の中においても広く適用していくことを明記している。化審法においても、この考え方を一部取り入れている。 国土交通省への質問と回答 1.7月1日に建築基準法が改正されて、ホルムアルデヒド、クロルピリホスが規制されるが、他の多くの化学物質についての規制は? 回答: トルエン、キシレン等のVOCについては発生源の特定すら困難な現状がある。規制するには、具体的な対策方法も含めて示す必要があるので、なかなか難しい。現在、調査等を進めている段階である。特にトルエンについては、規制に追加すべき物質と認識している。 2.化学物質過敏症発症者への安全で安心できる居住地(場所・施設等)の確保は? 回答: 予防策については取り組めても、発症した人への対応は、一人一人の症状が違うなどの特徴もあって難しい。居住地の確保についても現時点では対応できない。自治体が取り組むことは可能かと思うので、その場合は相談に乗っていきたい。 文部科学省への質問と回答 1.昨年2月、「学校環境衛生の基準」が改訂され、教室等の空気質の調査が定められたが、基準を超える濃度が検出されるケースが多く出ている。このことへの対応は? 回答: 改訂後に基準値を超えた学校数等については把握していない。超えた学校については換気の励行、原因物質の除去などの適切な措置を取るよう教育委員会等に指導している。 2.調布市調和小学校では、新築工事後の空気測定で基準を超え、シックスクール症候群の子どもたちも出ている。工事直後よりも家具や備品搬入後の濃度が高くなっているが、これへの対処は? 回答: 学校用具の導入にあたっては、室内空気を汚染する化学物質の発生がない若しくは少ない材料を採用するよう、学校施設整備指針及びパンフレットで指導している。また、搬入に際して臨時環境衛生検査を実施するよう指導している。 3.昨年から「シックハウス症候群に関する調査研究協力者会議」を設置し、児童生徒の実態調査及び測定方法について検討されているとのこと。今後の取組みとスケジュールは? 回答: 6月20日に会議を開催し、いくつかの都道府県でプレ調査を実施し、その結果をもとに調査内容を検討することが決まった。また、「新築後の時間の経過に伴う化学物質放散量推移」について調査・検討を行うことも決まったところ。 4.化学物質過敏症を発症した子どもたちのための学校・教室の新築・改築、空気清浄機の購入などへの国庫補助は? 回答: 校舎等の建設及び改造を行う際に、室内空気を汚染する化学物質の発生がない若しくは少ない建材を採用する場合の経費について、国庫補助の対象とすることができる。また、換気設備についても同様。 5.健康に影響のある化学物質に配慮した教科書の開発への取組みは? 回答: (社)教科書協会に対して教科書に使用している原材料の成分分析を要請したところ、厚労省が指針値を示している13物質については使用していない、もしくは指針値を大幅に下回っているとの報告を受けている。 協会に対して「教科書改善のための調査研究」を委嘱する手続きを進めているところ。また、天日干しのための教科書早期給与、表紙等のカラーコピーの無償提供等について協会に協力を要請している。 6.化学物質過敏症を発症した子どもたちの教育を受ける権利の保障についてどう考えるか? 回答: 化学物質過敏症の児童生徒に対して、教員の加配定数を活用して対応することは可能。児童生徒の個々の実態に応じて支障無く学校生活を送れるよう配慮したり、転校を認めるなど個別の対応を行うよう通知している。 厚生労働省への質問と回答 1.国立病院におけるクリーンルーム設置が進められているが、十分な治療が行われていない。病院従事者の知識・技術も不十分な現状をどう考えるか? 2.化学物質過敏症の発症者が他の疾病で医療機関にかかる場合の受け入れ対策は? 3.化学物質過敏症の発症者が安全で安心できる居住地(場所・施設等)の確保についての考えは? 回答: 「厚労省のシックハウス対策の取組み状況」について 1.「シックハウス症候群」は、建築物内に居住することに由来する様々な体調不良の総称として便宜的に用いられる名称であって、まだ医学的に確立された疾病概念とはなっていない。化学物質中毒、皮膚粘膜刺激症状、アレルギー等の様々な病態が含まれている可能性がある。「化学物質過敏症」という疾病概念が提唱されているが、病態や発生機序など医学的に未解明。 2.主な取組み (1)いわゆる「シックハウス症候群」に関する研究 @シックハウス症候群の病態解明、診断、治療に関する研究(H12〜H14)(主任研究者:石川 哲 北里研究所病院臨床環境医学センター長) Aシックハウス症候群に関する疫学的研究(H13〜)(主任研究者:飯倉洋治 昭和大学医学部小児科教授) B住居内空気汚染等とアレルギー疾患との関連に関する研究(H13〜)(主任研究者:織田 肇 大阪府立公衆衛生研究所副所長) 秋口には、現時点での知見のまとめを発表する予定である。 (2) 室内空気中の化学物質濃度の指針値等の策定 現在、13物質について策定ずみ。TVOC(総揮発性有機化学物質量)については、化学物質への不必要な曝露を総量で抑制する考え方に基づいて、暫定目標値を設定している。 (3) 専門の医療設備の整備 @免疫異常の高度専門医療施設である国立相模原病院に、クリーンルーム等の施設を整備。 A国立療養所盛岡病院、国立療養所南岡山病院、国立療養所南福岡病院にもクリーンルームを整備。 B東京労災病院(東京都大田区)にクリーンルームを備えたシックハウス科(環境医学研究センター)を設置(H14.5月)。今年度、関西労災病院(尼崎市)にも整備中。 C公的医療機関への補助制度。 (4) 建築物衛生法における対応:空気環境の調整に係る基準にホルムアルデヒドの量を追加。特定建築物(3000m2以上)の新築、増築時のホルムアルデヒド測定義務づけ。 4.学校においては教室等の空気質の検査を行うことが義務づけられたが、保育園や保育所についてはどうか? 回答: 本年2月に、保育所等児童福祉施設を対象に冬期における化学物質の室内空気実態調査を実施した。7月〜8月には、夏場の調査を実施する予定。これらの調査結果から今後の施設の運営管理について適切な対応をはかっていきたい。 「専門病院の医者がCSを分かっていない」 参加者からは様々な意見や質問が出ましたが、その中でも「国が専門医療機関としている病院の医師、看護師等が化学物質過敏症のことを理解していないのを何とかしてほしい」「化学物質過敏症の患者に対して、塩ビの医療器具を使わないように指導してほしい」という切実な意見が相次ぎました。 これに対して厚労省は、「秋に出る知見のまとめを医療機関へ伝えていきたい」と答えるのに止まり、明確な対策については聞けませんでした。 また、健康保険がきかないという問題についても、「病名が決まっていないから保険がきかないということはない。北里大学は自由診療だから保険がきかない。国の医療機関を使ってほしい」という従来からの回答をくり返すのみで、進展は見られませんでした。 この問題に対する国の体制は、予防にようやく着手した段階で、既に発症した人への対応がまったく遅れています。研究班の報告が出たら、すぐに患者や支援団体も加えた患者救済のための対策委員会を発足させてほしいと思います。(安間) |