2. 自閉症と水銀の関係
佐藤章夫 (栄養医学研究所所長)
自閉症が発症する原因は、ウィルス感染、遺伝子疾患、栄養素欠乏、水銀や鉛などの重金属など複数の学説が唱えられてきました。1990年前半から米国で行われている疫学的調査によって、自閉症の大部分の症例は、いくつかの環境問題が引きがねとなり、遺伝子病因とあいまって引き起こされるような結果が提示されています。
1999年にカリフォルニア州政府に提出された報告書によると、小児の自閉症は年々増加しており、その発生率は人口増加率とほぼ同等のものであるとされています。
Dr.Yazbak(F.E. Yazbak, M.D.)は、彼の著書である「Autism99A National Emergency」で、他の州でも同様の小児自閉症発生率を報告しています。自閉症発生率に関して最近発表された報告では、250人に1人の小児に自閉症の「流行」が見られるとされています。
しかし、小児科医師は、自閉症の発生要因が、個人の環境および行動に依存するため、単純にはこの「流行」説を受け入れがたいとは思いますが、何らかの手がかりになることは疑う余地はないでしょう。
当研究所では爪を用いた体内重金属の分析を行っておりますが、平成13年10月から平成15年4月末までに1500名強の日本人の分析を行いました。内75名の小児自閉症男女の98%で水銀濃度が許容範囲を上回る結果が出ており、また1500名の内約80%の方で水銀濃度が許容範囲を上回る結果がでています。
これら水銀中毒症例をもつ小児の多くは、生後の早い段階から水銀の暴露を受けていました。その背景には、小児を対象に接種するワクチンに含まれるチメロサールという有機水銀を含んだ防腐剤が存在していました。
水銀曝露の影響度と背景について
(米国立科学アカデミーによる資料抜粋)
- 2000年現在、米国では年間60,000人の乳幼児、小児が水銀曝露によって、自閉症を含む神経障害を発症している。
- 何故もっと早く診断、治療、改善に取り組めないのか?
ワクチンなどによって曝露した水銀が既に脳の神経組織や肝臓など他の臓器に蓄積しているにもかかわらず、水銀が血液中に残存していると多くの医師が考えているため血液検査で判断しようとする。しかし、血液の検査値ではその蓄積が判断できないことと経験がないからと考える。
■水銀は胎盤を通過する
魚介類は、有機水銀 (メチル基を含む水銀 )の摂取経路として有名です。平成15年5月に日本の厚生労働省も遅まきながら大型回遊魚による妊婦への水銀の影響の警告を促しています。
マグロやサワラなどの回遊大型魚に蓄積した水銀が、人の体内水銀蓄積量に関係があることが、2001年の米国食品医薬品局(FDA)から公表され、この種類の魚には十分注意するようガイドラインが出されています。特に妊婦や妊娠を計画している女性に対してはかなり警鐘を促しています。
日本人1人あたりが消費するマグロは、年間で約8sと平成14年10月に農水省から公表されましたが、体内水銀蓄積量が高い原因にはこのような背景が関係している可能性もあります。食材などによって摂取された有機水銀は、胃腸器官系によって吸収されます。女性の場合、妊娠中または妊娠直前に水銀が含まれた食材を摂取することによって、胎盤を通過した水銀が胎児へ移行する可能性は少なくありません。
米国ATSDR(Agency For Toxic Substances And Disease Registry)の資料抜粋
- 水銀は毒性の強い物質であり、胎盤を通過し胎児にも影響を与える。主な症状は、神経系統の機能障害で、運動機能、言語機能に障害を与える。
- 乳幼児において、見た限りでは正常児のように見えるが、発育とともに除々に症状が発現し、立ち歩きができ、発語がはじまる年齢になるに従い、症状が重くなる傾向があり、発語遅滞、社交性の欠如、運動遅延などを伴なう。
- 親が妊娠中に重度の水銀曝露があった場合、胎児に与える影響は重篤で、失明、筋肉萎縮症、てんかん、言語障害をともなうことがある。
■歯科治療で使用されてきたアマルガムからの水銀
虫歯治療で使用されている歯のアマルガム、ワクチンに含まれているチメロサールによる暴露量は、水や魚介類をはるかに上回るものです。
現在ではあまり使用されなくなったと言われているアマルガムは、虫歯の治療などで歯を削った後に詰められる鈍い銀色の詰め物で、安価で加工がし易いため最も一般的な材料として永年使用されてきました。混合成分は、水銀が50%、銀が30%、残りは錫、亜鉛、及び、銅。平均して5−10年間は持ちますが、比較的容易に腐食し、長期間の使用によって形も崩れます。
硬いものを食べたり、口の内が高い酸性に傾いたりした場合に、歯に詰めたアマルガムが水銀蒸気として蒸発します。この水銀は、容易に胎盤を通過するということが知られています。
妊娠中の母親では、上記の理由によって水銀蒸気が母親の歯のアマルガムから析出し、血液中に流れ込み、胎盤を通過して胎児体内に簡単に入りこみます。ひとたび水銀が細胞内に入ると、陽イオンの形に変換し、容易にタンパク質や酵素の硫化水素と強力に結合します。細胞内に入った水銀がこの工程で強力に結合してしまうと、長期間体内に蓄積されることになります。
■体内に入った水銀はどのくらいの期間蓄積されるのか?
人間の体は、本来体内にあってはいけない水銀、鉛などの重金属を体外に排泄する能力が備わっており、例えば、空気や水、食材から摂取されたかなりの水銀は、血液を回り、尿、便から体外へ排泄されます。しかし、慢性的に水銀が体内に摂取されることによって、排泄能力をオーバーし、細胞に蓄積したり、脳細胞に蓄積します。
通常、体内に入りこんだ水銀の量が半分以下になるまでに要する時間(半減期)は、約10週間と言われていますが、脳細胞に蓄積した水銀の場合にははるかに長く、7年以上かかるといわれています。
■なぜ全ての子供たちが同じように影響を受けないのか?
これについては、世界的に疫学的な調査が十分行われていないことから、言及はできませんが、最近の調査では、少なくともメタルチオネインというたんぱく質との関係が示唆されています。
小児自閉症患者における検査分析によって、このチオネイン結合蛋白の構造や絶対量に関する詳細な研究が実施されています。(William Walsh,Ph.D and Anium Usman,M.D.at the American Psychiatric Annual Meeting,May 10,2001 in New Orleans)
Dr.Walshらが行った研究では、自閉症小児の多くがこのメタルチオネインたんぱく質を造る遺伝子が欠損または障害を受けていること、またはメタルチオネインたんぱく質を造るために必要な必須ミネラルのバランスが異常であることを報告しています。
したがって、爪や毛髪分析を行い、水銀濃度が高い小児でも自閉症症状やADHD症状がないお子さんがいる背景には、このメタルチオネインをはじめとする、人間がもつ排泄能力の差によるものと考えられます。
体内に蓄積した水銀を積極的に体外に排泄を促す栄養素や食材がありますので、日常の食材として考えてみることが必要です。
@ ニンニク、タマネギ、ネギ
アミノ酸の「システイン」「メチオニン」を含む食材は高たんぱく質食品およびニンニク、タマネギ、ネギです。ニンニクの使用目安は、小児の場合、1回で1カケ、週に2−3回は食材に使用してください。ただし、食べ過ぎるとアリシン成分によって胃が荒れることがありますので注意してください。
A アボガド
アボガドは「自然のマルチビタミン・ミネラル」です。また、アボガドには豊富にビタミンEと必須脂肪酸が含まれているだけでなく、収穫後の農薬や消毒剤の心配がない安全な食材です。食べる目安は、小児の場合、1回で中型のアボガド1/4を、週に2−3回は食材に使用してください。熟しきったものをバター状にしても結構です。
B コリアンダー
中国パセリ、パクチーとも呼ばれる香草です。最近日本のマーケットでも生のコリアンダーが見られるようになりましたので、料理に加えるといいでしょう。
参考 チメロサールを含むワクチン
インフルエンザHAワクチン,日本脳炎ワクチン,組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来),組換え沈降B型肝炎ワクチン(CHO卵巣細胞由来),沈降B型肝炎ワクチン(huGK−14細胞由来),沈降破傷風トキソイド,成人用沈降ジフテリアトキソイド,沈降はぶトキソイド,沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン,沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド
[販 売 名]
ビケンHA(阪大微研)
インフルエンザHAワクチン(化血研)他
日本脳炎ワクチン(化血研)他
γ−HBワクチン「シオノギ」(塩野義)
ビームゲン(化血研)
ヘプタバックス−II(万有)他
γ−HBワクチン「ミツビシ」(東京三菱)
沈降B型肝炎ワクチン(明治乳業)
沈降破傷風トキソイド"化血研"(化血研)他
成人用沈降ジフテリアトキソイド(阪大微研)
沈降はぶトキソイド(千葉血清)
沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(化血研)他
沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(化血研)他
[重要な基本的注意]
本剤は添加物としてチメロサール(水銀化合物)を含有している。チメロサール含有製剤の投与(接種)により,過敏症(発熱,発疹,蕁麻疹,紅斑,そう痒等)があらわれたとの報告があるので,問診を十分に行い,接種後は観察を十分に行うこと。(平成13年(2001年)3月厚生労働省医薬局)
|