1. CS厚労省交渉
化学物質による健康被害を受けた者への救済策は全くない
4月22日、昨年に引き続いて化学物質過敏症患者団体等による厚労省交渉が行われました。当会も賛同団体として参加しましたので報告します。
交渉には、患者・支援団体側からは化学物質過敏症患者の会を中心に7名が参加、厚労省側からは健康局生活衛生課、医薬局審査管理課化学物質安全対策室、医政局歯科保健課など10名が出席しました。話し合いは、あらかじめ提出していた要望書(6賛同団体)への回答を中心に進められました。
T 継続要望(前々から要望しているもの)
T-1 重・中症患者用の国営治療・療養施設、避難施設の早期実現をしてほしい。
厚労省回答:国としては、クリーンルームを整備中であり、すでに国立相模原病院に専用の設備を整備。国立療養所盛岡、南岡山、南福岡の3病院にも、シックハウス対応の可能なクリーンルームを整備した。昨年度から東京労災病院にもクリーンルームを整備している。
避難施設については、厚労省としては対応できない。国交省や自治体なら対応できるのではないか。
T-2 被害者特別治療に対して健康保険適用をしてほしい。
厚労省回答:保険は疾患に対して適用されるものではなく、処置や検査など診療行為に対して適用されるもの。化学物質過敏症の色々な症状に対する薬や検査に対して保険は適用される。ただ、保険適用はその治療法が研究段階のものでなく、有効性などが確立されたものに対して適用される。実験的なもの、限られた医療機関だけでしかされていないものには適用されない。
北里大学で保険が適用されないのは、自由診療をとっているから。上記の国立病院を利用してほしい。
T-3 被害者児童向けの学校設置と教材・文具の有害化学物質規制をしてほしい。
厚労省回答:文科省の管轄。
T-4 歯科治療に使用する薬剤、材料の調査・研究を進めてほしい。
厚労省回答:大学病院を中心に、アレルギーを持った患者に対する新しい材料の研究が進められている。また、自分の細胞からつくる再生治療など最先端の研究も。それができれば、アレルギーの問題も解決できる可能性がある。
また、医薬品同様、今年の1月から医療用具にも添付文書をつけるようになった。その中にアレルギーを起こす組成についても記載するようになっている。医者には製品についての情報が伝えられているわけで、医者とよく相談してほしい。
U 新規要望
U-1 化学物質による健康被害者援護法を制定してほしい。
現在、シックハウス対策などの各種対策が講じられつつあるが、すでに健康被害を受けた者に対しては何らなされていない。
法律の保護もなく、泣き寝入りしているのが現状である。例えばシックハウスによる被害者は、高額なローンの支払い、避難のための生活費負担増、高額な治療費の支払いなど経済的にも甚だしく困窮している。これはシックハウス以外の化学物質被害者にとっても同様。以下の施策を講じてほしい。
@患者の経済面での救済、援護
A既設の建築物を改善するための補助金、助成など
B患者が住めるモデル住宅の開発、技術公開、相談窓口の設置、指導など
C家具類の使用材料についての法規制
U-2 有害化学物質に関する調査研究の推進
@新規化学物質については、市場に出る前に安全性を十分に調査してから許可する。事故や被害発生の場合は直ちに販売使用中止など。
A有害化学物質発生源に関する調査・研究
B有害化学物質の使用が疑われる商品の調査
C下記における有害化学物質の基準値設定と規制強化
学校、図書館等の公共施設、公共交通機関、賃貸・公共住宅、新車・中古車内、医療・療養施設内、建築・道路工事現場等。
D有害化学物質に関する一般への広報活動と規制
特に以下について。
野外焼却、防蟻処理、外壁塗装、園芸用農薬、家庭用殺虫剤・漂白剤・消毒剤、石油ストーブ、食品添加物・香料、受動喫煙等々。
厚労省回答:
新規化学物質に関しては、化審法によって安全性を事前に審査して許可している。
家庭用殺虫剤等に関しては、添付文書のような形での情報提供を検討しているところである。「殺虫剤指針等の改訂に関する検討委員会」を設けて、すでに2回(02年8月、03年3月)会議を実施し、殺虫剤の安全性再評価のために殺虫剤指針及び同指針の解説の改訂を検討しているところで、かなり厳しくなるはず。食品添加物・香料については、アレルギー抗原性の点からの調査・研究を進めていく方針である。
2000年度から3か年計画で、シックハウス症候群に関する厚生労働科学研究が進められている。実態把握及び原因の研究(主任研究者:飯倉洋治昭和大学小児科教授)と、病態解明及び診断・治療法に関する研究(主任研究者:石川 哲北里研究所センター長)である。今年の夏頃にはまとまる予定となっている。
製造者は責任をとるべき
97年から11回にわたって行われている厚労省交渉ですが、シックハウスを中心とした予防策については、建築基準法の改定等成果が上がりつつあるようです。しかし、既に被害を受けてしまった患者への救済策については、まだまったく手がついていないのが現状です。
厚労省に続いて国交省にも行きましたが、患者のための避難施設等を建設してほしいとの要望に対して、「それは厚労省が取り組むこと。国交省では普通の健康な人のための建築が対象」とたらい回しされ、まったく埒があきません。
化学物質過敏症の原因を作った住宅建築販売業者や化学品メーカーなど製造・販売事業者と、それを許してきた行政には救済策を講ずる責任があるはずです。(安間)
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