ピコ通信/第56号
![]()
目次 |
2.埼玉県教委がシックスクール対策マニュアル作成 埼玉県教育委員会は、先頃、県立学校での油性ワックスなどの実質禁止を含むシックスクールを予防するための「県立学校のシックスクール問題対応マニュアル」を作成しました(注1)。 その内容は、トルエン、キシレンなどを含む床ワックスを原則禁止、パラジクロロベンゼンが含まれたトイレボールなども使わないよう求めた画期的なもの。県立学校だけではなく、県内の市町村立教育委員会、国立と市町村立の全学校にも配布し、予防対策を呼びかけています。全国の学校の参考になると思われる内容なので、概要(抜粋)を紹介します。 シックスクール問題とは何か シックスクール問題とは、学校施設に起因するホルムアルデヒド、トルエン等の化学物質に汚染された室内空気の曝露による健康被害に加え、体質等により極微量な化学物質に過敏に反応する児童生徒等への対応を含めた複合的な問題の総称である。 体調不良の主な症状は多岐にわたり個人差が大きく、原因物質も多種多様であることが特徴的である。学校においては、シックスクール問題が発生しないよう原因と疑われる物質の低減を図ることが重要である。 シックスクール問題は次の三つに大別される。 1.シックハウス症候群 住居や学校の新築・改築・改修等の直後に建材、塗料等の施工材および家具、机・いす等の学校用備品等に由来するホルムアルデヒド、トルエン等の化学物質に汚染された室内空気の曝露によって、目や気道粘膜の刺激症状や頭痛などの様々な体調不良を起こすもの。 2.化学物質アレルギー 教材・文具、床ワックス・芳香剤・洗剤・殺虫剤等に含まれる特定の化学物質の曝露によって、アレルギー症状を引き起こしたり、既往症が悪化するもの。 3.化学物質過敏 一般の児童生徒等が反応しない極微量な化学物質に過敏に反応してしまう児童生徒等が、学校施設の新築や大規模な改築・改修、学校用備品の大幅な更新等の際に、室内に放散した極微量の化学物質に過敏に反応し、頭痛やめまい、集中力の低下等様々な過敏症状を起こすもの。生活環境中の様々な化学物質に過敏に反応してしまう多種類化学物質過敏の例もある。 シックスクール問題に関する取組方針 (1)学校施設の新築・改築・改修等 建材や施工材等は、ホルムアルデヒド、トルエン等の化学物質の放散量がもっとも低濃度の仕様のものを選定する。 (2)机、いす、コンピュータ等の学校備品 (1)に同じ (3)学校施設の維持管理 学校において殺虫剤、床ワックス、トイレの芳香・消臭剤等の薬剤や日用品を使用する場合、厚生労働省が定めたシックハウス症候群の原因物質として濃度指針値を定めた物質(注2)を含むものは、原則として使用しない。 (4)環境衛生検査 定期または臨時の検査で「学校衛生の基準」で定める基準値を超えた場合は、原則として当該施設の使用を中止。対策を講じた後に再検査を行い、基準値に適合していることを確認した上で使用を再開。 化学物質に過敏に反応する児童生徒等への配慮 (1)化学物質に起因する健康問題が疑われる事例への対応 原因を調査するとともに、必要に応じ、環境衛生検査を実施するなど。 (2)入学・転入時の対応 保護者や主治医等から学校において配慮すべき事項等を文書で確認し、学校生活を送れるよう教職員、学校医、学校薬剤師等が連携して対応する。 (3)化学物質に過敏に反応する児童生徒等への対応 化学物質に過敏に反応する児童生徒等が在籍する学校においては、保護者および主治医等から配慮すべき事項等を診断書や文書等で確認し、対応に配慮する。 (協議・確認事項等の例をあげ、きめ細かいマニュアルが書かれている) 運用上の留意事項(抜粋) ・化学物質過敏の児童生徒が在籍する学校にあっては、授業参観などで来校する保護者に対し、タバコや香水などは控えるよう理解と協力を求める。 学校施設の維持管理 (1)施設および樹木の消毒 埼玉県では、2001年4月1日から「埼玉県における県有施設および樹木の消毒等に関する取組方針」が適用され、いわゆる環境ホルモンを含む殺虫剤等は使用しないこことしている。 また、害虫等が発生していない場合は定期消毒も行わず、まず、生息調査を行い、害虫等の発生に対しては、トラップや枝の剪定など物理的防除を推進している。学校においてもこれを遵守する。(後略) (2)給食施設の衛生管理 有機リン系殺虫剤は可能な限り使用しないことが望ましい。 (3)床ワックス、芳香剤等 製品表示を確認し、シックハウス症候群の原因物質を含むものは原則として使用しない。配合成分等が未表示の製品については、製品安全性データシート(MSDS)を製造業者等から取り寄せる。 (4)施設の補修 小規模な塗装などであっても、塗料、接着剤等はホルムアルデヒド、トルエン等の化学物質を含むものは原則として使用しない。 シックスクールに関する実態調査結果 県内の全公立学校1552校を対象にシックスクールに関する実態調査を2002年6月に実施したところ、化学物質に過敏に反応する児童生徒数は49人(31校)であった。
注1:問い合わせ先 埼玉県教育局生涯学習部健康教育課 〒330-9301さいたま市浦和区高砂3-15-1 TEL 048-830-6960 FAX 048-830-4971 E-mail a6960@pref.saitama.jp http://www.pref.saitama.jp/A20/BT00/kenkou.html 注2:ホルムアルデヒド、キシレン 、パラジクロロベンゼン 、エチルベンゼン、スチレン 、クロル ピリホス、フタル酸ジ-n-ブチルテトラデカン、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、アセトアルデヒド、フェノブカルブ 埼玉県教委・シックスクール実態調査結果(抜粋) 埼玉県教育局生涯学習部健康教育課 調査期間:2002年6月 調査対象:全県・市町村立学校 1552校 (内訳)市町村立学校(幼:76 小:833 中:422 高:9 養:3)県立学校(幼:2 高:186 盲・ろう・養:30) 1.化学物質過敏症と診断された児童生徒(教職員)のいる学校等
2. 学校施設の改築等により体調不良が発生した学校等
3.定期的に有機リン系殺虫剤を使用している学校等
4.トイレの消臭剤としてパラジクロロベンゼンを使用している学校等
5.床ワックスを使用している学校等
|