ピコ通信/第53号
発行日2003年1月19日
発行化学物質問題市民研究会
e-mailsyasuma@tc4.so-net.ne.jp
URLhttp://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

目次

  1. 年頭にあたっての抱負 (藤原寿和)
    研究会2003年活動の課題と展望

  2. カネミ油症被害者支援にご協力を!
    〜カネミ油症事件を活かす
  3. 第2回筑波農林業問題研究シンポジウムから
    農薬の空中散布、目的外使用の農薬による有機リン中毒患者の増加とその対策
    講演 青山 美子 医師(青山医院 群馬県前橋市)

  4. 海外情報 レイチェル・ニュース#756 予防措置の年(抄訳)
  5. 化学物質問題の動き(2002年12月16日〜1月117日)
  6. お知らせ/編集後記


1.年頭にあたっての抱負 (藤原寿和)
  研究会2003年活動の課題と展望


はじめに
 年頭にあたり、読者の皆さまにこの場をお借りして常日頃の研究会へのご支援並びにピコ通信のご購読に感謝申し上げます。
 さて「環境の世紀」といわれる21世紀に入って早3年目を迎えます。化学物質問題について誤解を恐れずに表現するならば、前世紀の100年はPCBや各種人工合成農薬、あるいは塩化ビニール等に代表される様々な有機合成化学物質の生産・使用により、それまでの天然素材に対して人工合成化学製品の便益を享受してきた一方、まさにその「化学毒物」を使用してきたことによる"しっぺ返し"として生態系の破壊やPCBによる油症被害、DDT等有機塩素系農薬による中毒被害、非意図的生成化学物質の代表といってよいダイオキシン類による環境汚染や人体被害、さらには昨今、生物界の異変や人類の次世代に深刻な影響をもたらすのではないかと心配されている様々な内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)による健康障害など、取り返しのつかない"負の遺産"を生み出してきた世紀ではなかったかと思います。
 だとするならば、21世紀はそうした「化学毒物」によって汚染された環境(生態系を含む)の修復・再生と、なによりも発生してしまった健康被害に対する医療救済・回復事業、そして未来世代にツケ回しや新たな被害を生み出さないための「予防原則」に立脚した産業政策(クリーナープロダクション)への転換と新たな化学物質の総合管理が必要とされているのではないかと思います。このことは、当研究会の基本的なスタンスであると申し上げてもよいかと思います。
 世界に目を向けるならば、有害化学物質問題をめぐっては、1972年の国連人間環境会議(ストックホルム)での「人間環境宣言」以降、その20年後の1992年6月にブラジルで開催された国連開発環境会議(地球サミット)での「アジェンダ21」及び「リオ宣言」の採択、1991年7月にシーア・コルボーン博士(米国)の呼びかけによって米国のウイスコンシン州で第1回目が開催された内分泌かく乱化学物質に関する「ウイングスプレッド会議」にもとづく「ウイングスプレッド合意声明」、1997年5月に米国マイアミで開催された環境8カ国大臣会合で取り交わされた「マイアミ宣言」(本誌第39号及び第50号参照)、2001年5月に採択された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」、そして昨年8月に南アフリカのヨハネスブルクで開催された「持続可能な開発に関する世界サミット」(ヨハネス地球サミット)など、20世紀の後半から21世紀初頭にかけて様々な国際会議が開催され、そこでPRTR制度やPOPs条約など新たな化学物質管理政策が打ち出されてきました。日本政府も、これらの国際会議に出席し、各種条約や宣言、覚書等に署名・批准する形で世界の仲間入りをしてきました。
 また、これらの条約等に縛られて国内法の整備を進めてきています(PRTR法、PCB特別措置法等)。

2003年研究会活動の課題
 こうした国の内外における様々な新たな動きを念頭に置きながら、当研究会が今年めざしている活動についてご報告します。
 まず第一には、1999年に成立した「特定化学物質の環境への排出の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」、いわゆるPRTR法をめぐる取組みがあります。
 この法律にもとづいて、昨年の4月から各事業所は1年間に排出した環境汚染物質の量を行政に届け出を行っています。そして今年の1月以降、開示請求すればその情報が公表されることになっています。目下、膨大な企業からの届出情報を所管官庁の環境省、経済産業省がチェックや集計作業等を行っており、実際に情報が公表されるのは3月以降になりそうです。 これまで地域住民は、工場がどのような化学物質を使っていて、廃棄物としてどのような化学物質を出しているのか知ることは出来ませんでした。この法により、国民の知る権利が確保されることは非常に画期的なことですが、この法を市民が活用していかないと意味がありません。
 ただ、化学物質問題は取っ付きにくく、行政も分かりやすい化学物質情報を国民に提供してこなかった面があります。事業者が届け出る情報と住民が知りたい情報とは必ずしも一致しないことが予想されます。
 昨年4月には有害な化学物質の削減を目指して活動しているNPOやNGO、個人の方々とネットワークを組み、「有害化学物質削減ネットワーク」(略称「Tウオッチ」)を設立しました。これにより多くの市民が活用できる情報を提供するともに、化学物質問題に対する監視を強化していきたいと考えています。

子どもへの化学物質の影響の取り組み
 二つ目の取組みとして、今年重点的に取り組もうとしているのが子どもへの化学物質の影響についてです。化学物質が子どもに悪影響を及ぼすことは周知のとおりで、発達障害、脳神経障害、生殖障害など大きな問題となっています。
 ところが日本の法律は、子どもの健康を守るようには作られていません。この問題に関しては日本はかなり遅れており、欧米先進国では積極的な取組みが行われています。
 私たちはアメリカやデンマーク、スウェーデンなど海外の先進的な取組み事例を情報収集し、できる限り翻訳して出版化するとともに、「子ども健康保護法(仮称)」の制定に向けての取組みを行政や国会などに向けて働きかけていきたいと思います。
 子どもの健康を守ることは、大人の健康を守ることにもつながります。子どもの健康を化学物質から守るためには、大人自身が、化学物質に対する正しい認識を持たなければいけないと同時に、行動もしなければいけません。私たちは、連続講座、学習会などを通じて啓発していくとともに、キャンペーン活動を行い、訴えていきたいと考えています。

化学物質過敏症問題への取り組み
 次に三つ目の取組みは、シックハウス、シックスクールといった化学物質過敏症問題があります。すでにシックスクール問題に対しては、昨年被害者ネットワークと厚生労働省交渉等の行動を共にし、また、患者団体と支援団体との共催により集会の開催に参加するといった取組みをやってきましたが、今年はさらに突っ込んだ活動を行っていきたいと思います。
 具体的には、当研究会が共同事務所として利用している環境市民ひろばでは、昨年12月に事務所として共同利用している7つのNGO団体に所属している個人有志が集まって「特定非営利活動法人・環境市民ひろば活動センター」を設立し、今年には認証を受ける予定になっています。その事業の一環として、シックハウス対策のための室内空気測定や天然素材等の活用などの取組みを自然住宅推進・住まい方ネットワークなどとの提携によって行っていこうと相談しています。

家庭用品中の有害化学物質への取り組み
 そして四つ目には、昨年、(財)日本環境協会からの依頼により、エコマーク商品類型検討ワーキンググループ(塗料)への委員参加を自然住宅推進・住まい方推進ネットワークの代表である田久保美重子さんにお願いして関わってきました。今年はこの取組みを独自課題として発展させて、様々な家庭用品中の有害化学物質に関する安全性の検討や化学物質を使わない代替素材への転換の検討などを行っていきたいと思います。
 最後に、これまで研究会として毎年継続して開催してきた連続講座を再開したいと思います。テーマの選定については、読者の皆さまからのご要望も加味して決めたいと思いますので、ぜひともお寄せ下さい。

研究会の体制強化のため、ご支援を!
 以上のような活動を計画倒れにしないためには、研究会の事務局体制や研究スタッフの充実強化を図っていかなければならないという課題があります。そのためには無償のボランティア活動に期待するだけでは、なかなか参加していただけないのではないかと思います。
 そこで、ぜひとも皆さまに財政面でのご支援をよろしくお願いします。また、上記に掲げた活動の中で、海外文献の翻訳作業が重要な取組みの一つとなりますので、ぜひとも語学力のある方のご協力をお願いしたいと思います。その他にも、お願いしたいことがいろいろとありますので、ぜひとも事務局までご連絡下さるようお願いいたします。(化学物質問題市民研究会代表 藤原寿和)


3.第2回筑波農林業問題研究シンポジウムから
  農薬の空中散布、目的外使用の農薬による有機リン中毒患者の増加とその対策
  講演 青山 美子 医師(青山医院 群馬県前橋市)


 12月19日(木)につくば市で行われた第2回筑波農林業問題研究シンポジウム「農薬使用の現状と安全安心な生産・消費」(主催 筑波農林業問題研究会)に参加しました。当日の講演の中から、青山医院・青山美子医師の講演要旨を紹介します。他にも食品総合研究所・一色賢司氏「食品の安全性をめぐる最近の話題」、農民連食品分析センター所長「食品・農産物の農薬残留の実態」など興味深いテーマが続きました。(文責 化学物質問題市民研究会)

農薬問題に取り組み始めたきっかけ
 1979年に私の医院の近くに種子消毒センターができました。こんなものを住宅地につくっていいのかなと思っている間に、患者が山ほど来るようになったのです。原因は殺菌剤のキャプタンという農薬でした。それから、農薬の気化現象と被害に気づき、横浜国立大学環境科学センターと共同で農薬の大気汚染について調査・研究を重ねて学会に発表していきました。
 今、もっとも危機感を持っているのは、95年の30倍にまでなった群馬県におけるラジコンヘリコプターによる濃度の濃い有機リン農薬の空中散布(以下 空散)と小児・小中学生の慢性農薬中毒によるぜん息と精神障害、その後で出現してくる化学物質過敏症です。

200倍もの濃さの有機リンを空中散布
 前橋市の南方にある玉村町は、今一番開発されている地域です。出生率も高い。農村地帯に家がどんどん建って都市化している地域です。ここから来る患者がひじょうに多いのです。それは、この地域でラジコンヘリによる水田への農薬空散が大変多いからです。
 ラジコンヘリには農薬を8リットルしか積めないので、殺虫剤のスミチオン(有機リン農薬フェニトロチオンの商品名)を1000倍希釈のところを5〜6倍に希釈して載せ、空中散布しています。その結果、霧状になった農薬は大気中に拡散する。そして、その後2〜3週間、ガスとなって辺りに停滞します。
 近辺だけではなく、空散した場所から1,500mも離れた所に住んでいる人も、呼吸困難に陥って駆け込んでくるのです。

どんな患者が外来に飛び込んでくるか
例1 農薬の慢性中毒になった農家のおじいさん。よその病院ではぜん息と診断されていた。咳に苦しみ、おむつをしていた状態から、抗コリン剤と抗酸化剤投与による治療の結果、50ccのバイクに乗って家の買い物を引き受けるまでに回復。
例2 31歳の女性。目の下にはくまができ、45歳くらいに見えた。有機リン剤によって眼瞼筋等がやられるので、まぶたが下がってしまい、上げようとして額に皺が寄ってしまう。この場合も、抗コリン剤と抗酸化剤の投与で軽快した(以下の治療は同様)。
例3 小学生の男の子。顔の発疹で来院したが、登校できていなかった。有機リン中毒によって免疫力が低下するので、アトピーとヘルペスを併発していた。目つきは明らかに違う。額にしわを寄せる。付き添ってきたお母さんの異常にも気づく。お母さんは翻訳の仕事が半年もできていなかった。治療の結果、二人とも精神症状も取れて表情がよくなった。
例4 寄宿制の学校に行っている子どもが、帰宅した日に近くの水田にラジコンヘリで農薬空散。農薬中毒にかかり、翌日救命救急センターに行ったところ埒があかないので来院。救命治療が済んだ時点でも記憶障害が残っていて、自分がだれでどこからいつ帰ってきたのかも思い出せない。その後、解毒剤を使った治療を行った。
例5 玉村の新興住宅地に住む引きこもり2年の男の子。顔中アトピー、カビ、そしてヘルペス。眼球運動もおかしいし、目つきが違う。治療の結果よくなり、大検が受かり大学に進学。
例6 農薬空散が多い群馬町から100mの所に住んでいる子ども。来院すると足をぱたぱたさせたり顔をしかめたり、とにかくどこか筋肉を動かしていないといられない。この症状が、必ず空散時期の7月中旬から8月いっぱいくらいに出る。成績はクラスで2〜3番だが、この時期になると成績ががくんと落ちて、登校拒否になることもある。
例7 群馬町に住む子ども。夏になると、1か月間必ず学校に行けなくなる。さいわい夏休みがかかるので、何とか高校に進学した。寄宿制の高校に行くよう薦めて、今は健康になった。目の下のくま、目つきが違うのが特徴で、群馬県にはこういう子が多い。子どもなのに、みんな悪夢を見ると言う。眠れない、めまい、記憶力が落ちる、今やったことをすぐ忘れる、考える力が減退するなどの症状も共通してみられる。
例8 48歳の女性。イライラ、不安、集中できないなど様々な症状を訴える。自分では更年期障害だと言う。掃除ができない、片付けができないも共通した症状である。

病院やデパートでも有機リン剤散布
 ビル管理法が改正されて、薬剤は必ずしも撒かなくてもいいことになりました。しかし群馬県の公文書には、未だに年2回、ゴキブリのためにフェニトロチオン、フタルスリン(ピレスロイド系)、フェノトリン等を50ml/m2撒くと書いてあります。
 前橋市の生涯学習センターの1昨年頃の公文書では、ハエ、カ、イエダニのために6リットル撒くと書いてあります。うっかり行けません。大手デパートの例では、ネズミ・昆虫のために50%のスミチオンを10倍希釈で10リットル噴霧すると書いてあります。授乳室にも撒くのです。
 国立病院で孫が生まれた時に、私が経験したことです。新生児室にガスマスクをつけた人たちが入ってきたのです。何をするのかと聞いたところ、10倍希釈のスミチオンを1リットル撒くというのです。それで、大げんかしました。国立病院でもそんな有様だから、あらゆる病院でやっているということです。
 有機リン中毒では記憶障害が出ますから、患者取り違い事件など最近の多すぎる医療事故の原因ではないかと考えています。こういうガス部屋の中で医者は仕事をしているのですから、事故は当然ともいえるのではないでしょうか。

環境化学物質の83%は空気から取り込む
 有人ヘリは環境に悪いが、無人ヘリ(ラジコンヘリ)なら安全だという変な論理がまかり通っているのです。
 私が空散に反対しているのは、空散は農薬を一番効率的に気化(ガス化)させる方法だからです。村上周三・東京大学教授によれば、人間は環境化学物質の83%を肺(空気)から取り込む。食品は7%、飲料は8%に過ぎません。もちろん、だから食べ物はどうでもいいというわけではありません。  空気が大切だという視点が一般に、特に医者に抜けていると思うのです。

頭から降りかかっても気づかない親
 前橋市の中心部に住む患者さんからの情報です。
 ラジコンヘリで水田に農薬を撒いているすぐ近くに幼稚園があって、グラウンドでお母さんたちと子どもたちが何かやっていました。5倍希釈のスミチオンが頭の上から降りかかっているのに、母親が「あら、雨かしら」と言ったというのです。こういう親では子どもを守れません。
 日本人は危機が分からない。3ccのスミチオンを飲んで自殺を図った患者さんは、2か月経っても肝機能も膵臓の機能も元に戻らないのです。そういう危険なスミチオンが頭から降りかかっているというのに。
 農薬空散地域に住んでいる69歳と72歳の女性は、空散後、急性の老人痴呆が発症して大学病院でアルツハイマーと診断されてしまったのですが、私のところの治療で5ケタの数字を逆から言えるほどに治ってしまいました。

空散は辺り一面を農薬ガスで汚染
 農薬というのは大変な大気汚染物質です。空散では直径2ミクロン(1000分の1o)くらいの粒子になって、夏の40度近い気温下ではガスを撒いているのと同じです。地上5mの高さから撒いても、下の水田には落ちないのです。水田に撒くという目的は達成できなくて、その近辺をガスがまにしてしまうだけです。
 しかも、ガスは肺からそのまま血管内に入ります。静脈注射をしたのと同じなので、ひじょうに危険なのです。食品や水は、腸から吸収されて肝臓で解毒されるということもありますが。
 高崎の観音山での松枯れ防除のスミチオンを散布後の調査では、午前4時半頃に撒いているにもかかわらず、付近の住宅地などでは汚染濃度が散布直後(86ナノグラム/m3)よりも約半日後に10倍(800ナノグラム/m3)にはね上がりました。1週間後にもまだ120ナノグラム検出されたのです。
 また、中腹で撒いたのにもかかわらず、最高値を記録したのは100m上の頂上の駐車場でした。撒いた農薬が気化して、100mも上がって最高値を記録したということです。だから、撒いている所ではないから大丈夫ということにはならないのです。1,500mも離れた所に住んでいる患者が救急車を呼ぶ状態になるというのは、うなずける話なのです。

一番敏感なのは妊娠6か月から生後1年の子ども
 発症した人と同じ家に住んでいても発症しない人がいるのは、遺伝子の違いです。
 妊娠6か月から生後1年までの子どもが、もっとも敏感な群に属するのが一番の問題です。有機リン系除草剤・殺虫剤を多用された時代に生を受けた子どもたちが今、小学生、中学生になってきつつあるのです。学級崩壊などは起こるべくして起きていると私は理解しています。
 福島章さんの本から引用させていただいたメキシコのヤキ谷という所のデータです(図)。
 農薬不使用地帯の子どもたちの絵は髪の毛があったり、指までついている。しかし、農薬多用地帯の子どもたちはこんな絵しか書けません。こうなってしまっては、この後どんなにいい環境においても、どうにもならないかもしれません。

高気密・高断熱の家でシロアリ消毒
 高気密・高断熱の家では、床下にクロルピリホスなどのシロアリ防除の農薬を撒くとガス部屋になってしまいます。
 小学5年の男の子の例です。成績が中の上くらいだった子が、こんな読めない字を書くようになるのです。ハガキのあて名が前橋市青山先生しか書いていない。これでよく届いたと思うのですが。
 家は壁に穴を開け換気扇を回して、床下はコンクリートで覆って、抗コリン剤と抗酸化剤の治療で、2か月後にはまともな字を書くように回復しました。治癒してからの成績表には「精神障害について独自の研究をしてきた」と書いてあります。自分がなったので、精神障害とはどんなものか研究したということらしいです。
 1990年のシロアリ消毒の例です。高気密の家ではありませんでしたが、有機リンで消毒して、もともとアレルギー鼻炎はあったのですが、突然ぜん息発作を起こした。私の病院までたどりついて、カウンターに手をついたとたん「先生苦しい」と言って絶命してしまったのです。その家の空気を調べたところ、計器の針が振り切れました。新築後、2か月経たないうちにぜん息による突然死を招いたのです。
 また他の例では、高気密・高断熱の家に住んでいて、全身関節・筋肉痛、意識がおかしい、物忘れ、精神症状、幻覚まで出て大きな病院に入院。あちこちの科に回されたが分からない。けれど、だんだん良くなってきて退院してうちにきました。結局、家が原因での化学物質過敏症とわかりました。

光化学スモッグ、実は有機リン中毒では?
 前橋市のデータを検討すると、ぜん息の子どもの発生率は市街地の国道のそばの車による大気汚染地帯に比べて、農薬空散地帯は約2倍あるということが分かりました。農村地帯の方が危険なのです。地域によるぜん息の発生率と不登校の発生率は重なります。
 大気汚染の状況はかなり改善されてきているのに、3歳児のぜん息は増え続けている。その原因が厚労省は分からないとしていますが、それでいいのでしょうか。
 最近、校庭を芝生にしようという動きがありますが、私は大反対です。芝生は必ず農薬を使うからです。藤岡のサッカー場には、調べたところ、バスター、シマジン、スミチオン、マンネブ、ダイセン等々が大量に撒かれています。
 群馬県の光化学スモッグ濃度は3年連続で全国最悪だそうです。しかも、標高500〜600mくらいの中山間部の学校ばかりで発生するのです。
 光化学スモッグというのは、平坦な所で車からの排気が紫外線と反応して発生するものです。しかも、校庭で体操をしている時にバタバタ倒れるもの。ところが、群馬県の光化学スモッグは、学校から帰ってきて翌日頭が痛くて270人中170人が休むというようなものです。翌朝頭が痛くなる光化学スモッグというのはおかしい。
 私は、有機リン中毒ではないかと考えています。有機リンが時間をおいて体内で酸化されて効果が発現してくる。そのかなり大勢の患者がうちに来ます。そして、そのうちのかなりの割合の子どもが化学物質過敏症になっていくのです。このまま行くと、滅びてしまうのではと本当に心配です。(まとめ 安間)


化学物質問題市民研究会
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