ピコ通信/第52号
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3.化学物質過敏症(CS)患者が安心して療養に専念できる施設作りを考える Wさん(沖縄県平良市) 宮古島に家族で移り住んで 沖縄県の離島である宮古島に家族で越してきて丸4年が経ちました。当時まだ小学校低学年と幼稚園の子どもたち(CSを発症)の健康と笑顔を取り戻す為の大きな決断でした。住む家を決めるまでの費用、またその家を子どもたちが住むことの出来るよう安全な素材を使っての改築の出費も我が家にとっては多大なものでしたが、何年もの間、夜も眠れず又肺炎を繰り返す子どもたちがすやすやと気持ち良さそうに眠っている姿は何物にも替えがたい幸せなことでした。 初めて住む宮古の気候を知るにはしばらく住んでみないと風向きや産業の様子、農業の様子が分かりません。有機農業を行っている農家もありますが、農薬を使う農家のほうが多いのも事実で、近所で農薬を使う時には子どもたちを連れていつも海へ逃れています。海は本州の大都市周辺の海と違って澄んで美しく、たくさんのヤドカリが白い砂浜を歩き、海から吹く風も気持ち良く体調を整えてくれます。 数え切れないほどその浜辺へ行っている内に、このような場所に患者が長期滞在できる建物があったら良いのにと私の中で次第にその気持ちが大きくなっていきました。 台風にも負けないように基礎をしっかりと作った自然住宅で、風を感じながらゆったりと自分の体と向き合う事のできる施設があれば、宮古の気候と空気を試すためにCS患者が来島することができます。 平良市市長に要請する ちょうど、平良市には「健康ふれあいランド構想」という自然を生かした体験型長期滞在保養施設の構想がありました。それで、まずはじめに今年の2月、市長に「化学物質過敏症」の患者の増加を訴え、患者の為に保養所の必要な旨をお願いすることにしました。私が「健康アイランド宮古島にぜひとも加えていただきたいこと」と書き送りましたメールへの市長からの回答を、一部抜粋してここに紹介します。 「特に、化学物質過敏症と密接な関係にあるシックハウスは、長期滞在型健康保養基地をめざす本市のまちづくりにおいても重要な課題であると認識しております。化学物質は私たちの日常にあふれ、それをすべて排除することはできませんが、幸いに宮古島は海洋性気候で、大都市にはない清浄な空気と海に囲まれた環境を有しており、自然環境に恵まれています。 こうした自然環境を生かして、本市では、お年寄りや障害者にも対応できる体験滞在型健康保養施設の建設を予定しております。ご指摘のシックハウス対策なども検討し、健康保養地としての機能が高められるよう取り組んでまいりたいと思います」 この回答が送られてくる前に、市長から直接、前向きに検討していきたいとの電話をいただきました。それから早速要請書を作り、ちょうど宮古に来ていたCS患者のお母さんと、そしてこの問題への取り組みは本当の意味で宮古島の環境を守ることにつながると理解してくださった市議会議員にも同行をお願いし、1週間後に市長に「化学物質過敏症患者の転地療養の受け入れのお願い」の要請をしました。 市議会で全会一致で採択 平良市長は耳鼻咽喉科の医者でもあり、CSの問題もご存知でしたので、宮古での化学物質フリーの滞在施設実現にも前向きに考えておられるようでした。資料として、旧厚生省で作成した「化学物質過敏症」、化学物質問題市民研究会の発行している「ピコ通信」の33号・文部科学省のシックスクール問題解決への動き、「CS支援センター」の発行した1・2号の旭川と中伊豆の動きを手渡しました。 それから3週間後の3月18日、市議会文教社会委員会に参考人として出席し、患者の実情と転地療養の必要性、そして住宅を建設した場合の需要等について説明致しました。 平良市には温暖な宮古の気候を生かして冬の間、福島県西会津町のお年寄りを受け入れるプランがあり、実績も上げているのでそれをさらに1歩進めて、化学物質を使用しない住宅を用意すればCS患者が宮古に来ること、長期滞在して療養に専念することが可能になる事を話しました。患者受け入れの要請については、3月26日に本会議で全会一致で採択されました。 行政の壁で足踏み状態に まずは第1歩を踏み出しました。その後は市の村づくり課、建設部、総務部すぐやる課チーム、財政部のそれぞれ部長、課長、係長の方々のところへ何度か足を運び、理解を深めてもらえるよう話をしています。しかし、市が中心となっての計画ではないので、ここに来て足踏み状態となっています。 市としては、患者が来ることは健康アイランドとしての位置付けに沿うものであり、環境の大切さを知っている患者だからこそ宮古の自然を大切にしてくれるという認識を持っていることは確かです。が、市の財政状況はひじょうに厳しく、出来れば患者や患者を支援するNPOなどで、患者が良いと思う土地を借りる、もしくは買って自分たちで住宅を建設したり補助をとり入れて進めてくれれば、反対する理由は全く無く、むしろ賛成というのが正直なところでしょう。 静かな離島での滞在施設建設にご協力を 宮古の気候については患者の中でも合う合わないがあるとは思いますが、以下にあげるのが良い点だと思います。大きな工場がないこと。沖縄本島より遠いため、本州からはとても遠く感じられますが、羽田や関空からの直行便を使えば3時間もかからないこと。観光リゾート開発が進んでいるため、割合便利であること。そして、離島ならではの静けさがあり、何よりも文字通り晴耕雨読に近い生活ができることが都市生活のストレスで低下していた身体の免疫力を向上させる手助けをしてくれることを実感しています。 市への要請の経過を報告しましたが、私個人の動きではここまでが限界と感じています。ここから先に進む為には、ピコ通信を購読なさっている方々、CS患者の支援をして下さっている方々、各分野のNPOの方々、そして患者および家族の皆様の後押しが必要です。皆様のお力を少しずつ分けていただければ、患者が安心して住む事の出来る場所作りが可能です。地元の農業の若手リーダー2名も後押しをしてくれています。 CSを発症したために仕事が出来なくなった人たちがまた何かをやろうと思えるような、例えば有機無農薬で野菜を作りそれを食べ、沢山できた時には売り、教師をされていた方にはCSで学校に通えない子どもたちの先生になってもらうなど患者の力を生かしながら皆で助け合うコミュニティーを作っていきたいと考えています。 どんなことでも結構です。地元でNPOを立ち上げる事業計画を作るほうが早いのか、住宅設計の注意や事業計画作り等皆様のアドバイス、ご協力をお待ちしています。どうかよろしくお願い致します。 ※筆者のWさんに連絡されたい方は、事務局までご連絡ください。 FAX 03(5907)2671 電話045(364)3123 (安間)) メール syasuma@tc4.so-net.ne.jp |