2.情報通信機器企業がグリーン調達を共通化
グリーン調達とは
昨年10月に新聞報道されたように、現在情報通信機器業界でグリーン調達の共通化の動きが進められています。
グリーン調達というのは、企業が原材料等を購入する際に、環境負荷の少ない物品を優先して調達したり、そのような配慮をしている企業から優先して調達したりすることをいいます。行政による同じ様な取り組みとしては、昨年4月にグリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)が施行されています。欧州での化学物質使用規制に対応し、1998年ごろから世界の情報機器・家電業界を中心に採用する動きが広がりました。
国内大手18社が基準統一
昨年10月2日の報道によると、国内の情報通信機器企業の大手18社が、各社それぞれが行なっていたグリーン調達の基準を統一することを決めました。共通化されるのは、部品・資材に含まれる化学物質などの開示対象項目で、24物質群にすることが合意されました。これは部品メーカーにとっては、納入企業各社ごとに異なった対応をしなくてすみ、事務の煩雑さから解放されることになります。18社の中でも、開示対象の分類項目は、50から1,300項目までと大きな開きといいます。共通項目に含まれない物質については各社の対応に任されます。
グリーン調達の中味としては、資材・部品については、化学物質含有量開示の他に、リサイクル性、使用・廃棄時の環境負荷、使用禁止物質、削減対象物質等があり、取引先の企業評価としては、環境マネジメントシステムの有無、情報開示量など、環境負荷低減への取り組みが評価されます。
今回の情報通信機器企業の動きは、輸出先の欧州で、EUが電器製品への鉛の使用を禁止する等の動きに対応する必要性があったからと思われます。
18社では、この案をもとに欧州の電子・電気機器メーカー3,000社が加盟する欧州情報通信技術製造者協会(EICTA)や、米国内2,100社が加盟する米電子工業協(EIA)とも交替を行ない、日米欧の共通の基準にすることを目標としています。
調達する側の企業が、原材料調達先に要請するのは、対象化学物質の含有の有無やその含有量の開示です。これは、挙げられている化学品目全てが即使用禁止になるということではありませんが、企業としてこれらを有害化学物質と認識し、調達資材・部品における含有実態を把握し、それらの削減をはかる努力をしていくということです。
発表されたリスト中に塩化ビニルや添加剤が含まれていたため、さっそく塩ビ工業・環境協会が、「化学物質の不当な差別」、「科学的根拠が希薄」、「いたずらに社会の不安を煽り、一部の団体、個人による不当な反塩ビ活動を助長する」、「自分達の産業界のみの都合を優先させている」という言葉を使って、「強く抗議致しますとともに即時撤廃を要求致します」との抗議文を出しています。
共通指針の普及を目指す
今年3月27日の日本経済新聞では、電子情報技術産業協会JEITAがこの18社の動きの支援を行なうことになったと報道されました。これは、今までは国内大手18社といっても、有志の集まり的な動きであったものを、協会に事務局をおくことで、態勢をきちんと整え、そこを対外的な窓口にして進めて行くということだそうです。
現段階では、開示要請品目群は28に増えて、4月から一部企業によりテスト運用が始まっています。ただし、JEITAでは、まだ引き受けることが決まったというだけの段階で、窓口としての態勢は整っていません。
JEITAとしては18社だけでなく、電子機器関連業界の共通指針としての普汲を促す方針です。欧米の関連団体とも共通化について大筋合意されているということです。これが素材メーカー段階で共通化されれば、他の製品メーカーにも波及することになります。
電子機器関連業界としては、これらの動きを自動車メーカー等にも働きかけていく予定です。積水化学が住宅部門でグリーン調達を始めたり、建設・エネルギー業界でも導入する企業が増え始めています。
このような動きは、対応可能な大手企業だけの動きになりがちですが、それが裾野の方の中小の企業にまで波及するかどうかが課題であると思います。中小の企業が、大手からあぶれた有害物質含有資材・部品の押し付け先ともなりかねません。今後の動きを見守っていきたいと思います。(花岡)
参加18社
沖電気工業、キャノン、三陽電機、シヤープ、セイコーエプソン、SONY、東芝、日本IBM、日本電気、日本電信電話、パイオニア、日立製作所、富士社写真フィルム、富士ゼロックス、富士通、松下電器産業、三菱電機、リコー
開示要請化学品目(全28品目)
【金属類】(以下の金属及びその化合物)
アンチモン、ヒ素、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、クロム、六価クロム、コバルト、鉛、水銀、ニッケル、有機スズ、セレン、テルル、タリウム
【ハロゲン系有機物】
塩化パラフィン、PBB類、PBDE類、ハロゲン系樹脂添加剤、PCB、ボリ塩化ナフタレン、ポリ塩化ビニル
【その他】
アスベスト、アゾ化合物、シアン化合物、オゾン層破壊物質、フタル酸エステル、放射性物質
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