4省への化学物質過敏症対策の要望書に対する
環境省からの回答(文書)


化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載2006年3月28日

 2005年12月5日、化学物質問題市民研究会は化学物質過敏症支援センターほか36団体とともに、厚生労働省、文部科学省、環境省、国土交通省に対して化学物質過敏症対策に関する要望書を提出しました。(参照:4省への要望書(2005年12月5日提出)と要望団体リスト
 厚生労働省からは電話(1月16日)、環境省からは文書(12月19日付け)回答があ りました。
 文部科学、国土交通省からは、回答がありません。
 以下は環境省からの回答(文書)です。


平成17年12月19日
環境省 環境保健部 環境安全課
水・大気環境局 農薬環境管理室
廃棄物・リサイクル対策部 廃棄物対策課
水・大気環境局 大気環境課
化学物質問題市民研究会
化学物質過敏症支援センター
その他要望団体 殿

要望1.化学物質過敏症を疾病として認めること
また、化学物質過敏症に関する研究の昨年2月の報告書発表後の進捗状況と、今後の 見通しについて示されたい。

【回答】環境省では、化学物質過敏症に関して平成9年度から実施していた研究を平 成16年度で終了し、平成17年度からは、化学物質環境実態調査の一環として、化 学物質過敏症との関連が指摘されている化学物質の一般環境中の極微量分析法の開発 を進めております。なお、「疾病として認めること」の趣旨がわからないところがあ るのですが、環境省において特定の病症を「疾病」として認定する事務は特に行って おりません。

要望2.公園や街路樹、庭等に撒かれる農薬等の薬剤による被害防止対策を徹底すること
公園や街路樹、庭等に撒かれる農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤等)によって、化学物 質過敏症(CS)を発症する者が後を絶たない。また、すでに発症した者も、これに 非常に苦しんでいる実態がある。農水省から通達「住宅地等における農薬使用につい て」が出たが、飛散に限定され、かなりの長期間残留することやガス状になって周辺 へ広がることなどが考慮されていない。また、通知が出されても学校や公園、敷地等 での農薬散布を一向に改めない等の被害者からの訴えが多い。貴職として何らかの有 効な対策を講じてほしい。
また、今年度、農薬飛散リスク評価使用検討調査を実施すると聞いているが、その内 容と進捗状況、今後の予定についてうかがいたい。

【回答】公園等における農薬散布による被害防止対策については、農林水産省から 「住宅地等における農薬使用について」(平成15年9月16日付15農安第171 4号農林水産省消費・安全局長通知)を発出したところであり、農林水産省では当該 通知の普及啓発については、農林水産省ホームページに掲載し、併せて毎年度、厚生 労働省及び農林水産省において実施している「農薬危害防止運動の実施について」の 中で更なる周知徹底を図っているほか、都道府県等により様々な機会をとらえて周知 を行っており、今後とも周知徹底に努めていくと聞いております。
 一方環境省では、農薬の散布に際して周辺住民等の健康被害を未然に防止するた め、平成9年度に、空中散布としての使用が多く、知見の集積が十分と考えられた1 0農薬について「気中濃度評価値」を設定するとともに気中濃度の実態把握を行って きたところです。さらに、環境省では、農薬取締法に基づく「農薬を使用する者が遵 守すべき基準を定める省令」の制定や、農林水産省からの「住宅地等における農薬使 用について」の通知の発出を踏まえ、街路樹や公園の花木類の管理のために市街地に おいて散布された農薬の飛散リスク評価・管理手法の開発を行うため、今年度より5 ヶ年計画で「農薬飛散リスク評価手法等確立調査事業」を開始したところです。
 本年度は、自治体での防除実態把握のため、人口10万人以上の自治体に対し、防 除実態等(防除方法、使用農薬等)についてのアンケート調査等を実施しているとこ ろです。
 来年度以降は、本年度把握した防除実態を踏まえ、モデル的に、公園等でのモニタ リング調査を実施し、曝露実態を把握した上で適切なリスク評価・管理手法を開発す ることとしており、この取組を通じて住宅地等における農薬の飛散リスクの削減に努 めて参ります。

要望3.野焼きの取り締まり強化と周知徹底をはかること
化学物質過敏症患者は、野焼きにひじょうに苦しめられている。空気のきれいな郊外 にと考えて避難してきたのに、野焼きされると居場所がない。農家の野焼きは自然物 については禁止されていないが、稲わらやもみがら焼きの煙に、ぜん息などの原因と なる化学物質が含まれていることが明らかになっている。よって、農家の野焼きはす べて禁止してほしい。また、国民全てに対して、野焼きは禁止されていること、環境 への影響と被害を受ける者がいることを周知徹底してほしい。

【回答】もとより廃棄物処理法において処理基準に適合しない処理については、違法 行為であったところですが、平成12年の法改正において、基準に適合しない焼却に ついて、全面的に禁止することにより規制を強化し、さらに、平成16年の法改正に おいて罰則のさらなる強化を図ったところです。
 しかしながら、農業を営むためにやむを得ないものとして、従前より行われてきた 農業者が行う稲わらやもみ殻などの焼却については、罰則により取り締まりをすべき 違法焼却の対象ではないものとして例外的な取り扱いとしているところです。  農業における稲わらやもみ殻などの焼却については、国が全国一律に、犯罪行為と して処罰すべきものとするのではなく、地域において農家と周辺住民の方々の間でコ ミュニケーションが十分にとられ、農家においても、地域社会の一員として迷惑を周 辺におよぼさないよう配慮されることが適切なものと考えております。
 こうした地域に密着した問題については、関係者間で解決や困難な場合には、地方 公共団体において必要な対応がなされるべきものですが、国としても、違法な焼却に ついては厳格な対応をとるよう地方公共団体に促すほか、有用なバイオマス資源でも ある稲わらやもみ殻などの利活用については、たい肥化等のさまざまな取組がなされ てきていることを踏まえ、技術開発を促進することにより、これを拡大し、野焼きを 減らしていくことにも繋げていきたいと考えています。

要望4.印刷工場、化学工場、機械工場、クリーニング店等からの有害ガス・悪臭等 による被害対策を講ずること 印刷工場等からの排出ガス等によって健康被害を受ける者が続出している。これら工 場等からのVOCの排出抑制対策が始まったが、中小工場は規制の対象外とされてい る。しかし、周辺住民が被害を受けるのはむしろ中小業者の施設である事が多い。し たがって、中小工場等からの排出を減らすよう有効な対策を講じてほしい。

【回答】浮遊粒子状物質及びオキシダントの問題に対処するため、平成16年に大気 汚染防止法を改正し、揮発性有機化合物(VOC)の排出量の大きい工場・事業場に 対する法にする規制と中小業者を含めた各事業者の自主的な取組を適切に組み合わせ ること(ベスト・ミックス)により、排出抑制の取組を進めることとなりました。平 成18年4月から規制が始まるところです。
 揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制対策は、これまでの自主的取組のノウハウ を活かして自主的取組を促進するという新しい考え方に立つものです。
 自主的取組のあり方については、現在中央環境審議会の専門委員会で検討している ところです。
 なお、将来、仮に、排出削減目標に照らしてVOCの排出削減が十分でないという 自体が生じた場合には、取組状況をレビューし、規制と自主的取組の組合せの仕方を 見直すこととしています。