2012年1月21日 EMFact プレスリリース
新たな論文
EMFがマウスの脳プロテオームに影響を及ぼす


情報源:EMFacts Consultancy, Press release, January 21, 2012
New Paper: EMF effects on mouse brain proteome
http://www.emfacts.com/2012/01/new-paper-emf-effects-on-mouse-brain-proteome/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2012年1月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/emf/120121_EMFact_EMF_mouse_brain_proteome.html


 ルーカス・マルガリティス教授(アテネ大学生物学部及びアテネ・アカデミー生物学研究基金)の研究グループは、日常生活における電磁界の影響の可能性をはっきりさせるための真実を求める活動の枠組みの中で、アダマンティア F. フラゴポーローの博士論文の一部として本研究を実施した。

 携帯電話と無線DECT(訳注1)を通常の動作条件で使用し、最新のプロテオーム(訳注2)科学アプローチを駆使することで、彼等は主要な脳のタンパク質の多くが変化することを実証した。すなわち、一方で多くのタンパク質が等しく病理学レベルを十分に越えているにもかかわらず、海馬、小脳、前頭葉のような極めて重要な領域にある脳の機能の完全性にかかわるたんぱく質は通常のレベル以下であることが見出された。これらの”高発現”又は”低発現”タンパク質は、携帯電話曝露の結果として報告されている記憶障害、頭痛、睡眠障害、脳腫瘍などを含む短期的又は長期的な影響にある役割を果たしているかもしれない。

 この研究は今までに発表された中で、初めてマウスの脳プロテオームを大規模に分析したものである。最近、”タリス(Thalis)”助成金を受領した同研究チームは、最も適切なモデル(マウス、昆虫、線虫、トカゲ、培養細胞、ヒトの皮膚)を活用しつつ、分子レベルから組織レベルまでの電磁界(EMF)の影響をはっきりさせることを目指している。

論文: Published in Electromagnetic Biology and Medicine, Early Online: 1?25, 2012 Copyright Q Informa Healthcare USA, Inc.
Brain proteome response following whole body exposure of mice to mobile phone or wireless DECT base radiation
Adamantia F. Fragopoulou1, Athina Samara2, Marianna H. Antonelou1, Anta Xanthopoulou3, Aggeliki Papadopoulou3, Konstantinos Vougas3, Eugenia Koutsogiannopoulou2, Ema Anastasiadou2, Dimitrios J. Stravopodis1, George Th. Tsangaris3 & Lukas H. Margaritis1
1: Department of Cell Biology and Biophysics, Athens University, Athens, Greece
2: Genetics and Gene Therapy Division, Center of Basic Research II, Biomedical Research Foundation of the Academy of Athens, Athens, Greece, and
3: Proteomics Research Unit, Center of Basic Research II, Biomedical Research Foundation of the Academy of Athens, Athens, Greece

アブストラクト

出典:PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22263702
 この研究の目的は、二つの電磁界(EMFs)源が、長期間の全身照射の後、BALB/cマウス(訳注3)の小脳、海馬、前頭葉に及ぼす影響を調査することであった。マウスを3つのグループに等しく分けた(1グループにマウス6匹)。第1グループは、1日3時間、8ヶ月にわたり 0.17 - 0.37 W/kg の SAR レベル(訳注4)で典型的な携帯電話に曝露させた。第2のグループは、1日8時間、8ヶ月にわたり 0.012 - 0.028 W/kg の SAR レベルで無線 DECT ベース(Digital Enhanced Cordless Telecommunications/Telephone)に曝露させた。第3グループは、シャム曝露(訳注5)のラットからなる。

 比較プロテオーム解析(訳注2)は、2つのEMF源からの長期的な照射が有意に(p , 0.05)合計 143 のタンパク質の発現を変更したことを示した(0.003倍の発現減少から114倍の発現増大まで)。神経系機能に関連するいくつかのタンパク質(グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、α-シヌクレイン、グリア成熟因子β(GMF)、アポリポタンパク質E(apoE))、熱ショックタンパク質、及び細胞骨格タンパク質(神経フィラメントや トロポモジュリン)は、研究対象となったほとんど全ての脳領域への脳代謝(アスパラギン酸アミノ基転移酵素やグルタミン酸デヒドロゲナーゼ)とともに、このリストに含まれている。

 選択したタンパク質についてのウエスタンブロット解析 (訳注6)は、このプロテオミクスデータを確認した。観察されたタンパク質発現の変更は、神経系の酸化ストレス又はアポトーシス(訳注7)を暗示する脳の可塑性の変更(brain plasticity alterations)に関連するかもしれず、それらはまた同様な曝露条件で、頭痛、睡眠障害、疲労、記憶障害、脳腫瘍長期誘発のような現在までに報告されているヒトの健康障害を説明できる可能性があるかもしれない。


訳注1:DECT
DECT/ウイキペディア
DECT (Digital Enhanced Cordless Telecommunications) は、ETSI (European Telecommunications Standards Institute) が1988年に策定した、デジタルコードレス電話規格である。

訳注2:プロテオーム
訳注3:BALB/cマウス
マウス/日本クレア

訳注4:SAR(Specific Absorption Rate(比吸収率))
SAR 情報

訳注5:シャム曝露(sham exposure)
sham exposure / EMF Portal
曝露サンプルの環境条件を模擬するが実際には曝露のない参照群
(A control group used to simulate the environmental conditions of exposed samples, but in absence of exposure.)

訳注6:Western blot analysis
ウェスタンブロッティング/ウイキペディア
 ウェスタンブロッティング (Western blotting; WB) は電気泳動によって分離したタンパク質を膜に転写し、任意のタンパク質に対する抗体でそのタンパク質の存在を検出する手法。別名ウェスタンブロット法(Western blot analysis)。

訳注7:アポトーシス
アポトーシス/ウイキペディア



化学物質問題市民研究会
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