スペインのMCS患者の魂の叫び
多種化学物質過敏症についての
裸の真実

エバ・カバリエ(Eva Caballe)

情報源: Original: Eva Caballe's Blog, NO FUN in Spanish
The naked truth about Multiple Chemical Sensitivity, in English
Translated from Spanis to English by Eva Caballe
http://nofun-eva.blogspot.com/2009/06/naked-truth-mcs.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
Translated by Takeshi Yasuma, Citizens Against Chemicals Pollution (CACP)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年8月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/ngo/090629_naked_truth_about_MCS.html

 写真とエッセイはスペインの化学物質過敏症の人々がいかに政府によって見捨てられ、”二級市民のように裸のまま保護されずに”放置されているかを告げてくれます。
 二週間前、私はスペインのブロガーで MCS 患者であるエバ(Eva)がオンライン・マガジン『Delirio』に載せた信じられないような写真とエッセイを見ました。そのエッセイをエバが親切にも私たちのために英語に訳してくれました(Susie Collin)。



 私たちは裸で生まれ、オーデコロンや香水をつけたオムツ、柔軟仕上げ剤で洗った衣類、あらゆる種類の香料を使ったクリームを与えられ、見事に汚染された空気の中をプラスチックのベビーカーで運ばれます。

 私たちは成長すると、少し疑いながらも、望むことは何でもでき、将来を描くことができ、幸せは何でも買えば得られ、国は私たちを守り、世話をしてくれると信じこまされています。

 ある日、目が覚めた時には、まだ何も気がつきません。テーブルの灯りを点けた時、まぶしい光が目に飛び込んできます。窓を開けると、息ができないような今までに嗅いだことのない臭いに気がつきます。ラジオをつけると音楽が頭の中で爆発するかのように響きます。二日酔いではありません。状態はますます悪くなります。それは多種化学物質過敏症(MCS)と呼ばれているものであり、それがやってきたのです。体は、”もう十分だ”と言っており、壊れてしまい、幸せのために重要であると人の言う全てのものを体が受け付けなくなり始めます。生活は思いもかけずひっくり返り、心も変わり、将来も消え、体力も精神力もなくなります。この病気のために、マスクをつけた生活を強いられ、外界から隔絶されます。

 多種化学物質過敏症は不思議でも少数派でもありません。それは人口の5%の人に影響を与えています。それは慢性疾病であり、精神的なものではなく、漂白剤、エアーフレッシュナー、香水など通常の不必要な化学製品へのわずかな暴露にも反応して症状を引き起こします。私たちは家の中に閉じこもって生活をし、外に出て危険な目に会わないようにします。すばらしい有害柔軟仕上げ剤のおかげで、外に干されている隣人の洗濯物で息がつまり、具合が悪くなり、気を失います。

 世界保健機関(WHO)は、その病気の存在を証明する無数の研究を入手しているにも関わらず、そして欧州議会は増大する環境的要因に関連する疾病の中にMCSを含めているにもかかわらず、WHO は MCS をまだ病気として認めていません。その理由は、MCS は私たちが使用する化学製品によって引き起こされるので、化学産業と製薬産業はそれを認めないよう圧力をかけているからです。経済権益が私たちの健康の前に立ちふさがっているのです。ドイツのように、この病気が認められている国では、それに対する医療支援と財政的援助が提供されており、現在、他のいくつかの国でもそのことが検討されています。

 スペインでは状況はどうでしょうか? 私たちは政府に頼ることはできません。私たちはMCSを被った上に、政府からは見捨てられ、医療保護もなく、働くことができないのに障害手当を受ける権利もありません。私たちは現在の社会制度が失敗していることを示す証拠そのものなのに、そのことを誰も見たくないし、解決のための取り組みを望まず、政府は私たちを二級市民であるかのように、裸のまま保護もせずに放置しているのです。

 政府はまた、もっと楽になるかもしれないという私たちの希望を奪っています。医薬品研究には利益が見込まれる時にだけ資金がつきます。その結果、少数者の病気は研究されません。人口の5%に影響を与えているMCSのためにすらです。化学産業と製薬産業は私たちが有害物質のために病気になったことを知っています。そして重要なことは、彼らを儲けさせるための薬ではありません。重要なことは、この社会の仕組みを変えることです。私たちが毎日暴露する膨大な量の化学製品の製造を減らすことです。明らかに、このことが理解されることはなく、彼らは MCS が存在することを否定しようとします。彼らの経済的権益が危うくなるからです。

 政府に支援されている化学産業には、その影響がしばしば未知である化学物質に人々を暴露させる権利はありません。私たちが MCS になると、香水も柔軟仕上げ剤もプラスチックも投げ捨てて再び裸にならなくてはなりません。私たちはもう一度生まれた時に戻りますが、それは私たちが自ら選らんだ新しい生活ではありません。私たちは、MCSには遺伝的要素があるけれども、誰でもが MCS になるわけではないことを知っています。しかしそのことは、がんや環境的要因に関連するその他の病気になるまで、体内に有毒物質が蓄積しないということを保証するわけではありません。

 MCSの人々は、この病気が認められることを望んでいます。私たちは、他の慢性病の人々と同じ権利を持つことを望んでいます。私たちは、他の人々もまたリスクに曝されているということを社会に知ってほしいのです。私たちは、政府が市民を守り、彼らに負担をかけずに彼らが病気になることを防いでほしいのです。

 私たちは、MCSになって再び裸にならなくてはならないことが誰にも起こらないことを望みます。


訳注:
オリジナル著者のエバ・カバリエ(Eva Caballe)さんのブログ NO FUN (スペイン語)
http://nofun-eva.blogspot.com/
現在、The naked truth about Multiple Chemical Sensitivity はスペイン語、英語、ドイツ語、イタリア語、フランス語、デンマーク語、ノルウェー語、日本語(当研究会訳)、カタルーニャ語の9カ国語で読むことができます。


化学物質問題市民研究会
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