ウメオ大学(スウェーデン)プレスリリース 2012年1月18日
なぜ臭いは、ある人々を病気にするのか?

情報源:Press Release from Umea University 2012-01-18
Why do smells make some people sick?
http://www.umu.se/english/about-umu/news-events/news/newsdetailpage/why-do-smells-make-some-people-sick.cid179554

オリジナル:リナス・アンダーソン(ウメオ大学心理学部部)の博士論文
Original: Andersson, Linus (Umea University, Faculty of Social Sciences, Department of Psychology)
Sick of smells: Empirical findings and a theoretical framework for chemical intolerance
http://umu.diva-portal.org/smash/record.jsf?pid=diva2:464846

The article is also introduced by Chemical Sensitivity Network (CSN)
as Chemical intolerance is surprisingly common at:
http://www.csn-deutschland.de/blog/en/chemical-intolerance-is-surprisingly-common/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年2月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/cs_kaigai/Sweden/smells_make_some_people_sick.html


 あなたはテーブルで隣に座った女性の香水で頭が痛くなることはないであろうか? 仕事場の洗剤で鼻がむずがゆくならないだろうか? もし、あなたが日常の臭いで症状が出るなら、それは必ずしもあなたがアレルギーであるということではなく、むしろあなたは化学物質不耐症(chemical intolerance/化学物質過敏症)に罹っているかもしれない。ウメオ大学(スウェーデン)のリナス・アンダーソンによれば、この過敏症は臭いに馴染むことができないことの結果である。

 あなたが友人のアパートの部屋に入っても、通常なら、あなたの嗅覚作用は急速に減衰する。たとえドアのすぐ内側で臭いを明確に知覚しても、それについて長い間、気にかかることはない。一方、化学物質不耐症の人々にとっては、臭いは常に存在する。心理学研究者リナス・アンダーソンは、化学物質不耐症の人とそうでない人に臭いを曝露させて、彼等の反応を比較した。

 ”過敏症の人々は、臭いの濃度は変化していないのに、臭いが強くなっていると感じた。彼等の脳活動の映像もまた、他のグループの人々とは異なっていた”と彼は述べている。

脳の活動の相違

 結果は、脳波(EEG)と脳機能イメージング技術(fMRI)に基づく方法で観察された。脳波(EEG)法では、被験者の頭に電極を置き、臭いへの曝露により生じる脳の緊張の微細な変化を記録する。正常な人々のグループとは異なり、不耐症の人々は、臭いに曝露してから1時間以上の間、脳の活動が減衰する証拠は示さなかったとリナス・アンダーソンは説明する。臭いに慣れることができないことは、このように時間が経過しても脳の活動が変化しないことによって確かめられる。

 ”これらの人々はまた、臭いの衰退を知覚する人々と比べて、脳の血流に異なるパターンを示す。例えば、同様な変化は疼痛性障害(pain disorder)の患者にも見られる”。

臭いへの感受性は全身に影響を及ぼす

 この学位論文における更なる発見は、化学物質不耐症の人々はまた、鼻や口の粘膜を刺激する物質に強く反応するということである。唐辛子の辛い成分であるカプサイシンを吸入すると咳がひどくなる人々はまた、他の臭いに対しても脳の反応が高まる。不耐症の人々は臭いが強くなっていると知覚する事実があるが、その影響はまた、粘膜や脳にも見られる。

 ”言い換えれば、我々はこの不耐症は身体と心の両方に影響を与えるという兆候を見ることができ、むやみにこれらの一面だけを見ないことが重要である”とリナス・アンダーソンは述べている。

 化学物質不耐症は驚くほどに一般的であり、スウェーデンの人口の10%までが日常的に臭いに悩まされており、概略2%の人々がひどい症状を経験している。それにもかかわらず、アレルギーやぜん息に関する状況とは対照的に、この症状の原因が何なのかについての研究は非常に少ない。リナス・アンダーソンは、もしこの過敏症を特徴付けるものが何かを特定することができれば、その診断と治療の方法を開発することができると主張している。しかし、研究はまた、我々の毎日の仕事と環境についてどのように考えるべきかについての新たな知識を提供することができる。

 ”ある同僚たちは、プリンターの臭いで他の人より苦しんでいる。できるだけ多くの人々に受け入れられるような職場環境にするために、我々は何をすべきか?”

 1月20日金曜日、ウメオ大学(スウェーデン)心理学部のリナス・アンダーソンは、彼の学位論文”臭いの病:化学物質不耐症についての経験的な所見と理論的な枠組み”を公開で発表する。この公開発表は、Hall Hs1031, Norra beteendevetarhusetで午後1時15分から行なわれる。審査員は、ユトレヒト大学心理学部モニク・スミーツ教授である。

学位論文を読む
編集: Camilla Nilsson
Link to news: http://www.umu.se/english/news/.cid179554



化学物質問題市民研究会
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